特定求職者雇用開発助成金(特開金)の全コース完全ガイド — 高齢者・障害者・母子家庭の母などを採用した事業主が最大240万円を受け取るまでの実務手順
本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・受付期間はいずれも変更されることがあるため、申請前に必ず公式サイトおよびハローワークで最新情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の申請書類の作成代行・手続きの代行は行いません。社会保険労務士法に基づく個別手続きの代行は社会保険労務士にご相談ください。
この記事が整理すること
高齢者や障害者、ひとり親家庭の親などを採用しようとしている事業主の方が、よく直面する疑問があります。「助成金があるとは聞いたが、具体的にいくらもらえるのかわからない」「どこに申請すればいいのかわからない」「紹介状が必要と聞いたが、その前に面接してしまってよかったのか」という声です。
この記事は、特定求職者雇用開発助成金(通称:特開金)の全コースを整理します。具体的には次の疑問に答えます。
まず、4つのコースの対象者・支給額・助成期間の違いを比較表で整理します。次に、採用から受給完了までの流れを5つのステップに分けて説明します。また、ハローワーク紹介が絶対条件である理由と、その順序を間違えると助成金がゼロになるメカニズムを解説します。さらに、2026年に行われた制度変更のうち、実務に影響するものを3点ピックアップします。最後に、他の助成金と組み合わせる場合の優先順位とトライアル雇用との連携方法についても説明します。
対象読者は、従業員を採用しようとしている中小企業・個人事業主の方で、「採用コストをできるだけ抑えたい」「ハローワークを活用したい」「雇用助成金という言葉は知っているが何から始めればよいかわからない」という方に向けて書いています。
制度の全体像
特定求職者雇用開発助成金とは何か
特定求職者雇用開発助成金は、就職が難しい特定の区分の方をハローワーク等の紹介で採用した事業主に対して、国が賃金の一部を補填する助成金です。通称「特開金(とくかいきん)」と呼ばれています。
制度の目的は、企業単独では採用・定着が難しいとされる人材層の雇用機会を広げることです。高齢者・障害者・母子家庭の親などは、一般の採用市場では就職に不利な状況に置かれやすいため、企業が積極的に採用する際の経済的インセンティブとして機能しています。
助成金は「採用後に支給される」形式のため、採用前の初期費用の補填ではありません。採用が決まり、一定期間雇用を継続したことが確認されて初めて支給が始まります。これを理解しておくことが、資金繰りの見通しを立てる上で重要です。
2026年度時点のコース構成
2026年度時点で、特定求職者雇用開発助成金には4つのコースがあります。かつて存在した「成長分野等人材確保・育成コース」は令和7年度(2025年度)限りで廃止されており、現在は以下の4コースが対象です。
- 特定就職困難者コース(最も基本的なコース・最大支給額240万円)
- 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース(最大120万円)
- 中高年層安定雇用支援コース(2025年4月新設・最大60万円)
- 生活保護受給者等雇用開発コース(最大60万円)
各コースの違いは「誰を採用したか」という対象者の区分によって決まります。対象者の属性によって支給額・助成期間・申請様式が異なるため、採用する方がどのコースに当たるかを事前に確認することが出発点です。
4コース早見表
| コース名 | 主な対象者 | 中小企業の最大支給額 | 助成期間 |
|---|---|---|---|
| 特定就職困難者コース | 60歳以上・障害者・母子(父子)家庭の親等 | 240万円(重度障害者等) | 最大3年 |
| 発達障害者・難治性疾患患者コース | 発達障害者・難病患者 | 120万円 | 2年 |
| 中高年層安定雇用支援コース | 35〜59歳・正規雇用経験が乏しい方 | 60万円 | 1年 |
| 生活保護受給者等コース | 生活保護受給者・生活困窮者 | 60万円 | 1年 |
ハローワーク紹介が絶対条件である理由
この助成金を受けるためには、対象労働者がハローワークまたは認定を受けた職業紹介事業者の紹介を経て採用されることが必須条件です。自社のウェブサイト、求人サイト、知人の紹介、直接応募などは対象外となります。
理由は制度設計にあります。この助成金は、就職困難者がハローワーク等において個別的な就労支援を受けながら職を探しているという前提の上に成り立っています。就労支援の一環として特定の事業主に紹介された、という経路が確認できなければ、制度の趣旨に合致しないと判断されます。
また、「ハローワーク等からの紹介の前に実質的に採用を決めていた」場合も不支給となります。紹介状を形式的に取得しただけで、実際には紹介前から内定を出していたような場合は、要件を満たさないと見なされます。
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ここでは、特定就職困難者コースを使った最もわかりやすいケースとして、重度身体障害者(障害者手帳1級)の方を週40時間の正規雇用で採用した中小企業の例を、手順・金額・窓口まで完結させて説明します。
前提となる採用の状況
このケースの想定は次のとおりです。
- 採用する事業主: 従業員10名の飲食業(中小企業に該当)
- 採用する方: 身体障害者手帳1級をお持ちの40代の方(重度身体障害者に分類)
- 雇用形態: 無期雇用の正規雇用労働者、週所定労働時間40時間
- ハローワークへの求人登録: 採用の意思を固める前に登録済み
- 紹介状: ハローワークから交付された紹介状を持って求職者が応募
ステップ1: ハローワークに求人票を登録する
まず、採用したい職種の求人票をハローワークに登録します。この時点では特定の人物への採用を決めていない状態が前提です。
求人票には、障害者の方が実際に担当できる業務内容を具体的に記載します。「接客補助業務」「仕込みのサポート業務」「食器洗い」など、身体の状況を踏まえても対応可能な業務を明示することが、対象者に紹介してもらうための前提になります。求人票に「特定求職者雇用開発助成金の対象者を募集する」という記載を加えておくと、ハローワークの職員が紹介の際に助成金の活用を念頭に置いて動いてくれるケースが多くなります。
また、ハローワークの担当者に「特開金を活用したいが、求人票に何か記載しておくべきことがあるか」と事前に相談しておくことを強くお勧めします。記載内容によって紹介される候補者のタイプが変わることがあるためです。
ステップ2: 紹介状を受け取って選考・採用する
ハローワークから「この方が応募したい」という連絡が入り、紹介状が交付されます。紹介状には対象者の氏名や紹介年月日が記載されており、これが助成金の根拠書類の1つになります。
選考(面接等)は紹介状の交付後に行います。紹介状が来る前に面接をしてしまった場合、その時点で助成金の対象から外れる可能性があります。「まず会って話してから」という感覚で動かないよう、採用担当者と事前に認識を合わせておくことが重要です。
採用が決まったら、雇用契約書を締結します。無期雇用の場合は「期間の定めなし」と記載します。有期雇用の場合は、後述する注意点がありますが、このケースでは無期雇用です。
ステップ3: 雇入れ登録届をハローワークに提出する
採用が決まり、対象者が実際に入社したら、「対象労働者雇入登録届」をハローワークに提出します。この書類は採用後早期に提出するものであり、提出することで「この人はこの日から雇用を開始し、助成金の対象として登録する」という申告を行います。
書類の様式はハローワークで入手できます。提出先は管轄のハローワークまたは都道府県労働局です。電子申請でも対応可能です。
ステップ4: 第1支給対象期(6ヶ月)の満了を待って申請する
雇用を開始してから6ヶ月が経過すると、第1支給対象期が満了します。この期が終わった日の翌日から2ヶ月以内に、第1期の支給申請書を提出します。
このケースでは重度身体障害者(1級)を雇用しているため、特定就職困難者コースの「重度障害者等」に該当します。中小企業に対する支給額の内訳は次のとおりです。
助成対象期間: 3年間(6期)
各期の支給額: 40万円
合計支給額: 240万円
第1期申請で40万円が支給された後、6ヶ月ごとに第2期(40万円)、第3期(40万円)と申請を繰り返します。最終的に第6期まで申請が完了すると、累計240万円の受給が完了します。
申請書類として必要なものは次のとおりです。
- 様式第3号(第1期支給申請書)
- 様式第5号(対象労働者雇用状況等申立書)
- 賃金台帳(令和8年4月以降の申請分は提出必須)
- 出勤簿・タイムカード
- 雇用契約書の写し
- 障害者手帳の写し
- 労働保険料等の確認書類
令和8年4月以降の申請分からは、賃金台帳が未提出の場合は不支給となります。雇用開始前からこの書類を正しく整備・保管しておくことが必須です。
ステップ5: 第2期以降も忘れずに申請する
各支給対象期が終了するたびに、期終了後2ヶ月以内という期限があります。この期限を見落として申請が遅れると、当該期の支給を受けられなくなる恐れがあります。
