障害者の雇用・就労を支える制度を整理する(助成金・職場定着・就労支援のしくみと手続きガイド)

本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・受付期間はいずれも変更されることがあるため、申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。また本記事は情報提供を目的としており、個別の申請書類の作成代行・手続き代行は行いません。社会保険労務士法に定める業務範囲については、社会保険労務士にご相談ください。

この記事が整理すること

障害者の就労と雇用を支える制度は、省庁をまたいで複数存在しており、「誰のための制度か」「どこに申請するのか」が見えにくい状態になっています。

大きく分けると、次の2つの視点があります。

1つ目は、障害のある方本人・求職者の視点です。就職したい、今の職場で働き続けたい、あるいはまず働く練習をしたい、という方が使える支援制度の話です。就労移行支援や就労継続支援A型・B型、就労定着支援、ジョブコーチ支援、特例子会社といったルートが該当します。

2つ目は、障害のある方を雇う事業主の視点です。採用時に使える助成金、採用後の職場整備・職場定着に使える助成金、法定雇用率の仕組みと納付金・調整金・報奨金の関係が該当します。

これらの2つは切り離して語られることが多いのですが、実際には密接につながっています。当事者が就職しやすくなる制度と、事業主が雇いやすくなる制度が互いに補い合って初めて機能します。この記事ではその全体像を、当事者・求職者の視点と事業主の視点の両面から、できるだけ具体的に整理します。

この記事で整理する主な内容は以下の通りです。

本記事は制度の情報提供にとどめており、申請書類の作成代行・個別手続きの代行は行いません。

制度の全体像

障害者の雇用・就労に関する制度は、大きく「雇用に関する法律の枠組み」「就労支援サービス」「助成金・給付金」の3層に分かれています。それぞれを把握した上で、自分が今どこにいるかを確認することが第一歩になります。

法的枠組み:2本の法律と1つのルール

まず根拠法として、障害者雇用促進法と障害者総合支援法の2本が中心にあります。

障害者雇用促進法は、主に雇用の場面での権利を定めた法律です。事業主に対して法定雇用率の達成義務を課すとともに、障害者に対して差別の禁止と合理的配慮の提供を義務づけています。2016年施行の改正法により、雇用の場面における差別禁止と合理的配慮の提供義務が盛り込まれました。

障害者総合支援法は、障害福祉サービス全般の枠組みを定めた法律です。就労移行支援・就労継続支援A型・B型・就労定着支援といった「就労系サービス」は、この法律に基づいて市区町村の支給決定を経て利用します。

この2本の法律に加えて、2024年4月に施行された改正障害者差別解消法により、民間事業者も社会的な場面(雇用場面を除く)での合理的配慮の提供が義務化されました。雇用場面での合理的配慮は障害者雇用促進法が根拠ですが、採用選考・日常的な職場環境整備・サービス利用場面など、幅広い場面で合理的配慮の義務が強まっています。

就労の選択肢:5つのルート

障害のある方が「働く」ことを考えるとき、大きく以下の5つのルートがあります。

1つ目は、一般就労(通常の事業所での雇用)です。ハローワークや就労移行支援事業所などのサポートを利用して、一般企業に就職するルートです。後述するジョブコーチ支援や障害者雇用枠での応募が使えます。

2つ目は、特例子会社での就労です。大手企業グループが障害者を専門に雇用するために設立した子会社での就労で、一般就労の一形態です。支援体制が整っていることが多く、職種も事務・データ入力・清掃・製造など多様です。

3つ目は、就労継続支援A型です。一般就労が難しい方を対象としつつ、雇用契約に基づいて働くサービスです。最低賃金の適用があります。

4つ目は、就労継続支援B型です。雇用契約を結ぶことが難しい方が、工賃を得ながら軽作業等を行うサービスです。

5つ目は、就労移行支援を経るルートです。一般就労を目標に、最大2年間(延長あり)の訓練を受けるサービスです。後述する詳細をご覧ください。

助成金の主な分類

障害者の雇用に関わる助成金は、申請窓口によって大きく3系統に分かれます。

1つ目は、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク系の助成金です。特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)などがここに含まれます。申請先は事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークです。

2つ目は、高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)系の助成金です。障害者雇用納付金制度に基づく調整金・報奨金、障害者作業施設設置等助成金、障害者介助等助成金、職場適応援助者(ジョブコーチ)助成金などがここに含まれます。申請先はJEEDの各都道府県支部(高齢・障害者業務課)または障害者雇用納付金制度申告申請受付窓口です。

3つ目は、市区町村・都道府県が実施する独自の雇用奨励金・定着支援金です。国の制度の上乗せや独自制度として実施しているもので、自治体によって内容が大きく異なります。詳細は後述します。

【無料サンプル】事業主が初めて障害者を雇用したケース:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の計算を最後まで見せます

事業主向けの障害者雇用助成金の中で、最初に検討されることが多いのが「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」です。ハローワークの紹介を通じて障害者を雇い入れた事業主に対して、一定額の助成金が支給されます。ここでは典型的な1ケースを、手続きの流れから金額の計算まで、最後まで省略せずに解説します。

想定ケース

従業員18人の中小企業A社(製造業)が、身体障害者手帳3級の方(30代・Bさん)をハローワーク障害者専門窓口の紹介を経て、フルタイムの雇用保険被保険者として採用したケースです。Bさんはこれまで短期的な就労経験はあるものの、同じ職場での継続雇用が課題でした。

採用前に必ずやること(これを知らないと受け取れない)

特定求職者雇用開発助成金を受け取るためには、採用のプロセスが非常に重要です。後から申請できるように聞こえますが、実際には採用の前にハローワークに確認しておくべきことがあります。

最大の注意点は「ハローワーク等の紹介」が要件である、という点です。すでに知り合いの障害者を採用しようとしている場合でも、一度ハローワークに相談して紹介の手続きを経ることで要件を満たすことができますが、既に採用を決定して就労を開始した後では対象外になります。採用を検討した時点で、まずハローワークの事業主用窓口に相談することが第一歩です。

A社の場合、採用決定前にハローワークに「障害のある方を採用したい」と相談し、求人を登録した上で、ハローワークからBさんの紹介を受けました。

受け取れる金額の計算

A社(中小企業)がBさん(身体障害者・フルタイム)を採用した場合、特定就職困難者コースで受け取れる金額は120万円です。

支給は「支給対象期」ごとに分割されます。支給対象期は、雇入れ日から6か月ごとに区切られます。

1期目:雇入れ日から6か月経過後に申請、支給額は30万円

2期目:雇入れ日から12か月経過後に申請、支給額は30万円

3期目:雇入れ日から18か月経過後に申請、支給額は30万円

4期目:雇入れ日から24か月経過後に申請、支給額は30万円

合計120万円を、2年かけて4回に分けて受け取ります。

なお、精神障害者を採用した場合は「重度障害者等」に分類され、支給額は240万円(中小企業の場合)になります。重度の身体・知的障害者の場合も同様に240万円です。

申請に必要な書類(支給申請時)

1期目の支給申請書類として、必要なものの目安は以下の通りです。最新様式や必要書類の確認は、申請先の都道府県労働局・ハローワークで行ってください。

これらの書類は採用の段階から意識して保管しておく必要があります。特に賃金台帳は支給対象期全体の分が必要になるため、毎月しっかり作成・保管してください。

申請の窓口と手続きの流れ

申請先は、A社の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークです。具体的な提出先は、採用時にハローワークで確認しておくことをおすすめします。

支給申請の期限は、各支給対象期の末日の翌日から2か月以内が目安とされています(正確な期限は支給申請書の様式・通知書で確認してください)。期限を過ぎると支給されなくなるため、採用後の手帳に「申請期限」を必ずメモしておくことが重要です。

