特別障害者手当とは何か——在宅の重度障害者が受け取れる国の手当を、申請の実務まで整理する

本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・受付手続きはいずれも変更されることがあるため、申請前に必ず市区町村窓口または厚生労働省の公式情報でご確認ください。

この記事が整理すること

この記事は、在宅で生活している重度の障害のある方(20歳以上)とそのご家族に向けて、「特別障害者手当」という国の制度を実務の視点から整理するものです。

この手当は毎年改定され、2026年4月時点での支給月額は30,450円となっています。金額だけを見ると地味に感じる方もいるかもしれませんが、年額に換算すると365,400円になります。年4回、まとめて振り込まれる制度のため受給者の家計にとっては意味のある金額です。にもかかわらず、「こんな制度があることを知らなかった」という声は今も多く、実際に窓口に相談する前に制度の存在を調べるだけで受給が始まるケースも珍しくありません。

この記事を読んで解決できること、あるいは解決の糸口をつかめることを、最初に整理しておきます。

一つ目は、「障害年金と同じ制度だと思っていた」という誤解の解消です。特別障害者手当は障害年金とは全く別の制度で、別の根拠法に基づいており、別の窓口に申請するものです。障害年金をすでに受け取っていても、特別障害者手当を別途申請して両方受給できる場合があります。

二つ目は、「手帳を持っていないと申請できないと思っていた」という誤解の解消です。特別障害者手当の申請に、身体障害者手帳や療育手帳は必須要件ではありません。手帳を持っていなくても、医師が診断書を作成し、市区町村が認定すれば受給できます。

三つ目は、「認定基準が難しくて自分が対象かどうかわからない」という問いへの回答です。この記事では認定の根拠となる政令別表の中身を具体的に解説します。

四つ目は、「申請してから何をすれば受給できるか、手順が分からない」という不安の解消です。必要書類の正式名称と取得先、審査の流れ、支給開始までの期間を具体的に示します。

五つ目は、「所得制限があると聞いたが、計算の仕方が分からない。障害年金をもらっていると引っかかるのか」という疑問への回答です。所得制限の計算に年金収入が算入される仕組みと、それが実際にどのような影響を及ぼすかを具体例で説明します。

本記事は制度情報の提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成の代行・個人の受給可否の判定は行いません。個別の事情については、市区町村窓口にご相談ください。

制度の全体像

特別障害者手当は、特別障害者手当等の支給に関する法律(昭和50年法律第26号)を根拠とする国の制度です。財源は国と都道府県が分担しており、実際の認定・支給事務は市区町村が行います。

誰を対象にしているかを一言で言えば、「在宅で生活していて、障害が極めて重く、日常生活のあらゆる場面で常時特別な介護が必要な20歳以上の人」です。

以下の表に、制度の概要を示します。

項目内容
根拠法特別障害者手当等の支給に関する法律(昭和50年法律第26号)
支給月額30,450円(2026年4月改定後)
支給対象年齢20歳以上
支給要件在宅・著しく重度の障害・常時特別な介護が必要
申請窓口住所地の市区町村(障害福祉課等)
認定機関都道府県(審査・認定)+市区町村(申請受付・支給)
支給スケジュール毎年2月・5月・8月・11月(各月の前月分まで3か月分)
所得制限あり(本人・配偶者・扶養義務者の3つで別々に設定)
障害者手帳必須ではない(医師の診断書で判定)
認定までの期間申請から2〜3か月程度

この手当は、障害年金や他の手当と並立して受給できる場合があります。ただし、障害年金の受給額が「所得」として算定される点に注意が必要です(後の章で詳しく説明します)。

また、20歳未満の重度障害のある子どもに対しては「障害児福祉手当」という別の制度があります。特別障害者手当と障害児福祉手当はどちらも同じ法律に基づきますが、対象年齢で分かれています。20歳になった時点で障害児福祉手当の受給が終了し、特別障害者手当への移行が必要になります。

関連する手当との位置づけの違いを整理すると以下のようになります。

制度名対象年齢支給を受ける人2026年月額
特別児童扶養手当20歳未満の障害児を育てる者保護者1級:58,450円、2級:38,930円
障害児福祉手当20歳未満の重度障害児障害のある本人約16,560円(要最新確認)
特別障害者手当20歳以上の重度障害者障害のある本人30,450円
障害年金要件を満たす障害者障害のある本人1級:88,260円/月、2級:70,608円/月(基礎年金・2026年度)

特別障害者手当は障害年金とは異なり、保険料の納付要件がありません。また、障害年金は年金制度(国民年金・厚生年金)の中の給付ですが、特別障害者手当は福祉手当の枠組みで位置づけられています。

【無料サンプル】「障害年金を受給しながら特別障害者手当に申請できるか」を1ケースだけ無料で全部見せます

この制度で読者の方が最も多く疑問に感じるのは、「障害年金をすでに受け取っている。そのうえで特別障害者手当も申請して受給できるのか、それとも引っかかってしまうのか」という点です。ここでは具体的な1ケースを通じて、判断の流れを全部見せます。

想定するのは以下のケースです。

まず、このAさんが「特別障害者手当の支給対象者に当たるか」という認定要件の確認から始めます。

認定の核心は「著しく重度の障害があり、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態かどうか」です。Aさんの両下肢機能の著しい障害は、後の章で詳しく説明する政令別表アに相当します。もう一つ別表アに相当する状態(または別表イに相当する2つの状態)があれば、認定基準を満たす可能性が高くなります。

ここでは仮に、両下肢機能の著しい障害(別表ア)に加え、体幹機能の著しい障害(別表ア)も認められるという前提で話を進めます。この場合、別表ア障害が2つ重なっており、認定基準の「別表ア2つ以上」を満たす可能性があります。ただし最終的な認定は医師の診断書をもとに都道府県が行いますので、この判断はあくまで可能性の例示です。

次に、「所得制限に引っかかるか」を確認します。ここが、障害年金を受給している方が最も不安を持ちやすい部分です。

特別障害者手当の所得制限において重要なのは、「障害年金等の公的年金(非課税であっても)は所得に算入される」という点です。所得税の計算では障害年金は非課税扱いですが、特別障害者手当の所得審査ではカウントされます。

Aさんの計算を具体的に進めます。

Aさんは独身で扶養親族なし、収入は障害基礎年金2級のみ(年額約847,296円)です。

まず、特別障害者手当の所得計算方法を確認します。所得の計算は住民税の「合計所得金額」をベースに、給与所得または公的年金等にかかる所得がある場合は合計金額から10万円を控除した額を基準にして、そこから各種控除(障害者控除・医療費控除等)を差し引いた額が「認定所得額」になります。

公的年金等の場合、年金収入額から公的年金等控除を差し引いたものが「年金にかかる所得」です。公的年金等控除額は受給者の年齢(65歳未満か65歳以上か)と年金収入額によって変わります。Aさんは40代のため65歳未満のルールを適用します。

2026年度現在、65歳未満で年金収入が130万円未満の場合の公的年金等控除額は60万円とされています(所得税法別表第5号参照、要最新確認)。

Aさんの年金収入が約847,296円のため、年金にかかる所得は:

847,296円 − 600,000円(公的年金等控除)= 247,296円

次に10万円を控除します:

247,296円 − 100,000円 = 147,296円

ここから各種控除(Aさんの場合は少なくとも障害者控除として所得税上は27万円または40万円が適用されます。ただし特別障害者手当の所得審査では「特別障害者控除」として別の控除額が適用されます。実際の控除方法は市区町村窓口で確認が必要です)を差し引いた残りが認定所得額となります。

仮にAさんが適用される控除が所得から完全に差し引かれる場合、認定所得額は0に近くなり、扶養親族0人の所得制限限度額(3,661,000円)を大きく下回ります。この場合、所得制限は問題なく通過できます。

