トライアル雇用助成金を使いこなす実務ガイド(2026年版)——4コースの比較・申請6ステップ・計算例・よくある失敗まで

本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・受付状況はいずれも変更されることがあるため、申請前に必ず厚生労働省またはハローワークで最新情報をご確認ください。本記事は情報提供を目的としており、申請書類の作成代行および個別手続きの代行は行いません。雇用助成金の申請手続きは社会保険労務士の業務範囲に含まれるため、申請実務を専門家に委ねることを検討してください。

この記事が整理すること

採用を検討していて「トライアル雇用」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。あるいは、就職活動中に「トライアル雇用」と書かれた求人票を見かけたことがある方もいると思います。

トライアル雇用助成金は、就職に困難を抱える求職者をいきなり正社員として採用することに不安を感じる事業主と、働く機会を得にくい状況にある求職者の双方を支えるために設計された国の制度です。端的に言えば、「まず最長3か月間、有期雇用で一緒に働いてみて、お互いに合うと判断してから常用雇用に移行する」という仕組みに対して、国が事業主に助成金を支給します。

この制度には、対象とする人の状況によって4つのコースが設けられています。一般トライアルコース、障害者トライアルコース、障害者短時間トライアルコース、そして若年・女性建設労働者トライアルコースの4種類で、コースごとに対象者・支給額・支給期間が異なります。

この記事では次のことを整理します。

本記事は制度の全体像と申請実務の手引きを提供するものです。個別の申請書類の作成代行や手続きの代行は行いません。申請実務を専門家に依頼する場合は、社会保険労務士にご相談ください。

制度の全体像

トライアル雇用助成金とは何か

トライアル雇用助成金は、厚生労働省が所管する雇用関係助成金のひとつです。正式には「雇用関係助成金支給規程」に基づく助成金で、各都道府県労働局を経由してハローワーク(公共職業安定所)が窓口となっています。

制度の目的は2つあります。1つは「採用のミスマッチを減らすこと」。事業主が求職者の適性・能力を実際の業務を通じて見極める機会を設け、採用後のミスマッチによる早期離職を防ぎます。もう1つは「就職困難者の雇用機会を広げること」。職歴が不安定な方、長期離職中の方、障害のある方など、通常の採用選考では不利になりやすい求職者が、実際に働きながら能力を示せる場を作ることを目的としています。

助成金が支給されるのは求職者ではなく事業主です。事業主がトライアル雇用を実施した対価として、1人あたり月額4万円から最大8万円(コース・状況による)が支給されます。

4コースの比較概要

コース対象求職者月額支給額最長期間総額上限の目安
一般トライアル長期離職者・ひとり親等7類型4万円(ひとり親等5万円)3か月12万円(15万円)
障害者トライアル週20時間以上勤務の障害者精神障害者8万円→4万円、他4万円6か月(精神は前半3か月+後半3か月)精神36万円、他12万円
障害者短時間精神障害者・発達障害者(週10〜20時間未満)最大4万円12か月最大48万円
若年・女性建設(上乗せ)35歳未満または女性の建設労働者最大4万円3か月12万円(一般コース等との合計で最大24万円)

上の表は制度の大枠を示したものです。実際の支給額は就労日数による按分計算があり、月の就労率が下がるにつれて支給額も下がります。詳しい計算方法は後述します。

各コースの位置づけ

一般トライアルコースは4コースの中で最も利用者が多いコースです。長期離職、転職の繰り返し、育児離職など、さまざまな事情で安定した職に就きにくい求職者を対象にしています。

障害者トライアルコースは、身体障害者・知的障害者・精神障害者を雇い入れる場合に適用されます。精神障害者については通常の前半3か月(月8万円)に加え、後半3か月(月4万円)の延長が可能という点が、他の障害区分と異なります。

障害者短時間トライアルコースは、精神障害者または発達障害者が週10時間以上20時間未満という短い時間から働き始め、最終的に週20時間以上の勤務を目指すためのコースです。最長12か月という長い支給期間が特徴で、個人事業主が障害のある方を徐々に職場に慣らしながら雇い入れる場面でも活用できます。

若年・女性建設労働者トライアルコースは、中小建設事業主が一般コースまたは障害者コースと併用する形で利用できる上乗せコースです。一般コースと併用した場合、1人あたり最大24万円(一般12万円+上乗せ12万円)の助成を受けることができます。

【無料サンプル】一般トライアルコースの1ケースを申請の最初から最後まで全部見せます

ここでは一般トライアルコースを使って、実際にどのような流れで申請が進むのかを、1つのケースを例に最初から最後まで具体的に解説します。制度のしくみを理解してもらうための一例ですので、金額・手続き・書類の実際は最新の公式情報でご確認ください。

想定するケース

個人事業主として飲食店を1店舗経営するAさん(従業員5名)が、1年3か月前から求職中の40代女性Bさんをホールスタッフとしてトライアル雇用するケースです。Bさんは前職の飲食店を育児のために退職し、その後の就職活動が難航しています。

Bさんは「妊娠・出産・育児を理由に離職し、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている者」に該当するため、一般トライアルコースの対象者7類型のうち「育児離職者」の類型に当てはまります。

AさんはBさんの勤務態度や接客スキルを3か月かけて見極めたいと考えており、お互いに合えばその後正式に無期雇用で採用することを前提にトライアル雇用を選びました。

ステップ1:ハローワークにトライアル雇用求人票を出す

AさんはまずAさんの店舗を管轄するハローワークに出向き、「トライアル雇用を活用した求人票」を提出します。通常の求人票と同様に賃金・労働時間・仕事内容を記載しますが、「トライアル雇用を希望する」という意思表示を明記することが必要です。

ハローワークのオンラインサービス「求人者マイページ」でも登録できます。求人票に「トライアル雇用併用の希望:希望する」と明示することで、ハローワークの担当者がトライアル雇用に適した求職者をBさんのような方に案内できるようになります。

求人票を出すこと自体に費用はかかりません。なお、求人票を出した後に求職者から直接応募があっても、ハローワークの紹介を経ていない採用はトライアル雇用助成金の対象外です。必ずハローワーク(または厚生労働省が定める民間職業紹介事業者)の紹介を通じて採用する必要があります。