電子申請もできます。e-Gov(https://www.e-gov.go.jp)または労働局が指定する電子申請システムから申請可能な場合があります。窓口での相談時に電子申請の可否を確認することをおすすめします。

気をつけるべき落とし穴

支給期間中に対象者を解雇した場合、以降の支給が止まるだけでなく、すでに受け取った助成金を返還しなければならない場合があります。解雇等の事実があった後でも申請しようとするのは不適切ですので、特に支給期間中の雇用管理は慎重に行ってください。

また、雇入れ日の前後6か月以内に正当な理由のない離職者(雇用保険被保険者として)を出している場合、助成金の対象外になる場合があります。採用と同時期に他の従業員を整理しているケースでは、必ずハローワークに事前確認が必要です。

このように、採用前のハローワーク相談→紹介を経た採用→雇用保険加入→賃金台帳の保管→6か月ごとの支給申請、という流れを守ることが助成金を確実に受け取るためのポイントです。

ここから先は、申請に直結する実務です。

法定雇用率の仕組みと2026年7月の引き上げ

法定雇用率とは何か

法定雇用率とは、事業主が雇用しなければならない障害者の割合を定めたものです。障害者雇用促進法に基づき、常時雇用している労働者数に対して、一定割合以上の障害者を雇用することが義務づけられています。

民間企業の法定雇用率は、2024年4月に2.3%から2.5%へ引き上げられました。そして2026年7月1日から、さらに2.5%から2.7%へと引き上げられます。

この引き上げに伴い、法定雇用率の義務の対象となる事業主の範囲も変わります。現在(2026年6月30日まで)は常用雇用40.0人以上の事業主が対象ですが、2026年7月1日以降は常用雇用37.5人以上の事業主が対象になります。

なお、国・地方公共団体は3.0%(2024年4月以降)、都道府県等の教育委員会は2.9%が適用されており、これらも段階的な引き上げが進んでいます。

障害者として算定できる範囲

法定雇用率の計算上、「障害者」として算定できるのは原則として障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳)を所持している方です。

算定上の取り扱いには、次のような重み付けがあります。

重度の方を雇用すると倍算定になるため、企業の採用計画においても重度区分の確認は重要です。

実雇用率の計算方法

事業主の実雇用率は以下の算式で計算します。

実雇用率 = (雇用障害者数 + 雇用重度障害者数)÷ 常時雇用労働者数 × 100

たとえば常時雇用100人の企業が、身体障害者(重度なし)を2人、精神障害者を1人雇用しているとします。

実雇用率 = (2 + 1)÷ 100 × 100 = 3.0%

2026年7月1日以降の法定雇用率2.7%を超えているため、この企業は義務を果たしています。

常時雇用50人の企業であれば、37.5人以上の対象範囲に入るため、2026年7月以降は法定雇用率2.7%の義務が生じます。50人 × 2.7% = 1.35人ですから、少なくとも1人(端数切り上げではなく切り捨てで計算される点に注意)の障害者を雇用することが求められます。正確な計算方法はハローワークに確認してください。

2026年7月引き上げの実務への影響

現在障害者を雇用していない企業で常用雇用37.5人以上40.0人未満の規模の事業主は、2026年7月以降から新たに義務の対象となります。義務が発生してから急いで採用するのでは採用の質が下がりやすいため、2026年上半期中から準備を始めることが合理的です。

また法定雇用率が2.5%から2.7%に上がることで、これまで法定雇用率を達成していた企業でも、0.2ポイントの引き上げ分だけ追加雇用が必要になる場合があります。たとえば常用雇用200人の企業の場合、2026年6月まで(2.5%)は5.0人が必要でしたが、2026年7月以降(2.7%)は5.4人分が必要になります(端数処理の扱いは公式確認要)。

障害者雇用納付金制度:3本柱の詳細

障害者雇用納付金制度は、「障害者を雇用する事業主と雇用しない事業主との経済的負担を調整する」という目的で設けられた仕組みです。3つの要素(納付金・調整金・報奨金)がセットになっています。

1. 障害者雇用納付金

常時雇用する労働者が100人を超える事業主で、法定雇用率を達成していない場合に、不足する障害者1人あたり月額50,000円を納付しなければなりません。

計算式:

納付金 = (法定雇用数 - 実際の雇用数)× 月ごとの不足数 × 50,000円

たとえば常時雇用200人の企業で、法定雇用率2.7%(2026年7月以降)なら5.4人が法定雇用数(端数の扱いは公式確認要)。仮に法定雇用数が5人で、実際は2人しか雇用していない場合、毎月3人分 × 50,000円 = 150,000円が納付対象になります。1年間では1,800,000円になります。

納付金は毎年4月1日から5月15日までの間にJEEDに申告申請書を提出して納付します。対象となる期間は前年度4月1日から当年度3月31日までです。

2. 障害者雇用調整金

常時雇用する労働者が100人を超える事業主で、法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合、超過雇用1人あたり月額29,000円(2026年6月27日確認値)が支給されます。年間の支給対象人数が120人月を超える部分については、月額23,000円になります。

計算式(月単位):

調整金 = 超過雇用数 × 29,000円(120人月超分は23,000円)

たとえば常時雇用200人、法定雇用数5人のところ8人を雇用している場合、毎月3人分 × 29,000円 = 87,000円の調整金が申請できます。1年間では1,044,000円です。

調整金は申告申請期間(4月1日〜5月15日)に申請します。

注意点として、調整金を受け取るためには申請が必要です。自動的に振り込まれるわけではありません。毎年の申告期間を逃さないようにカレンダーに記入しておくことをおすすめします。

3. 報奨金(100人以下の事業主向け)

常時雇用する労働者が100人以下の事業主で、各月の雇用障害者数の年度間合計が、一定の水準(4%に当たる数または72人月のいずれか大きい方)を超える場合、超過分について1人あたり月額21,000円(年420人月超の超過分は16,000円)が支給されます。

報奨金の申請期間は4月1日から7月31日までで、調整金よりも申請できる期間が長く設定されています。

報奨金は小規模事業主を対象としており、「100人以下でも努力して障害者を雇用している事業主を支援する」という趣旨の制度です。競合記事では調整金ばかりが取り上げられますが、100人以下の事業主にとっては報奨金の方が直接関係します。

在宅就業障害者特例制度

調整金・報奨金を申請する事業主が、在宅で仕事をしている障害者や就労継続支援A型・B型の利用者に対して業務を発注した場合、実際の雇用に換算した人数を超えた部分に対して追加的な給付が受けられる制度が設けられています。在宅就業障害者特例調整金・特例報奨金と呼ばれます。この制度を通じて、直接雇用が難しい場合でも障害者の就労機会に貢献できます。詳細はJEEDにお問い合わせください。

特定求職者雇用開発助成金

特定就職困難者コース(最も利用件数が多い)

前述の無料サンプルで解説したとおり、ハローワーク等の紹介を通じて就職困難者を継続雇用する事業主に支給される助成金です。障害者に関する支給額を整理すると以下の通りです(2026年6月27日確認・申請前に必ず最新情報を確認してください)。

対象者が通常労働者(週30時間以上)の場合:

対象者が短時間労働者(週20時間以上30時間未満)の場合:

支給は6か月ごとの支給対象期に分割して申請します。精神障害者・発達障害者・重度障害者等は支給対象期が延長(最大2年間分)されます。

中小企業の定義は、製造業等は従業員300人以下または資本金3億円以下、卸売業は100人以下または資本金1億円以下、小売業・サービス業は50人以下または資本金5,000万円以下です。

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

発達障害(自閉症スペクトラム障害・学習障害・注意欠陥多動性障害など)または難治性疾患(いわゆる「難病」。指定難病の一部)のある方を、ハローワーク等の紹介を経て継続雇用する事業主に支給される助成金です(2026年6月27日確認)。

通常労働者の場合:

短時間労働者の場合:

このコースの特徴として、障害者手帳を持っていない発達障害者や難病患者も対象になる点が挙げられます。発達障害のある方の中には手帳を取得していないケースも多く、手帳がないからといって助成金の対象外とは限りません。ハローワークへの事前確認が重要です。

令和8年4月以降は、賃金台帳の提出が必須になりました。申請時に賃金台帳を添付しなければ不支給となりますので注意してください。

障害者初回雇用コース

常時雇用する労働者数が45.5人以上300人以下の中小企業で、初めて障害者を雇用し、法定雇用率を達成した場合に60万円が支給されます。「初めて障害者を雇用する」という特別な段階をサポートする制度です。

対象となるのは、特定就職困難者コースの対象者と同じ障害者等であることが条件です。また、雇入れ後の一定期間内の申請が求められます。詳細はハローワークへ事前確認してください。

トライアル雇用助成金(障害者関連コース)

障害者トライアルコース

「採用してみなければ判断できない」という事業主のためにあるのがトライアル雇用です。一定期間(試行雇用期間)を設けて障害のある求職者に働いてみてもらい、双方が合意すれば本採用につなげるしくみです。この期間中の雇用コストの一部を国が助成します(2026年6月27日確認)。

支給額:

対象者の条件として、次のいずれかに該当していることが必要です。

また、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介であることが必要です。

申請の手順は、まずハローワークに求人を出しトライアル雇用として紹介を受けます。その後、トライアル雇用期間中の賃金を支払い、期間終了後に支給申請を行います。試行雇用契約書・賃金台帳・出勤簿などが必要書類になります。

障害者短時間トライアルコース

精神障害者または発達障害者で、週20時間以上の勤務が難しい方が少しずつ勤務時間を延ばして働けるよう設計されたコースです。

支給額:月額最大40,000円、最長12か月

このコースは、精神・発達障害のある方の「最初は週10時間から始めたい」「徐々に時間を延ばしたい」というニーズに応えるもので、通常のトライアルコースよりも長期間(最長12か月)助成が受けられる点が特徴です。

なお、週20時間未満の短時間勤務から始める場合でも、週20時間以上への移行を目標にするという合意があることが要件です。

施設・設備整備系助成金(JEED)

障害者作業施設設置等助成金

障害者の障害特性に起因する課題を克服するために、特別な設備・機器・施設を設置または整備する費用の一部を助成する制度です。申請窓口はJEED(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)の各都道府県支部です。

助成の種類は大きく「第1種(新たに雇い入れる障害者のための整備)」と「第2種(継続雇用する障害者のための整備)」に分かれており、対象措置・助成率・限度額は区分によって異なります。

設備費の助成率はおおむね3分の2で、限度額が設定されています。具体的な限度額は令和8年度版の公式パンフレットで確認してください(令和8年5月以降にJEEDから公開予定)。

対象となる整備の例としては、車いすが通れるよう通路を拡張する、視覚障害のある方のために点字表示や音声案内機器を設置する、聴覚障害のある方のために光や振動で知らせる設備を導入する、精神・発達障害のある方がパーテーションで仕切られた集中できる作業スペースを設ける、などが含まれます。

障害者介助等助成金

障害のある方の雇用継続のために、介助者の配置・手話通訳担当者の配置・点訳・代筆・音声録音などのサービス提供費用を助成する制度です。

障害の種類と程度によって、対象となる措置と助成水準が異なります。たとえば、肢体不自由の方のための専任介助者の雇用コスト、聴覚障害者への手話通訳サービスの利用費用などが対象になります。

申請はJEED各都道府県支部に行います。こちらも令和8年度版の助成率・限度額は、JEEDの最新情報(令和8年5月頃以降)を確認してください。

職場適応援助者(ジョブコーチ)助成金

ジョブコーチ支援とは

ジョブコーチとは、障害のある方の職場定着を支援する専門スタッフです。正式名称は「職場適応援助者」で、職場に出向いて障害者本人と事業主双方に対して、具体的な仕事のやり方や職場環境の調整などについて支援を行います。

大きく2種類あります。

1つ目は「配置型ジョブコーチ」で、JEEDの地域障害者職業センター(各都道府県に1か所以上設置)に所属するジョブコーチです。費用は無料で利用できます。

2つ目は「訪問型ジョブコーチ」で、社会福祉法人等の就労支援機関に雇用されているジョブコーチです。こちらを活用した場合の費用の一部を助成する制度が「訪問型職場適応援助者助成金」です。

3つ目は「企業在籍型ジョブコーチ」で、障害者を雇用する事業主に雇用されているジョブコーチです。自社に在籍するジョブコーチが社内の障害のある社員を支援します。こちらを設置した場合の費用を助成する制度が「企業在籍型職場適応援助者助成金」です。

令和8年度からの変更点

令和8年度(2026年4月)から上級職場適応援助者養成研修が開始されることに伴い、助成金の支給対象が拡充される予定です。具体的な支給額の詳細は、JEEDから令和8年度版パンフレットが公表された後に確認してください。

現時点での月額支給額の目安については、JEEDの各都道府県支部(高齢・障害者業務課)にお問い合わせください。問い合わせ先は、JEEDのウェブサイト(https://www.jeed.go.jp)から最寄りの都道府県支部を検索できます。

誰がどうやって使うか

ジョブコーチ支援を利用したい場合、まず地域障害者職業センターに相談することが窓口になります。障害のある方本人または採用を考えている事業主のどちらからでも相談できます。

就労移行支援事業所を通じて就職した場合、就職先の事業主と連携してジョブコーチ支援を依頼するケースもあります。

キャリアアップ助成金・障害者正社員化コース

制度の概要

有期雇用契約で働く障害者を正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換した場合、あるいは無期雇用の障害者を正規雇用に転換した場合に助成金が支給されます。障害者の雇用の安定を図ることが目的です(2026年6月27日確認)。

支給額の詳細

重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者の場合:

重度以外の身体・知的障害者・発達障害者・難病患者などの場合:

支給は転換日から6か月ごとに2回に分けて行われます(1年間の支給期間)。

手続きの流れ

まず転換前に「キャリアアップ計画書」を作成し、事業所管轄の労働局長に提出します(転換を実施する前に提出が必要)。次に有期雇用から正規雇用等への転換を実施します。転換後6か月以上継続雇用した後、支給申請書を労働局またはハローワークに提出します。

申請にはe-Gov電子申請または書面申請が利用できます。

障害者正社員化コース特有の注意点

キャリアアップ助成金の「障害者正社員化コース」は、一般のキャリアアップ助成金(正社員化コース)とは別の制度です。障害者を対象とする場合は、必ず「障害者正社員化コース」として申請します。

また、転換後の正規雇用において、賃金が転換前より低下してはならないという要件があります(賃金規定の見直し等を伴う場合は要確認)。詳細は最新のパンフレットや労働局への事前相談で確認してください。

申請窓口(ハローワーク・JEED・労働局)の使い分け

助成金の申請において、どの窓口に行けばよいかを間違えると手続きが止まってしまいます。以下を参考に、用途ごとに適切な窓口に連絡してください。

ハローワーク(公共職業安定所)

ハローワークには「障害者専門窓口」が設置されています(設置状況は各ハローワークにより異なります)。障害のある方が求職する場合は、まず最寄りのハローワークに「障害者の雇用を希望している」と伝え、障害者専門窓口への案内を受けることをおすすめします。

都道府県労働局(雇用環境・均等部または雇用開発部)

詳細な申請手続きは、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局の窓口に確認してください。

高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)各都道府県支部

JEEDの各都道府県支部は、都道府県ごとに高齢・障害者業務課が設置されています。所在地はJEED公式サイト(https://www.jeed.go.jp)から「各都道府県の窓口」を検索してください。

ハローワーク障害者専門窓口の使い方(当事者向け)

