生活困窮者自立支援制度を使いこなす(家計改善・就労準備・子どもの学習支援の申請実務ガイド)

本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・受付状況はいずれも変更されることがあります。申請前に必ず各自立相談支援機関または自治体公式サイトで最新情報をご確認ください。本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成代行は行いません。

この記事が整理すること

「生活に困っているけれど、どこに相談すればいいかわからない」「生活保護は受けたくないが、このままでは限界だ」「子どもの進学費用が心配で眠れない」「借金や家賃の滞納が積み重なってきた」、こうした状況にある方が、まず最初に知っておくべき制度があります。それが生活困窮者自立支援制度です。

この制度は、2015年4月1日から全国すべての市区町村で始まった支援の仕組みで、生活保護の手前の段階にいる人を対象にした「第2のセーフティネット」と位置づけられています。相談は無料で、秘密は守られます。特定の収入要件はなく、「生活が苦しくなるおそれがある」と感じた段階から相談できます。

しかし、この制度は知られていないことが多く、本当に必要な方が利用できていないケースが後を絶ちません。制度の看板には「生活困窮者」という言葉が使われていますが、これはとても広い概念です。会社を辞めて収入が減った、家賃を払えるか不安になってきた、子どもの学費が払えないかもしれない、そういった段階から相談の対象になります。

この記事では、制度全体の構造から始め、具体的な相談の流れ、各支援メニューの内容と実際に何を相談できるか、申請に必要な書類と窓口、自治体ごとの違い、生活保護との関係、2024年の法改正で何が変わったか、そして支援がうまく進まなかった場合の対処法まで、実務目線で整理します。

この記事が役に立つ方は次のような方です。

収入が急に減り、家賃や光熱費の支払いに不安が生じてきた方。借金や滞納が積み重なり、どこに相談すればよいかわからない方。長期間求職活動をしているが就職できず、生活費が底をついてきた方。生活困窮世帯で育つお子さんの学習や進学を心配しているご家族。支援する立場として、この制度の全体像を把握しておきたいケースワーカー・支援者の方。

制度の全体像

生活困窮者自立支援制度とは何か

生活困窮者自立支援制度は、「生活困窮者自立支援法」(平成25年法律第105号)に基づいて設けられた制度です。法律は2013年12月13日に公布され、2015年4月1日から施行されました。

日本の社会保障には大きく3つの段階があります。1つ目が社会保険(健康保険・雇用保険・年金など)、3つ目が生活保護です。この1つ目と3つ目の間にあるのが「第2のセーフティネット」と呼ばれるもので、生活困窮者自立支援制度はそこに位置します。

生活保護は、収入・資産・扶養義務者のすべての要件を審査して支給可否を判断する制度です。それに対して生活困窮者自立支援制度は、「今は生活保護の要件を満たさないが、このままでは生活が立ち行かなくなるおそれがある」という段階から支援を受けられます。収入がある程度ある場合でも、働き続けることが困難な状況や、複合的な課題を抱えている場合は相談対象になります。

制度の法的な対象者の定義は、「現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」とされています(生活困窮者自立支援法第3条)。「おそれ」という言葉が重要で、すでに困窮の状態にある必要はなく、このままでは困窮する可能性がある段階から相談できます。

3つの段階のセーフティネットとこの制度の立ち位置

日本の社会保障を3段階で整理すると、次のようになります。

第1のセーフティネット(社会保険)は、健康保険・介護保険・雇用保険・労災保険・年金などを指します。まず最初に使うべき制度で、仕事を失えば雇用保険の失業給付が出ます。

第2のセーフティネット(生活困窮者自立支援制度など)は、社会保険では対応できない困窮状態に対して、就労支援・家計改善・居住確保などの包括的な支援を行います。本記事で解説する制度がここに当たります。

第3のセーフティネット(生活保護)は、要件を満たす場合に最低生活費を保障する制度です。生活困窮者自立支援制度を活用して自立が困難な場合、生活保護申請につなぐ役割も担います。

