障害年金の入門(障害基礎年金・障害厚生年金を「初診日・納付要件・診断書」から整理する)
本記事は2026年6月26日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・取り扱いはいずれも変更されることがあるため、申請前に必ず日本年金機構の公式サイトまたは年金事務所で最新情報をご確認ください。本記事は制度の情報提供を目的としており、申請書類の作成代行や個別の手続き代行は行いません。
この記事が整理すること
障害年金は、病気やけがで生活や仕事に支障が出たときに、現役世代でも受け取れる可能性がある公的年金です。ところが、いざ調べ始めると最初の入口でつまずく方がとても多い制度でもあります。
つまずきの大半は、3つの言葉に集約されます。「初診日」「保険料納付要件」「診断書」です。この3つの意味と順番がわからないまま申請の話を読むと、専門用語が次々に出てきて、自分が対象なのかどうかすら判断できなくなってしまいます。
この記事は、障害年金をこれから調べる当事者の方やご家族に向けて、まずこの3つの最初のつまずきを平易に整理することを目的にしています。そのうえで、障害基礎年金と障害厚生年金の違い、令和8年度(2026年度)の年金額、申請の流れまでを順に説明します。
本記事は一般的な情報提供であり、個別の症状や受診を判断・勧奨するものではありません。また、障害年金の請求は本人が年金事務所や市区町村の窓口で行える制度です。本記事は申請書類の作成や手続きの代行は行いません。
制度の全体像
障害年金には、大きく分けて2つの種類があります。どちらに該当するかは、「初診日にどの年金制度に加入していたか」で決まります。
1つ目は障害基礎年金です。これは国民年金から支給される障害年金で、自営業の方、専業主婦・主夫の方、学生、無職の方など、初診日に国民年金に加入していた方が対象です。20歳前に初診日がある場合も、この障害基礎年金の対象になります。等級は1級と2級の2段階です。
2つ目は障害厚生年金です。これは会社員や公務員など、初診日に厚生年金に加入していた方が対象です。障害厚生年金には1級・2級・3級があり、3級は障害基礎年金にはない、厚生年金独自の等級です。さらに、3級より軽い一定の障害が残った場合に、一時金として受け取れる「障害手当金」という制度もあります。
ここで大切なのは、障害厚生年金の1級・2級に該当する方は、障害厚生年金に加えて障害基礎年金も合わせて受け取れるという点です。つまり、初診日に厚生年金に入っていた方のほうが、受け取れる範囲が広くなります。
障害年金を受け取るには、種類を問わず次の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 初診日要件:障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診療を受けた日(初診日)に、年金制度に加入していたこと(または20歳前など一定の期間にあること)
- 保険料納付要件:初診日の前日の時点で、一定以上の期間、保険料を納めている(または免除を受けている)こと
- 障害の状態:障害認定日に、障害等級に定める状態に該当していること
申請の窓口は、障害基礎年金だけの場合はお住まいの市区町村役場の年金窓口または年金事務所、障害厚生年金を含む場合は年金事務所です。いずれも本人が請求できる制度で、社会保険労務士などに依頼することは任意です。
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障害年金で多くの方が最初に知りたいのは、「自分の場合、年額でいくらくらいになるのか」という金額の感覚だと思います。ここでは障害厚生年金の2級を取り上げ、典型的な1ケースを途中の計算過程まで省略せずに最後まで解いてみます。あくまで制度のしくみを理解するための一例であり、実際の金額は加入期間や過去の給与、扶養している家族の状況などによって変わる点はあらかじめご了承ください。
想定するのは、次のような会社員のケースです。
- 35歳の会社員(初診日に厚生年金に加入)
- 厚生年金の加入期間は初診日の時点で10年(120月)
- 平均標準報酬額(おおまかにいうと、賞与も含めた月収の平均)が30万円程度
- 生計を維持している65歳未満の配偶者がいる
- 18歳到達年度末を迎えていない子が1人いる