最初の1歩:相談のしかた

障害のある方が初めてハローワークに行く場合、入口で「障害がある者の求職相談に来た」と伝えてください。障害者専用の相談窓口(スペースが区切られていることが多い)に案内されます。

専門の相談員が対応し、以下のことを一緒に整理してくれます。

障害者手帳がなくても相談は可能ですが、障害者雇用枠での求人紹介を受けるためには手帳の提示が必要になるケースが多いです。発達障害や難病など手帳を持っていない方は、その旨を率直に相談員に伝えてください。

障害者求人の種類と探し方

ハローワークの求人には、大きく「一般求人(オープン・クローズ含む)」と「障害者専用求人」の2種類があります。

一般求人は、障害のある方も障害のない方も応募できる求人です。この中に「障害者歓迎」と書かれているものや、障害を開示しないで応募するものが含まれます。

障害者専用求人は、障害者雇用促進法に基づく障害者雇用枠の求人です。障害者手帳を持つ方が対象で、法定雇用率の算定対象になります。

後述のオープン・クローズ就労の選択とも関連しますが、ハローワークの窓口では自分の状況と希望を率直に伝えることが、マッチングの精度を上げる近道です。

就労移行支援事業所の役割と選び方

就労移行支援とは何か

就労移行支援は、障害のある方が一般就労を目標に、最大2年間(必要に応じて延長可)通所して訓練を行う障害福祉サービスです。利用するには市区町村に「サービス等利用計画」を提出し、支給決定を受けることが必要です。

主な内容は次の通りです。

就労移行支援で就職に至った方には、引き続き就労定着支援(後述)が利用できます。

自分に合う事業所の選び方

就労移行支援事業所は全国に約3,500か所以上(2025年度時点)あり、障害の種類・支援の内容・得意とする分野がそれぞれ異なります。

選ぶ際のポイントとして以下が挙げられます。

まず、自分の障害に対応しているかを確認します。身体障害・知的障害・精神障害・発達障害のどれを得意としているかは事業所によって異なります。

次に、就職実績を確認します。年間の就職者数、定着率(就職後6か月・1年後の在職率)を公表している事業所は参考になります。

それから、実習先の業種を確認します。事務系・IT系・接客系など、自分が希望する業種での実習機会があるかを確認してください。

また、訓練の環境を見学します。多くの事業所は見学・体験利用を受け付けています。実際に雰囲気を確かめてから利用申請することをおすすめします。

市区町村の障害福祉窓口(自立支援担当)や相談支援専門員に相談すると、地域内の事業所を紹介してもらうことができます。

就労継続支援A型・B型と一般就労の違い

障害者の「働く場」には、一般就労のほかに就労継続支援A型・B型があります。それぞれの違いを理解することで、今自分に合ったステップを選ぶことができます。

就労継続支援A型

雇用契約を結んで働くサービスです。最低賃金が適用されます。一般の企業で働くことが現時点では難しいが、雇用契約に基づく就労はできる方が対象です。

A型事業所では、軽作業・データ入力・農作業・カフェ運営など、多様な業種が展開されています。所得として給与が発生するため、各種保険(雇用保険・健康保険・厚生年金等)にも加入します。

就職を目指す段階として利用する方もいますが、A型は「働き続ける場」としても機能します。

就労継続支援B型

雇用契約を結ばずに、工賃を受け取りながら働くサービスです。最低賃金の適用はなく、工賃は事業所の経営状況によって異なりますが、全国平均は月額15,000〜20,000円台が目安です。

日常生活の基礎的な部分からサポートが必要な方や、体調の波が大きく安定した勤務が難しい方、高齢の障害者などが主に利用しています。

一般就労との比較

一般就労は、企業(通常の事業所)に雇用されて働く形態です。法定雇用率の算定対象になります。就労移行支援やジョブコーチ支援を活用してステップアップする方も多くいます。

大切なのは、どのルートが「正しい」というわけではなく、今の体調・生活状況・意欲に合ったところから始めることです。A型やB型を経て一般就労につながる方も、逆に一般就労から体調悪化によりA型やB型に移る方もいます。ライフステージに合わせて柔軟に選択できます。

就労定着支援:就職後6か月からのアフターフォロー

就労定着支援とは

就労移行支援や就労継続支援A型などの障害福祉サービスを経て一般就労した障害者が、就職後6か月を経過した後から利用できる支援サービスです。支援期間は最長3年6か月です。

就労定着支援は、就職すること自体ではなく「就職した後も継続して働けること」を目的としており、就職後に生じる様々な生活面・職場面の課題に対して支援者(就労定着支援員)が継続的に関わります。

具体的に何をしてくれるか

就労定着支援員が行う主な支援の内容は以下の通りです。

職場に出向いてのサポートは就労定着支援員が担い、医療的なサポートは通院先の医療機関と連携します。この連携が機能することで、体調の波がある方でも継続就労しやすくなります。

利用するための手続き

就労定着支援を利用するには、市区町村に「サービス等利用計画」を提出し支給決定を受ける必要があります。なお、2024年4月より就労選択支援という新しいサービスが設けられました。就労に向けた「アセスメント(自分の働く上での強みや課題の整理)」を専門の支援者と一緒に行うサービスです。就労移行支援や就労継続支援の利用前に活用することで、自分に合ったサービスを選びやすくなります(市区町村窓口で相談可)。

特例子会社制度:働く側の視点で整理する

特例子会社とはどんな職場か

特例子会社とは、大手企業グループが障害者の雇用専門に設立した子会社です。障害者雇用促進法の特例として、特例子会社に雇用されている障害者を親会社に雇用されているとみなして法定雇用率を計算できる仕組みがあります。

働く側の視点で特例子会社を選ぶことのメリットとしては、次のことが挙げられます。

一方で、特例子会社は大企業グループの一員ではあるものの、福利厚生や昇給・異動の機会が親会社と必ずしも同一ではない場合があります。就職を検討する際は、待遇・業務内容・職場の雰囲気を事前に確認することをおすすめします。

特例子会社の認定要件

企業が特例子会社の認定を受けるためには、主に以下の要件を満たす必要があります。

認定を行うのは都道府県労働局長です。詳細はハローワークまたは都道府県労働局に確認してください。

精神障害・発達障害・難病ごとの支援制度の差異

精神障害のある方の場合

精神障害者保健福祉手帳の取得により、障害者雇用枠での応募・法定雇用率の算定対象になります。

就労支援の特徴として、精神障害は症状に波があることが多く、安定した就労のためには「職場の理解」と「医療との連携」が特に重要です。

制度上のポイントとして、トライアル雇用助成金の精神障害者コースは支給額が特別に高く設定されています(月額8万円×最初3か月)。また、特定求職者雇用開発助成金では精神障害者が「重度障害者等」として支給額が高い区分に分類されます。

就労定着支援を活用して、就職後も継続的に相談窓口を持つことが、精神障害のある方の職場定着に大きく寄与します。

また、精神障害のある方が短時間勤務(週20時間以上30時間未満)で働く場合でも、法定雇用率の算定上「1人」として計算される特例措置があります(身体・知的障害者の短時間労働者は0.5人扱い)。

発達障害のある方の場合

発達障害(自閉症スペクトラム障害・ADHD・学習障害など)は、精神障害者保健福祉手帳の取得により障害者雇用枠での応募が可能になります。ただし手帳を取得していない方も多く、その場合でも以下の制度が活用できます。

合理的配慮の観点では、発達障害のある方が特に役立てられることとして次のような配慮があります。

こうした配慮は「採用面接前の段階で交渉・確認しておく」ことが現実的です。面接の際に具体的にどのような配慮が必要かを伝えると、採用後の職場適応もスムーズになります。

難病(難治性疾患)のある方の場合

難病のある方は、「難病患者就職サポーター」というハローワークの専門窓口スタッフに相談できます(主要なハローワークに配置)。難病の状況や就労への影響を理解した上で、就職活動のサポートをしてもらえます。