結論として、このケースでは、認定基準と所得制限の両方で受給できる可能性が高いと言えます。ただし、認定は医師の診断書をもとに都道府県が個別に判断するものであり、ここで示した計算はあくまで制度の仕組みを理解するための例示です。

実際に申請するには、市区町村の障害福祉課等の窓口に相談し、所定の診断書(「特別障害者手当認定診断書」)を用意します。診断書は障害の種類ごとに様式が異なり、窓口から交付されます。費用は病院側が設定するため数千円から数万円の幅がありますが、目安として1万円前後のケースが多いようです(窓口または医療機関に確認してください)。

申請から認定まで2〜3か月程度かかりますが、認定された場合は申請した月の翌月分から支給が始まります。Aさんが仮に6月に申請して8月に認定されたとすると、支給は7月分から開始され、最初の振込は11月(8・9・10月分)になります。

このように、「障害年金をもらっているから特別障害者手当は無理だ」と諦める必要はなく、所得制限の計算上は問題なく通過できるケースが多いのです。なぜなら特別障害者手当の所得制限ライン(扶養なし:3,661,000円)は比較的高めに設定されており、障害年金のみを受給している方の多くは、この基準を超えません。

ただし、公的年金は所得に算入されるため、他の収入(給与等)が加わると合算額が上がり、所得制限を超える可能性が出てきます。複数の収入源がある方は丁寧に確認する必要があります。

この無料サンプルでは、所得計算の仕組みと1ケースの判断の流れを示しました。複数ケースの計算例(障害年金と給与収入が重なるケース、扶養親族がいるケース等)、申請書類の正式名称と書き方の注意点、認定診断書の取得ポイント、FAQ、チェックリスト、さらに「手帳を持っていない方の申請」「扶養義務者の所得が高い場合の対処」「現況届の仕組み」「他制度との組み合わせ」は、この続きで解説します。

ここから先は、申請に直結する実務です。

認定基準の詳細:政令別表を読み解く

特別障害者手当の認定基準は、根拠法の政令(特別障害者手当等の支給に関する法律施行令)の「別表」に定められています。競合記事の多くは「身体障害1〜2級程度の重複」という表現で止まっていますが、実際の認定は手帳の等級ではなく、この別表の基準に基づいて判断されます。手帳を持っていない方でも申請できる理由はここにあります。

別表アとは何か

別表アは、それだけで「著しく重度の障害」と言える状態を列挙した基準です。この別表アに2つ以上該当すれば、認定基準を満たす可能性があります。

別表アに示されている障害の例として、複数の自治体の公式情報から確認できる主なものを整理します。

眼に関しては、両眼の視力がそれぞれ0.03以下の状態、または一眼の視力が0.04でもう一眼が手動弁以下の状態、またはゴールドマン型視野計による測定で両眼の1/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつ1/2視標による両眼中心視野角度が28度以下の状態、または自動視野計による測定で両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下の状態などが該当します。

聴覚・耳に関しては、両耳の聴力レベルが100デシベル以上の状態(ほぼ聴力が失われている状態)が該当します。

上肢・手に関しては、両上肢の機能に著しい障害を有するもの、または両上肢の全ての指を欠くもの、または両上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するものが該当します。

下肢に関しては、両下肢の機能に著しい障害を有するもの、または両下肢を足関節以上で欠くものが該当します。

体幹に関しては、体幹の機能に座っていることができない程度または歩くことができない程度の著しい障害を有するものが該当します。

精神・知的に関しては、精神の障害であって、前記各号と同程度以上と認められるものが該当します。具体的には、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ会話による意思の疎通が不可能か著しく困難なもので、知能指数がおおむね20以下に相当するものがこの基準に含まれます。

内部疾患・その他については、前記各号と同程度以上の障害を有するものとして政令で定めるものが該当します。重度の心臓機能障害、腎臓機能障害、肝臓機能障害、呼吸器機能障害、膀胱・直腸機能障害、小腸機能障害などで日常生活に著しい制限を受ける状態が含まれます。

別表イとは何か

別表イは、別表アよりも一段軽い状態ですが、これが2つ以上重なって別表ア1つと組み合わさることで認定基準を満たすものです。単独では認定されませんが、組み合わせで重要な意味を持ちます。

別表イに示されている障害の主な例を整理します。

眼に関しては、両眼の視力がそれぞれ0.07以下の状態などが該当します(別表アは0.03以下なので、0.03を超えて0.07以下の範囲がイに当たります)。

聴覚に関しては、両耳の聴力レベルが90デシベル以上の状態が該当します(別表アは100dB以上)。

平衡機能に関しては、平衡機能の著しい障害が該当します。

咀嚼・嚥下に関しては、咀嚼機能の喪失が該当します。

音声・言語機能に関しては、音声機能または言語機能の喪失が該当します。

その他、前記と同程度以上の障害として政令で定めるものが含まれます。

認定の3パターン

政令別表に基づく認定には3つのパターンがあります。

パターン1は「別表ア+別表ア」です。別表アに該当する障害が2つ以上重なる場合です。たとえば、視力が両眼0.03以下(別表ア)かつ体幹機能に座位が取れない障害(別表ア)がある場合が典型例です。

パターン2は「別表ア1つ+別表イ2つ以上」です。別表アに該当する障害が1つあり、さらに別表イに該当する障害が2つ以上重なる場合です。たとえば、両耳の聴力が100dB以上(別表ア)で、視力が0.07以下(別表イ)かつ平衡機能の著しい障害(別表イ)がある場合です。

パターン3は「これらと同程度以上」です。上記2パターンに当てはまらなくても、全体として同程度以上の重篤な状態と認められる場合です。このパターンは難病や重度の精神障害など、障害の種類や組み合わせが多様なケースで適用されることがあります。

手帳と認定基準の関係

身体障害者手帳の等級は、認定基準に相当するかどうかの「参考」にはなります。おおむね身体障害者手帳1・2級に相当する状態、療育手帳で最も重い区分(自治体によってA1・最重度等)に相当する状態が目安とされることがあります。

ただし、手帳の等級と特別障害者手当の認定基準は別の基準体系です。手帳が1・2級であっても、重複していなければ認定されないことがありますし、逆に手帳を持っていなくても、医師の診断書が政令別表の基準を満たすと判断されれば認定される場合があります。

手帳を持っていない方が申請する場合の流れは続きの別の章で詳しく説明しますが、結論として「手帳がないから申請できない」という認識は誤りです。

支給対象者の4つの要件

特別障害者手当を受給するには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

要件1:年齢が20歳以上

支給開始年齢は20歳です。20歳未満の重度障害のある方は、特別障害者手当ではなく「障害児福祉手当」の対象となります。20歳になった月の翌月から特別障害者手当への移行が必要なため、障害児福祉手当を受給している方のご家族は、本人が20歳になる前後のタイミングで市区町村窓口に相談することをおすすめします。

要件2:在宅で生活していること

施設に入所している方、または病院・診療所・介護老人保健施設等に継続して3か月を超えて入院している方は、手当が支給されません(受給権が停止または失権します)。

「施設」の定義については、支給停止・失権の章で詳しく説明します。グループホームや有料老人ホームに住んでいる方は、基本的には「在宅」として扱われる場合があります。

要件3:著しく重度の障害があること

前の章で説明した政令別表の認定基準を満たす状態にあることが必要です。この判断は医師の診断書に基づいて行われ、都道府県が最終的に認定します。

要件4:日常生活において常時特別の介護を必要とする状態

「常時特別の介護が必要」という要件は、単に障害が重いだけでなく、日常生活全般(食事・排泄・移動・コミュニケーション等)で継続的・反復的な介護が必要な状態を指します。この要件は診断書の記載内容に大きく左右されるため、医師に状態を正確に記載してもらうことが重要です。

受給できない場合(除外要件)