3年間・6期にわたる申請を管理するために、あらかじめ次のような期限スケジュールを立てておくことをお勧めします。
| 支給対象期 | 期間 | 申請期限 | 支給額(中小・重度障害者等) |
|---|---|---|---|
| 第1期 | 雇入れ日〜6ヶ月経過日 | 期末翌日から2ヶ月以内 | 40万円 |
| 第2期 | 6ヶ月〜12ヶ月 | 期末翌日から2ヶ月以内 | 40万円 |
| 第3期 | 12ヶ月〜18ヶ月 | 期末翌日から2ヶ月以内 | 40万円 |
| 第4期 | 18ヶ月〜24ヶ月 | 期末翌日から2ヶ月以内 | 40万円 |
| 第5期 | 24ヶ月〜30ヶ月 | 期末翌日から2ヶ月以内 | 40万円 |
| 第6期 | 30ヶ月〜36ヶ月 | 期末翌日から2ヶ月以内 | 40万円 |
| 合計 | 3年間 | ー | 240万円 |
申請窓口は管轄の都道府県労働局またはハローワークです。電子申請にも対応しています(厚生労働省電子申請ページ: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00037.html)。
このケースで受け取れる額の感覚
3年間で240万円を受け取るということは、月額換算でおよそ6.7万円の助成が続く計算です。採用した方の賃金が月20万円だとすると、実質的な企業負担は月13.3万円に相当します。
人材紹介会社を通じて同じ人材を採用した場合、一般的に年収の30〜35%程度が紹介手数料として発生します。仮に年収240万円(月20万円)の方であれば、紹介手数料は72万〜84万円になります。ハローワーク経由であれば紹介手数料はゼロであり、さらに240万円の助成が得られるため、人材紹介会社を使った場合との差は312万〜324万円になります。採用コストという観点では、特定求職者雇用開発助成金を活用できるハローワーク経由採用は、検討に値する方法です。
ただし、助成金の受給には継続雇用が前提です。採用後すぐに離職した場合は受給できないか、受給途中で打ち切りになります。また、助成金の受給を「採用の最大の動機」にしてしまうと、対象者の定着・活躍につながる職場環境整備がおろそかになるリスクがあります。助成金はあくまで採用コストの一部補填であり、定着支援は別途考える必要があります。
ここから先は、申請に直結する実務です。
4つのコースを詳しく理解する
コース1: 特定就職困難者コース
特定就職困難者コースは、特開金の中で最も多くの人が利用するコースです。対象者の範囲が広く、支給額も最大240万円と最も高いため、採用場面での活用頻度が高くなっています。
対象者の区分と詳細
対象者は大きく5つの区分に分かれます。
区分1: 高年齢者(60歳以上)
雇入れ日時点で60歳以上の方です。ただし令和8年(2026年)5月1日以降は、「ハローワーク等において就労に向けた個別支援を受けていること」が新たな要件として加わっています。これは、ただ60歳以上というだけではなく、ハローワークで求職中であり、担当者による個別支援(キャリアカウンセリング・適職相談等)を実際に受けている状態であることが求められるということです。65歳以上の方については、高年齢被保険者として雇用保険に加入できる場合は対象になりますが、雇用保険に加入できない条件での雇用は対象外です。
区分2: 障害者(重度障害者等以外の身体・知的障害者)
身体障害者手帳または療育手帳をお持ちの方で、重度障害者等に該当しない方です。
区分3: 重度障害者等
重度障害者等には次のいずれかに該当する方が含まれます。身体障害者手帳の等級が1級または2級の方、療育手帳の判定がAまたはAに相当する知的障害者の方、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの精神障害者の方(障害等級問わず)、45歳以上の身体・知的障害者の方、そして45歳以上の精神障害者の方です。
区分4: 母子家庭の母等・父子家庭の父
「母子家庭の母等」には、児童扶養手当の受給者である母、配偶者のいない母であって同居している20歳未満の子どもを扶養している方、配偶者の有無にかかわらず現に子どもを養育している方で求職者支援制度等の支援を受けている方などが含まれます。父子家庭の父も同様の要件で対象になります。
区分5: 補完的保護対象者・ウクライナ避難民
令和5年(2023年)12月1日以降、補完的保護対象者(難民条約上の難民に該当しない可能性があるが、保護が必要と認められた方)も対象に加わりました。また令和4年(2022年)5月30日以降、当分の間、ウクライナからの避難民も対象に含まれています。
支給額の詳細(特定就職困難者コース)
| 対象労働者の区分 | 中小企業の支給額 | 大企業の支給額 | 助成対象期間 | 1期ごとの支給額(中小) |
|---|---|---|---|---|
| 高年齢者・母子(父子)家庭の親等(通常労働者) | 60万円 | 50万円 | 1年 | 30万円×2期 |
| 身体・知的障害者(通常労働者) | 120万円 | 50万円 | 2年 | 30万円×4期 |
| 重度障害者等(通常労働者) | 240万円 | 100万円 | 3年 | 40万円×6期 |
| 高年齢者・母子(父子)家庭の親等(短時間労働者) | 40万円 | 30万円 | 1年 | 20万円×2期 |
| 障害者全般(短時間労働者) | 80万円 | 30万円 | 2年 | 20万円×4期 |
「中小企業」の定義については、製造業・建設業では資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業では1億円以下または従業員100人以下、サービス業では5,000万円以下または従業員100人以下、小売業では5,000万円以下または従業員50人以下が目安となっています(業種によって異なるため、詳細はハローワークで確認してください)。
「短時間労働者」とは、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の方です。週20時間未満の方は雇用保険の適用対象外となり、助成金の対象にもなりません。
短時間労働者を雇用する場合の活用場面
短時間労働者の支給額は通常労働者より低いものの、週20〜30時間の雇用形態での活用が有効なケースもあります。たとえば、高齢の方や障害のある方で、フルタイムでの勤務は体力的・健康上の理由から難しいが、短時間であれば十分に活躍できるという場合です。また、個人事業主が「試験的に採用してみたい」「まずは午前中だけお願いしたい」という際にも短時間雇用から始める選択肢があります。支給額は中小企業・重度障害者等でも80万円(2年間)になるため、採用コストの補填としては一定の意義があります。
コース2: 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
このコースは、発達障害のある方または難治性疾患(難病)をお持ちの方を雇い入れた事業主を対象にしています。特定就職困難者コースの障害者区分とは別立てのコースであり、一般的に支援ニーズが大きく、かつ雇用の継続に配慮が必要とされる属性に対して、独自の助成が用意されています。
対象者の定義
「発達障害者」とは、発達障害者支援法第2条第1項に定める発達障害があり、日常生活または社会生活に制限を受けている方です。発達障害の範囲には、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などが含まれます。精神障害者保健福祉手帳を取得していない方でも、医療機関の診断等で発達障害が確認できれば対象になる場合があります(詳細はハローワークに確認してください)。
「難治性疾患患者」とは、厚生労働大臣が定める疾病(指定難病等)にり患している方で、症状が安定している等就労が可能な状態にある方です。難治性疾患には、クローン病、潰瘍性大腸炎、パーキンソン病、多発性硬化症などが含まれます。医師の診断書等で疾患と就労可能な状態であることを確認できることが要件です。
このコースで注意が必要なのは、対象者が「就労可能な状態にあること」という要件です。疾患があっても医師が就労可能と判断し、本人も就労を希望している状態でなければなりません。また、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの発達障害者は、特定就職困難者コース(重度障害者等)にも該当する可能性があるため、どちらのコースが有利かをハローワークで事前に確認することをお勧めします。
支給額の詳細(発達障害者・難治性疾患患者コース)
| 対象労働者 | 中小企業の支給額 | 大企業の支給額 | 助成対象期間 | 1期ごとの支給額(中小) |
|---|---|---|---|---|
| 通常労働者(週30時間以上) | 120万円 | 50万円(1年) | 2年 | 30万円×4期 |
| 短時間労働者(週20時間以上30時間未満) | 80万円 | 30万円(1年) | 2年 | 20万円×4期 |
中小企業の助成対象期間は2年(4期)です。大企業(中小企業以外)の助成対象期間は1年(2期)・50万円(通常)/30万円(短時間)となります。申請前にハローワークで企業規模を確認してください。