この3段階の構造を理解しておくことが大切です。「生活保護は恥ずかしい」と感じる方でも、生活困窮者自立支援制度は「相談して支援を受けながら自立を目指す」ための制度であり、受給という形とは異なります。また、この制度で支援を受けながら生活保護も申請するという同時進行も、状況次第では選択肢になります。

2つの必須事業と4つの主な任意事業

制度全体の支援メニューは、法律上「必須事業」と「任意事業」に分かれています。

必須事業は全国すべての福祉事務所設置自治体が実施しなければならない事業です。自立相談支援事業と住居確保給付金の2つがあります。

任意事業は自治体が地域の実情に応じて選択して実施する事業です。就労準備支援事業・家計改善支援事業・子どもの学習・生活支援事業・一時生活支援事業(2024年改正後は居住支援事業に再編)が代表的なものです。

注意点として、任意事業はお住まいの自治体が実施しているかどうかを事前に確認する必要があります。都市部では多くのメニューが整っていますが、小規模な自治体では未実施のものもあります。

種別事業名概要自治体の義務
必須事業自立相談支援事業相談→アセスメント→支援プラン作成→モニタリング→自立全自治体で実施
必須事業住居確保給付金離職等で住居を失った・失うおそれのある方への家賃相当額の給付全自治体で実施
任意事業就労準備支援事業日常生活自立→社会生活自立→一般就労の段階的訓練(原則1年)自治体が選択
任意事業家計改善支援事業家計診断・収支改善・借金・滞納の相談・貸付あっせん自治体が選択
任意事業子どもの学習・生活支援事業生活困窮世帯の子どもへの学習支援・生活習慣支援・進路相談自治体が選択
任意事業居住支援事業(旧:一時生活支援事業)住居のない方への宿泊・衣食の提供(原則3か月、最長6か月)自治体が選択

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ここでは、生活困窮者自立支援制度の中でも「住居確保給付金」を申請するケースを、実際の相談から給付開始までの流れを通じて完全に解説します。No.26の記事でも住居確保給付金は扱っていますが、本記事では「生活困窮者自立支援制度の必須事業として、自立相談支援機関の窓口に相談したら何が起きるか」という視点で解説します。

ケースの設定

次のような状況を想定します。

Aさん(42歳・男性)は、飲食業で正社員として働いていましたが、店舗閉店に伴い離職しました。離職から3か月が経過し、求職活動を続けていますが、まだ再就職できていません。家賃は月7万2,000円で、貯金が残り20万円になってきました。今月は何とか払えそうですが、来月以降が不安です。配偶者はパートで月収8万円。子どもは中学1年生が1人います。

世帯の月収は妻のパート収入8万円のみ。家賃7万2,000円を払うと残り2万8,000円で食費・光熱費・通信費を賄わなければならない状況です。

ステップ1:窓口を探す

まず、自立相談支援機関の窓口を探します。

探し方は3つあります。1つ目は、市区町村の役所・役場の「生活支援課」「福祉課」「生活困窮担当」などに電話で問い合わせる方法です。担当課がそのまま窓口になっているか、委託先を案内してくれます。

2つ目は、一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワークが運営する「困窮者支援情報共有サイト(minna-tunagaru.jp)」の「相談窓口一覧(ichiran)」を使う方法です。都道府県・市区町村名で絞り込んで最寄りの窓口を探せます。

3つ目は、厚生労働省の政府広報ページから都道府県別の窓口一覧にアクセスする方法です。

Aさんの場合は、お住まいの市の「生活自立支援センター〇〇」に電話し、相談の予約を入れました。窓口によっては予約なしで来所できますが、待ち時間がかかる場合もあるため、電話で確認してから行くのが確実です。

ステップ2:初回相談(インテーク面接)

窓口に出向き、相談員(主任相談支援員または相談支援員)と面談します。この面談は「インテーク」または「初回相談」と呼ばれます。

面談では、現在の状況(収入・家賃・家族構成・職歴・健康状態)を聞き取ります。面談は通常30分〜1時間程度で、審査や審査結果の通知などはこの場では行いません。まず状況を把握するための相談です。