上記4つの要件を満たしていても、以下に該当する場合は受給できません。

本人・配偶者・扶養義務者のいずれかの所得が制限額を超えている場合は支給されません。また、国外に転出している場合も対象外です。

支給金額と所得制限の詳細

支給月額

2026年4月分から、特別障害者手当の月額は30,450円です。年額に換算すると365,400円になります。

この金額は毎年物価等に応じて改定されます。法律上は「当該年度の4月以降の手当の額の改定基準は、消費者物価指数の変動に応じて行う」とされています。2026年の改定前(令和7年度)は月額29,590円でしたが、2026年4月から30,450円に引き上げられています(令和6年度は28,840円。※確認日2026年6月27日。最新の公式情報で必ずご確認ください)。

支給スケジュール

特別障害者手当は、毎年2月・5月・8月・11月の4回、各月の前月分までの3か月分がまとめて支給されます。具体的には以下のようになります。

2月の支給:前年の11月分・12月分・当年1月分の合計3か月分

5月の支給:2月分・3月分・4月分の合計3か月分

8月の支給:5月分・6月分・7月分の合計3か月分

11月の支給:8月分・9月分・10月分の合計3か月分

受給開始の月は「申請した月の翌月分から」です。たとえば4月中に申請が受理されれば、5月分から支給の権利が生まれ、最初の入金は8月(5月・6月・7月分として91,350円)になります。

所得制限の仕組み

特別障害者手当には、3種類の所得制限があります。本人の所得・配偶者の所得・扶養義務者の所得のうち、いずれか一つでも制限を超えると支給が停止されます。

本人の所得制限限度額

本人(受給資格者)の前年の所得が以下の金額を超えると、その年の8月分から翌年7月分の手当が支給停止になります。

扶養親族等の数所得制限限度額(以下の金額まで受給可)
0人3,661,000円
1人4,041,000円
2人4,421,000円
3人4,801,000円
4人5,181,000円
5人5,561,000円
6人以上5人の金額から1人につき380,000円を加算

(出典:札幌市公式サイト・令和7年8月分手当以降の基準として確認。令和8年度も同額であることを複数自治体ページで照合。確認日2026年6月27日)

配偶者・扶養義務者の所得制限限度額

配偶者または扶養義務者の前年の所得が以下の金額以上の場合、手当が支給停止になります。

扶養親族等の数所得制限限度額(以上の金額から支給停止)
0人6,287,000円
1人6,536,000円
2人6,749,000円
3人6,962,000円
4人7,175,000円
5人7,388,000円
6人以上5人の金額から1人につき213,000円を加算

(出典:同上)

所得制限の適用期間

所得制限の審査は前年の所得に基づきます。毎年8月に「所得状況届」を提出し、前年の所得が審査されます。所得制限に引っかかった場合は、当年の8月分から翌年7月分まで手当が停止されます。所得が制限額を下回った翌年には、再び8月分から支給が再開されます。

加算規定

所得制限限度額は、一定の条件に該当する場合に加算されます。本人の所得については、扶養親族等の中に70歳以上の同一生計配偶者または老人扶養親族がいる場合は1人につき10万円、特定扶養親族(19〜22歳)または控除対象扶養親族(19歳未満)がいる場合は1人につき25万円が加算されます。配偶者・扶養義務者の所得については、扶養親族等の中に老人扶養親族がいる場合は1人につき6万円が加算されます。

所得の計算方法

ここが最も複雑な部分です。「所得」は収入額そのものではなく、住民税の計算ベースの「合計所得金額」から特別障害者手当独自の控除を差し引いた額が使われます。

給与収入の場合:給与収入から給与所得控除(年収によって変わります)を差し引いた「給与所得」が基準になります。ここからさらに10万円を控除した額が「認定の基礎所得額」になります。

公的年金収入の場合:公的年金等収入から公的年金等控除(65歳未満は最低60万円、65歳以上は最低110万円)を差し引いた「公的年金等にかかる所得」が基準になります。ここからさらに10万円を控除した額が「認定の基礎所得額」になります。

重要なのは、「障害年金等の公的年金は所得税上は非課税であっても、特別障害者手当の所得審査では所得として算入される」という点です。これは法令で明確に定められており、年金収入がある方は必ずこの計算を確認する必要があります。

認定の基礎所得額からさらに差し引ける控除項目には、以下のものがあります(一般的なものを列挙しますが、正確な控除項目・控除額は市区町村窓口で確認してください)。

障害年金との関係:よくある誤解と実際の計算

誤解その1:「障害年金をもらっていると特別障害者手当はもらえない」

これは誤解です。特別障害者手当と障害年金は別の制度であり、原則として両方を受給できます。ただし、障害年金の受給額が特別障害者手当の所得審査において「所得」として算入されるため、年金収入が高い場合は所得制限に影響することがあります。

誤解その2:「障害年金は非課税だから所得に入らない」

所得税の計算では障害年金は非課税です。しかし特別障害者手当の所得審査は、所得税のルールとは異なる独自のルールで計算されます。法令により、公的年金等は特別障害者手当の所得審査において「所得」に含まれます。

実際の計算例(障害年金のみの収入がある場合)

Aさん(40代・独身・扶養なし)が障害基礎年金2級のみを受給している場合を例に計算します。

年金年額:70,608円 × 12か月 = 847,296円

65歳未満の場合の公的年金等控除(収入130万円未満):600,000円

年金にかかる所得:847,296円 − 600,000円 = 247,296円

さらに10万円を控除:247,296円 − 100,000円 = 147,296円

ここから障害者控除等の適用があります。特別障害者手当の所得算定では独自の控除規定がありますが、仮に障害者控除として27万円(普通障害者)が適用されれば:

147,296円 − 270,000円 = 0円(マイナスになる場合は0として扱われます)

認定所得額はほぼゼロとなり、扶養なし本人の所得制限限度額3,661,000円を大きく下回ります。つまり年金のみの収入であれば、所得制限に引っかかる可能性は低いです。

実際の計算例(年金に加えてパートタイム収入がある場合)

Bさん(50代・独身・扶養なし)が障害基礎年金2級(年額847,296円)に加え、年間120万円の給与収入がある場合を考えます。

給与にかかる所得(給与所得):120万円 − 55万円(給与所得控除)= 65万円

年金にかかる所得:847,296円 − 600,000円 = 247,296円

合算:650,000円 + 247,296円 = 897,296円

10万円控除後:897,296円 − 100,000円 = 797,296円

ここから各種控除を差し引きますが、仮に控除後の認定所得額が797,296円であれば、扶養なし本人の制限額3,661,000円をまだ下回っています。このケースでも受給できる可能性があります。

所得が制限ラインに近くなるケース

問題が生じやすいのは、本人(または配偶者・扶養義務者)の収入が複数の源泉から入っている場合や、配偶者・扶養義務者の所得が6,287,000円(扶養0人の場合)に近い場合です。

たとえば、同居している親(扶養義務者として認定される範囲内)の年収が700万円を超えるような場合は、配偶者・扶養義務者の所得制限(扶養0人で6,287,000円未満)に引っかかる可能性があります。この場合でも、控除の適用によって実際の認定所得額は年収額より低くなりますので、諦める前に窓口で計算してもらうことをおすすめします。

障害年金と特別障害者手当の合算受給例

障害基礎年金2級(月額70,608円)と特別障害者手当(月額30,450円)を合算すると、月額合計101,058円になります。年額では約121万2,696円となり、障害年金のみの年額(約847,296円)と比べて約365,400円の上乗せになります。

障害厚生年金の場合は等級・加入期間によって金額が大きく異なりますが、特別障害者手当は加算として乗せられる位置づけです。

扶養義務者の範囲と所得制限

扶養義務者とは誰か

特別障害者手当の所得制限において「扶養義務者」とは、民法第877条第1項に定める者のうち、受給資格者(手当を受ける本人)と生計を一にしている者を指します。

民法第877条第1項に定める扶養義務者は、直系血族と兄弟姉妹です。具体的には、父・母・祖父・祖母・曽祖父・曽祖母(直系尊属)、子・孫・曾孫(直系卑属)、兄弟・姉妹が含まれます。