ステップ2:ハローワークからの紹介とBさんとの面談・採用決定

ハローワークの求職者担当窓口でBさんに求人票が紹介され、BさんがAさんの店舗で働いてみたいという意思を示すと、ハローワークから「紹介状」が発行されます。

AさんはBさんと面談を行い、採用を決定します。この段階でBさんに対してトライアル雇用制度の内容(有期雇用であること、原則3か月の試行期間であること、3か月後に常用雇用への移行を検討すること)をきちんと説明し、Bさんの同意を得ることが必要です。

採用を決定したら、有期労働契約書または労働条件通知書を作成してBさんに交付します。トライアル雇用期間中の労働条件(賃金・労働時間・休日等)を明記します。

ステップ3:雇入れ日から2週間以内に実施計画書を提出する(最重要)

Bさんが雇入れの初日を迎えたら、Aさんはその日から2週間以内(厳密には14日以内)に管轄のハローワークに「トライアル雇用実施計画書」を提出しなければなりません。

この2週間の期限は制度の中で最も厳しい期限で、1日でも過ぎると助成金を受け取る資格がなくなります。実施計画書の書式は厚生労働省の公式サイトからダウンロードできます(「トライアル雇用助成金 申請様式ダウンロード」で検索するか、後述の出典一覧のURLから入手してください)。

実施計画書に記載する主な内容は次の通りです。

最後の「常用雇用移行の判断基準」は、競合記事でほとんど触れられていない重要な記載事項です。3か月の試行期間を経て正式採用するかどうかを何をもって判断するのか、実施計画書に「業務指示の理解度」「勤怠の安定性」「接客クオリティの向上」など具体的な指標を3つ以上書いておくことを、複数の専門家がすすめています。これは後のトラブル防止にもなります。

ステップ4:トライアル雇用の実施(3か月間)

BさんはAさんの飲食店でホールスタッフとして働き始めます。この期間中の法的な位置づけは「有期労働契約による雇用」です。3か月間の有期雇用契約ですが、通常の有期雇用と何ら変わらない労働条件が適用されます。

週30時間以上の所定労働時間で働くBさんは、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入義務を満たします。仮にAさんが個人事業主で従業員が5名以下の業種(飲食店は対象になる場合があります)でも、1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上(週30時間以上が目安)であれば、健康保険・厚生年金への加入が必要です。雇用保険については、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあれば加入義務があります。トライアル雇用期間中であっても社会保険の適用は通常通りです。

賃金については、最低賃金以上であれば制度上の下限制限はありませんが、通常の採用と同等水準の賃金を設定することが実務上望ましいとされています。トライアル雇用期間だからという理由で通常より大幅に低い賃金を設定すると、雇用契約の内容として問題が生じる可能性があります。

ステップ5:3か月後に常用雇用移行か否かを判断する

3か月の試行期間が終了する前に、AさんとBさんが話し合い、その後の雇用について決定します。

Aさんが「Bさんと引き続き働きたい」と判断し、Bさんも継続を希望する場合は、有期雇用契約を終了し、無期労働契約(常用雇用)に移行します。この場合、新しい雇用契約書を作成し、Bさんに交付します。

一方、AさんがBさんを常用雇用に移行しないと判断した場合、または反対にBさんが別の職を選ぶと決めた場合も、それは制度上許容されています。トライアル雇用助成金の要件は「無期雇用への移行を前提としてトライアル雇用を実施すること」ですが、移行しなかったとしても既に支給された助成金を返還する義務が生じるわけではありません(ただし、最初から移行させないつもりでトライアル雇用を繰り返すような不正利用は認められません)。

常用雇用移行を事業主側から断る場合の実務的な対処法については、後述の続きで詳しく解説します。

ステップ6:トライアル雇用終了日の翌日から2か月以内に支給申請書を提出する

3か月のトライアル雇用が終了したら、Aさんは「トライアル雇用結果報告書兼支給申請書」を管轄のハローワークまたは都道府県労働局に提出します。提出期限はトライアル雇用終了日の翌日から2か月以内です。

この書類には、3か月間の実就労日数・実支払い賃金・常用雇用移行の有無などを記載します。就労日数が予定日数を下回っていた月がある場合は、按分計算の対象になります。

Bさんが3か月間フルに就労した場合の支給額は次の通りです。Bさんはひとり親ではないため、一般の月4万円が適用されます。

4万円 × 3か月 = 12万円

これがAさんが受け取る助成金の総額です。支給申請書の審査を経て、ハローワークまたは都道府県労働局から指定口座に振り込まれます。

この1ケースを通じて、トライアル雇用助成金の申請の流れ全体をイメージしていただけたと思います。2か月分の就労が予定を下回った場合の計算例、対象者の類型ごとの判断方法、複数名を同時にトライアル雇用する場合の扱い、申請書類の正式名称と取得先、よくある失敗パターンと対策など、実務に直結する情報はこの続きで詳しく解説します。

ここから先は、申請に直結する実務です。

一般トライアルコースの対象者7類型を個別に確認する

一般トライアルコースの対象となる求職者は、ハローワーク等から紹介を受けた時点で、以下の7類型のいずれかに該当する必要があります。

類型1:繰り返し転職・離職している者

紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上の離職または転職を繰り返している者です。転職回数が多いことが採用のネックになっている求職者がこれに当たります。

具体例としては、直近2年間に3社を渡り歩いた30代の会社員、短期の仕事を複数こなしてきた40代のフリーランスなどが挙げられます。ハローワークの担当窓口は、履歴書・雇用保険の記録等をもとに類型判断を行います。

類型2:長期離職している者

離職期間が1年を超えており、その間に就労実績がない者です。求職期間が長引いた方、病気療養後の復職を目指す方などが該当します。

注意点として、「離職していない期間」ではなく「無就業の期間」が1年超であることが必要です。アルバイトや短期雇用が混在している場合は、ハローワークの窓口で個別に確認してください。

類型3:妊娠・出産・育児を理由に離職した者

妊娠・出産・育児を理由として離職した者であって、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている者です。「育休明けに復職したが直後に退職した」というケースとは異なり、育児を理由に退職した後、継続して安定した職に就けていない状態が1年超続いていることが条件です。

無料サンプルで取り上げたBさんがこの類型に当たります。飲食業での採用が難しいと感じている女性の再就職を支援する文脈で、非常によく使われる類型です。

類型4:若年の不安定就労者

昭和43年4月2日以降に生まれた者で、現在も安定した職業に就くことなく、かつハローワークや自治体の就労支援機関から個別支援を受けている者です。

生年月日による区分を設けている理由は、制度制定時に「若年層」の基準を設けたものが現在も維持されているためです。実務上は50代半ばまでが対象となり、「若年」という言葉の印象より対象範囲が広くなっています。