コース3: 中高年層安定雇用支援コース(2025年4月新設)
このコースは令和7年(2025年)4月に新設されたコースです。かつて「就職氷河期世代安定雇用実現コース」という名称で運用されていたコースの後継にあたる部分も含みつつ、対象者の年齢範囲と要件が見直されています。
対象者の要件(3つの条件をすべて満たすこと)
条件1: 年齢要件
雇入れ日時点で35歳以上60歳未満であること。
条件2: 雇用経歴要件
次のいずれも満たしていること。過去5年間に正規雇用労働者として雇用されていた期間の合計が1年以下であること、かつ過去1年間に正規雇用労働者として雇用されたことがないこと。ただし、事業主都合による解雇を受けた場合は、この要件から除外されます(自分の意思での退職ではなく、会社都合で職を失った方への配慮です)。
条件3: 就労状況要件
ハローワーク等からの紹介時点で、失業している方または非正規雇用労働者等で安定した職業に就いていない方であること。さらに、ハローワーク等において個別支援等の就労に向けた支援を受けていること。そして、正規雇用労働者として雇用されることを希望していること。
支給額の詳細(中高年層安定雇用支援コース)
| 企業規模 | 第1期 | 第2期 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 中小企業 | 30万円 | 30万円 | 60万円 |
| 大企業 | 25万円 | 25万円 | 50万円 |
助成対象期間は1年間で、6ヶ月ごとに2期に分けて支給されます。このコースは正規雇用(無期雇用・フルタイム)での採用が前提です。短時間労働者は対象外です。
このコースのポイントは「正規雇用経験が乏しい中高年層」に特化している点です。就職氷河期(おおよそ1993〜2004年頃に学卒時期を迎えた方)に十分なキャリアを積めなかった方や、非正規雇用を長く続けてきた中高年の方が正規雇用の機会を得るための制度として設計されています。
コース4: 生活保護受給者等雇用開発コース
このコースは、生活保護受給者または生活困窮者を採用した事業主を対象にしています。
対象者の要件
次のいずれかに該当する方で、ハローワーク等から紹介されて雇い入れた場合が対象です。
生活保護受給者: 生活保護法に基づく生活保護を受給している方。
生活困窮者: 生活困窮者自立支援法に基づく支援を受けている方(自立相談支援機関において通算して3ヶ月を超える支援を受けている方)。
また、ハローワーク等において個別支援等の就労に向けた支援を受けていることも要件となっています。
支給額の詳細(生活保護受給者等コース)
| 対象労働者 | 中小企業の支給額 | 大企業の支給額 | 助成対象期間 | 期数 |
|---|---|---|---|---|
| 通常労働者(週30時間以上) | 60万円 | 50万円 | 1年 | 2期 |
| 短時間労働者(週20時間以上30時間未満) | 40万円 | 30万円 | 1年 | 2期 |
このコースの支給額は4コースの中で最も低いですが、「生活保護受給者を採用したことで支給されるインセンティブ」として機能しています。生活保護受給者の就労意欲は様々ですが、自立支援機関で一定期間(3ヶ月超)サポートを受けている方は就労準備が整っている可能性が高く、ハローワークからの紹介を通じてミスマッチを減らしやすい側面もあります。
コース選択フローチャート — 採用予定者の属性から最適コースを選ぶ
採用しようとしている方が次のどれに当たるかで、使えるコースが決まります。
まず、採用予定者が「生活保護受給者または生活困窮者自立支援を3ヶ月超受けている方」であればコース4(生活保護受給者等コース)を検討します。
次に、採用予定者が「発達障害者または指定難病患者」であればコース2(発達障害者・難治性疾患患者コース)が対象になります。ただし、発達障害者が精神障害者保健福祉手帳を取得している場合は、コース1(特定就職困難者コース・重度障害者等)との比較が必要です。コース1の重度障害者等に該当する場合は支給額が最大240万円になるため、有利になることがあります。
採用予定者が「60歳以上の方」または「障害者手帳・療育手帳をお持ちの方」または「母子家庭・父子家庭の親」である場合は、コース1(特定就職困難者コース)が最も適合しています。
採用予定者が「35歳以上60歳未満で過去5年間の正規雇用経験が1年以下かつ直近1年間に正規雇用がない方」であればコース3(中高年層安定雇用支援コース)が対象です。
いずれのコースが適用できるかわからない場合は、採用前にハローワークの担当者に相談することが確実です。「このような方を採用しようとしているが、どのコースに当たるか確認したい」と問い合わせると、担当者が判断を助けてくれます。
申請の具体的な手順(5つのステップ)
ステップ1: ハローワークに求人票を登録する
採用を決める前に、ハローワークに求人票を提出します。求人票には次の内容を正確に記載します。
- 職種・業務内容(対象者が実際に担当できる業務を具体的に)
- 賃金・待遇・労働条件
- 雇用形態(正規・有期・パート等)
- 特記事項(「特定求職者雇用開発助成金の活用を希望する」旨を記載することが推奨されます)
この段階でハローワークの担当者と面談し、「特開金を活用したい旨」「どのような方を想定しているか」を伝えておくことが、円滑な紹介につながります。
求人票の書き方が、紹介される候補者の質と範囲に影響します。たとえば、障害のある方を採用したい場合は、業務内容が本人にとって現実的に対応可能かどうかが重要です。「特別な経験不要」「丁寧に指導します」「勤務時間は相談可能」などの記載が、対象者にとって応募しやすい求人票になります。
ステップ2: 紹介状を取得し、選考・採用を進める
ハローワークから求職者が紹介され、紹介状が発行されます。この紹介状が助成金の根拠書類の1つになります。
紹介状の交付後に選考(面接・適性確認等)を行います。採用が決まったら雇用契約書を締結します。
雇用契約書に関する注意点は次のとおりです。
無期雇用の場合は「期間の定めなし」と明記します。
有期雇用の場合は「自動更新」であることを雇用契約書に明記する必要があります。「更新する場合がある」という記載では不十分で、「本人が希望する限り更新する」または「契約を継続する」という趣旨の記載が求められます。また、有期雇用の場合でも、更新条件が就業規則の解雇事由(懲戒解雇・能力不足等)を上回る条件(たとえば「欠勤が月○回以上の場合は更新しない」など)を設けてしまうと、不支給となる可能性があります。
ステップ3: 対象労働者雇入登録届を提出する
雇用契約締結・採用後早期に、「対象労働者雇入登録届」を管轄の労働局またはハローワークに提出します。
提出時に必要な主な書類は次のとおりです。
- 対象労働者雇入登録届(各コースの様式。ハローワークで入手可。電子申請も可能)
- 紹介状の写し
- 雇用契約書の写し
- 対象者に該当する証明書類(障害者手帳、母子(父子)家庭証明、診断書等)
この届出を忘れると、後の支給申請が難航することがあります。採用手続きのチェックリストに「雇入れ登録届の提出」を必ず組み込んでください。
ステップ4: 第1支給対象期(6ヶ月)の満了後に申請書を提出する
雇用開始日から6ヶ月が経過した翌日から2ヶ月以内に、第1期の支給申請書を提出します。
第1期申請に必要な主な書類は次のとおりです。
様式第3号(第1期支給申請書): 管轄の労働局またはハローワークで入手できます。記入する内容は、事業主の基本情報、対象労働者の氏名・雇用状況、助成対象期間の賃金総額等です。
様式第5号(対象労働者雇用状況等申立書): 対象者が継続して雇用されていることを申告する書類です。
賃金台帳(令和8年4月以降申請分は必須): 助成対象期間中に対象者に実際に支払った賃金の記録です。労働基準法上、賃金台帳は全ての事業主に作成・保存(5年間)が義務付けられています。整備していない場合は、採用前に整備する必要があります。
出勤簿またはタイムカード: 対象者の出勤状況・労働時間を記録したものです。
雇用契約書の写し: 当初から保管しておいたものを添付します。
労働保険・社会保険の確認書類: 雇用保険被保険者証等。
ステップ5: 第2期以降も期限内に申請を繰り返す
第2期以降は「様式第4号(第2〜6期支給申請書)」を使って各期の申請を行います。各期の申請期限は、それぞれの支給対象期終了後2ヶ月以内です。
複数期にわたる申請を逃さないために、次のような管理が有効です。
社内カレンダーまたは手帳に、各支給対象期の終了日と申請期限を入力しておきます。たとえば雇入れ日が2026年4月1日であれば、第1期の期末は2026年9月30日、申請期限は2026年11月30日となります。第2期の期末は2027年3月31日、申請期限は2027年5月31日となります。
3年間・6期の申請が必要なコース(重度障害者等)では、特にスケジュール管理が重要です。担当者が変わった場合でも申請が途切れないよう、社内で引き継ぎのルールを作っておくことをお勧めします。
必要書類チェックリスト(全コース共通+コース別追加書類)
全コース共通の書類
雇入れ登録届の提出時に必要なもの:
- 対象労働者雇入登録届(各コースの様式)
- 紹介状の写し
- 雇用契約書の写し