- 障害認定日に障害等級2級に該当したと仮定
まず、障害厚生年金2級の年金額の組み立てを確認します。障害厚生年金2級は「報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額」で計算します。さらに2級は障害基礎年金2級も合わせて受け取れるため、そこに「障害基礎年金2級+子の加算」が加わります。順番に計算していきます。
最初に、報酬比例の年金額を計算します。報酬比例部分は、おおまかには「平均標準報酬額 × 一定の乗率 × 加入月数」で求めます。ここで重要なのが、障害厚生年金には最低保障のしくみがある点です。加入月数が300月(25年)に満たない場合は、実際の加入月数が短くても300月とみなして計算します。
このケースの加入期間は120月ですが、300月に満たないため、計算上は300月として扱われます。乗率を1000分の5.481(平成15年4月以後の期間に使われる乗率の目安)として概算すると、報酬比例部分は次のようになります。
30万円 × 5.481/1000 × 300月 = 約49万3,000円
これが報酬比例部分の概算です(実際には過去の給与の記録や生年月日によって乗率や平均額が変わるため、あくまで目安です)。
次に、配偶者の加給年金額を加えます。障害厚生年金の1級・2級に該当し、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合、年額243,800円(令和8年度)が加算されます。
約49万3,000円 + 24万3,800円 = 約73万6,800円
ここまでが障害厚生年金部分です。続いて、障害厚生年金の2級に該当する方は、障害基礎年金2級も合わせて受け取れます。令和8年度(2026年度)の障害基礎年金2級は847,300円です。
さらに、18歳到達年度末を迎えていない子が1人いるため、子の加算が付きます。子の加算は2人目までは1人につき243,800円(令和8年度)です。
84万7,300円 + 24万3,800円 = 109万1,100円
最後に、障害厚生年金部分と障害基礎年金部分を合計します。
約73万6,800円(障害厚生年金2級+配偶者加給) + 109万1,100円(障害基礎年金2級+子の加算1人) = 約182万7,900円
このケースでは、年額でおおむね183万円前後、月額にすると約15万円前後という計算になります。
ここで押さえておきたいポイントが2つあります。
1つ目は、同じ2級でも障害厚生年金のほうが手厚くなりやすいという点です。会社員として厚生年金に入っていた方は、障害基礎年金に加えて報酬比例部分や配偶者加給が乗るため、金額が大きくなる傾向があります。自営業や専業主婦・主夫の方など障害基礎年金だけの場合は、2級であれば847,300円に子の加算を足した額が基本になります。
2つ目は、報酬比例部分は人によって大きく変わるという点です。今回は加入120月を300月とみなす最低保障で計算しましたが、加入期間が長い方や給与が高かった方は報酬比例部分がさらに大きくなります。逆に、過去の給与が低めだった方は、ここで示した概算より小さくなることもあります。自分の正確な金額を知りたい場合は、年金事務所で年金記録をもとに試算してもらうのが確実です。
このように、障害年金は1ケースであれば最後まで具体的に組み立てられます。ただし実際には、初診日にどの制度に入っていたか、保険料納付要件を満たすか、障害認定日に等級に該当するか、という入口の3条件をクリアして初めて、この金額の話にたどり着きます。その入口の整理と申請の実務・チェックリスト・FAQはこの続きで解説します。
ここから先は、申請に直結する実務です。
最初のつまずき1:初診日を正しく特定する
障害年金の手続きで最初に決まるのが「初診日」です。初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を指します。健康診断で異常を指摘された日ではなく、その症状で実際に医療機関を受診した日が基本です。
初診日がここまで重要なのは、初診日によって次の3つがすべて決まるからです。
1つ目は、障害基礎年金になるか障害厚生年金になるかです。初診日に国民年金だったのか厚生年金だったのかで、受け取れる年金の種類と等級の範囲が変わります。