Aさんが相談した内容は以下の通りです。「飲食店の閉店で離職した。求職中だが再就職できていない。家賃が払えなくなるかもしれない。子どもの中学校の費用も心配。」

相談員は聞き取りを行いながら、「住居確保給付金」「就労準備支援事業」「子どもの学習支援」など、利用できる可能性のある支援メニューを案内します。

秘密保持について、担当者は必ず相談の内容が外部に漏れない旨を説明します。これは法律(生活困窮者自立支援法第5条第3項)でも秘密保持が義務づけられています。

ステップ3:アセスメント(生活状況の詳細把握)

初回相談の後、必要に応じてアセスメント面接を行います。生活状況を詳しく把握するための面接で、収支の詳細、就労状況、健康状態、家族関係、これまでの経緯などを確認します。

Aさんの場合は、離職票・源泉徴収票・通帳のコピー・住居の賃貸借契約書・求職活動の記録などの書類確認も行いました。

アセスメントの結果から、支援員がどの支援メニューを活用するかの方針を立てます。

ステップ4:支援プラン(自立支援計画)の作成

アセスメントをもとに、支援員がAさんと一緒に「自立支援計画」を作成します。この計画には、目標(求職活動を続けて3か月以内に再就職する)、活用する支援(住居確保給付金の申請・ハローワークへの求職申込・子どもの学習支援の利用)、それぞれの期限と確認タイミングが記載されます。

Aさんの支援プランの主な内容は次の通りでした。住居確保給付金を申請して家賃の一部を支給してもらう。週2回以上ハローワークに通い求職活動を続ける。自立相談支援機関との面接を月4回以上維持する。子どもを市の学習支援事業に登録する。

ステップ5:住居確保給付金の申請手続き

支援プランが確定したら、住居確保給付金の申請書類を準備します。

必要書類の正式名称と取得先は以下の通りです。

申請書類は自立相談支援機関が受付・確認し、自治体の担当課に提出します。申請者が自治体窓口に直接行く必要はなく、自立相談支援機関が窓口としてまとめて対応します。

ステップ6:審査と支給決定

書類提出から審査・支給決定通知まで、自治体によって異なりますが、通常2週間〜1か月程度かかります。

審査では、主に次の要件を確認します。主たる生計維持者が離職・廃業後2年以内であること、または個人の責任・都合によらず収入が離職・廃業と同程度まで減少していること。世帯の収入合計が、住民税均等割非課税水準の12分の1と家賃の合計額を超えないこと。世帯の金融資産が一定額以下であること(概ね100万円以下、家賃月額の6か月分以下)。賃借している物件の家賃が自治体の定める上限以下であること。

家賃の支給上限額は自治体・世帯人数によって異なります(例えば東京23区の2人世帯では64,000円前後が上限とされている自治体が多く、3人以上世帯では69,800円を上限とする自治体もあります。ただし上限額は自治体・世帯人数によって異なり改定される場合もあるため、申請時に必ず確認してください)。

Aさんの場合、月収は配偶者のパート8万円のみです。支給決定が出れば、家賃のうち上限額まで、貸主(大家さん)の口座に直接振り込まれます(Aさんの口座ではなく家主の口座への代理納付方式が一般的です)。

支給期間は原則3か月で、求職活動を続けて要件を満たしていれば3か月延長でき、最長9か月まで受けられます。

ステップ7:受給中の義務(求職活動の継続)

住居確保給付金を受けている間は、次の求職活動を続ける義務があります。

自立相談支援機関との面接を月4回以上続けること。ハローワーク(公共職業安定所)に求職の申込みを行い、職業相談を月2回以上受けること。企業等への就職活動を週1回以上行うこと。

これらを怠ると支給が打ち切られる場合があります。支援員との面接は活動状況の確認と励ましの場でもあるため、きちんと通い続けることが大切です。

ステップ8:モニタリングと支援の見直し

支給期間中、自立相談支援機関の担当者がAさんの状況を定期的に確認します(モニタリング)。求職活動の状況、再就職の見通し、家計の状況、子どもの学習支援の利用状況などを確認し、状況に変化があれば支援プランを見直します。