- 対象者に該当することを証明する書類(後述)
支給申請時(第1期)に必要なもの:
- 様式第3号(第1期支給申請書)
- 様式第5号(対象労働者雇用状況等申立書)
- 賃金台帳(令和8年4月以降申請分より必須)
- 出勤簿またはタイムカードの写し
- 雇用契約書の写し
- 労働保険料等の確認書類
支給申請時(第2期以降)に必要なもの:
- 様式第4号(第2〜6期支給申請書)
- 対象労働者雇用状況等申立書(更新)
- 賃金台帳(各期分)
- 出勤簿またはタイムカード(各期分)
コース別の追加書類
特定就職困難者コース(高年齢者):
- 年齢確認書類(運転免許証・パスポート・住民票の写し等)
- 令和8年5月以降雇入れ分: ハローワーク等で個別支援を受けていることの確認書類
特定就職困難者コース(障害者):
- 身体障害者手帳の写し(身体障害者)
- 療育手帳の写し(知的障害者)
- 精神障害者保健福祉手帳の写し(精神障害者)
- 医師の診断書等(手帳未取得の発達障害者等)
- 個人番号登録届(障害者の場合に必要な場合あり)
特定就職困難者コース(母子(父子)家庭の親):
- 母子家庭の母等申立書または父子家庭の父申立書
- 児童扶養手当受給者証の写しまたは戸籍謄本等
特定就職困難者コース(補完的保護対象者・ウクライナ避難民):
- 補完的保護対象者認定証の写しまたはウクライナ避難民であることを証明する書類(在留カード等)
発達障害者・難治性疾患患者コース:
- 医師の診断書等(発達障害または指定難病である旨の記載)
- 精神障害者保健福祉手帳の写し(手帳取得済みの場合)
中高年層安定雇用支援コース:
- 年齢確認書類
- 雇用経歴確認書類(直近の雇用契約書・源泉徴収票等)
- 様式第12号中高(対象者確認票)
生活保護受給者等コース:
- 生活保護受給証明書または生活困窮者として3ヶ月超支援を受けていることの証明書類
書類の取得先と保管方法
各書類の主な取得先は次のとおりです。
ハローワーク・労働局で交付されるもの: 支給申請書各様式、対象労働者確認票等の様式
厚生労働省電子申請ページ(e-Gov): 電子申請の場合の書類提出
市区町村窓口: 戸籍謄本・住民票・児童扶養手当受給者証等
指定医療機関: 医師の診断書
本人が保有: 各種手帳・在留カード等
書類は申請後も一定期間(少なくとも5年間)保管することが必要です。特に賃金台帳・出勤簿は、労働基準法上の保存義務(5年間)との兼ね合いもあり、採用した段階から適切に整備・保管する体制を作ることが重要です。
2026年度の制度変更点とその実務への影響
変更点1: 賃金台帳の提出義務化(令和8年4月1日以降の申請分から)
これまで、賃金台帳は添付が求められる場合もありましたが、全コースで一律の義務ではありませんでした。令和8年(2026年)4月1日以降に申請する分については、賃金台帳の提出が確認できない場合は不支給となります。
実務への影響: 過去の申請慣行として「賃金台帳がなくても支給されていた」という経験をお持ちの事業主の方は注意が必要です。この変更は全コース・全支給対象期に適用されます。採用した時点から賃金台帳を正確に作成・保管する必要があります。賃金台帳には、対象者の氏名、賃金の計算期間、労働日数・労働時間数、基本給と各手当の内訳、控除額が記載されている必要があります。
変更点2: 高年齢者(60歳以上)への個別支援要件追加(令和8年5月1日以降の雇入れ分から)
特定就職困難者コースで60歳以上の方を採用する際、令和8年(2026年)5月1日以降の雇入れ分については「ハローワーク等において就労に向けた個別支援を受けていること」が要件になります。
実務への影響: 60歳以上の方でも、ハローワークで単に求職登録をしているだけでは不十分になりました。個別支援とは、ハローワークの担当者によるキャリアカウンセリング・就職活動の具体的なアドバイス・求人票の絞り込み支援などを実際に受けていることを指します。採用予定の60歳以上の方が「ハローワークで個別支援を受けているかどうか」を事前に確認するか、ハローワークに問い合わせて確認してから採用手続きに進む流れが必要です。
変更点3: 成長分野等人材確保・育成コースの廃止(令和7年度=2025年度限りで廃止)
かつて存在した「成長分野等人材確保・育成コース」は、就職困難者をデジタル・グリーン等の成長分野の業務に従事させて人材育成を行う事業主への助成制度でしたが、実績が低調だったことから令和7年度(2025年度)限りで廃止されました。
実務への影響: 2025年度以前にこのコースで申請した実績がある方も、2026年度以降の新たな採用にはこのコースを使えません。現在は上述の4コース体制です。もしこのコースに似た趣旨(成長分野への人材投資・スキルアップを組み合わせた雇用)を検討する場合は、人材開発支援助成金(リスキリング支援コース等)との組み合わせを検討することになります。
採用コスト削減の試算 — 人材紹介会社との比較
特開金の活用による採用コスト削減効果を、具体的な数字で整理します。
試算の前提
採用するポジション: 飲食店でのホール・調理補助スタッフ(正規雇用)
採用する方の属性: 身体障害者手帳2級(特定就職困難者コース・重度障害者等に該当)
想定年収: 240万円(月給20万円)
企業規模: 中小企業
ケース1: ハローワーク経由で特開金を活用した場合
ハローワークへの求人票提出費用: 無料
紹介手数料: なし(ハローワークは手数料を取らない)
特開金(3年間・6期)で受け取れる額: 240万円
採用コスト: 0円
助成金受給: 240万円
実質的な採用コスト効果: +240万円(プラス)
ケース2: 民間の人材紹介会社を経由した場合
紹介手数料(年収の30%として試算): 240万円 × 30% = 72万円
助成金: 原則として人材紹介会社経由でも特開金の申請は可能(許可を受けた職業紹介事業者経由であれば対象)。ただし実際の運用ではハローワーク経由が主流であり、人材紹介会社経由の場合は別途確認が必要。
採用コスト: 72万円(紹介手数料)
採用コスト比較のポイント
ハローワーク経由で特開金を活用した場合と、人材紹介会社を使った場合(特開金なし)を単純比較すると、差は72万〜84万円(紹介手数料)プラス特開金240万円(助成)の合計で、最大300万円以上の差が生まれる計算です。
ただし、次の点は現実の検討時に考慮が必要です。
まず、人材紹介会社の場合は候補者の選定・スクリーニングを業者が担当するため、採用担当者の工数を節約できる面があります。ハローワーク経由では、紹介された候補者の選考を自社で行う必要があるため、社内の採用担当者の時間と労力がかかります。
次に、特開金は「採用後の継続雇用が前提」であり、雇用開始後に支給されます。採用前の資金繰りには影響しません。助成金を当てにして採用を急ぐことは、採用後のミスマッチリスクを高める可能性があります。
また、助成金の目的は採用コストの補填であり、採用した方の定着・活躍を支援するためのものではありません。採用後の職場環境整備・合理的配慮・定着支援は、助成金とは別に事業主が主体的に取り組む必要があります。
よくある誤解・つまずきポイント
誤解1: 「ハローワークの紹介なら誰でも助成金をもらえる」
ハローワーク経由で採用したからといって、全員が助成金の対象になるわけではありません。対象になるのは、ハローワーク等から紹介された方が「助成金の対象者区分に該当する場合」に限られます。60歳未満で障害者でなく母子(父子)家庭にも該当しない一般的な求職者をハローワーク経由で採用しても、特開金の対象にはなりません。
採用を検討している方が対象者区分に当たるかどうかを事前に確認するには、ハローワークに「この方は特定求職者雇用開発助成金の対象になりますか?」と問い合わせるか、紹介状の発行時にハローワーク担当者に確認してもらうことが最も確実です。
誤解2: 「紹介状を後から取得すればよい」
採用プロセスの順序には厳格なルールがあります。正しい順序は「求人登録 → ハローワーク等からの紹介 → 選考(面接等) → 採用」です。この順序を逆にすること、特に「先に面接・内定を出してから紹介状を取得する」という行為は、「ハローワーク等からの紹介によらない採用」として不支給の対象になります。
実際には「知り合いに紹介してもらった後で、助成金を使いたいからとハローワークに事後的に登録する」というケースが不支給になります。紹介状は採用の出発点であり、形式的に後付けで発行してもらっても要件を満たしません。
誤解3: 「事業主が助成金を申請するだけで自動的に支給される」
助成金は申請して自動的に支給されるものではなく、審査があります。提出した書類に不備がある場合、訂正・補完を求められることがあります。また、申請内容と実態が異なる場合(例えば対象者の勤務実態がない、賃金台帳の記載と実際の賃金が一致しない等)は不支給・返還請求の対象となります。
誤解4: 「途中で対象者が退職しても支給分はもらえる」
雇用が継続していることが各期の支給要件です。支給対象期の途中で対象者が退職した場合、その期分の助成金は支給されません(ただし例外的な取り扱いが認められる場合もあるため、詳細はハローワークで確認してください)。
また、事業主都合による解雇が雇入れ日前後6ヶ月以内に発生した場合(対象者とは別の従業員であっても)、助成金が支給されなくなります。採用後半年間は特に人員整理等を行わないよう留意する必要があります。