類型5:特別な配慮を要する者

以下のいずれかに該当する者です。

この類型に当てはまる求職者をひとり親として雇い入れた場合は、支給額が月4万円ではなく月5万円になります。

類型6:ウクライナからの避難民

令和4年5月30日以降に対象に追加された類型です。ウクライナの情勢を踏まえ、日本に避難してきた方の就労支援として設けられました。

類型7:補完的保護対象者

令和5年12月1日以降に対象に追加された類型です。難民認定は受けていないものの、本国への送還が困難と判断されて「補完的保護」が認定された者が対象です。

事業主が満たさなければならない要件の全項目

一般トライアルコースで助成金を受けるためには、事業主側が複数の要件をすべて同時に満たす必要があります。このうち1つでも欠けると不支給になります。

雇用保険の適用事業所であること

トライアル雇用助成金は、雇用保険の被保険者を雇う事業所を前提としています。つまり、雇用保険の適用事業所でなければ受給できません。

個人事業主の場合、従業員を1人でも雇い入れると原則として雇用保険の適用事業所になります。ただし農林水産業の一部は暫定任意適用事業所という扱いがあり、加入していない場合もあります。

初めて人を雇う個人事業主が採用日(雇入れ日)から10日以内にハローワークで「適用事業所設置届」を提出し、雇用保険の加入手続きを取ることが先決です。この手続きが完了していないと、トライアル雇用助成金の申請資格が生じません。

ハローワーク等の紹介で雇い入れること

事業主が独自に採用した人物、知人・友人からの紹介で採用した人物、自社のウェブサイトや求人サイトを通じて直接応募してきた人物は、たとえ対象類型に当てはまる求職者であっても、トライアル雇用助成金の対象にはなりません。

紹介できるのはハローワーク(公共職業安定所)と、厚生労働大臣の許可・届出を受けた民間の職業紹介事業者です。紹介状が発行されていることが証拠になります。

対象者を過去3年間に雇用したことがないこと

同一の求職者を過去3年以内にトライアル雇用または通常の雇用で採用していた事業主は、その人物について再度トライアル雇用助成金を受けることができません。一度雇用した人物を改めてトライアル雇用で採用するために助成金を使い回すことを防ぐための要件です。

事業主都合による離職者を過去6か月間に出していないこと

トライアル雇用の対象者を雇い入れる直前の6か月以内に、同一の事業所内で「事業主都合」による離職(解雇・整理解雇・勧奨退職を含む)を出していた場合は、その事業所での助成金受給ができません。

自己都合退職・定年退職・やむを得ない事情による退職は、この要件の「事業主都合」には該当しません。ただし、事業主都合か自己都合かの判断基準がわからない場合は、事前にハローワークに確認することをすすめます。

3親等以内の親族ではないこと

事業主の配偶者、子、親、祖父母、兄弟姉妹、孫、おじ・おば、甥・姪など3親等以内の親族を対象者として雇い入れる場合は、助成金の対象になりません。これは形式的なトライアル雇用を防ぐための要件です。

個人事業主の場合、家族を一緒に働かせているケースが多いですが、そのような方を「新たにトライアル雇用した」として申請しても認められません。

派遣・請負形態での雇い入れでないこと

労働者派遣契約や業務請負契約を通じた就労は、対象外です。あくまで事業主と対象者が直接雇用関係を結ぶ形態でなければなりません。

不正受給歴がないこと

過去5年以内に雇用関係助成金(トライアル雇用助成金に限らず、各種の雇用助成金全般)の不正受給により支給取消・返還命令を受けた事業主は、助成金を受け取ることができません。

労働保険料を滞納していないこと

労働保険料(雇用保険料+労働災害補償保険料)を滞納している状態では申請できません。支給申請の時点で完納していることが必要です。

支給額の詳細と計算例

一般トライアルコースの基本額と按分

一般トライアルコースの支給額の基本は次の通りです。

支給期間は原則3か月で、総額上限は通常で12万円、ひとり親で15万円です。

ただし、月の実就労日数が予定就労日数に比べて少ない場合は、以下の按分計算が適用されます。

就労率 A = 実際の就労日数 ÷ 月間の予定就労日数

就労率通常(月額)ひとり親(月額)
A ≧ 75%4万円5万円
75% > A ≧ 50%3万円3万7,500円
50% > A ≧ 25%2万円2万5,000円
25% > A > 0%1万円1万2,500円
A = 0%(欠勤ゼロ就労)0円0円

計算例:就労率が変動した3か月間

月22日勤務が予定されている通常対象者が、実際には1か月目22日・2か月目14日・3か月目19日出勤したケースで計算してみます。

1か月目:22日 ÷ 22日 = 100%(75%以上)→ 4万円

2か月目:14日 ÷ 22日 ≒ 63.6%(50%以上75%未満)→ 3万円

3か月目:19日 ÷ 22日 ≒ 86.4%(75%以上)→ 4万円

3か月合計:4万円 + 3万円 + 4万円 = 11万円

通常ならば12万円を受け取れるところ、2か月目に体調不良等で就労率が低下したため1万円少ない11万円になります。

月の予定就労日数の計算方法は、雇用契約で定めた週の所定労働日数をもとに暦上の週数で換算します。月によって予定日数が変わるため、事業主はトライアル雇用実施計画書に月ごとの予定就労日数を正確に記載しておくことが重要です。

障害者トライアルコースの計算例

精神障害者(Cさん)を週5日・1日8時間(週40時間)のフルタイムで6か月間トライアル雇用するケースを計算します。

前半3か月:月8万円 × 3か月 = 24万円

後半3か月:月4万円 × 3か月 = 12万円

6か月合計:36万円

Cさんが月に一度、体調の都合で1〜2日欠勤した場合でも、予定就労日数の75%以上を超えていれば支給額は変わりません。月22日予定のうち実績20日であれば、20 ÷ 22 ≒ 90.9%で「75%以上」の区分に入るため、前半3か月は8万円満額が支給されます。

障害者短時間トライアルコースの計算例

発達障害のあるDさんを週15時間(月〜金、1日3時間)で開始し、最終的に週20時間以上を目指す12か月のコースを計算します。

全12か月を通じて月4万円が上限のため:

4万円 × 12か月 = 48万円(最大)

ただし、週の労働時間が20時間以上に達した段階でこのコースの対象から外れ、通常の雇用として扱われます。短時間コースの終了後に引き続き雇用を継続したい場合は、通常の無期雇用契約への移行を検討してください。

若年・女性建設労働者上乗せコースの計算例

中小建設事業主のEさん(従業員20名・資本金5,000万円以下の工務店)が、25歳の男性Fさんを大工見習いとして一般トライアルコースで採用し、若年・女性建設労働者上乗せコースを併用する場合を計算します。

一般トライアルコース(Fさんは長期離職者に該当):月4万円 × 3か月 = 12万円

若年・女性建設労働者コース(上乗せ):月4万円 × 3か月 = 12万円

合計:24万円

上乗せコースを受けるには、一般トライアルコースの支給決定が前提です。また、Fさんが従事する業務が建設業法に定める29業種の施工に実際の半分超(勤務時間の50%超)充てられていることが確認されます。設計・積算・事務などの業務が主体になっている場合は対象外になる可能性があります。

申請手続き6ステップ詳細:書類・窓口・期限

ステップ1:トライアル雇用求人をハローワークに登録する

まずハローワークに求人を出し、「トライアル雇用での採用を希望する」という意思を明示します。

窓口:管轄のハローワーク(全国500か所以上)またはハローワークインターネットサービス(求人者マイページ)

手続き:求人票を提出し、「トライアル雇用」欄に「希望する」と記載

費用:無料

注意事項:通常の求人票との併用も可能。同じ求人でトライアルと通常採用の両方に対応できます。

ハローワークへの求人登録は、窓口(予約不要・先着順が多い)または郵送・オンラインで受け付けています。インターネットサービスから仮登録→ハローワークで確認という流れを採る地域もあります。求人票の記載のコツとして、具体的な業務内容・必要なスキル・勤務時間・賃金を詳細に書くほど、ミスマッチを防ぎやすくなります。

ステップ2:ハローワークから求職者の紹介を受ける

ハローワークが求人票に合った求職者に求人を紹介し、求職者が面接を希望した場合に「紹介状」が発行されます。

窓口:ハローワーク(求職者担当窓口)

書類:紹介状(求職者がハローワークから受け取り、面接の際に持参)

注意事項:紹介状は助成金受給の証明になります。紛失しないよう保管してください。

ハローワークのオンライン紹介(求人者マイページと求職者マイページを接続する方式)を使う地域では、電子的に紹介が完了することもあります。その場合でも紹介の記録(受付票など)を保存しておいてください。

ステップ3:採用決定・雇用契約締結

紹介状を持参した求職者と面談を行い、採用を決定します。

必要書類(事業主が作成・交付する書類):

注意事項:トライアル雇用は「有期労働契約」ですが、法的には通常の有期雇用と同じ扱いです。最低賃金法が適用されます。

ステップ4:雇入れから2週間以内に実施計画書を提出する

提出書類:トライアル雇用実施計画書(正式名称)

取得先:厚生労働省の公式サイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou_dl.html)またはハローワーク窓口

提出先:管轄のハローワークまたは都道府県労働局

提出期限:雇入れ日(トライアル雇用開始日)から起算して14日以内

記載事項:事業所名・対象者氏名・雇用開始日・終了予定日・所定労働時間・月間予定就労日数・業務内容・常用雇用移行の判断基準

この書類の提出が1日でも遅れると助成金受給の資格が失われます。雇入れ当日または翌日に手続きを開始することを強くすすめます。

電子申請も可能で、「電子政府の総合窓口(e-Gov)」から申請できる都道府県と、ハローワークの専用端末から申請できる地域があります。初めて申請する方は、ハローワーク窓口で担当者に確認してから申請方法を選ぶと確実です。

ステップ5:トライアル雇用の実施(原則3か月)

3か月間、対象者と一緒に働きます。この期間中は毎月・毎日の出勤簿を正確に記録してください。

必要書類(継続的に記録する書類):

これらの記録は支給申請時の添付書類になります。「紛失した」「記録が不正確」という状況は不支給の原因になるため、紙・電子問わず二重に保存しておくことをすすめます。

3か月が終了する前の段階で、常用雇用移行の可否を内部で検討し始めてください。実施計画書に記載した判断基準に照らして評価し、事業主と対象者の双方が纏まった判断をしておくことが、トラブルのない移行につながります。

ステップ6:終了後2か月以内に支給申請書を提出する

提出書類:トライアル雇用結果報告書兼支給申請書(正式名称)

取得先:厚生労働省の公式サイト(ステップ4と同じURL)またはハローワーク窓口

提出先:管轄のハローワークまたは都道府県労働局

提出期限:トライアル雇用終了日の翌日から起算して2か月以内

添付書類:

支給申請書の審査には通常数週間から数か月かかります。支給が決定されると、申請書に記載した振込口座に助成金が振り込まれます。

不支給になる主なケースと回避策

実施計画書を2週間以内に出さなかった

最も多い失敗パターンです。「後でまとめて手続きしよう」と後回しにしていたら期限を過ぎていた、というケースが複数報告されています。

回避策:採用が決まった日(雇入れ当日)に実施計画書の用紙を入手し、翌営業日にはハローワークに提出する、というルーティンを社内で決めておくことが有効です。

ハローワーク経由外で採用した

知人の紹介や、自社のSNSで見つけた求職者を採用した場合は対象外です。「採用が決まった後でハローワークに紹介状を発行してもらえばいい」と考える方がいますが、ハローワークはトライアル雇用の紹介状を遡って発行することはしません。

回避策:トライアル雇用助成金を使おうと考えた段階で、まず求人票をハローワークに出すことが大前提です。採用ルートの確認を採用プロセスの最初に必ず行ってください。

対象者が類型に当てはまらなかった

採用したい求職者が一般トライアルコースの7類型のいずれにも当てはまらないことが、申請後に判明するケースがあります。

回避策:ハローワークに求人票を出した段階で、紹介を受ける求職者がどの類型に当てはまるかを担当者と確認してください。紹介状発行時にハローワークが類型を確認していますが、事業主側も事前に確認しておくと安心です。