2つ目は、保険料納付要件を判定する基準日です。納付要件は「初診日の前日」の時点で判定されるため、初診日がいつかによって、要件を満たすかどうかが変わります。
3つ目は、障害認定日の起点です。後述するように、障害認定日は原則として初診日から1年6か月後と決まっているため、初診日がずれると認定日もずれます。
初診日を証明する書類が「受診状況等証明書」です。初めて受診した医療機関と、現在診断書を書いてもらう医療機関が異なる場合などに、初診の医療機関に作成してもらいます。
つまずきやすいのが、初診から時間が経っていてカルテが残っていないケースです。医療機関のカルテの保存義務は5年とされているため、初診から年数が経っていると「受診状況等証明書」が取得できないことがあります。その場合は、2番目以降に受診した医療機関の記録、診察券、お薬手帳、健康診断の記録、当時の日記やメモなど、初診日を間接的に示す資料を組み合わせて申し立てる方法があります。初診日の特定が難しいと感じたら、自己判断で諦めず、年金事務所の窓口で相談することをおすすめします。
最初のつまずき2:保険料納付要件を確認する
2つ目のつまずきが、保険料を納めてきたかどうかの条件(保険料納付要件)です。障害の状態がどれだけ重くても、この納付要件を満たしていないと障害年金は受け取れません。逆に言えば、ここをクリアできるかどうかが申請の可否を大きく左右します。
納付要件には、原則の条件と特例の条件があります。どちらか一方を満たせば要件をクリアできます。
原則(3分の2要件)は、次の通りです。初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料を納めた期間と保険料の免除を受けた期間を合わせた期間が、3分の2以上あることです。免除期間も納付要件の計算に含められる点が大切です。学生納付特例や保険料の免除をきちんと申請していた期間は、未納ではなく免除としてカウントされます。
特例(直近1年要件)は、3分の2要件を満たせない場合の救済です。初診日が令和18年(2036年)3月末日までにあり、かつ初診日に65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ、要件を満たすものとして扱われます。過去に未納の時期があっても、直近1年間がきちんと納付または免除されていれば、この特例で救われる可能性があります。
ここで注意したいのが、判定はあくまで「初診日の前日」を基準にする点です。初診日以降にあわてて過去の保険料を後払い(追納)しても、納付要件の判定には反映されません。だからこそ、症状が出る前から保険料の免除や猶予の手続きをしておくことが、結果的に障害年金の備えにもなります。
自分が納付要件を満たすかどうかは、年金事務所で年金記録を確認すれば判定してもらえます。ねんきんネットや「ねんきん定期便」でも納付状況の概要は確認できますが、最終的な判定は窓口で確認するのが確実です。
最初のつまずき3:障害認定日と診断書
3つ目のつまずきが、いつの状態で、どの診断書で判定されるのか、という点です。
障害認定日とは、障害の程度を判定する基準となる日のことです。原則として、初診日から起算して1年6か月を過ぎた日が障害認定日になります。ただし、その1年6か月以内に病気やけがが治った場合(症状が固定して、これ以上治療の効果が期待できない状態を含みます)は、その治った日が障害認定日になります。たとえば、手足を切断した場合の切断日や、人工関節を入れた日など、状態が固定したとみなされる日が認定日になるケースがあります。
診断書は、障害の種類ごとに様式が分かれています。日本年金機構の様式は、眼の障害、聴覚・言語機能の障害、肢体の障害、精神の障害、呼吸器疾患、循環器疾患、腎疾患・肝疾患・糖尿病、血液・造血器・その他の障害の8種類に区分されています。自分の障害に対応した様式を、診断書を書いてもらう医師に渡す必要があります。
診断書は障害認定日からおおむね3か月以内の状態を記載してもらうのが原則です。障害認定日にさかのぼって請求する場合は、認定日当時の状態を記した診断書と、請求日の直近の状態を記した診断書の両方が必要になることがあります。