誤解5: 「助成金目当てで採用しても問題ない」
助成金の受給要件を形式的に満たせば受給できますが、採用目的が「助成金の受給のみ」では、助成対象期間が終わった後に雇用継続の意思がない場合、実際に雇用が終了してしまいます。これは制度の趣旨(就職困難者の安定的な雇用の促進)に反するものです。また、採用した方が「助成金期間終わったので解雇する」という扱いを受けることは、当事者に深刻な影響を与えます。
助成金はあくまで採用コストの補填・定着促進のための支援です。採用した方に長期的に活躍してもらうことを前提に、職場環境・合理的配慮・定着支援を整えることが、この制度を正しく活用することにつながります。
誤解6: 「有期雇用で採用しても助成金をもらえる」
有期雇用での採用も対象になりますが、雇用契約書に「自動更新」の記載が必要です。更新条件が解雇事由(就業規則の懲戒解雇要件など)と一致しているか、またはそれより緩い条件であることが必要です。「会社が必要と判断した場合に更新する」という一方的な裁量条件は、「自動更新」には当たらないとされる可能性があります。
不支給になる典型的なNG事例
NG事例1: ハローワーク紹介なしで採用した
最も多い不支給事例です。知人の紹介・自社SNS・求人サイト経由で採用した後、「助成金が使えるかもしれない」とハローワークに問い合わせても、遡って紹介状を発行することはできません。
NG事例2: 紹介状取得前に面接・内定を出した
採用担当者が「いい人に会えたので面接を先にしてしまった」という状況です。紹介状は採用決定の前に取得する必要があります。
NG事例3: 雇入れ前後6ヶ月以内に別の従業員を事業主都合で解雇した
採用と同時期に業績悪化で他の従業員をリストラした場合、そのリストラが「事業主都合」であれば助成金が不支給になります。
NG事例4: 対象者が過去3年以内に同じ事業主のもとで就労していた
以前アルバイトや派遣スタッフとして勤めた経験のある方を「久しぶりに雇いなおした」という場合は対象外です。「過去3年以内」という期間に注意が必要です。
NG事例5: 賃金台帳を作成・保管していなかった
令和8年4月以降、賃金台帳の未提出は不支給要件に追加されました。採用前から賃金台帳の整備体制を整えておく必要があります。
NG事例6: 週20時間未満の雇用だった
雇用保険の一般被保険者になれない週20時間未満の雇用は対象外です。「少しだけ来てもらう」という形では助成金は出ません。
NG事例7: 代表者や取締役の親族を採用した
代表者(個人事業主)の3親等以内の親族、法人の場合は取締役等の3親等以内の親族は、同居しているかどうかに関わらず対象外です。
NG事例8: 離職割合が高い事業所での申請
過去に特開金の対象だった従業員が多数離職している事業所では、離職割合が25%を超える場合に不支給となります。具体的には、過去の助成対象者が5人以上いる場合で、その25%超が離職しているケースです。
他の助成金との組み合わせ・優先順位
トライアル雇用助成金との組み合わせ
トライアル雇用とは、ハローワーク経由で就職困難者を試行的に雇用する制度です。一定期間(最長3ヶ月)の試行雇用期間中に、対象者の職場適応性を確認しながら雇用を行います。
特定求職者雇用開発助成金との組み合わせは次のように機能します。
まず、トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース等)を使って試行雇用を行います。この間、事業主は月額助成を受けながら対象者の業務適性・職場への適応状況を確認できます。
トライアル雇用期間(最長3ヶ月)終了後に継続雇用(常用雇用)に移行した場合、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース等)の適用が始まります。ただし、トライアル雇用の期間は特定求職者雇用開発助成金の第1支給対象期に算入されるため、実際には第2期から申請できることになります。
この組み合わせのメリットは「採用ミスマッチのリスクを下げながら、助成金も受けられる」点にあります。いきなり通常雇用に移行するのが不安な場合は、トライアル雇用から入ることで、事業主・対象者双方が「合ってみてから決める」時間を持てます。
キャリアアップ助成金との組み合わせ
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者を正規雇用に転換した事業主を対象とした助成金です。
組み合わせのシナリオ: 最初に有期雇用(パートタイム等)で採用した対象者に特定求職者雇用開発助成金を適用し、後に正規雇用に転換した際にキャリアアップ助成金(正社員化コース)を活用するという順序が可能です。ただし、両方の助成金を同時に受給できるかどうか(併給調整)については、厚生労働省の「雇用関係助成金の併給調整早見ツール」で事前に確認することをお勧めします。
障害者雇用率への影響
障害のある方を常用雇用した場合、障害者雇用率(法定雇用率)の算定に算入されます。特開金を活用して障害者を採用することで、助成金の受給と雇用率の改善を同時に達成できる場合があります。常用従業員43.5人以上の事業主には法定雇用率(2024年4月からは2.5%)が適用されるため、雇用率の達成状況をあわせて確認することをお勧めします。
ただし、障害者雇用は「数字を合わせること」を目的とするのではなく、当事者が実際に活躍できる職場環境を作ることが本来の趣旨です。合理的配慮の提供、職場定着支援、ジョブコーチ活用などを並行して検討することが重要です。
人材開発支援助成金との組み合わせ
成長分野等人材確保・育成コース(特開金)が廃止された現在、「採用した人材のスキルアップを助成金で支援したい」というニーズがある場合は、人材開発支援助成金を別途検討することが選択肢になります。人材開発支援助成金のリスキリング支援コース、教育訓練休暇給付コースなどを組み合わせることで、採用と育成の両面で助成を受けられる可能性があります。人材開発支援助成金も社会保険労務士法の業務範囲に関わる制度であるため、具体的な申請は社会保険労務士にご相談ください。
小規模個人事業主が初めて従業員を雇う場合の注意点
特開金の対象者(高齢者・障害者・母子家庭の親等)を最初の従業員として雇い入れる個人事業主の方には、社会保険の加入義務に関して特に注意が必要です。
雇用保険(労災保険・雇用保険)
従業員を1人でも雇った場合、事業主は労働保険(労災保険・雇用保険)への加入義務が発生します(一部の業種・事業形態を除く)。特開金の申請要件として「雇用保険の一般被保険者として雇用されること」が明記されているため、雇用保険に加入することが助成金受給の前提条件でもあります。
加入手続きの窓口はハローワーク(雇用保険)と労働基準監督署(労災保険)です。採用が決まったら速やかに手続きを行ってください。
健康保険・厚生年金保険
法人の場合は、従業員数に関わらず加入義務があります。個人事業主の場合は、常時5人以上を雇用する場合に強制適用となる業種(製造業・小売業・卸売業・サービス業等)と、任意適用となる業種(農業・林業・漁業・飲食業の一部等)があります。
従業員が4人以下の個人事業主であっても、強制適用業種であれば5人以上になった時点で加入義務が発生します。また、任意適用の業種でも、一定の要件を満たせば任意で加入することができます。
1人目の従業員を採用する際の社会保険手続きは複雑であるため、ハローワーク・都道府県労働局・年金事務所・社会保険労務士に事前に相談することをお勧めします。
特開金の申請前に確認すること
個人事業主が初めて対象者を採用する場合は、次のことを順番に確認します。
まず、労働保険への加入手続きが完了しているか。次に、賃金台帳・出勤簿等の整備体制ができているか。そして、ハローワークに求人票を提出しているか(特開金の申請前提)。
これらが整っていない状態で採用を進めると、後の申請段階で問題が生じる可能性があります。
申請チェックリスト
採用前の確認事項:
- ハローワークに求人票を提出済みであること
- 採用予定の方が助成金の対象者区分に該当することをハローワークに確認していること
- 採用順序(求人→紹介→面接→採用)を社内に徹底していること
- 雇用保険の適用事業主であること(または手続き中であること)
採用時の確認事項:
- 紹介状を受け取ってから面接・選考を行っていること
- 雇用契約書に雇用形態・有期雇用の場合は自動更新条件を明記していること
- 対象者区分を証明する書類(手帳の写し・診断書等)を確認・受領していること
- 賃金台帳・出勤簿の整備を開始していること
- 雇入れ日前後6ヶ月以内に事業主都合の解雇がないこと
雇入れ後速やかに:
- 対象労働者雇入登録届をハローワーク・労働局に提出していること
- 各支給対象期の期末日と申請期限を社内カレンダーに登録していること
第1期申請時の確認事項:
- 様式第3号(第1期支給申請書)に必要事項を記入していること
- 賃金台帳(助成対象期間分)を添付していること
- 出勤簿またはタイムカードの写しを添付していること
- 雇用契約書の写しを添付していること
- 対象労働者雇用状況等申立書(様式第5号)を添付していること
よくある質問(FAQ)
Q1. 特開金の申請は自分でできますか?