「生計を一にしている」という要件は、同じ家計で生活していることを意味します。同居している場合は原則として生計を一にしているとみなされますが、単身赴任などで住居が別でも家計が実質的に一体であれば生計同一とみなされる場合があります。また、二世帯住宅に住んでいても生計を一にしているとみなされることがあります。

複数の扶養義務者がいる場合

受給者と生計を一にする扶養義務者が複数いる場合(たとえば父と母が同居している場合)、所得制限の審査対象になるのは最も所得が高い1人だけです。

これは受給者にとって有利な制度です。たとえば父の年収が500万円、母の年収が100万円だとすると、所得制限の審査では父の所得のみが審査され、父の認定所得額が限度額(6,287,000円未満)を下回っていれば、手当の支給が認められます。

配偶者の所得制限

受給資格者に配偶者がいる場合は、配偶者の所得も別途審査されます。配偶者の所得制限の枠は、扶養義務者と同じ基準(扶養0人で6,287,000円未満)で設定されています。

申請の具体的な手順

手順1:窓口への事前相談

まず、住所地の市区町村の担当窓口(障害福祉課、福祉課、支援課など窓口の名称は自治体によって異なります)に相談します。電話での事前相談も可能です。

「特別障害者手当の申請について相談したい」と伝えれば、担当者が認定基準の概要を説明してくれます。この段階で、自分または家族の障害の状態が認定基準に近いかどうかを確認します(ただし窓口では「医師の診断書を見ないと確定的なことは言えない」というスタンスが多いです)。

手順2:診断書の取得

診断書は、市区町村窓口から「特別障害者手当認定診断書」を受け取り、主治医(または専門医)に記入してもらいます。診断書の様式は障害の種類によって異なります。

主な診断書の種類は以下の通りです(正式名称は自治体・年度によって変わることがあります。必ず窓口で確認してください)。

身体障害(視覚)用、身体障害(聴覚・平衡・音声・言語・そしゃく機能)用、身体障害(肢体不自由)用、身体障害(心臓機能・腎臓機能・呼吸器機能等の内部障害)用、精神障害(知的障害を含む)用、疾病・難病による障害用、などがあります。

複数の障害がある場合は、それぞれの診断書を用意する必要がある場合があります。

診断書の作成費用は医療機関が設定するため一律ではありませんが、5,000円から20,000円程度が多いとされています(社会的な参考値として。必ず医療機関に事前に確認してください)。重度障害の認定を目的とした診断書のため、一般的な診断書よりも詳細な記載が求められます。主治医に「特別障害者手当の認定診断書である」と伝えた上で、日常生活での介護の必要性や障害の状態を詳しく記載してもらうことが重要です。

なお、すでに身体障害者手帳1級または2級の一部(肢体不自由・視覚障害等の特定の種類)を持っている方や、障害基礎年金1級を受給している方は、診断書の提出が省略できる場合があります(省略できる条件は市区町村窓口で確認してください)。

手順3:申請書類の準備

認定請求書類として必要なものは以下の通りです。ただし市区町村によって求める書類が異なる場合があるため、必ず事前に窓口で確認してください。

「特別障害者手当認定請求書」(市区町村窓口に様式あり)は申請の中心となる書類です。受給資格者の氏名・住所・障害の状態・口座情報等を記入します。

「特別障害者手当認定診断書」(市区町村窓口から受け取り、主治医に記入してもらいます)は前の手順で説明した通りです。

「特別障害者手当所得状況届」(市区町村窓口に様式あり)は、受給資格者・配偶者・扶養義務者それぞれの前年の所得状況を申告する書類です。

本人確認書類として、マイナンバーカード(または通知カードと本人確認書類)が必要です。

受給資格者名義の金融機関の口座情報(通帳またはキャッシュカード)が必要です。手当の振込先として使用されます。

戸籍謄本(続柄確認のため求められる場合があります。窓口で確認してください)。

同一世帯でない扶養義務者の所得証明書(扶養義務者が別居の場合に求められることがあります)。

各種障害者手帳の写し(持っている場合。持っていなくても申請は可能です)。

手順4:申請書類の提出

準備した書類一式を市区町村窓口に提出します。窓口での受付後、市区町村から都道府県へ書類が送られ、都道府県が認定審査を行います。

提出から認定・通知まで2〜3か月程度かかるのが一般的です。

手順5:認定・支給開始

認定通知書が届き次第、申請した月の翌月分から支給が始まります。支給は年4回(2月・5月・8月・11月)に3か月分まとめて振り込まれます。

認定されない場合は不認定通知が届きます。不認定に納得できない場合は、審査請求(不服申し立て)を行うことができます。

手帳を持っていない方が申請する場合

特別障害者手当の申請において、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳は必須要件ではありません。「手帳を持っていないと申請できない」という誤解は特に根強く、このことで申請を諦めている方もいます。

手帳を持っていない方が申請する場合の流れは基本的に同じですが、「認定診断書」の内容が審査の全てになります。

主治医に診断書を書いてもらう際のポイントは以下の通りです。

まず、医師に「特別障害者手当の認定診断書であること」を伝えます。一般的な診断書や障害者手帳用の診断書とは異なる専用様式です。

次に、日常生活での介護の必要性を具体的かつ詳細に記載してもらいます。食事・入浴・排泄・移動・コミュニケーション・服薬管理など各場面での介護の必要性を、「常時介護が必要」であることが伝わるよう記録してもらいます。単に障害名や数値(視力〇〇等)だけでなく、生活上の支障の内容と程度を記載してもらうことが重要です。

もし手帳取得の可能性があるなら、特別障害者手当の申請と並行して手帳申請も検討することが実務上は効率的です。手帳を持っていれば、場合によって診断書提出の省略ができたり、審査がスムーズになることがあります。

支給停止・失権の条件

受給開始後も、以下の状況が生じた場合は支給が停止または失権(受給資格喪失)します。

施設入所による停止・失権

特別障害者手当は「在宅」の方を対象にしているため、一定の施設に入所した場合は受給できなくなります。

支給停止・失権の対象となる施設の例は以下の通りです(法令上の名称で記載します。施設の種類は変更されることがあります)。

障害者支援施設(障害者総合支援法に規定する施設。ただし「生活介護」を受けている場合に限る場合があります。詳細は窓口で確認してください)、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、養護老人ホーム、療養介護を行う病院(障害者総合支援法の療養介護)などが対象です。

一方で、以下の住まい方は「在宅」として扱われるため、手当の支給が継続できる場合があります。

グループホーム(共同生活援助)、軽費老人ホーム(ケアハウス等)、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、自立訓練施設(通所)などが該当します。

ただし、グループホームの種類や内容によって取り扱いが変わることがあります。グループホームに入居している、または入居を検討している場合は、必ず市区町村窓口に確認してください。

入院3か月超による停止・失権

病院または診療所・介護老人保健施設等に継続して3か月を超えて入院している場合は、手当が支給されません。「継続して」3か月超が要件のため、一時的な退院や外泊を挟むと継続入院の日数計算がリセットされる場合があります(詳細は窓口で確認してください)。

なお、入院日数が3か月を超えた月の翌月分から停止となります。入院していても3か月以内であれば支給は継続します。

所得超過による停止

前章で説明した所得制限を超えた場合は、その年の8月分から翌年7月分まで停止されます。翌年に所得が制限を下回れば、再び8月から再開します。

認定基準非該当による失権

障害の状態が改善されるなどして、認定基準を満たさなくなった場合は失権します。

国外転出・死亡

国内に住所がなくなった場合や、受給資格者が死亡した場合は失権します。

支給停止・失権になった場合の届け出

施設入所・長期入院・状態変化などが生じた場合は、速やかに市区町村に届け出る義務があります。届け出が遅れて過剰に支給された場合は返還を求められることがあります。

現況届の仕組み

特別障害者手当を受給している方は、毎年8月に「現況届」を提出する必要があります。現況届は、「現在も受給要件を満たしているか」を毎年確認するための手続きです。

現況届の提出期間は、毎年8月11日から9月10日が標準的とされています(自治体によって多少前後することがあります)。市区町村から事前に案内が郵送されます。

提出が必要な書類は主に以下の通りです。

「所得状況届」(受給資格者・配偶者・扶養義務者それぞれの前年所得を申告)と、該当する場合は「状態確認書類」(在宅であることの確認書類等)です。

現況届を期限内に提出しないと、8月分以降の手当が受け取れなくなります。また、2年以上にわたって現況届が未提出のままでいると、受給資格を失うことになります。

有期認定を受けている方(定期的に診断書を再提出する必要がある方)は、現況届に加えて更新用の認定診断書も提出する必要があります。有期認定の期間と診断書の提出時期は認定通知書に記載されています。