ここで知っておきたいのが、認定日に等級に該当しなかった場合の救済である「事後重症」という制度です。障害認定日の時点では症状が軽く等級に該当しなかった方でも、その後に症状が悪化して等級に該当する状態になった場合、あらためて請求できます。これを事後重症による請求といいます。ただし、事後重症の請求は、65歳に達する日の前日までに行う必要があります。また、事後重症の場合は、請求した日の翌月分から年金が支給される扱いになり、過去にさかのぼっての支給はありません。タイミングが受給額に影響するため、症状が重くなったと感じたら早めに相談することが大切です。
障害基礎年金と障害厚生年金の金額(令和8年度)
ここでは、令和8年度(2026年度)の年金額を整理します。以下はいずれも昭和31年4月2日以後生まれの方の金額です(昭和31年4月1日以前生まれの方はわずかに別の額になります)。金額は毎年度改定されるため、最新は日本年金機構の公式サイトでご確認ください。
障害基礎年金(国民年金)の年金額は次の通りです。
1級の額は2級の1.25倍で計算される関係になっています。子の加算は、18歳到達年度の末日(高校卒業相当の時期)までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子がいる場合に付きます。加算額は、2人目までは1人につき243,800円、3人目以降は1人につき81,300円です。
| 区分 | 障害基礎年金(令和8年度・年額) | 加算 |
|---|---|---|
| 1級 | 1,059,125円 | 子の加算あり |
| 2級 | 847,300円 | 子の加算あり |
| 子の加算(2人目まで) | 1人につき243,800円 | — |
| 子の加算(3人目以降) | 1人につき81,300円 | — |
障害厚生年金(厚生年金)の年金額は、報酬比例の年金額をもとに等級ごとに計算します。
| 等級 | 障害厚生年金の計算 | 配偶者加給(年額) | 障害基礎年金 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 報酬比例の年金額 × 1.25 | 243,800円 | 1級が併給 |
| 2級 | 報酬比例の年金額 | 243,800円 | 2級が併給 |
| 3級 | 報酬比例の年金額(最低保障635,500円) | なし | なし |
配偶者の加給年金額は243,800円(令和8年度)で、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます。注意したいのは、配偶者加給が付くのは障害厚生年金の1級・2級だけだという点です。3級と、国民年金だけの障害基礎年金には配偶者加給は付きません。
3級には最低保障額が設けられており、報酬比例で計算した額がこれを下回る場合は、最低保障額が支給されます。令和8年度の3級の最低保障額は635,500円です。
報酬比例の年金額の計算では、厚生年金の加入期間が300月(25年)に満たない場合、300月とみなして計算する最低保障があります。若くして障害を負った方でも、一定の水準が確保されるしくみです。
障害厚生年金には、3級より軽い一定の障害が残った場合に一時金として受け取れる「障害手当金」もあります。障害手当金は、初診日から5年以内に病気やけがが治り(症状が固定し)、その治った日に障害厚生年金の3級より軽い一定の障害が残っている場合に対象になります。障害手当金の額は報酬比例の年金額の2倍で、令和8年度の最低保障額は1,271,000円です。これは年金ではなく一時金として一度だけ支給されるものです。
申請の具体手順(ステップ・必要書類・窓口)
障害年金の請求は、おおまかに次の流れで進みます。本人が窓口で行える手続きです。
ステップ1は、年金事務所または市区町村の年金窓口への相談です。まず初診日と加入していた制度を確認し、保険料納付要件を満たすかを判定してもらいます。ここで要件を満たさないと、その先に進めないため、最初に確認するのが効率的です。
ステップ2は、初診日を証明する「受診状況等証明書」の取得です。初診の医療機関と現在の医療機関が同じであれば、診断書だけで足りる場合もあります。異なる場合は、初診の医療機関に証明書を依頼します。
ステップ3は、診断書の依頼です。自分の障害に対応した様式の診断書を、主治医に作成してもらいます。診断書は障害認定日(または事後重症の場合は請求日近く)の状態を反映している必要があります。