はい、事業主自身が申請することが原則です。申請書類はハローワークまたは都道府県労働局で入手でき、電子申請にも対応しています。ただし、書類の種類が多く、記載内容が複雑な場合もあります。申請書類の作成・手続きの代行は社会保険労務士の業務範囲であるため、不安な方は社会保険労務士にご相談ください。本記事は情報提供を目的としており、申請代行は行いません。
Q2. 特開金の申請に費用はかかりますか?
ハローワークへの求人票提出や助成金申請そのものに費用はかかりません。申請書類の作成を社会保険労務士に依頼する場合は、依頼先によって費用が発生します。
Q3. 複数の対象者を同時に採用した場合は?
それぞれの対象者について個別に申請します。同一事業所で複数の対象者を採用した場合でも、各自の助成金は個別に申請・受給できます。
Q4. 採用後に対象者が障害者手帳を取得した場合は?
採用時点では手帳をお持ちでなかった方が、その後手帳を取得した場合は、取得後の扱いについてハローワークに相談してください。取得前の採用で既に申請済みの場合と、取得後から改めて申請を検討する場合で手続きが異なります。
Q5. 精神障害者は何コースに当たりますか?
精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方は、特定就職困難者コースの「重度障害者等」に該当します(障害等級問わず)。また、発達障害を有し精神障害者手帳を取得している場合も同様です。支給額は中小企業・通常労働者の場合で240万円、助成期間は3年間です。
Q6. 母子家庭の母と認定されるためには何が必要ですか?
典型的には、児童扶養手当の受給者証の写しが証明書類として使われます。離婚・死別等により配偶者がいない状態で20歳未満の子どもを扶養している方が対象となります。具体的な認定要件はハローワークで確認してください。
Q7. 派遣労働者は対象になりますか?
派遣労働者を派遣先事業主が直接雇用した場合は、原則として過去3年以内に同一事業主のもとで就労していたことになるため対象外となる場合があります。ただし派遣形態によっては異なる判断がある場合もあるため、ハローワークに確認してください。
Q8. 有期雇用で採用してから無期雇用に転換した場合、助成金の扱いはどうなりますか?
転換後も雇用が継続していれば、助成対象期間内であれば引き続き助成金の対象となります。ただし、転換にあたって雇用契約書を新たに締結する場合は、その内容についてハローワークに確認することをお勧めします。
Q9. 電子申請はどこから行いますか?
厚生労働省の電子申請ページ( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00037.html )から対応しています。マイナンバーカードや事業者認証が必要な場合があります。
Q10. 令和8年5月以降、60歳以上の方の「個別支援を受けている」ことはどうやって確認するのですか?
採用前にハローワークの担当者に「この方は個別支援を受けているか確認したい」と問い合わせることが最も確実です。紹介状の発行時に、担当者から個別支援の確認がなされる場合もあります。
出典一覧
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)| 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html
確認日: 2026-06-27
- 特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)| 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/hattatsu_nanchi.html
確認日: 2026-06-27
- 特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)| 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/chuukou.html
確認日: 2026-06-27
- 特定求職者雇用開発助成金(生活保護受給者等雇用開発コース)| 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_seikatsu.html
確認日: 2026-06-27
- 特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)※廃止済 | 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_seichou_00008.html
確認日: 2026-06-27
- 特定求職者雇用開発助成金の電子申請 | 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00037.html
確認日: 2026-06-27
免責事項
本記事は、2026年6月27日時点の公開情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成しています。制度の金額・要件・申請期限・窓口は変更されることがあります。申請にあたっては、必ず最新の公式情報(厚生労働省ウェブサイト・ハローワーク)でご確認ください。
本記事は個別の申請代行・書類作成代行を行うものではありません。申請手続きの代行・書類作成代行については、社会保険労務士法に基づき社会保険労務士が担当します。個別の申請に関するご相談は、管轄のハローワーク・都道府県労働局、または社会保険労務士にお問い合わせください。
本記事に記載した支給額・要件・手続き等は著者の調査による参考情報であり、実際の支給を保証するものではありません。ご自身の状況に応じた最新情報は、必ずハローワークまたは都道府県労働局に直接確認してください。
制度の沿革と2025〜2026年改正の時系列整理
特定求職者雇用開発助成金は、雇用保険法に基づく雇用関係助成金の1つとして長年運用されてきました。制度の枠組み自体は安定していますが、対象者の範囲やコース構成は定期的に見直されます。特に近年は、社会環境の変化(高齢化・障害者雇用の進展・就職氷河期世代の中高年化・ウクライナ情勢等)を受けた改正が続いています。
2022年(令和4年)の変更
令和4年5月30日より、ウクライナからの避難民が特定就職困難者コースの対象者に追加されました。ロシアによるウクライナ侵攻を受けた人道的措置として、日本に避難したウクライナ国籍等の方が「当分の間」助成金の対象となっています。この「当分の間」という表現は制度上の期限が設けられていないことを意味しており、2026年時点でも継続中です。
2023年(令和5年)の変更
令和5年(2023年)12月1日より、「補完的保護対象者」が対象者に追加されました。補完的保護対象者とは、難民条約上の難民認定には至らなかったものの、出身国での迫害・紛争等の事情から日本での保護が認められた方です。従来の難民認定制度とは別枠で保護される人々であり、難民認定の要件が厳しい中で、保護の対象を広げた形です。
また、父子家庭の父(児童扶養手当受給者)が明示的に対象に追加されました。母子家庭の母に準ずる形で、ひとり親世帯全体への支援として位置づけられています。
2025年(令和7年)4月の変更
3つの変更が行われました。
まず、中高年層安定雇用支援コースが新設されました。従来存在した「就職氷河期世代安定雇用実現コース」(1993〜2004年頃に学卒した世代を対象)から対象年齢が拡大され、35歳以上60歳未満の幅広い中高年層が対象になりました。これにより、いわゆる就職氷河期世代だけでなく、様々な事情で正規雇用のキャリアを積めなかった中高年の方全般が対象に含まれるようになっています。
次に、成長分野等人材確保・育成コースが令和7年度限りで廃止されることが決まりました(実質的に令和8年度以降は廃止)。このコースは、デジタル・グリーン等の成長分野への人材移動と育成を同時に促す目的で設けられていましたが、申請実績が低調だったため廃止となりました。
3点目として、全コースで申請手続きの一部見直しが行われました。
2026年(令和8年)4月の変更
令和8年4月1日以降の申請分から、全コースで賃金台帳の添付が必須となりました。これまでは賃金台帳の提出が求められる場合もありましたが、全件必須ではありませんでした。この変更により、過去の申請慣行に依存していると不支給になるリスクが生まれています。
2026年(令和8年)5月の変更
令和8年5月1日以降に雇い入れた60歳以上の高年齢者については、「ハローワーク等において就労に向けた個別支援を受けていること」が要件に追加されました。60歳以上であれば誰でも対象という従来の運用から、ハローワークで具体的な支援を受けている求職者に絞られた形です。