年齢軸で整理する障害関連手当の使い分け

この制度をより深く理解するために、年齢軸に沿って関連する手当を整理します。年齢によって「どの制度を使うか」が変わるという点は、支援者の立場からも重要なポイントです。

0歳〜19歳:特別児童扶養手当(保護者が受給)

20歳未満の重度・中度の障害児を育てる保護者に、「特別児童扶養手当」が支給されます。受給者は保護者(父または母)です。障害の程度に応じて1級と2級に分かれ、2026年度現在、1級は月額58,450円、2級は月額38,930円です(確認日2026年6月27日)。

この手当は児童の障害に対して保護者が受け取るものであり、児童が成長して20歳になると自動的に終了します。

0歳〜19歳:障害児福祉手当(本人が受給)

20歳未満の重度障害のある本人に支給されます。特別児童扶養手当(保護者受給)と異なり、この手当は障害のある本人が受給者になります。障害の程度は特別障害者手当と同様に「著しく重度」で「常時特別の介護が必要」な状態を要件とします。支給月額は約16,560円(令和8年度、複数情報源から参照。要最新確認)。

一つ重要な点として、「障害を支給理由とする年金を受けているとき」は障害児福祉手当が支給されません。これは障害年金や特別障害給付金を受給している場合に適用される除外要件です(一方、特別障害者手当には同様の除外要件はなく、障害年金と重複して受給できます)。

20歳以上:特別障害者手当(本人が受給)

この記事の主題です。20歳以上の重度障害者本人が受給者となります。

20歳になるタイミングの移行について

障害児福祉手当を受給している方が20歳になった場合は、原則として特別障害者手当への切り替え申請が必要です。ただし自動的に切り替わるわけではなく、本人または保護者が市区町村窓口に申請する必要があります。20歳の誕生月の前後に窓口に相談して手続きの流れを確認しておくと、受給の空白期間が生じにくくなります。

地域別の上乗せ支援との組み合わせ

特別障害者手当は国の制度ですが、自治体独自の支援と組み合わせることで、受け取れるサポートの総量を増やすことができます。

自治体独自の障害者手当

東京都などの一部の自治体は、国の特別障害者手当に加えて独自の「重度心身障害者手当」等を設けています。東京都の場合、都が独自に月額一定額を上乗せ支給する制度があります(金額・要件は自治体ごとに異なります。必ず市区町村窓口に確認してください)。

福祉タクシー券・移動支援

多くの市区町村では、重度の障害のある方を対象に「福祉タクシー券」を交付しています。タクシー運賃の一部に充当できる利用券が年間数十枚単位で交付されるケースが多く、移動コストの軽減に役立ちます。

東京都内の各区の例では、1枚あたり500円券を中心に年間数万円分の利用券が交付されるケースがあります(金額・枚数・対象条件は区によって大きく異なります。確認日2026年6月27日の検索情報より。要最新確認)。

重度心身障害者医療費助成制度

都道府県や市区町村が設けている「重度心身障害者医療費助成」は、医療機関の自己負担分の一部または全部を助成する制度です。特別障害者手当の認定を受けている方が対象範囲に含まれることが多く、医療費の自己負担を大幅に軽減できます。この制度の有無・対象・助成の仕方は自治体ごとに異なります。

介護保険・障害福祉サービスとの関係

特別障害者手当は、介護保険サービスや障害福祉サービスの利用と並立できます。ただし、障害者支援施設(生活介護を受けている場合等)への入所で支給が停止になる点は前章で説明した通りです。グループホームや通所系のサービスを利用しながら在宅生活を継続している場合は、特別障害者手当の受給を継続できる場合がほとんどです。

生活保護との関係

生活保護を受給している場合でも、特別障害者手当は支給されます。ただし、特別障害者手当の支給額は生活保護の収入として認定されるため、その分だけ生活保護費が減額される場合があります。生活保護を受給している方は、担当のケースワーカーに相談した上で申請することをおすすめします。

よくある誤解・つまずきポイント

誤解1:「障害者手帳がないと申請できない」

繰り返しになりますが、手帳は必須要件ではありません。医師による認定診断書で評価されますので、手帳を持っていない方も申請できます。ただし手帳の等級が高い場合(身体障害者手帳1・2級等)は審査上の参考情報になりますし、診断書の提出が省略できる場合もあります。

誤解2:「障害年金をもらっているから対象外」

障害年金と特別障害者手当は別の制度で、同時受給が可能です。障害年金が所得に算入されるという点は注意が必要ですが、障害年金のみが収入の方の多くは所得制限の範囲内に収まります。

誤解3:「認定基準は身体障害1・2級と同じ」

手帳の等級と認定基準は別物です。手帳が1・2級でも認定されないケースがある一方、手帳を持っていなくても認定されるケースがあります。重複する障害の有無が判断の核心であり、単一の障害の等級で決まるわけではありません。

誤解4:「一度申請すれば永久に受給できる」

現況届の提出(毎年8月)と、有期認定の方は定期的な診断書の提出が必要です。これを忘れると受給が停止または資格喪失になります。

誤解5:「入院すると即座に打ち切りになる」

入院した場合でも、継続入院が3か月を超えるまでは受給が継続します。3か月以内の入院であれば手当に影響はありません。

誤解6:「グループホームに入ると受給できなくなる」

グループホーム(共同生活援助)は一般的に「在宅」として扱われ、受給継続できる場合がほとんどです。ただしグループホームの種類によって異なる場合があるため、入居前に市区町村窓口で確認することをおすすめします。

誤解7:「施設のデイサービスを使うと受給できなくなる」

通所系のサービス(生活介護・自立訓練・就労継続支援等の通所)は「入所」ではないため、手当に影響はありません。日中のみ施設に通い、夜間は自宅(またはグループホーム)で生活している場合は受給継続できます。

誤解8:「申請してすぐに振り込まれる」

申請から認定まで2〜3か月かかります。また、支給は年4回(2月・5月・8月・11月)にまとめて振り込まれるため、認定後に最初の振込が届くまでにさらに時間がかかることがあります。

申請チェックリスト

特別障害者手当の申請前後に確認しておくべき事項を整理します。制度の要件や手続きは変わることがあるため、最終確認は必ず市区町村窓口で行ってください。

申請前のチェック

書類準備のチェック

所得制限確認のチェック

受給開始後のチェック

よくある質問(FAQ)

Q1. 申請できるのは本人だけですか。家族が代わりに申請できますか。

本人が申請するのが原則ですが、本人が申請を行うことが困難な場合は、家族や法定代理人が代わりに手続きできます。成年後見人が就いている場合は後見人が申請者となります。窓口で「本人に代わって家族が申請したい」と伝えれば対応してもらえます。

Q2. 精神疾患があるのですが、申請できますか。

精神障害も対象です。ただし「著しく重度の障害で常時特別の介護が必要な状態」という要件のハードルは高く、精神科の主治医に状態を詳細に診断書に記載してもらうことが重要です。精神障害単独でも、状態が政令別表アまたはその組み合わせ要件を満たすと判断されれば認定を受けられる可能性があります。