週の所定労働時間が30時間未満だった

一般トライアルコースの要件として、所定労働時間が週30時間以上(通常の労働者と同じ時間)でなければなりません。「週20時間のパートタイムでトライアル雇用したい」という場合は、一般コースでは対象になりません(障害者短時間コースは週10〜20時間未満が対象ですが、それは別コースです)。

回避策:求人票を作成する段階で週の所定労働時間を確認してください。30時間を下回る求人でのトライアル雇用は助成金の対象にならないことを理解した上で採用計画を立てましょう。

事業主都合離職者を出した後6か月以内に申請した

別の従業員を解雇や勧奨退職させてから6か月以内にトライアル雇用助成金を申請しても、対象外になります。

回避策:採用計画を立てる際に、過去6か月以内に事業主都合の離職者がいないかどうかを事前に確認してください。もしいた場合は、6か月後まで待ってからトライアル雇用を開始する計画に変更することが必要です。

支給申請書を2か月以内に出さなかった

終了後の申請期限を忘れていた、書類の整備が間に合わなかったというケースです。

回避策:トライアル雇用終了日をカレンダーに登録し、「終了から1か月後に書類を揃える」「1か月半後に提出する」というスケジュールをあらかじめ設定しておくことが有効です。

個人事業主・一人親方が初めて人を雇う場合の活用シナリオ

個人事業主もトライアル雇用助成金を受けられるか

結論から言えば、個人事業主でもトライアル雇用助成金を受けられます。法人格の有無は要件に含まれておらず、雇用保険の適用事業所であることが条件です。

ポイントとなるのは「雇用保険の適用事業所」としての登録手続きです。個人事業主が初めて人を雇う場合、その採用日(雇入れ日)から10日以内に管轄のハローワークで「適用事業所設置届」を提出し、雇用保険への加入手続きを行う義務があります。同時に「雇用保険被保険者資格取得届」で対象者の加入手続きも行います。

この手続きが完了していない状態でトライアル雇用を開始しても、助成金の対象外になります。初めて雇用する個人事業主の場合、「トライアル雇用助成金の申請」と「雇用保険の適用手続き」を同時進行で行う必要があることを頭に入れておいてください。

一人親方の特有の注意点

建設業で一人親方として働いてきた方が初めて人を雇う場合、雇用保険の加入は必要ですが、労災保険の特別加入(一人親方として入っていた保険)との関係に注意が必要です。従業員を年間100日以上雇う場合、一人親方としての労災保険特別加入は継続できません。その場合は「中小事業主等の特別加入」に切り替える必要があります。

トライアル雇用助成金の申請自体は一人親方の方でも可能ですが、雇用保険・労災保険の加入形態の変更が伴う場合があるため、採用を決める前に労働基準監督署またはハローワークに相談することをすすめます。

初めて雇う場面での具体的な活用シナリオ

飲食業の個人経営者が初めてアルバイトからパートスタッフとして採用するにあたり、「どんな人が長続きするかわからない」という不安を抱えている場面を想定します。

この場合、トライアル雇用を活用することで、3か月間の試行期間を設けながら最大12万円の助成を受けることができます。3か月後に双方が合意できれば無期雇用に移行し、合わなければ有期雇用の終了として双方が次に進む選択ができます。

「採用するかどうか迷っている」という状況で、試行的に働いてみてから正式採用するルートとして制度を使うことは、事業主・求職者の双方にとって合理的な選択です。

個人事業主特有の手続き上の落とし穴

個人事業主が初めてトライアル雇用助成金を使う場合によくある落とし穴は「適用事業所の番号」を取得していないまま申請しようとすることです。ハローワークに出す書類には雇用保険の事業所番号を記載する欄があります。事業所番号がない状態では書類を受理してもらえません。

採用を決めたら最初にすることは、ハローワークに連絡を入れて適用事業所の手続きを行うことです。これを先に終わらせれば、その後の申請手続きはスムーズになります。

トライアル期間中の労働条件・社会保険の実態

有期雇用契約としての法的位置づけ

トライアル雇用期間中の雇用は、労働基準法第14条に基づく有期労働契約です。契約期間は原則3か月(障害者短時間は最長12か月)で、契約書には開始日・終了日を明記する必要があります。

有期労働契約であっても、労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法は通常通り適用されます。「試用期間だから」という理由で最低賃金を下回る賃金を設定することは違法です。また、合理的な理由のない中途解雇は有期雇用でも認められないため、業務上の必要がない限り契約期間中に一方的に終了させることはできません。

賃金の設定について

制度上、賃金の下限は最低賃金以上であれば問題ありません。ただし、現実の実務では「通常の採用と同等の賃金」を設定する事業主が大多数です。

「トライアル中だから」という理由で大幅に低い賃金を設定すると、求職者が実際に仕事の合否を判断する機会を失う可能性があります(低賃金で採用されることに同意して入社したが、本来の賃金で採用されるならば入社しなかった、という状況が生じうるため)。ミスマッチを防ぐという制度本来の目的に沿って、実際の業務に見合った賃金を最初から設定することが望ましいです。

社会保険の加入義務

トライアル雇用期間中でも、社会保険(健康保険・厚生年金)と雇用保険の加入義務は通常の雇用と変わりません。

週30時間以上の所定労働時間で雇い入れる場合(一般トライアルコースの要件)、健康保険・厚生年金への加入義務が生じます。ただし、個人事業主(非法人)が任意適用事業所の場合は例外があります。具体的には、飲食・美容・農業等の一部業種の個人事業所で従業員5人未満の場合は、健康保険・厚生年金の強制適用から外れています(ただし任意加入は可能)。

雇用保険については、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあれば加入義務が発生します。トライアル雇用(週30時間以上・3か月間)は必ず雇用保険の加入対象です。

加入手続きを怠ると、助成金の要件(雇用保険適用事業所での雇用)を満たさなくなるリスクがあります。必ず採用日(雇入れ日)から速やかに加入手続きを行ってください。

有給休暇の発生

トライアル雇用期間中でも、労働基準法に基づく年次有給休暇の取得権が発生します。雇い入れの日から6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合に10日間の有給休暇が付与されます。トライアル雇用期間が3か月でもこの6か月の起算は開始されるため、その後常用雇用に移行した場合は、トライアル期間も通算して6か月後に有給休暇が発生します。