ステップ4は、「病歴・就労状況等申立書」の作成です。これは本人や家族が、発病から現在までの経過や、日常生活・就労でどのような支障があるかを自分の言葉で記入する書類です。診断書を補い、生活の実態を伝える重要な書類です。
ステップ5は、その他の添付書類の準備です。年金請求書、戸籍や住民票などの生計を確認する書類、子や配偶者がいる場合はその確認書類、本人名義の通帳などが必要になります。必要書類は状況によって変わるため、窓口でチェックリストをもらうのが確実です。
ステップ6は、窓口への提出です。障害基礎年金だけの場合は市区町村役場の年金窓口または年金事務所、障害厚生年金を含む場合は年金事務所に提出します。提出後、日本年金機構で審査が行われ、結果が通知されます。審査には数か月かかるのが一般的です。
なお、本記事は制度の情報提供にとどめます。診断書の内容や申立書の書き方など個別の手続きについては、年金事務所の窓口で相談するか、必要に応じて社会保険労務士などの専門家にご相談ください。本記事では申請書類の作成代行は行いません。
金額の計算例・記入例(複数ケース)
ここでは、無料サンプルとは別の条件で3つのケースを取り上げ、計算過程と押さえどころを示します。いずれも制度の理解を助けるための一例であり、実際の金額は加入記録や生年月日、家族の状況によって変わります。
ケース1:自営業の方が障害基礎年金2級に該当した場合
想定するのは、初診日に国民年金に加入していた自営業の方で、高校生の子が1人いて、障害認定日に2級に該当したケースです。
国民年金だけの加入のため、受け取れるのは障害基礎年金です。2級の基本額は847,300円(令和8年度)です。これに、18歳到達年度末を迎えていない子が1人いるため、子の加算243,800円が加わります。
84万7,300円 + 24万3,800円 = 109万1,100円
このケースでは年額約109万円になります。自営業の方には配偶者加給は付かないため、配偶者がいても金額には影響しない点が、会社員のケースとの違いです。記入のポイントとして、子の加算を受けるには、子の存在と生計を同じくしていることを示す戸籍・住民票が必要です。
ケース2:会社員が障害厚生年金3級に該当した場合
想定するのは、初診日に厚生年金に加入していた会社員で、報酬比例で計算した額が55万円程度、配偶者と子がいるケースです。
3級は障害厚生年金のみで、障害基礎年金は付きません。また配偶者加給も付きません。まず報酬比例の計算額55万円と、3級の最低保障額635,500円を比べます。
55万円 < 63万5,500円
このケースでは計算額が最低保障額を下回るため、最低保障額の635,500円が支給されます。年額約63万円です。記入のポイントとして、3級は障害基礎年金が付かないため、配偶者や子がいても加算は反映されません。3級から2級に状態が変わった場合は、額改定の請求を検討することになります。
ケース3:20歳前に初診日がある方が障害基礎年金2級に該当した場合
想定するのは、20歳になる前に初診日があり、20歳の時点で2級に該当した方のケースです。
20歳前に初診日がある場合、本人が保険料を納めていなくても、20歳から障害基礎年金を受け取れる扱いがあります。2級の基本額は847,300円(令和8年度)です。
ただし、この20歳前傷病による障害基礎年金には、本人の前年所得による支給停止があります。これは保険料を納めずに受け取れる年金であることに伴う調整です。令和8年度の目安として、扶養親族がいない場合、前年所得が4,794,000円を超えると全額が支給停止、3,761,000円を超えると2分の1が支給停止になります(扶養親族がいる場合は基準額が上がります)。支給停止の適用は、その年の10月分から翌年9月分までです。
記入のポイントとして、20歳前傷病の請求は障害基礎年金のため、市区町村の年金窓口でも受け付けています。所得による支給停止のしくみは、会社員などの一般的な障害厚生年金にはない点なので、20歳前に初診日があった方は特に確認しておくとよいでしょう。
よくある誤解・つまずきポイント
「働いていると障害年金はもらえない」は誤解
障害年金は、働いていることだけを理由に一律で支給されないわけではありません。特に障害厚生年金の3級や、内部障害・精神の障害などでは、就労していても日常生活や労働に相当の制限がある場合に支給されることがあります。ただし、診断書や申立書で日常生活や就労の実態を正確に伝えることが重要です。「働けているから対象外だろう」と自己判断で諦めてしまうのは、つまずきの一つです。