この変更の背景には、高年齢者雇用の増加に伴い、助成金の対象者をより就職支援ニーズの高い層に集中させる意図があると考えられます。高齢化社会において60歳以上の就業者は増加の一途をたどっており、「就職困難」の実態がある方とそうでない方の区別をより明確にする方向性の改正といえます。
今後の見通し
雇用関係助成金全体の見直しについて、厚生労働省はパブリックコメント等を通じて定期的に改正案を公示しています。特開金についても、少子化対応・高齢者活躍・障害者雇用推進といった政策動向と連動して今後も改正が行われる可能性があります。申請前には必ず最新の公式情報を確認することが不可欠です。
対象者の区分詳細 — 「特定求職者」として認められるための条件を整理する
特定求職者雇用開発助成金の対象となる労働者を「特定求職者」と呼びます。特定求職者の区分は助成金の根幹であり、この区分に該当するかどうかで助成金を受けられるかどうかが決まります。
高年齢者(60歳以上)
雇入れ日において60歳以上の方です。令和8年5月1日以降の雇入れ分については、加えて「ハローワーク等において就労に向けた個別支援を受けていること」が求められます。
「個別支援」とは、ハローワーク等の担当者が求職者に対して個別に行う就労支援のことです。求職登録をしているだけでは不十分で、担当者と具体的な求職活動の計画を立てたり、職業適性の確認・応募先の絞り込み・応募書類の書き方指導などを実際に受けている必要があります。採用予定の高年齢者が「ハローワークで個別支援を受けているか」は、紹介状の発行前にハローワーク担当者に確認することが最も確実な方法です。
なお、64歳以下の方は通常の雇用保険被保険者として、65歳以上の方は高年齢被保険者として雇用保険に加入できます(週20時間以上の勤務が前提)。雇用保険に加入できない条件での採用は助成金の対象外です。
定年後の再雇用(自社での再雇用・グループ会社への出向による雇用継続等)は対象外となります。これは「継続雇用」に当たり、新規の雇い入れとは区別されます。
障害者
障害者の区分は複数に分かれており、各区分で支給額と助成期間が異なります。
身体障害者(重度障害者等以外): 身体障害者手帳をお持ちの方で、障害の等級が3〜6級相当の方、または45歳未満の方。
重度身体障害者等: 身体障害者手帳の等級が1〜2級の方、または45歳以上の方。
知的障害者(重度障害者等以外): 療育手帳をお持ちの方で、療育手帳の判定がB(軽度・中度)かつ45歳未満の方。
重度知的障害者等: 療育手帳の判定がA(重度)の方、または45歳以上の方。
精神障害者: 精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方(等級問わず)。精神障害者は一律で「重度障害者等」に分類されます。
発達障害者(手帳なし): 発達障害者支援法第2条第1項に定める発達障害があり、日常生活・社会生活に制限を受けている方。手帳がない場合は医師の診断書等が必要ですが、この場合は特定就職困難者コースでなく「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」が対象になります。
障害種別については採用時に確認が難しい場合もありますが、採用予定の方の同意を得た上でハローワークに確認するか、紹介状に記載された情報を基に判断します。本人の意向に配慮しながら丁寧に確認することが重要です。
母子家庭の母等・父子家庭の父
母子家庭の母等には次のいずれかに該当する方が含まれます。
児童扶養手当を受給している母(離婚・死別等により配偶者のいない状態で18歳以下の子ども等を養育している場合に支給される手当を受給している方)。
配偶者のいない女性(離婚、死別、未婚等)で、現に20歳未満の子どもを扶養している方。
配偶者のいる女性または男性であっても、配偶者が障害等の理由で長期間労働能力を失っており、実質的にひとり親と同様の状況にある方。
父子家庭の父も同様で、児童扶養手当を受給している父が典型的な対象です。
なお、子どもが20歳以上になった場合や、再婚等により配偶者ができた場合には、以後の支給対象期から対象外となる可能性があります(既に申請中の助成金への影響はハローワークに確認してください)。
補完的保護対象者・ウクライナ避難民
補完的保護対象者は、出入国在留管理庁(入管庁)が補完的保護対象者として認定した方です。「補完的保護対象者認定証明書」が交付されており、これが証明書類となります。
ウクライナからの避難民は、在留資格「特定活動(ウクライナ避難民)」で在留している方です。在留カードに「特定活動」と記載されており、入管庁のウクライナ避難民向けのページで詳細を確認できます。
ハローワーク求人票の書き方のコツと「特定求職者」指定の注意点
特定求職者雇用開発助成金を活用するためには、ハローワークへの求人票提出が出発点です。求人票の書き方によって、助成金の対象者が紹介されやすくなるかどうかが変わります。
求人票に明記すべき事項
まず、実際に対象者が担当できる業務内容を具体的かつ正確に記載します。たとえば障害のある方を採用したい場合、「体力的な負担が少ない軽作業」「座り仕事中心」「コミュニケーション不要の単独作業」など、実際の業務の特性を書くことで、対象者にとって「自分でもできそう」と感じる求人票になります。
次に、勤務条件の柔軟性を示します。「週20〜40時間の範囲で相談可能」「勤務時間帯の調整可」「障害の特性に合わせた配慮あり」といった記載が、対象者にとって応募のハードルを下げます。
また、ハローワーク担当者に対して「特定求職者雇用開発助成金の対象者を積極的に採用したい」という意向を求人票上または担当者との面談で伝えることが重要です。担当者が紹介する候補者のリストに、助成金対象者が含まれやすくなります。
「特定求職者指定」の求人票を作成することの意義
ハローワークでは、求人票に「特定求職者雇用開発助成金の対象者を希望する」旨を明示した「特定求職者指定の求人票」を作成することができます。この指定をしておくと、ハローワークの職員が助成金の対象者を優先的に紹介してくれる場合があります。
ただし、この指定をすることは「助成金対象者以外は採用しない」という意味ではなく、「対象者が来た場合は積極的に検討する意向がある」という意思表示です。合理的配慮義務や障害者差別解消法の趣旨に反しないよう、求人票の表現には注意が必要です。
採用選考で対象者を「優遇」することの適法性と注意点
「助成金がもらえるから障害者を採用したい」という採用意思決定は、一見すると「障害を理由とした有利な扱い」に見えますが、法律上は積極的差別解消措置(ポジティブアクション)として認められています。障害者雇用促進法では、事業主が障害者を有利に扱うことを禁じていません。
一方で、助成金の対象外となる属性(例えば30代で障害もなくひとり親でもない求職者)が同等またはそれ以上の適性を持っていたにもかかわらず、「助成金目当て」で対象者を選んだ場合、採用のプロセスについて説明責任が問われる状況が生まれる可能性はあります。採用理由は業務適性・スキルを中心に説明できる状態を保つことが重要です。
また、採用した後に「合理的配慮義務」が発生します。障害者雇用促進法第36条の2・3に基づき、事業主は雇用した障害者に対して、その業務遂行を可能にするための合理的配慮を提供する義務があります。具体的には、業務内容の調整、補助機器の提供、通院のための勤務時間変更、コミュニケーション方法の工夫などが含まれます。助成金を受け取ることと合理的配慮義務の遵守は別物であり、後者は義務として履行する必要があります。
職場定着支援の実務 — 助成金期間が終わっても活躍し続けてもらうために
特定求職者雇用開発助成金は、雇用の開始から一定期間の賃金を補填するものです。助成期間が終了した後も対象者が継続して活躍し続けることが、制度の本来の趣旨です。
定着支援の重要性
助成期間終了後に離職が起きやすいパターンとして次のことが知られています。
職場の同僚との関係がうまく構築できなかった場合(特に精神障害・発達障害のある方は対人関係でつまずきやすい)、担当業務が本人のスキル・体力・認知特性に合っておらず長続きしない場合、定期的なフォローアップ(上司との面談・悩みの相談機会)が設けられていない場合などです。
助成金の受給とは別に、定着支援の仕組みを採用前から設計しておくことが、長期的な雇用継続につながります。
外部支援機関の活用
ジョブコーチ支援(職場適応援助者): 障害のある方の就労定着を支援するため、専門のジョブコーチが職場に入り、本人・事業主・周囲の同僚のコミュニケーション仲介・業務調整の助言等を行います。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)や社会福祉法人等が提供しており、事業主負担が発生する場合とそうでない場合があります。