常用雇用移行の実務:移行する場合・しない場合

移行するとはどういうことか

トライアル雇用期間が終了し、事業主と対象者双方が継続雇用を希望する場合、有期労働契約を終了させ、新たに無期労働契約(期間の定めのない雇用)を締結します。

法的な手順としては次のようになります。

  1. 有期労働契約の期間満了日に契約が終了する(更新しない)
  2. 翌日以降、新たな無期労働契約を締結する
  3. 労働条件通知書または雇用契約書を新たに作成・交付する

新しい雇用契約書には、「無期雇用契約(期間の定めなし)」と明記します。この段階で試用期間を設けることも可能ですが、トライアル雇用期間中に十分な試行ができているため、改めて長期の試用期間を設ける必要は通常ありません。

実施計画書に記載した「常用雇用移行の判断基準」に照らして、事業主が評価した結果をトライアル雇用結果報告書に記載します。この記載内容が助成金審査の参考にもなります。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)との連動

トライアル雇用終了後に無期雇用に移行した場合、さらにキャリアアップ助成金(正社員化コース)との連動で追加の助成を受けられる可能性があります。

キャリアアップ助成金正社員化コースは、有期雇用労働者を正規雇用(正社員)に転換した場合に事業主に支給される助成金です。令和8年度(2026年度)の支給額は、中小企業が有期雇用から正規雇用に転換した場合、通常で1人あたり40万円(1期分)、重点支援対象者の場合は最大80万円(40万円×2期)が目安です。ただし要件・加算額は毎年度改定されることがあります。

トライアル雇用助成金とキャリアアップ助成金を両方活用する場合、それぞれを別の助成金として受給できる可能性がありますが、個々の要件確認が必要です。具体的な合計額は要件・対象者の区分・その年度の改定内容によって大きく異なるため、実際の金額は最新の実施要領またはハローワーク・社会保険労務士に確認してください(2026年6月27日時点。要件・額は変更の可能性があります)。

重要な注意点として、「最初から正社員として採用します」と明言してトライアル雇用を行った場合、キャリアアップ助成金の「有期雇用からの転換」という要件を満たさないとして不支給になる可能性があります。「3か月間試して合意できたら正社員化する」という段階を踏む必要があります。

移行を断る場合の実務的な対応

「3か月間働いてみたが、業務能力・勤怠・コミュニケーション等の面で常用雇用への移行が難しいと判断した」という場合、事業主はトライアル雇用を延長しない(常用雇用への移行をしない)という選択ができます。

この場合、事業主は対象者に対して、なぜ常用雇用に移行しないかを誠実に伝えることが実務上の原則です。法的には有期雇用の期間満了による終了であり、解雇とは異なります。

具体的な伝え方の一例として、「3か月間の試行期間を経て判断しましたが、現時点では継続的な雇用のご縁とすることが難しい状況です。お互いにとって新しい機会を模索することをおすすめします」という形で、できるだけ早い段階(終了日の1か月以上前が望ましい)に話し合いの場を設けることをすすめます。

ハローワークは、トライアル雇用の結果が「移行なし」だったとしても、助成金を遡って取り消すことはしません。制度の設計上、移行しないこと自体はペナルティの対象ではありません。ただし、同じ対象者を繰り返しトライアル雇用に誘って助成金だけ受け取り、移行する意図がなかったというケースは不正受給と見なされる可能性があります。

移行を断る際にトラブルが懸念される場合は、社会保険労務士や地域の労働相談窓口(都道府県労働局・総合労働相談コーナー)に相談することをすすめます。

対象者側から移行を断る場合

対象者であるBさん側から「他の会社に就職することにした」「自分の業種を変えたい」などの理由で常用雇用への移行を希望しない場合も、有期雇用の期間満了として終了します。

この場合でも、雇用期間中に就労した分の助成金は通常通り支給されます。Bさんの意思による終了であっても、事業主への助成金支給には影響しません。

よくある誤解とつまずきポイント

誤解1:「試用期間」と「トライアル雇用」は同じだ

試用期間は通常の雇用契約の一部(本採用前の観察期間)で、法的には無期雇用の延長上に設けられることが多いです。これに対してトライアル雇用は3か月の有期労働契約として独立した雇用形態であり、制度の根拠・法的性質・助成金の仕組みがまったく異なります。

試用期間付きで採用した後にトライアル雇用を適用しようとしても認められません。試用期間中の採用か、最初からトライアル雇用として採用するかは、採用時点で明確に決めておく必要があります。

誤解2:助成金が出るから、対象者に最低賃金水準の賃金でいい

先述の通り、賃金は最低賃金以上であれば助成金の要件上は問題ありませんが、事業主・求職者双方の評価が適正にできる環境を整えることが制度の趣旨です。通常採用と同等の賃金水準でないと、優秀な求職者が他の採用先を選ぶことにもなりかねません。

誤解3:トライアル雇用の求人にはハローワーク経由でしか紹介できない

ハローワーク以外にも、厚生労働省が許可または届出を認めた民間の職業紹介事業者(人材紹介会社・転職エージェント等)からの紹介でもトライアル雇用は可能です。民間紹介会社経由の場合も紹介状が発行されます。

ただし、求人票をハローワークに出した上で民間紹介事業者にも同時に依頼する場合は、どちらの経由で採用したかを正確に記録しておく必要があります。

誤解4:トライアル雇用は3か月間自動的に継続される

トライアル雇用期間は「原則3か月」ですが、双方の合意によって1か月・2か月での終了(常用雇用への早期移行)も可能です。3か月経過前に「お互いに合う」と判断できた場合、早期に無期雇用に移行しても問題ありません。その場合の助成金は実施した月数分になります。

誤解5:障害者コースは福祉的雇用専門の制度だ

障害者トライアルコース・短時間コースは、障害のある方を試行的に雇用してミスマッチを防ぐための制度であり、「福祉的雇用」(就労継続支援A型・B型などの福祉事業所での就労)とは別です。通常の事業所(一般企業・個人事業主を問わず)で障害のある方を採用する際に使えます。

ハローワーク求人登録の実際の手順

窓口・オンラインの使い分け

トライアル雇用の求人を出す方法は2つあります。

1つ目は管轄のハローワーク窓口への直接来庁です。担当者と直接話しながら求人票を作成できるため、初めてトライアル雇用を活用する事業主には窓口利用が安心です。特に「どの類型に当てはまる求職者を紹介してもらえるか」「求人票にはどう書けばよいか」を具体的に相談できます。