障害者手帳と障害年金は別の制度
障害者手帳の等級と、障害年金の等級は、別々の制度に基づく別々の判定です。手帳を持っていなくても障害年金を受け取れる場合があり、逆に手帳の等級が重くても障害年金の等級とは一致しないことがあります。両者を同じものと考えてしまうと、対象かどうかの判断を誤りやすくなります。
初診日が古いと諦めてしまう
カルテの保存期間が過ぎて初診の証明が取りにくいケースは少なくありませんが、間接的な資料を組み合わせて初診日を申し立てる方法があります。最初の医療機関で証明が取れなくても、すぐに諦める必要はありません。年金事務所で相談することをおすすめします。
後払い(追納)すれば納付要件を満たせるという誤解
保険料納付要件は「初診日の前日」を基準に判定されます。初診日より後になってから過去の保険料を追納しても、その障害年金の納付要件の判定には反映されません。免除や猶予の手続きは、未納のままにしないという意味で、平時から行っておくことが大切です。
申請チェックリスト
障害年金を請求する前に、何を確認・準備すればよいかを整理します。制度や状況によって必要書類が追加・変更されることがあるため、最終的には年金事務所や市区町村の窓口で最新の様式を確認してください。
入口の3条件の確認(最初に行うこと)として、次を押さえます。
- 初診日がいつか、そのとき加入していたのは国民年金か厚生年金か
- 初診日の前日時点で、保険料納付要件(3分の2要件または直近1年特例)を満たすか
- 障害認定日(原則、初診日から1年6か月後)に、等級に該当しそうか
書類の準備として、おおむね次をそろえます。
- 年金請求書(窓口または日本年金機構の様式)
- 受診状況等証明書(初診の医療機関と現在の医療機関が異なる場合など)
- 自分の障害に対応した様式の診断書
- 病歴・就労状況等申立書(本人・家族が記入)
- 戸籍謄本・住民票など生計関係を確認する書類
- 配偶者や子がいる場合はその確認書類(加算の判定に使います)
- 本人名義の通帳など振込先がわかるもの
- 本人確認書類(マイナンバー関係書類など)
窓口・タイミングの確認として、次を押さえます。
- 提出先は、障害基礎年金のみなら市区町村役場の年金窓口または年金事務所、障害厚生年金を含むなら年金事務所
- 障害認定日にさかのぼって請求するか、事後重症で請求するかの方針
- 事後重症で請求する場合は、65歳に達する日の前日までに請求する必要があること
よくある質問(FAQ)
障害年金について、迷いやすい点をQ&A形式で整理します。制度の詳細や最新の要件は変わることがあるため、最終的な判断の前には公式サイトや年金事務所での確認をおすすめします。
Q1. 障害年金は自分で申請できますか。社労士に頼まないといけませんか。
ご自身で年金事務所や市区町村の窓口で請求できる制度です。社会保険労務士などへの依頼は任意であり、必須ではありません。本記事は情報提供にとどめ、書類作成や手続きの代行は行いません。
Q2. 初診日のカルテがもう残っていません。申請できませんか。
すぐに諦める必要はありません。2番目以降に受診した医療機関の記録、診察券、お薬手帳、健康診断の記録など、初診日を間接的に示す資料を組み合わせて申し立てる方法があります。まずは年金事務所で相談してください。
Q3. 過去に保険料の未納期間があります。もう対象外でしょうか。
未納があっても、原則の3分の2要件、または直近1年に未納がなければよい特例のいずれかを満たせば対象になり得ます。免除や学生納付特例を受けていた期間は未納ではなく免除として扱われます。窓口で納付状況を確認してもらうのが確実です。
Q4. 障害基礎年金と障害厚生年金は両方もらえますか。
初診日に厚生年金に加入していて、障害の状態が1級または2級に該当する場合は、障害厚生年金と障害基礎年金を合わせて受け取れます。3級は障害厚生年金のみです。
Q5. 働いていても障害年金はもらえますか。
就労していることだけを理由に一律で対象外になるわけではありません。日常生活や労働にどの程度の制限があるかが判断されます。診断書や申立書で実態を正確に伝えることが大切です。
Q6. 障害者手帳を持っていないと障害年金はもらえませんか。