Q3. 難病を持っているのですが、申請できますか。

難病も対象になり得ます。難病による機能障害が政令別表アまたはイに相当する場合は申請できます。難病の診断書を作成してもらう医師は専門医(主治医)であることが望ましく、日常生活での介護の必要性が診断書から明確に読み取れることが重要です。

Q4. 障害年金1級を受給している場合は自動的に認定されますか。

自動的には認定されません。障害年金の1級と特別障害者手当の認定基準は別の体系です。ただし障害基礎年金1級(または厚生年金の障害等級1級)の認定を受けていると、一定の条件下で診断書提出の省略が認められる場合があります。窓口で確認してください。

Q5. 入院中に申請できますか。

継続入院中の方は、「3か月を超えて継続入院している」状態が続く限り受給資格の対象になりません。ただし入院が3か月以内で終わる見込みの場合は申請自体は可能です。退院後に在宅生活が始まった時点から受給要件を満たすことになりますので、退院前後のタイミングで窓口に相談するとよいでしょう。

Q6. 受給中に施設のショートステイを利用しても停止になりますか。

短期入所(ショートステイ)は「入所」ではなく、一時的な利用です。連続して3か月を超えない限りは通常問題ありません。ただし長期の連続利用が「施設入所」と同様に扱われる場合の解釈は市区町村によって異なる可能性がありますので、事前に窓口で確認してください。

Q7. 所得が制限を超えていた年は全く受給できないのですか。

その年の8月分から翌年7月分まで停止になります。翌年に所得が制限額を下回れば、その年の8月分から再開します。停止期間中に申請が通っている場合は、受給資格自体は維持されています。

Q8. 現況届を忘れてしまいました。どうすればよいですか。

まず速やかに市区町村窓口に連絡してください。未提出期間の扱いは自治体によって異なりますが、早めに相談することが重要です。2年以上未提出が続くと資格喪失になるため、できる限り早急に対処してください。

Q9. 認定が通らなかった場合に不服申し立てはできますか。

不認定通知を受け取ってから3か月以内であれば、都道府県知事に対して「審査請求」を行うことができます。審査請求でも認められない場合は、さらに「再審査請求」や「行政訴訟」の選択肢があります。不服申し立てを検討する場合は、市区町村の相談窓口や法律相談を活用することをおすすめします。

Q10. 特別障害者手当の申請は、障害年金の申請とどちらを先にすればよいですか。

どちらを先にしても構いませんが、同時進行で進めることも可能です。障害年金の認定が先に出た場合は、その認定情報が診断書省略の参考になることがあります。実務的には、主治医に相談しながら双方の書類を並行して進めるのが効率的です。

Q11. グループホームに入居中でも受給できますか。

グループホーム(共同生活援助)は基本的に「在宅」として扱われるため、受給できる場合がほとんどです。ただしグループホームのサービス種別によっては例外もあり得ますので、入居前または入居後に市区町村窓口で確認してください。

Q12. 転居した場合はどうすればよいですか。

市区町村をまたぐ転居をした場合は、転入先の市区町村で再度手続きが必要になります。転出前の市区町村に「転出届」を出すとともに、転入先の市区町村に「特別障害者手当の申請(または継続の手続き)」を行ってください。転居先の市区町村で認定がそのまま引き継がれるわけではないため、手続きに間が生じると支給が一時的に止まる可能性があります。転居が決まったら早めに双方の市区町村の窓口に相談することをおすすめします。

Q13. 扶養義務者が親(75歳以上の高齢者)の場合でも所得制限の対象になりますか。

はい、原則として扶養義務者の範囲に含まれます。ただし、同居かどうか(生計を一にしているか)が前提条件です。年齢による除外規定はありません。なお、親の所得が配偶者・扶養義務者の限度額(扶養0人で6,287,000円未満)を下回っている場合は支給に影響しません。

Q14. 生活保護を受けながら特別障害者手当も受給できますか。

はい、同時受給は可能です。ただし特別障害者手当は生活保護の「収入」として計上されるため、その分だけ生活保護費(生活扶助等)が減額される場合があります。受給できる金額の「純増」にはならないケースもあることを理解した上で、担当ケースワーカーと相談してください。

Q15. 障害が複数の種類にわたる場合(身体+精神など)は診断書を複数取得する必要がありますか。

障害の種類ごとに診断書の様式が異なるため、複数の障害がある場合は複数の診断書が必要になることがあります。たとえば肢体不自由と知的障害の重複がある場合は、それぞれの診断書が必要になる場合があります。具体的に何が必要かは市区町村窓口で確認してください。

他制度との優先順位と組み合わせ活用法

特別障害者手当を中心とした受給の全体像

特別障害者手当(月額30,450円)を軸として、他の制度と組み合わせることで月次の収入・医療費負担の全体像を把握しておくことが大切です。

障害年金との組み合わせについては既に述べましたが、これに加えて自治体独自の障害者手当(東京都等では「重度心身障害者手当」として上乗せがある場合あり)を受給できる場合は、合算額がさらに増えます。

重度心身障害者医療費助成(都道府県・市区町村の制度)は医療費の自己負担を軽減するものです。医療費の面では、高額療養費制度(本記事シリーズ第3回参照)との組み合わせも検討できます。

移動に関しては福祉タクシー券の交付を受け、外出のコストを軽減します。

日常生活用具の給付(本記事シリーズ第69回参照)や補装具費の支給も、別途申請できます。

これらを組み合わせた場合の月次受取・軽減のイメージを示します(金額は2026年度目安・各制度の最新情報で確認が必要です)。

障害基礎年金2級(70,608円)+特別障害者手当(30,450円)=月101,058円

これに東京都の重度心身障害者手当(仮に月数千円〜数万円)、医療費の助成(自己負担軽減)、移動支援(タクシー券相当分)などが加わると、実質的なサポートの規模はさらに大きくなります。

介護保険との関係

65歳以上または40〜64歳で特定疾病に該当する方は、介護保険サービスが利用できます。特別障害者手当の受給と介護保険サービスの利用は並立できます。ただし、介護老人保健施設(老健)への入所が継続して3か月を超えた場合は特別障害者手当の支給が停止されることを忘れないようにしてください。

受給後の注意点:更新と届け出

受給が始まった後も、定期的な手続きと変化の届け出が必要です。受給者または支援者(家族・相談支援員等)が把握しておくべき事項を整理します。

毎年の手続き(現況届)

毎年8月(標準的には8月11日〜9月10日)に現況届を提出します。この届け出で前年の所得状況が審査され、引き続き受給可能かどうかが確認されます。

自治体から書類が郵送されてくることが多いですが、引越し等で住所が変わっている場合は届かないことがあります。確実に受け取るために、住所変更の際は必ず市区町村に届け出てください。

有期認定の方の診断書再提出

認定が「有期」の場合、一定の期間ごとに認定診断書を再提出する必要があります。有期期限の2か月前頃に自治体から案内が届きます(届かない場合は窓口に確認してください)。診断書の作成には時間がかかるため、案内が届いたら早めに主治医に連絡してください。

速やかな届け出が必要な変化

施設入所、3か月を超えて入院になった場合、住所の変更、障害の状態が著しく変化した場合、家族状況の変化(配偶者・扶養義務者の変更)などは速やかに窓口に届け出ます。過支給が発生すると返還が求められる場合があります。

認定診断書を書いてもらう医師の選び方と費用の現実

診断書は申請の成否を左右する最も重要な書類です。申請に失敗したケースの多くは、診断書の記載が不十分だったか、あるいは医師が特別障害者手当の認定基準を十分に把握していなかったことに起因します。

主治医に書いてもらうことが基本

原則として、認定診断書は「主治医」に書いてもらいます。主治医が最も受診者の状態を把握しているためです。特別障害者手当の診断書は「いつも書いている一般的な診断書」とは全く異なる専用様式であることを医師に伝え、様式を窓口から取得して医師に渡します。