2つ目はハローワークインターネットサービス(求人者マイページ)からのオンライン登録です。マイページ登録後に求人票を作成・送信し、ハローワーク側で確認・公開される流れです。オンライン登録の場合も、初回は窓口での確認が必要な地域があります。

求人票の記載のコツ

トライアル雇用に適した求職者に「この求人は自分に合うかもしれない」と感じてもらえる求人票を書くためのポイントを紹介します。

仕事内容の欄には、初日からできることと、研修・学習が必要なことを分けて書きます。「未経験の方でも始められる業務から始め、徐々にスキルアップしていただきます」という一文があると、経験が浅い求職者が応募しやすくなります。

賃金の欄には、研修期間中の賃金(設定している場合)と通常の賃金を区別して書きます。トライアル雇用期間中の賃金と、常用雇用移行後の賃金が異なる場合は、その旨を明記してください。

トライアル雇用についての欄には「トライアル雇用(原則3か月)での採用を前提にしています。試行期間を経て双方が合意した場合、無期雇用契約での継続を予定しています」と書くと、求職者が制度を理解した上で応募できます。

ハローワークの窓口での見分け方

ハローワークの求人票には「トライアル雇用」と記載されており、通常の求人と区別できます。一般の求人票一覧で「トライアル雇用」のフィルターをかけて検索することも可能です。

事業主側は「事業主コーナー」(または「採用担当者向け窓口」)で手続きを行います。個人の求職者が利用する一般の窓口とは別になっている場合がほとんどです。予約が必要な場合もあるため、初訪問の前に電話で確認することをすすめます。

令和6〜8年度の制度変更点の整理

令和4〜5年度の直近の変更

トライアル雇用助成金の基本的な枠組みは令和6年4月1日版の実施要領・支給要領で安定しています。支給額・コース区分・申請手続きに大きな変更はなく、直近の主要な変更は以下の2点です。

令和4年5月30日より「ウクライナからの避難民」が一般トライアルコースの対象者類型に追加されました。

令和5年12月1日より「補完的保護対象者」が対象者類型に追加されました。出入国管理及び難民認定法の改正に伴い、難民認定を受けていないが本国に送還できない事情がある外国人に「補完的保護対象者の認定」制度が設けられ、この方々もトライアル雇用助成金の対象になりました。

令和8年度(2026年度)の状況

2026年6月27日時点で、厚生労働省のウェブサイトでは令和6年4月1日版の実施要領が最新として公開されています。支給額・要件・手続きに関しては現時点で大きな改定は確認されていません。

ただし、雇用関係助成金全般については毎年度の予算編成や労働市場の状況に応じて要件が見直されることがあります。申請前は必ず最新の実施要領を厚生労働省の公式サイトまたはハローワーク窓口で確認してください。

採用後に要件漏れが発覚した場合の相談先

採用してから実施計画書を提出する前に「要件に合っているかどうかわからなくなった」という場合は、速やかに管轄のハローワークに連絡してください。事前に相談することで、要件に合っているかどうかの確認と、もし合っていない場合の代替案(別コースの検討等)を一緒に考えてもらえます。

要件漏れに気づかないまま申請し、後で不支給通知を受け取った場合でも、審査結果への異議申し立て(不服申し立て)を行う手続きがあります。ただし異議が認められるケースは限定的で、最初から正確な要件確認と書類準備をすることが最善の対策です。

ハローワークの担当窓口を探す方法は、厚生労働省のウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou.html)から「管轄の労働局・ハローワーク」のリンクをたどるか、「ハローワーク 〔都市名〕」で検索すると地域の窓口が見つかります。

障害者短時間トライアルコースが個人事業主に特に有用なケース

週10〜20時間未満という短時間雇用から始める意義

精神障害や発達障害のある方は、体調管理や環境適応に時間がかかる場合があります。最初から週30時間以上のフルタイムで働き始めることが難しい方も少なくありません。

障害者短時間トライアルコースは、週10時間以上20時間未満の短い時間から働き始め、最終的に週20時間以上を目指すという段階的な雇用を最長12か月かけて実現するためのコースです。

個人事業主にとって特に有用なのは、「少ない時間から仕事を覚えてもらいながら、職場の環境に慣れてもらう」という段階的な採用ができる点です。週15時間から始めて半年後に週25時間、さらに週30時間に増やすという柔軟な働き方の設計が、このコースでは可能です。

具体的な適用シナリオ

たとえば、週2日・1日5時間(週10時間)で開始し、3か月ごとに徐々に時間を増やして最終的に週20時間以上に到達するという計画を立てた場合、最長12か月にわたって助成金を受けながら採用プロセスを進めることができます。

月4万円 × 12か月 = 最大48万円

この助成額は、採用のリスクと費用を抑えながら障害のある方を職場に迎える制度として、人員体制を慎重に検討する個人事業主にとって実用的な選択肢です。

一方で、「週20時間以上になった段階でこのコースは終了する」という点には注意が必要です。その後は通常の雇用として無期雇用に移行するか、通常の障害者コースを経由した採用として扱われます。移行のタイミングと手続きについては、ハローワークの担当者に事前に確認しておくことをすすめます。

建設業における若年・女性建設労働者トライアルコースの実務

上乗せコースを受けるための前提条件の全体像

若年・女性建設労働者トライアルコースは単独では申請できません。必ず一般トライアルコースまたは障害者トライアルコースとの「同時申請・同時実施」が必要です。

前提条件を箇条書きで整理します。

最後の「実際の勤務時間の半分超が現場作業」という要件は見落とされやすいポイントです。大工見習いとして採用しても、実態は工務店の電話受付や書類整理が中心になっていると、この要件を満たさなくなります。

上乗せ後の支給額と申請タイミング

一般トライアルコース(月4万円×3か月=12万円)に上乗せコース(月4万円×3か月=12万円)を加えると、1人あたり最大24万円の助成を受けることになります。

上乗せコースの支給申請は、一般トライアルコースの支給申請と同時に、同じ申請書で行うことができます。提出窓口・提出期限(終了日翌日から2か月以内)は同様です。

申請チェックリスト(提出タイミング別)

トライアル雇用開始前に揃えるもの

チェック項目内容・注意事項
ハローワークへの求人票提出「トライアル雇用希望」を明示。費用なし
雇用保険の適用事業所確認初めての雇用なら「適用事業所設置届」の提出が先決
対象者の類型確認7類型のいずれかに該当するかをハローワーク担当者と確認
過去6か月の事業主都合離職の有無確認事業主都合で離職者を出していた場合は申請不可
3親等以内の親族でないことの確認該当する場合は対象外