障害者手帳と障害年金は別の制度です。手帳がなくても障害年金を受け取れる場合があり、手帳の等級と障害年金の等級は必ずしも一致しません。
Q7. 障害認定日に症状が軽くて対象になりませんでした。もう請求できませんか。
その後に症状が悪化して等級に該当する状態になった場合、事後重症として請求できます。ただし65歳に達する日の前日までに請求する必要があり、支給は請求した月の翌月分からになります。
Q8. 20歳前に初診日があります。保険料を納めていなくても対象になりますか。
20歳前に初診日がある場合は、本人が保険料を納めていなくても20歳から障害基礎年金を受け取れる扱いがあります。ただし、本人の前年所得による支給停止のしくみがある点に注意が必要です。
Q9. 子どもや配偶者がいると金額は増えますか。
障害基礎年金には子の加算があり、18歳到達年度末までの子などがいる場合に加算されます。障害厚生年金の1級・2級には配偶者加給年金が付きます。3級と障害基礎年金には配偶者加給は付きません。
Q10. 一度決まった等級は変わりますか。
症状が重くなれば上位の等級への額改定を請求でき、軽くなれば等級の見直しや支給停止になることがあります。多くの場合、定期的に診断書を提出して状態を確認する更新があります。
Q11. 申請してからどのくらいで結果が出ますか。
審査には数か月かかるのが一般的です。書類に不備があるとさらに時間がかかることがあるため、提出前に窓口でチェックリストを確認しておくとスムーズです。
Q12. 障害手当金とは何ですか。
障害厚生年金の3級より軽い一定の障害が残った場合に、一時金として一度だけ受け取れる制度です。初診日から5年以内に病気やけがが治り(症状が固定し)、その治った日に3級より軽い障害が残っていることが要件です。額は報酬比例の年金額の2倍で、令和8年度の最低保障額は1,271,000円です。
出典一覧(URL・確認日)
本記事は以下の一次情報(日本年金機構・厚生労働省)を確認した上で執筆しています。
- 障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額(日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html
確認日:2026年6月26日
- 障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額(日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html
確認日:2026年6月26日
- 20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等(日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20200805.html
確認日:2026年6月26日
- 障害年金ガイド 令和8年度版(日本年金機構・PDF)
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-2.pdf
確認日:2026年6月26日
- 診断書・関連書類(日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/index.html
確認日:2026年6月26日
- 年金制度の仕組みと考え方 第12 障害年金(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/nenkin_shikumi_012.html
確認日:2026年6月26日
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成代行・法律的助言を行うものではありません。障害年金の請求や個別の手続きについては、年金事務所・お住まいの市区町村の年金窓口、または必要に応じて社会保険労務士などの専門家にご相談ください。本記事は特定の症状や受診を判断・勧奨するものではなく、医療上の助言を行うものでもありません。制度の金額・要件・取り扱いは年度や改正によって変更されるため、申請前に必ず日本年金機構の最新の公式情報をご確認ください。本記事の情報により生じたいかなる結果についても、責任を負いかねます。