就労定着支援(就労移行支援事業者等): 障害者総合支援法に基づくサービスで、就労後の定着を最大3年間支援する仕組みです。就労移行支援事業者や生活介護事業者等が担当します。採用した対象者が就労移行支援等のサービスを利用していた場合は、就労後も同機関の支援を継続的に受けてもらうことが職場定着に有効です。
地域障害者職業センター: 職業リハビリテーションの専門機関で、障害者の就職・定着に関する支援や、事業主への支援内容の相談に対応しています。全都道府県に設置されています。
生活困窮者自立支援機関: 生活保護受給者等コースで採用した方の定着支援については、生活困窮者自立支援機関(福祉事務所・自立相談支援機関等)と連携することが有効です。就労後も支援が必要な場合、機関との情報連携が定着率を上げることがあります。
支給額早見表(コース・企業規模・雇用形態別)
特定就職困難者コース
| 対象者区分 | 雇用形態 | 中小企業 合計 | 大企業 合計 | 助成期間 | 期数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 高年齢者(60歳〜)・母子(父子)家庭の親等 | 通常(週30h以上) | 60万円 | 50万円 | 1年 | 2期 |
| 高年齢者(60歳〜)・母子(父子)家庭の親等 | 短時間(週20〜30h) | 40万円 | 30万円 | 1年 | 2期 |
| 身体・知的障害者(重度除く) | 通常(週30h以上) | 120万円 | 50万円 | 2年 | 4期 |
| 障害者全般(重度除く) | 短時間(週20〜30h) | 80万円 | 30万円 | 2年 | 4期 |
| 重度障害者等(重度身体・知的・精神障害者、45歳以上障害者) | 通常(週30h以上) | 240万円 | 100万円 | 3年 | 6期 |
| 重度障害者等 | 短時間(週20〜30h) | 80万円 | 30万円 | 2年 | 4期 |
発達障害者・難治性疾患患者コース
| 対象者区分 | 雇用形態 | 中小企業 合計 | 大企業 合計 | 助成期間 | 期数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 発達障害者・難治性疾患患者 | 通常(週30h以上) | 120万円(2年・4期) | 50万円(1年・2期) | 中小2年/大企業1年 | 中小4期/大企業2期 |
| 発達障害者・難治性疾患患者 | 短時間(週20〜30h) | 80万円(2年・4期) | 30万円(1年・2期) | 中小2年/大企業1年 | 中小4期/大企業2期 |
中高年層安定雇用支援コース
| 対象者区分 | 雇用形態 | 中小企業 合計 | 大企業 合計 | 助成期間 | 期数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 35〜59歳・正規雇用経験が乏しい方 | 正規雇用のみ | 60万円 | 50万円 | 1年 | 2期 |
生活保護受給者等コース
| 対象者区分 | 雇用形態 | 中小企業 合計 | 大企業 合計 | 助成期間 | 期数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 生活保護受給者・生活困窮者(3ヶ月超支援) | 通常(週30h以上) | 60万円 | 50万円 | 1年 | 2期 |
| 生活保護受給者・生活困窮者(3ヶ月超支援) | 短時間(週20〜30h) | 40万円 | 30万円 | 1年 | 2期 |
上記はすべて2026年6月27日時点の情報です。支給額・助成期間は改正により変更される場合があります。申請前に必ずハローワーク・厚生労働省公式サイトで最新情報を確認してください。
申請書類の正式名称・取得先・提出先の詳細
書類の正式名称と様式番号
特定就職困難者コース(第1期申請用):
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)支給申請書(様式第3号)
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)対象労働者雇用状況等申立書(様式第5号)
特定就職困難者コース(第2期以降):
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)支給申請書(様式第4号)
対象者確認票(特定就職困難者コース):
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)対象者確認票(ハローワークから交付)
雇入れ登録届:
- 特定求職者雇用開発助成金(各コース)対象労働者雇入登録届
中高年層安定雇用支援コース専用:
- 特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)対象者確認票(様式第12号中高)
書類の取得先と提出先
取得先:
- 申請様式(第3号・第4号・第5号等): 管轄のハローワーク(窓口で配布)または厚生労働省ウェブサイトからダウンロード
- 電子申請の場合: e-Gov(国の電子申請システム)または厚生労働省電子申請ページ
- 対象者証明書類(手帳・診断書等): 市区町村・指定医療機関・福祉事務所等
提出先:
- 管轄の都道府県労働局またはハローワーク(対応している労働局・ハローワークは都道府県によって異なります)
- 電子申請: 厚生労働省電子申請ページ( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00037.html )
問い合わせ先:
管轄の都道府県労働局(ハローワーク)の職業安定部 訓練・人材ニーズ室(または就業支援室等、局によって部署名が異なる場合があります)。全国のハローワーク一覧は厚生労働省のウェブサイトで検索できます。
書類の保管期間
申請書類および添付書類は、支給決定後も少なくとも5年間保管することが求められます(助成金の不正受給が発覚した場合の証拠確認のため)。また、賃金台帳・出勤簿等の労働関係書類は、労働基準法第109条に基づき5年間(当面の間3年間)の保存義務があります。
保管の際は、対象者ごとにフォルダを分けて管理することをお勧めします。紹介状の写し・雇用契約書・対象者確認票・各期の支給申請書・賃金台帳・出勤簿をセットで保存しておくことで、後日問い合わせがあった際にスムーズに対応できます。支給対象期ごとに申請日・受付番号・支給決定通知書を記録しておくと、複数期にわたる申請の管理がしやすくなります。
「申請代行を依頼するか・自分でやるか」の判断基準
特定求職者雇用開発助成金の申請は、事業主自身が行うことが原則です。ただし、書類が複雑で不安な方は、社会保険労務士(社労士)に相談・依頼することもできます。
自分で申請するのが向いているケース
書類が少ないコース(高年齢者・生活保護受給者等コースなど、書類点数が比較的少ない)で、ハローワークの担当者が丁寧に案内してくれる場合は、自社申請で対応できる可能性が高いです。
ハローワークの窓口では、書類の書き方について個別に説明を受けることができます。特に初めて申請する場合は、担当者に「初めて申請するのですが、どの書類が必要か教えてください」と問い合わせると、必要書類の一覧と記入のポイントを案内してくれます。
社労士に依頼するのが向いているケース
重度障害者等を採用して3年間・6期にわたる申請が必要な場合、複数の対象者を同時に採用して並行して申請管理が必要な場合、採用の経緯が複雑で「紹介状の取得順序が正しかったか」「過去3年以内の就労歴がないか」等の確認が必要な場合は、社労士の専門的なアドバイスが助けになります。
なお、社労士への依頼費用は助成金から直接充当できるわけではありませんが、助成金を受け取ってから費用を支払うという段取りを取ることが一般的です。費用は社労士事務所によって異なります(成功報酬型・固定報酬型等)。
本記事は情報提供を目的としたものであり、申請代行・書類作成代行の提供は行いません。申請代行は社会保険労務士法に基づく社会保険労務士の業務範囲です。
社労士との連携における注意点
社労士に依頼する場合でも、事業主自身が助成金の仕組みと申請要件を理解しておくことは非常に重要です。社労士は申請書類の作成・代行を担いますが、採用プロセスの設計(求人票の作成・面接の実施・雇用契約書の内容等)は事業主が主体的に行う必要があります。特に「ハローワーク紹介の順序を守ること」「雇用契約書に自動更新を明記すること」は事業主側の判断と実行が問われる部分であり、社労士が関与していてもそこでミスが起きると不支給になります。社労士と連携する場合は、採用プロセス全体の流れについて最初に確認を行い、どの段階で社労士に引き継ぐかを明確にしておくことが、申請漏れや不支給を防ぐ上で有効です。