雇入れ日から2週間以内に行うこと

チェック項目内容・注意事項
トライアル雇用実施計画書の提出最重要。1日でも遅れると不支給
様式入手先厚生労働省公式サイトまたはハローワーク窓口
提出先管轄ハローワークまたは都道府県労働局
雇用保険被保険者資格取得届の提出採用日翌日から10日以内(雇用保険加入手続き)

トライアル雇用期間中に継続して行うこと

チェック項目内容・注意事項
出勤簿の毎日の記録支給申請時の添付書類になる
賃金台帳の月次管理月ごとの支払い賃金を正確に記録
給与明細の本人交付・控え保管交付した証拠になる
社会保険加入の確認健康保険・厚生年金・雇用保険の加入状況

トライアル雇用終了後2か月以内に行うこと

チェック項目内容・注意事項
トライアル雇用結果報告書兼支給申請書の提出終了日翌日から2か月以内が絶対期限
出勤簿の写し全期間分
賃金台帳の写し全期間分
支給決定通知書の写し実施計画書受理後に受け取った書類
紹介状の写しハローワークから発行されたもの
常用雇用移行の有無の記載移行した場合は新たな雇用契約書の写しも添付

よくある質問(FAQ)

Q1:トライアル雇用中に対象者を解雇することはできますか?

有期労働契約の中途解雇は、「やむを得ない理由がある場合」に限り認められます(労働基準法第17条)。単なる業務能力の問題や「思っていたのと違う」という理由での中途解雇は認められません。3か月の期間満了まで雇用を継続し、期間満了時に常用雇用移行をしないという判断が原則的な対応です。

どうしても中途での終了が必要な場合は、社会保険労務士または都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。なお、中途での終了を行った場合は助成金の支給対象月がその分減ります。

Q2:3か月のトライアルを延長することはできますか?

一般トライアルコースは原則3か月です。事業主の希望により短縮することは可能ですが、延長は原則として認められていません(障害者コースは最長6か月、短時間コースは最長12か月という別枠があります)。

「3か月ではまだ判断できない」と感じる場合は、常用雇用に移行した後にキャリアアップ助成金との組み合わせを検討するか、試用期間を含む通常の有期雇用で追加期間を設けることを検討してください。

Q3:複数の求職者を同時にトライアル雇用できますか?

同時に複数名をトライアル雇用することは可能です。各人について個別に実施計画書を提出し、個別に支給申請を行います。支給額はそれぞれの対象者について計算されますので、2名を同時にトライアル雇用すれば最大24万円(一般コース、2名×12万円)を受け取れる計算になります。

ただし、複数名分の書類管理・出勤簿記録・賃金台帳の整備が必要になるため、管理業務が増えることは念頭に置いてください。

Q4:パートタイムの採用でもトライアル雇用を使えますか?

一般トライアルコースは週30時間以上の所定労働時間が要件であるため、一般的なパートタイム(週20〜25時間程度)は対象外です。

ただし、障害者短時間トライアルコースは週10〜20時間未満から利用できます。また、障害者トライアルコースは所定労働時間の下限が「週20時間以上」(一般コースより低い設定)で、精神障害のある方の週20〜30時間未満の雇用でも適用できる場合があります。採用したい方の状況に応じてハローワークに相談してください。

Q5:社会保険労務士に申請を頼んだほうがいいですか?

トライアル雇用助成金の申請書類の作成・提出代行は、社会保険労務士法に基づく社会保険労務士の業務範囲です。本記事はあくまで情報提供を目的としており、個別の申請代行は行いません。

初めて申請する場合や書類の記載に不安がある場合は、社会保険労務士に相談することをすすめます。助成金申請の経験が豊富な社会保険労務士は、書類の正確な記載方法・提出タイミング・要件の確認を一貫してサポートしてくれます。社会保険労務士の紹介は、都道府県社会保険労務士会または全国社会保険労務士会連合会(https://www.shakaihokenroumushi.jp/)から探すことができます。

ハローワーク窓口でも書類の書き方に関する相談を受け付けていますが、代行はしません。

Q6:トライアル雇用をした結果、常用雇用に移行しなかった場合、助成金は返さなければいけませんか?

移行しなかったこと自体は返還の理由になりません。トライアル雇用を実施した期間に対応する助成金は受け取ることができます。ただし、最初から移行する意図がなく、助成金だけを受け取る目的でトライアル雇用を繰り返すことは不正受給と見なされる可能性があります。

Q7:トライアル雇用中の労災事故はどうなりますか?

トライアル雇用期間中も、対象者は雇用保険・労災保険の適用を受けます。労災事故が発生した場合は、通常の雇用と同様に労災保険の給付手続きを行ってください。手続きの窓口は管轄の労働基準監督署です。

出典一覧

本記事の主要数値・要件は以下の一次情報から確認しています。

出典URL確認日
厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou.html2026-06-27
厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/shougai_trial.html2026-06-27
厚生労働省「トライアル雇用制度(事業主向け)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page06_00002.html2026-06-27
厚生労働省「トライアル雇用助成金 申請様式ダウンロード」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou_dl.html2026-06-27
愛知労働局「若年・女性建設労働者トライアルコースについて」https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/newpage_01631.html2026-06-27
補助金ポータル「トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)」https://hojyokin-portal.jp/columns/trial-kensetu2026-06-27
全国社会保険労務士会連合会(社会保険労務士紹介)https://www.shakaihokenroumushi.jp/2026-06-27

免責事項

本記事は2026年6月27日時点の公開情報を元に作成した情報提供を目的としたものです。制度の金額・要件・手続きは改定されることがあります。申請前に必ず厚生労働省の公式サイトまたは管轄のハローワークで最新情報をご確認ください。

本記事の内容は一般的な情報提供にとどまるものであり、個別の申請代行・書類作成の代行・法律・税務・労務に関する個別助言ではありません。申請の判断・書類の作成・手続きの遂行については、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

雇用関係助成金の申請書類の作成代行・手続き代行は社会保険労務士法第2条に基づく社会保険労務士の業務範囲に含まれます。本記事が提供するのは制度の概要と申請の流れに関する情報であり、個別案件への適用可否については読者ご自身の責任でハローワーク・労働局・社会保険労務士に確認してください。