指定医制度について

特別障害者手当の診断書については、障害者手帳の診断書のような「指定医師」制度はありません。原則として免許を持つ医師であれば誰でも作成できますが、精神・知的障害の場合は精神科または神経科の医師に記載を依頼するのが適切とされることがあります。市区町村窓口に「担当科の医師でよいか」を確認するとよいでしょう。

診断書に記載してもらいたい内容

以下の内容が診断書から読み取れることが認定審査のポイントになります。

一つ目は、「障害の種類と程度」です。視力・聴力・肢体・精神など各分野の数値・評価が明記されていることが重要です。数値で表せる障害は数値を、表せない障害は具体的な状態の記述で示してもらいます。

二つ目は、「日常生活における介護の必要性の具体的内容」です。食事・排泄・入浴・移動・着替え・コミュニケーション等の各場面で、どの程度の介護(全介助・一部介助・自立)が必要かを具体的に記載してもらいます。「常時特別の介護が必要」であることが読み取れることが必須です。

三つ目は、「障害の継続性・固定性」です。障害が一時的なものでなく、恒久的または長期にわたるものであることが示されると審査に有利に働きます。

診断書の費用の実態

診断書の作成費用は自由診療扱いとなるため、医療機関が独自に設定します。

実際には、5,000円〜20,000円程度が一般的なレンジとされています。大学病院・専門病院では高くなる傾向があり、かかりつけの診療所では比較的低い場合が多いです。診断書の記載内容の複雑さによっても費用が変わることがあります。

障害が複数分野にわたり複数の診断書が必要な場合は、それぞれに費用がかかります。たとえば肢体不自由と精神障害の診断書を別々に取得する場合は、合計で2万円を超えるケースもあります。

費用負担が重い場合は、市区町村の窓口に相談すると診断書作成費用の助成制度(自治体によっては設けているところがあります)の存在を教えてもらえることがあります。

申請書類の記入で詰まりやすいポイント

「特別障害者手当認定請求書」の記入

認定請求書は、受給資格者の基本情報・住所・口座情報・障害の概要を記入する書類です。基本的な記入項目ですが、以下のポイントに注意してください。

「障害の種類」欄は、医師の診断書で確認した障害の種類を正確に記入します。手帳の等級ではなく、診断書に基づく障害名を記入するのが原則です。

「振込先口座」は受給資格者(申請者本人)名義の口座を指定します。家族の口座には振り込めませんのでご注意ください(本人が口座を持つことが困難な場合は、窓口に相談してください)。

「居住場所の種類」(在宅・グループホーム等)の確認欄がある場合は正確に記入します。

「所得状況届」の記入

所得状況届は、本人・配偶者・扶養義務者それぞれの前年の所得状況を申告する書類です。

本人欄では、給与所得・年金所得・事業所得等すべての収入を記入します。障害年金も算入が必要なため忘れずに含めてください。

扶養義務者欄では、同居または生計を一にしている直系親族・兄弟姉妹のうち最も所得が高い人の情報を記入します。扶養義務者が複数いる場合は最多収入者1人分のみ記入します。

所得証明書(市区町村が発行するもの)の提出が求められる場合があります。マイナポータルで事前に確認できる場合もありますので、窓口に確認してください。

認定審査の流れと待機期間中の対処

審査の内部プロセス

申請書類が市区町村窓口に提出されると、以下の流れで審査が進みます。

まず市区町村が書類の内容を確認し、都道府県に送付します。次に都道府県の担当部署(都道府県によっては指定機関等)が、医師の診断書に基づいて政令別表との適合性を審査します。そして判定結果が市区町村に返り、市区町村から受給資格者に通知書が届きます。

この流れで標準的に2〜3か月かかります。書類の不備があるとさらに時間がかかる場合があります。

待機期間中に確認しておくこと

審査中は支給がありませんが、この期間を有効に使える準備があります。

まず、他の利用できる制度(障害者福祉サービス・移動支援・医療費助成等)の申請を同時に進めることを検討します。

次に、現況届・更新診断書のスケジュールを把握します。認定通知には認定期間(無期・有期)が記載されています。有期の場合は何年後に診断書の再提出が必要かを確認し、カレンダーに記録しておきます。

自治体窓口でスムーズに相談するためのポイント

特別障害者手当の申請窓口は「市区町村の障害福祉担当窓口」ですが、自治体によって窓口の名称が異なります。よく使われる名称として、障害福祉課・障害者福祉課・障がい支援課・福祉事務所・地域福祉課などがあります。電話で「特別障害者手当の申請について相談したい」と伝えれば、適切な窓口につないでもらえます。

相談時に準備しておくと話が早いこと

窓口に来る前に以下を把握しておくと、相談がスムーズに進みます。

本人の年齢と障害の種類(診断名)、日常生活でどのような介護が必要か(食事・排泄・入浴等の各場面での状況)、障害者手帳の有無と等級、現在受けている障害年金・その他の給付の種類と金額の概算、同居家族の状況(配偶者・父母・兄弟姉妹等の有無と概算の収入)を準備しておくと、窓口担当者が概況を把握しやすくなります。

相談前に事前調査を行う際の注意点

インターネット検索をすると「特別障害者手当」に関する民間サイトの情報が多くヒットします。これらのサイトは古い情報が混在している場合があり、金額や所得制限の数値が現在の制度と異なることがあります。本記事を含め、民間サイトの情報はあくまで「制度の仕組みを理解するための参考」として活用し、実際の申請に関する具体的な数値・書類は必ず市区町村窓口または厚生労働省の最新公式情報で確認してください。

「なぜこの制度はあまり知られていないのか」を理解することの意味

特別障害者手当は1975年(昭和50年)に創設された制度で、長い歴史を持ちます。それにもかかわらず、利用率が実態よりも低い(潜在的受給資格者の中で実際に受給している割合が低い)と指摘されることがあります。

知られていない理由として、以下のような点が挙げられます。

まず「名称の混乱」があります。障害年金・障害児福祉手当・特別児童扶養手当・障害者割引・自治体独自の手当など、類似した名称の制度が多く、「特別障害者手当」という名称が埋もれてしまいがちです。

次に「積極的な案内が少ない」という点があります。一部の自治体では、福祉サービス申請の際に「特別障害者手当も申請できますか」と担当者が声かけをするケースもありますが、必ずしも全国一律に積極的に案内されているとは言えません。

そして「認定のハードルが高い」という認識もあります。「常時特別の介護が必要」という要件は主観的な判断が含まれるため、「自分は対象になるのかどうか分からない」と感じて相談自体を諦める方もいます。

この記事を通じて制度の存在と仕組みを知っていただき、「もしかしたら自分または家族が対象かもしれない」と感じた方が市区町村窓口に相談するきっかけになれば幸いです。

経過的福祉手当について

特別障害者手当に関連して「経過的福祉手当」という制度も存在します。これは昭和60年の法改正以前に障害福祉年金を受給していた方の経過措置として設けられた手当であり、現在は新規受給者はほぼいない状態です。既存受給者の方は継続支給されますが、新規申請はできません。

この手当は「障害児福祉手当及び特別障害者手当」と同じ法律の枠組みの中にあり、特別障害者手当や障害児福祉手当と同様に、年4回(2月・5月・8月・11月)の支給スケジュールです。

特別障害者手当を実際に申請した場合の時系列全体像

実際に申請して受給が始まるまでの全体的な流れを時系列で整理します。ここでは仮に3月に申請を開始したケースを例にします(月を変えても考え方は同じです)。

3月:市区町村窓口に事前相談。制度の概要・必要書類・認定基準の説明を受ける。認定診断書の様式を受け取る。主治医に診断書の作成を依頼する。

4月〜5月:主治医が診断書を作成(通常2〜4週間程度かかりますが、医療機関によって異なります)。完成したら受け取り、所得状況届・認定請求書等とともに市区町村窓口に提出する。提出月が5月以前であれば、認定された場合の最初の受給はその翌月(6月)分からとなります。