就労継続の難しさとして、難病は病状の変化や治療スケジュールによって通院・入院が必要になることがあります。このため、柔軟な休暇取得・時差出勤・在宅勤務など、合理的配慮の面での調整が就労継続の鍵になります。

特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)では、「難治性疾患患者」として指定難病に罹患していることをハローワークが確認することで、事業主への助成金支給につながります。この制度を活用することで、採用事業主への経済的インセンティブが生まれます。

合理的配慮の請求権と具体的な配慮例

合理的配慮とは何か

合理的配慮とは、障害のある方が就労・職業訓練・採用選考などの場面で不利益を受けないよう、事業主が個別の状況に応じた調整や工夫を提供することです。障害者雇用促進法(2016年施行)に基づき、雇用の場面では事業主に対して「法的義務」として定められています。

「義務」とはいえ、事業主にとって「過重な負担」にならない範囲での提供が求められます。過重かどうかは、費用・事業規模・業務への影響などを総合的に判断して決まります。

求職・採用選考での配慮例

採用後の職場での配慮例

配慮を求める際の手順

合理的配慮は、本人が事業主に対して申し出ることが出発点です。「社会的なバリアを取り除いてほしい」という意思の表明があって初めて、事業主が対応を検討する流れになります。

採用面接の段階や、就職直後のオリエンテーション等で「どのような配慮が必要か」を具体的に伝えることが実際的です。就労移行支援事業所や相談支援専門員と一緒に、必要な配慮のリストを整理してから面接に臨む方法も有効です。

障害開示(クローズ・オープン就労)の選択と制度上の扱い

クローズ就労とオープン就労とは

クローズ就労とは、障害を開示せずに就職・就労することです。一般求人に応募し、障害の情報を職場に伝えません。

オープン就労とは、障害を開示した上で就職・就労することです。障害者雇用枠の求人に応募する場合はオープン就労になります。一般求人であっても障害を開示して応募することもあります。

制度上どう扱われるか

障害者雇用枠(法定雇用率の算定対象になる求人)への応募・採用は、障害者手帳を提示することが必須です。これは定義上オープン就労になります。

クローズ就労の場合は、事業主は法定雇用率に算定できず、特定求職者雇用開発助成金なども原則として使えません。

どちらを選ぶかは個人の自由ですが、障害の特性や職場環境、将来的な継続就労のしやすさを考慮した上で選択することが重要です。

それぞれのメリット・デメリット

クローズ就労のメリットとしては、一般求人の幅広い選択肢から応募できる、障害を理由とした選考での不利を回避できる、といったことが挙げられます。デメリットとしては、体調の変化があった際に職場に説明しにくい、合理的配慮を求めにくい、万一体調が悪化した際に支援制度につながりにくい、といった面があります。

オープン就労のメリットとしては、合理的配慮を求めやすい、体調管理について職場の理解が得られやすい、障害者専用求人に応募できる、就労定着支援などの継続的なサポートが受けやすい、といったことが挙げられます。デメリットとしては、障害者専用求人の職種・業種が限られる場合がある、といったことがあります。

個人事業主・小規模事業主が対象になる条件

法定雇用率の適用

個人事業主の場合でも、常時雇用する従業員が37.5人以上(2026年7月以降)であれば法定雇用率の適用対象になります。個人事業主が1人で事業をしている場合は対象になりませんが、一定規模以上の従業員を雇用していれば事業主の形態(法人・個人)は関係ありません。

助成金の申請

特定求職者雇用開発助成金・トライアル雇用助成金・キャリアアップ助成金などは、個人事業主でも申請できます。ただし雇用保険の適用事業所であること、申請する従業員が雇用保険被保険者であることが前提条件です。

個人事業主の方が障害者を採用しようとする場合、まずハローワークの事業主窓口に「雇用保険の適用事業所として登録しているか」を確認した上で、助成金の申請要件を確認することをおすすめします。

小規模事業主向けの報奨金

前述のとおり、常時雇用100人以下の事業主は、法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合に「報奨金」を申請できます。こちらは個人事業主・中小企業どちらでも対象になります。100人以下の事業主は「障害者雇用納付金」を納める義務はありませんが、報奨金は申請できるという仕組みです。

自治体独自の雇用奨励金・定着支援金との組み合わせ

国の制度に加えて、多くの都道府県・市区町村が独自の障害者雇用関連の奨励金・定着支援金を設けています。

国の制度(特定求職者雇用開発助成金等)との併用については、原則として可能なケースが多いですが、自治体の制度ごとに条件が異なります。

自治体の制度を調べる方法として以下が挙げられます。

また、都道府県労働局が「雇用関係助成金一覧」を公表している場合があり、そこに自治体独自の制度も記載されていることがあります。

具体的な自治体例として(2026年6月時点の一例・要確認)、東京都では「東京都障害者雇用促進事業(雇用促進奨励金)」、大阪府では「大阪府障害者雇用奨励金」など、独自の奨励金制度が設けられています。金額・要件・申請期限は年度ごとに変わることがあるため、各自治体の担当窓口で最新情報をご確認ください。

よくある誤解・つまずきポイント

誤解1:採用後に申請すれば良い(事前手続きを知らない)

特定求職者雇用開発助成金は、ハローワーク等の「紹介」を受けて採用することが要件です。既にご自身で採用を決めてから「後でハローワークに紹介してもらったことにすればいいか」という発想での申請は認められません。まずハローワークに求人を出し、正式な紹介を受けることが絶対条件です。

採用を考え始めた段階でハローワークへ相談することが第一歩です。「人を採用するより前にハローワークへ」という順番を忘れないでください。

誤解2:調整金は自動的に振り込まれる

超過雇用があれば調整金が自動的に支給されるわけではありません。毎年4月から5月15日の間にJEEDへ申告申請書を提出して初めて受け取れます。期限を1日でも過ぎると受け取りができなくなるため、毎年の手帳・カレンダーに「5月15日:調整金申請期限」と記入しておくことをおすすめします。

誤解3:短時間労働者は助成金対象外

週30時間未満のパートタイムで採用した場合でも、週20時間以上であれば特定求職者雇用開発助成金や障害者短時間トライアルコースの対象になります。ただし支給額は通常労働者より少なく設定されています。

精神障害・発達障害のある方は最初から週40時間のフルタイム勤務が難しいケースも多いため、短時間労働者として受け入れてトライアル期間を経て時間を延ばすというアプローチが現実的です。短時間トライアルコース→正式採用(短時間)→障害者短時間雇用助成→本採用・時間延長、という段階的なルートを想定しておくと良いでしょう。

誤解4:精神障害者の法定雇用率算定は難しい

精神障害者保健福祉手帳を持つ方は、身体・知的障害者と同様に法定雇用率の算定対象になります。かつては短時間労働者は0.5人扱いでしたが、特例として精神障害者の短時間労働者は当分の間1人として算定できます。精神障害のある方をパートタイムで採用することも、法定雇用率の充足につながります。

誤解5:就労継続支援A型は「助成金が受けられる」という誤解

就労継続支援A型事業所で働く方は、事業所と雇用契約を結んでいますが、それはA型事業所と個人の間の雇用関係です。A型利用者が一般企業の法定雇用率に算定されるわけではなく、特定求職者雇用開発助成金の対象にもなりません。一般就労(一般企業への就職)とは別の枠組みであることをしっかり区別してください。

誤解6:難病のある方は就職支援が受けられないと思っている

難病(指定難病)のある方は障害者手帳がなくても、ハローワークの「難病患者就職サポーター」に相談できます。また、特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)の対象にもなります。「難病だから対象外」ではなく、積極的にハローワークや就労支援機関に相談することを検討してみてください。

誤解7:合理的配慮は要望するだけで全て実現できる

合理的配慮は「過重な負担にならない範囲」が前提です。事業主の規模・財力・業務への影響を考慮した上で判断されるため、すべての要望が必ず実現されるとは限りません。具体的に「この配慮があれば働ける」という提案として伝えると、事業主も対応しやすくなります。就労移行支援事業所のスタッフなどと一緒に「配慮の提案書」を準備する方法が実践的です。

採用前手続きの重要性:失敗パターンと対策

失敗パターン1:採用してから助成金を調べる

「採用後に助成金があると知ったのに申請できなかった」という最も多い失敗パターンです。特定求職者雇用開発助成金は採用前にハローワーク紹介を受けることが要件です。採用後では申請不可です。

対策:採用計画が固まった段階でハローワークへ相談する。

失敗パターン2:支給申請の期限を逃す

各支給対象期の申請期限(6か月ごと)を把握しておらず、1期分の申請を逃してしまうケースです。

対策:採用時にハローワークで発行される書類の中に「支給申請の案内」が含まれています。そこに記載された日付を採用台帳に記録しておく。

失敗パターン3:賃金台帳を作っていない

令和8年4月以降、賃金台帳の提出が不可欠になりました。賃金台帳がなければ不支給になります。

対策:採用した全ての従業員について、毎月の賃金台帳を作成・保管する。特に中小企業でアナログな給与管理をしている場合は、書式を確認してから採用を進める。

失敗パターン4:採用直後に他の従業員を整理する

採用日の前後6か月以内に正当な理由のない離職者が出ると、助成金の対象外になります。採用と同時に人員整理を行うと不利になります。

対策:雇用調整が必要な場合は、助成金申請のタイミングとの関係をハローワークに事前相談する。

申請チェックリスト

事業主向けチェックリスト(特定求職者雇用開発助成金・特定就職困難者コース)

採用前に確認すること:

採用後(支給申請前)に確認すること:

申請時に準備するもの(1期目の目安):

事業主向けチェックリスト(障害者雇用納付金申告)

当事者・求職者向けチェックリスト

よくある質問(FAQ)

Q1. 障害者手帳を持っていなくても障害者雇用枠に応募できますか?

障害者雇用枠(法定雇用率の算定対象となる求人)に応募するためには、原則として障害者手帳の提示が必要です。発達障害や精神疾患をお持ちで手帳を取得していない場合は、まず医療機関・市区町村の相談窓口に相談して手帳の取得を検討するか、あるいは一般求人でオープン就労(障害を開示した上で応募)という選択肢も考えられます。

Q2. 小規模な個人事業主でも特定求職者雇用開発助成金を受け取れますか?

受け取れる場合があります。法人・個人事業主の区別はなく、雇用保険の適用事業所であり、ハローワーク等の紹介を経て障害者を雇用していることが要件です。まずハローワークの事業主窓口にご相談ください。

Q3. 障害者を採用すると、助成金で全部コストが補えますか?

助成金は採用コストや人件費の一部を支援するものであり、全額をカバーするものではありません。支給額は限定的で、かつ複数の期に分割されます。人件費の全体像と助成金受取額のタイミングのズレを事前に把握した上で採用計画を立てることが重要です。

Q4. 調整金を受け取るためにわざと多く雇用するのは問題ありませんか?

法定雇用率を超えて障害者を雇用すること自体は法律に基づく正当な行為であり、調整金を受け取ることも適法です。ただし、書類上だけで雇用しているように見せかける不正は厳禁です。実態を伴わない申請は不正受給として返還・罰則の対象になります。

Q5. 就労移行支援を利用したいのですが、費用はかかりますか?

就労移行支援の利用料は、原則として世帯の収入状況に応じた負担上限が設定されており、生活保護世帯や市民税非課税世帯は自己負担がゼロです。詳細は市区町村の障害福祉担当窓口で確認してください。

Q6. 特例子会社に入社するにはどうすればいいですか?

特例子会社は多くの場合、採用情報を独自のウェブサイトや就職支援サイト(障害者専用の転職・求人サイト等)に掲載しています。ハローワークの求人にも掲載されるケースがあります。「特例子会社 求人」で検索するか、ハローワークの担当者に相談してください。

Q7. 就労定着支援はどこに相談すれば使えますか?

就労定着支援は就労移行支援等の事業所が提供しているサービスです。一般就労した後6か月が経過した時点から利用できます。利用するには市区町村に申請して支給決定を受ける必要があります。就職前から就労移行支援事業所と就労定着支援の連携について確認しておくとスムーズです。

Q8. 難病を抱えていますが、通院や入院で休みが多くなる可能性があります。採用してもらえますか?

難病のある方でも就労している方は多くいます。採用するかどうかは事業主の判断によりますが、合理的配慮として通院日の確保・傷病休暇の柔軟な取得・在宅勤務の活用などを事前に交渉することが現実的な対策になります。難病患者就職サポーターのいるハローワークに相談することをおすすめします。

Q9. 精神障害があり、採用面接で不安を感じます。どのように対策できますか?

就労移行支援事業所での面接練習が効果的です。また、「面接を複数回に分けてほしい」「面接時に同行支援者の同席を認めてほしい」といった合理的配慮を事前に申し出ることも可能です。ハローワークの担当者に「面接の配慮について一緒に企業に伝えてほしい」と相談すると、就職支援担当者が仲介してくれることもあります。

Q10. 採用した障害者が定着しない場合、支給された助成金はどうなりますか?

支給対象期中に解雇等が生じた場合、その後の支給期の助成金は支給されなくなります。また既に受け取った部分についても、一定の条件下では返還を求められることがあります。雇用管理と職場定着支援(就労定着支援事業所との連携・ジョブコーチの活用等)を積極的に行うことが、助成金の安定的な受領と職場定着の両立につながります。

出典一覧(2026年6月27日確認)

  1. 厚生労働省「令和5年度からの障害者雇用率の設定等について」

https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf

(民間企業の法定雇用率の段階的引き上げ:2.5%→2.7%等を確認)

  1. 京都労働局「令和8年7月以降、障害者の法定雇用率が引き上げられます」

https://jsite.mhlw.go.jp/kyoto-roudoukyoku/news_topics/event/newpage_00037.html

(2026年7月1日からの2.5%→2.7%引き上げを確認)

  1. 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金制度の概要」

https://www.jeed.go.jp/disability/about_levy_grant_system.html

(納付金月額50,000円、調整金月額29,000円、報奨金月額21,000円を確認)

  1. JEED「申告申請期限、提出方法、納付期限・支給時期」

https://www.jeed.go.jp/disability/levy_grant_system_term.html

(100人超の申請期限4月1日〜5月15日、100人以下の申請期限4月1日〜7月31日を確認)

  1. 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html

(身体・知的障害者:中小120万円・大企業50万円、重度等:中小240万円・大企業100万円を確認)

  1. 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/hattatsu_nanchi.html

(通常労働者:中小120万円(2年)・大企業50万円(1年)を確認)

  1. 厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/shougai_trial.html

(精神障害者:月額最大8万円×3か月、その他:月額最大4万円×最長3か月を確認)

  1. 厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/index_00004.html

(重度等・精神障害者:有期→正規120万円(中小)、その他:有期→正規90万円(中小)を確認)

  1. JEED「障害者作業施設設置等助成金」

https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/shisetsu_joseikin/index.html

(制度の存在・窓口をJEED支部と確認。令和8年度版の助成率・限度額は別途要確認)

  1. JEED「障害者介助等助成金」

https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/kaijo_joseikin/index.html

(制度の存在・窓口をJEED支部と確認)

  1. 厚生労働省「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06a.html

(令和8年度より上級ジョブコーチ研修開始・支給対象拡充予定を確認)

  1. 厚生労働省「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shougaisha_h25/index.html

(合理的配慮の法的義務・具体例を確認)

  1. 厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/shurou_00017.html

(就労移行支援・就労継続支援A型・B型・就労定着支援の体系を確認)