6月〜7月:都道府県で審査が進む。書類不備がある場合は追加書類の提出を求められる場合があります。

7月〜8月頃:認定通知書が届く。「認定」の場合は受給が開始されます。「不認定」の場合は理由が通知されます。

11月(最初の振込):5月提出・6月分から認定の場合、最初の振込は11月(6月・7月・8月・9月・10月の最初の支給対象月分として)になります。実際には認定通知の内容に基づいて最初の支給月が決まります。

翌年8月:初めての現況届提出。8月11日〜9月10日の期間中に、市区町村から届いた現況届(所得状況届)を提出します。

翌年11月以降:継続支給が確認される。有期認定の方は診断書の更新時期も到来します。

所得制限の計算を自分でやってみる

所得制限の計算は窓口に任せてしまうのが確実ですが、事前におおまかな目安をつかんでおくと相談もスムーズになります。ここでは計算の考え方をより詳しく整理します。

ステップ1:収入の種類を把握する

まず前年の収入の種類と金額を整理します。

給与収入(パートタイム・アルバイト含む)、障害年金・厚生年金・国民年金等の公的年金収入、事業収入(自営業・フリーランス)、その他収入(不動産収入・利子・配当等)が主な種類です。

ステップ2:収入から「所得」を計算する

各収入について、以下の方法で「所得」を計算します。

給与収入の場合は、給与収入額から給与所得控除を差し引いた「給与所得」が所得です。給与所得控除は給与収入額によって変わります。たとえば給与収入が162.5万円以下なら55万円の控除、180万円以下なら収入×40%−10万円、360万円以下なら収入×30%+8万円など(令和2年分以降のルール。最新は国税庁で確認)。

公的年金収入の場合は、公的年金等収入額から公的年金等控除を差し引いた「公的年金等にかかる所得」が所得です。65歳未満で年金収入130万円未満なら控除額は60万円、130万円以上410万円未満なら収入×25%+27.5万円などです(最新は国税庁で確認)。

給与と年金の両方がある場合は、各所得を合算します。さらに合計から10万円を控除した額が認定の基礎となる所得額です。

ステップ3:各種控除を差し引く

認定の基礎所得額から、各種控除項目を差し引きます。主な控除項目(正確な内容・金額は市区町村窓口で確認)には以下のものがあります。

医療費控除相当額(年間の医療費支出が多い場合)、障害者控除(特別障害者であれば所得税上は40万円控除、特別障害者手当独自の算定では別の控除方式の場合があります)、寡婦・ひとり親控除相当額、小規模企業共済等掛金控除などが含まれます。

ステップ4:限度額と比較する

控除後の所得額を、扶養親族等の人数に応じた限度額と比較します。本人の所得が限度額以下であれば、本人所得の側の制限はクリアします。次に配偶者・扶養義務者の所得についても同様に確認します。

計算例:給与収入と障害年金が重なる場合

Cさん(60代・独身・扶養なし)が週3日パートで年間給与収入120万円と、障害基礎年金2級(年額847,296円)を受給しているとします。

給与所得:1,200,000円 − 550,000円(給与所得控除55万円)= 650,000円

公的年金所得(65歳未満の場合):847,296円 − 600,000円 = 247,296円

合計所得:650,000円 + 247,296円 = 897,296円

10万円控除後:897,296円 − 100,000円 = 797,296円

ここから各種控除(仮に控除がなかったとして):797,296円

本人限度額(扶養0人):3,661,000円

797,296円 < 3,661,000円 となるため、本人所得の制限は問題ありません。

計算例:給与収入が多い場合

Dさん(50代・独身・扶養なし)が正規雇用で年間給与収入400万円と、障害基礎年金2級(年額847,296円)を受給しているとします。

給与所得:4,000,000円 − (4,000,000×30% + 80,000) = 4,000,000 − 1,280,000 = 2,720,000円

(注:給与所得控除の計算は360万円超〜660万円以下で「給与収入×30%+8万円」となります)

公的年金所得:847,296円 − 600,000円 = 247,296円

合計所得:2,720,000円 + 247,296円 = 2,967,296円

10万円控除後:2,967,296円 − 100,000円 = 2,867,296円

本人限度額(扶養0人):3,661,000円

2,867,296円 < 3,661,000円 なので、この場合も本人所得の制限はクリアします。

給与収入が高くても、所得制限の限度額は3,661,000円(扶養なし)とかなり高い水準に設定されているため、かなりの収入があっても制限に引っかからないケースが多いです。

制限ラインに近い場合のシミュレーション

Eさん(60代・独身・扶養なし)が年間給与収入550万円と障害年金(年額847,296円)を受給している場合を考えます。

給与所得:5,500,000円 − (5,500,000×30% + 80,000) = 5,500,000 − 1,730,000 = 3,770,000円

公的年金所得:847,296円 − 600,000円 = 247,296円

合計所得:3,770,000円 + 247,296円 = 4,017,296円

10万円控除後:4,017,296円 − 100,000円 = 3,917,296円

本人限度額:3,661,000円

3,917,296円 > 3,661,000円 となり、この段階では制限に引っかかります。

ただしここから各種控除(医療費控除、障害者控除等)を差し引けば、控除後の認定所得額が3,661,000円を下回る可能性もあります。正確な計算は窓口で行ってもらうことをおすすめします。

受給停止から再受給への手続き

所得超過・入院・施設入所等で支給が一時停止になった場合でも、状況が変われば再び受給できます。

所得超過で停止になった場合は、翌年に現況届(所得状況届)を提出して前年所得が制限額を下回っていれば、8月分から再開します。特別な再申請は不要で、現況届の提出が再開の手続きになります。

入院3か月超で停止になった場合は、退院して在宅生活を再開した時点で、市区町村窓口に「在宅復帰の届け出」をすることで支給が再開されます。退院した月の翌月分から再開されるのが一般的ですが、届け出のタイミングによって変わることがあります。

施設入所で失権した場合は、退所して在宅生活を再開した後に改めて申請(「再申請」)が必要です。失権後の再申請は初回申請と同様の手続きになります。

出典一覧(URL・確認日)

本記事は以下の一次情報(または準一次情報)を確認した上で執筆しています。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/tokubetsu.html

確認日:2026年6月27日

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jidou/index.html

確認日:2026年6月27日

https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/shinsho/teate/toku_shou

確認日:2026年6月27日

https://www.city.sapporo.jp/shogaifukushi/teate/tokusho/shotokuseigengendogaku.html

確認日:2026年6月27日

https://www.city.hino.lg.jp/fukushi/nanbyo/service/teate/1003703.html

確認日:2026年6月27日

https://www.pref.kyoto.jp/shogaishien/1253250559682.html

確認日:2026年6月27日

https://www.city.kita.lg.jp/socialcare-health/disabilities/1008784/1008785/1008787.html

確認日:2026年6月27日

https://www.city.kobe.lg.jp/a97737/tokubetsusyogaishateate.html

確認日:2026年6月27日

https://www.city.sendai.jp/servicekanri/kurashi/kenkotofukushi/shogai/nenkin/teate/shogaishateate.html

確認日:2026年6月27日

https://www.syougainenkin-shien.com/amount_of_money2026

確認日:2026年6月27日

https://laws.e-gov.go.jp/law/350M50000100034

確認日:2026年6月27日

https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/huyou.html

確認日:2026年6月27日

免責事項

本記事は制度の概要を整理した一般的な情報提供を目的としており、個別の受給可否の判定・申請書類の作成代行・法律的・医療的な個別助言を行うものではありません。制度の詳細・最新の要件・申請手続きについては、お住まいの市区町村の担当窓口(障害福祉課等)または厚生労働省の公式サイトで直接ご確認ください。手当の認定は個別の事情に応じて行われるものであり、本記事の記載が受給を保証するものではありません。

制度の金額・要件・手続きは毎年改定される場合があります。本記事記載の金額・制限額は2026年6月27日時点の確認情報に基づくものです。申請前に必ず最新の公式情報をご確認ください。