  1. 厚生労働省「特例子会社制度について」

https://www.mhlw.go.jp/content/001027591.pdf

(認定要件:障害者5人以上・全従業員の20%以上等を確認)

免責事項

本記事は制度の情報提供を目的としており、個別の状況に対する法的助言・税務助言・投資助言・医療上の助言ではありません。申請書類の作成代行・個別手続きの代行は行いません。社会保険労務士法に定める業務(申請書類の作成代行等)は社会保険労務士にご依頼ください。

本記事に記載の金額・要件・期限・窓口はいずれも変更されることがあります。申請前に必ず公式サイトまたは担当窓口で最新情報を確認してください。

配慮の必要なテーマ(障害・難病)に関わる内容を含みますが、本記事は当事者・ご家族への受診勧奨・診断・治療の提案は一切行いません。医療上の判断は医師等の専門家にご相談ください。

地域障害者職業センターの活用方法

地域障害者職業センターとはどんな機関か

地域障害者職業センターは、JEEDが運営する専門機関で、全都道府県に1か所以上設置されています。ハローワークが就職のあっせんを担うのに対して、地域障害者職業センターは「職業準備・適性の把握・職場復帰支援・ジョブコーチ支援」といった専門的なリハビリテーション支援に特化しています。

利用できるのは、障害のある求職者・在職中の障害者・障害者を雇用する事業主の三者です。

当事者が受けられる主なサービス

職業評価は、就労に向けた自分の能力・特性・職業適性を専門のスタッフが評価するサービスです。就職活動の方向性を決めるための「自己分析の専門版」とも言えます。就労移行支援の事業所を選ぶ前に活用すると、自分に合った支援の種類を判断しやすくなります。

職業準備支援は、就労に向けた作業・人間関係・生活リズムの改善等を、最長3か月程度センター通所で行う訓練プログラムです。就労移行支援事業所の前段階として活用される場合もあります。

職場復帰支援(リワーク支援)は、精神疾患などにより休職中の方が職場復帰を目指す際のプログラムです。認知行動療法に基づくグループプログラムや個別支援が提供されます。事業主と連携して復帰プランを立てることもできます。

事業主が受けられる主なサービス

事業主向けには、採用前の「雇用管理サポート」があります。障害者を採用したいが、受け入れ環境の整備方法がわからないという事業主が、専門スタッフから助言を受けられます。

また、在職中の障害者の職場定着についての相談も受け付けています。ジョブコーチ支援(配置型)の手配窓口としても機能しており、事業主が「社員が職場に定着できず困っている」という相談を持ち込むことも可能です。

利用方法は、最寄りの地域障害者職業センターに電話または訪問で予約を入れます。JEEDのウェブサイト(https://www.jeed.go.jp)の「地域障害者職業センター一覧」から所在地・電話番号を確認できます。

障害者雇用を進めるステップ別ロードマップ

事業主向け:採用前・採用中・採用後のロードマップ

事業主が障害者雇用を始めるための全体の流れを時系列で整理すると、以下のようになります。

採用を検討する段階(採用の0〜3か月前)では、まず「なぜ障害者を雇用したいか」を社内で整理します。法定雇用率の達成が主目的である場合、どの程度の人数・障害種別が必要かを確認します。次に地域障害者職業センターまたはハローワークに相談し、採用方法・助成金の種類・受け入れ準備について情報収集します。受け入れ環境(作業スペース・設備・マニュアル等)の整備を開始します。

採用活動の段階では、ハローワークに障害者専用求人または一般求人(障害者歓迎)として求人を登録します。就労移行支援事業所に「採用予定があるのでインターンシップの受け入れが可能か」と打診する方法もあります。面接時に「必要な合理的配慮」を双方で確認します。

採用決定・就労開始の段階では、雇用保険の資格取得届を提出します。ジョブコーチ支援が必要な場合は地域障害者職業センターに依頼します。職場内でのサポート担当者(メンター・担当上司等)を決め、定期的な面談スケジュールを設定します。

採用後(助成金申請・定着支援)の段階では、6か月ごとの支給申請期限を管理します。職場の状況変化(業務内容の変更・人間関係のトラブル等)を定期的に確認し、必要に応じて就労定着支援事業所やジョブコーチに相談します。

当事者・求職者向け:就職活動のロードマップ

現在の状況を整理する段階では、主治医・支援者・市区町村の相談窓口に相談し、今の状態で就労が可能かを確認します。必要に応じて障害者手帳の取得を検討します。

就職の準備をする段階では、就労移行支援事業所または地域障害者職業センターを活用します。職業評価・職業準備支援を経て「自分が何の仕事ができるか・何に配慮が必要か」を言語化します。履歴書・職務経歴書を準備し、面接での話し方を練習します。

就職活動の段階では、ハローワーク障害者専門窓口または就労移行支援事業所のスタッフとともに求人を探します。見学・実習を経て応募します。採用面接では必要な合理的配慮を具体的に伝えます。

就職後の定着支援の段階では、就労定着支援を活用します(就職後6か月から3年6か月)。就職後も定期的に主治医・相談員と状況を共有することが、長期的な就労継続の鍵です。

助成金の計算例:複数ケースで整理する

ケース1:精神障害者を中小企業がトライアル雇用から本採用まで

中小企業B社(従業員30人)が、精神障害者保健福祉手帳2級のCさんを採用しようとしているケースを整理します。

まず障害者トライアルコース(精神障害者)を活用します。

Cさんはハローワーク経由で紹介を受け、週30時間以上のフルタイムで試行雇用されます。

支給額の計算:

1〜3か月目:月額最大80,000円 × 3か月 = 240,000円

4〜6か月目:月額最大40,000円 × 3か月 = 120,000円

合計:360,000円(最長6か月)

トライアル雇用期間後、B社がCさんを本採用(フルタイムの通常雇用保険被保険者)した場合、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)が申請できます。

精神障害者は「重度障害者等」として分類されるため、支給額は240万円(中小企業)です。

6か月ごとに40万円×6回(3年間)として受け取ります。

トライアル雇用期間の360,000円と本採用後の240万円を合計すると、合計で最大2,760,000円が受け取れる計算になります(実際の支給額は賃金・労働時間・雇用継続等の要件次第で変わります)。

ケース2:発達障害のある方を中小企業が採用・正社員化する

従業員50人の中小企業D社が、精神障害者保健福祉手帳を所持しない発達障害(ASD)のある方を採用し、有期雇用後に正社員化するケースです。

雇入れ時の助成:発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

→ 通常労働者(週30時間以上)かつ中小企業の場合:120万円(2年間・6か月ごと30万円×4回)

本採用から2年後、無期雇用の契約社員として継続した後、正社員に転換した場合:キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)・無期→正規コース

→ 中小企業・その他障害者(精神障害者ではない)の場合:45万円

この場合の合計(雇入れ助成 + 正社員化助成):120万円 + 45万円 = 165万円

なお、有期雇用から直接正規雇用に転換した場合は「有期→正規コース」の90万円(中小企業・その他障害者)が適用されます。そのルートでは雇入れ助成金(120万円)との合算で最大210万円になる計算です。

実際の申請では要件の細部が重要ですので、ハローワーク・労働局に事前確認をお願いします。

ケース3:100人超の企業が法定雇用率超過で調整金を受け取る

従業員200人の企業E社で、2026年7月以降の法定雇用率2.7%の適用を受けるとします。法定雇用数は200人×2.7%=5.4人(端数処理の扱いは公式確認要)とします。

E社が身体障害者3人・精神障害者2人・知的障害者(重度)1人を雇用している場合:

法定雇用率算定数 = 3(身体)+ 2(精神)+ 1×2(重度知的は2倍)= 7人分

法定雇用数(5人と仮定)を超えて2人分多く雇用していることになります。

調整金の計算(月単位):2人分 × 29,000円 = 58,000円/月

年間では:58,000円 × 12か月 = 696,000円

これを毎年4月〜5月15日の間にJEEDへ申請することで、年間約70万円を受け取れます。

なお、支給対象人数が年120人月を超える場合は超過分が23,000円/月になりますが、この例の規模では該当しません。

ケース4:100人以下の事業主が報奨金を受け取る

従業員80人(月平均)の中小企業F社が、障害者を4人雇用しているケースです(身体障害者2人・精神障害者2人)。

法定雇用率(2.7%)の適用:80人×2.7%=2.16人が法定雇用数

F社は4人を雇用しているため義務は超過達成です。ただしF社は100人以下のため「納付金の義務なし」であり、「調整金」ではなく「報奨金」の対象です。

報奨金の受け取り条件:各月の常時雇用障害者数の年度間合計が「4%に当たる数または72人月のいずれか大きい方」を超えることが条件です。

F社の場合:月平均80人の4%=3.2人。4人を雇用しているため3.2人を超えています。年度間合計では、4人×12か月=48人月を雇用しています。

ただし、報奨金の受取条件のしきい値は「4%に当たる年度間合計数または72人月のいずれか大きい方」です。F社の4%年度間合計は3.2人×12か月=38.4人月ですが、72人月の方が大きいため、適用されるしきい値は72人月になります。F社の実績48人月は72人月に届かないため、この例では報奨金の条件を満たしません。

報奨金の受取条件を満たすには、年度間合計で72人月を超える必要があります(月平均80人の事業主であれば、7人以上の障害者を継続雇用することが目安になります:7人×12か月=84人月)。実際の計算はJEEDへ事前確認してください。

実際の計算は複雑になるため、JEEDへの事前相談と申告申請書の記入説明書(JEED公式サイトで公表)を参考にしてください。

職場定着のために事業主ができること

定着を阻む3つの要因と対策

障害のある従業員が職場を離れる主な原因を整理すると、「体調の変化への対応の遅れ」「職場の人間関係の困難」「業務内容のミスマッチ」の3つが多く見られます。

体調の変化への対応の遅れについては、定期的な面談の実施と、体調が不安定なときに気軽に申し出られる環境づくりが効果的です。精神・発達障害のある従業員には、「できない」「しんどい」と言えるチャンネルが必要です。

職場の人間関係の困難については、受け入れ部署の上司・同僚への事前研修や、障害に関する基礎知識の共有が役立ちます。ただし、本人の了承なしに障害の詳細を同僚に開示することは合理的配慮義務の趣旨に反します。「こういう配慮が必要な社員がいる」という事実は共有しつつ、病名等の個人情報は本人の意向に沿って取り扱います。

業務内容のミスマッチについては、採用前の実習・インターンシップの活用と、採用後の業務の段階的な調整が重要です。「最初は得意な業務だけを担当してもらい、慣れてきたら業務の幅を広げる」という方針を事前に決めておくことで、本人も安心できます。

就労定着支援事業所との連携

事業主の立場から見たとき、就労定着支援事業所は「従業員が困ったときに間に入ってくれる外部の窓口」として機能します。月1〜2回の定期面談を事業所スタッフが実施してくれることで、従業員が職場の悩みを職場以外の場所で話せる機会が生まれます。

事業主は就労定着支援事業所から「職場環境の改善について相談があった」という報告を受けることがあります。この報告を受け入れ、具体的な改善に動くことが職場定着に直結します。

就労定着支援は障害福祉サービスのため、従業員本人の同意のもとで利用します。事業主が「この社員には就労定着支援を使ってほしい」と促すことはできますが、最終的には本人の意思が優先されます。

手帳取得の手順と注意点

精神障害者保健福祉手帳の取得

精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にある方が申請できる手帳です。申請には医師の診断書(精神科・心療内科等)が必要で、初診から6か月以上が経過していることが条件になります。

申請先は住所地の市区町村窓口(障害福祉担当課)です。手帳の有効期間は2年で、2年ごとに更新が必要です。

等級は1〜3級で分類されます。就労・就職支援の観点では等級によって利用できる福祉サービスや減免制度が変わります。

療育手帳の取得

療育手帳(知的障害者福祉法に基づく手帳)は、知的障害のある方が申請できます。申請先と名称は都道府県・政令指定都市によって異なる場合があります(「愛の手帳」「みどりの手帳」など地域によって呼称が異なります)。

判定は都道府県・指定都市の知的障害者更生相談所または児童相談所が行います。申請は住所地の市区町村窓口から行います。

身体障害者手帳の取得

身体障害者手帳は、視覚・聴覚・音声言語機能・肢体不自由・内部障害のある方が申請できます。指定医師(都道府県が指定した医師)による診断書が必要です。

申請先は住所地の市区町村窓口です。等級は1〜6級で、障害の種類と程度によって異なります。

地域の相談支援専門員の活用

相談支援専門員とは

相談支援専門員は、障害福祉サービスを利用するにあたって「サービス等利用計画」を作成し、支援全体をコーディネートする専門職です。就労移行支援・就労継続支援・就労定着支援などを利用する場合、相談支援専門員を通じて計画を立てることが多いです。

市区町村の障害福祉担当窓口で「相談支援事業所を教えてほしい」と伝えると、地域の事業所を紹介してもらえます。相談支援は原則として費用がかかりません(計画相談支援は報酬が国の制度で賄われます)。

就労面での活用として、「就職したいが何から始めたらいいかわからない」という状況から、相談支援専門員に相談することで就労移行支援事業所の選択・利用申請・ジョブコーチ支援の手配等について一緒に整理してもらうことが可能です。

障害者雇用に関する用語・制度の整理

このセクションでは、本記事に登場した制度・用語を簡潔にまとめます。

障害者雇用促進法は、事業主に障害者の雇用を義務づけ、差別禁止・合理的配慮提供義務を定めた法律です(1960年制定・以降改正を重ねる)。

法定雇用率は、事業主が雇用すべき障害者の割合です(民間企業:2026年7月〜2.7%)。

障害者雇用納付金制度は、法定雇用率未達成の事業主から納付金を徴収し、超過達成の事業主に調整金・報奨金を支給する財政調整の仕組みです。運営はJEEDが担います。

特定求職者雇用開発助成金は、ハローワーク等の紹介で就職困難者を雇用した事業主に支給される雇入れ助成金です。障害者は支給額が大きい区分に分類されています。

トライアル雇用助成金は、試行雇用期間中の雇用コストを助成する制度です。精神障害者は支給期間・支給額に特別な設定があります。

キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)は、障害者を有期雇用から正規雇用に転換した事業主への助成金です。

ジョブコーチ(職場適応援助者)は、障害者の職場定着を現場で支援する専門スタッフです。配置型(JEED・無料)・訪問型・企業在籍型の3種類があります。

就労移行支援は、一般就労を目標に最大2年間通所で訓練する障害福祉サービスです。費用は世帯収入に応じた負担上限があります。

就労継続支援A型は、雇用契約を結んで働く障害福祉サービスです。最低賃金が適用されます。

就労継続支援B型は、雇用契約なしで工賃を受け取りながら働く障害福祉サービスです。

就労定着支援は、一般就労後6か月〜3年6か月、職場定着を支援する障害福祉サービスです。

特例子会社は、障害者雇用を目的として設立され、法定雇用率の算定で親会社と通算できる子会社です。

合理的配慮は、障害のある方が就労等の場面で不利益を受けないよう、事業主が提供する個別の調整・工夫です。過重な負担にならない範囲で義務が生じます(障害者雇用促進法)。

クローズ就労は障害を開示せずに就職・就労すること、オープン就労は開示した上で就職・就労することを指します。

JEED(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)は、障害者雇用納付金・調整金・報奨金の運用、JEED系助成金の申請受付、地域障害者職業センターの運営等を担う機関です。