たとえばAさんが2か月目に体調を崩して求職活動が難しくなった場合、就労準備支援事業や医療機関への相談につなぐなど、柔軟に対応が変わります。

ステップ9:自立後のフォローアップ

Aさんが3か月目に飲食店の調理担当として再就職できた場合、住居確保給付金の支給は終了します。終了後も、生活が安定するまでの一定期間、担当者が定着状況を確認する「フォローアップ」を行います。

再就職後に状況が変わった場合や、また困ったことが起きた場合は、いつでも同じ窓口に相談できます。一度相談して終わりではなく、何度でも利用できるのがこの制度の特徴です。

このケースから学べること

1つのケースを通じて見えてくることがあります。まず、「窓口に行くだけで」多くの支援メニューの案内が一括で受けられます。住居確保給付金だけでなく、就労準備支援・子どもの学習支援など、複数の支援が同時に動き始めます。

次に、支援員がパートナーとして寄り添ってくれます。申請書類の作成を一人でやる必要はなく、窓口のスタッフが一緒に確認してくれます。

また、家賃は本人の口座に振り込まれるのではなく、家主に直接払われる方式が多いため、「もらったお金を何か別のことに使ってしまった」というリスクがありません。

ここから先は、申請に直結する実務です。

必須事業①自立相談支援事業のすべて

自立相談支援事業とは

自立相談支援事業は、この制度の核心にある事業です。支援員が相談者と一緒に困りごとを整理し、必要な支援を組み合わせてプランを作り、自立に向けて伴走する仕組みです。

設置主体は市区町村(福祉事務所設置自治体)で、運営は直営または社会福祉法人・NPOなどへの委託という形をとります。令和7年4月時点で全国に1,372か所の自立相談支援機関が設置されています。

相談員の種類と役割

自立相談支援機関には、主に3種類のスタッフが配置されています。

主任相談支援員は、相談支援全体のマネジメントを担当します。複雑な事例の処理、関係機関との連絡調整、スタッフの指導・監督などを行います。

相談支援員は、個々の相談者を担当して直接面談し、アセスメントの実施、支援プランの作成、モニタリングを行います。

就労支援員は、就労に特化した支援を行います。求人情報の提供、ハローワークへの同行、面接練習のサポート、就職後のフォローなどを担当します。

相談から自立までの全プロセスと所要時間

相談から自立に至るまでの一般的なプロセスを整理します。

第1段階:初回相談(インテーク)

所要時間の目安: 当日〜即日

窓口に来所または電話で相談を始めます。相談員が現在の状況を聞き取り、どのような支援が利用できるかを初期的に案内します。この段階では書類の持参は不要です。

第2段階:アセスメント(生活状況の把握)

所要時間の目安: 1回目の相談から1〜2週間以内

複数回の面談を通じて、生活状況を詳細に把握します。収入・支出・資産・就労状況・健康状態・家族関係・これまでの経緯・今後の希望などを確認します。書類の収集もこの段階で行います。

第3段階:支援プランの作成(自立支援計画)

所要時間の目安: アセスメントから1〜2週間

アセスメントの結果をもとに、支援員と相談者が一緒に支援プランを作成します。プランには「何を目標にするか」「どの支援メニューを使うか」「いつまでに何をするか」「誰が担当するか」が記載されます。相談者が内容に同意したらプランが確定します。

第4段階:支援の実施とモニタリング

所要時間の目安: プラン確定から数か月〜1年

プランに沿って各支援が始まります。住居確保給付金の申請、就労準備支援事業への参加、家計改善支援員との面談など、複数の支援が並行して動くこともあります。

モニタリングは定期的(月1〜2回程度)に実施し、状況の変化があればプランを見直します。

第5段階:自立と支援の終結

所要時間の目安: 状況により数か月〜1年以上

就労による自立、家計の安定、住居の確保など、プランに定めた目標が達成されたと判断される段階で支援が終結します。ただし、急に終わりにするのではなく、状況を見ながら段階的に支援を薄めていくのが一般的なやり方です。

第6段階:フォローアップ(終結後)

支援終結後も、必要に応じて担当者がフォローアップを行います。再就職後の定着確認、生活の安定確認などです。また、状況が変わって再び困りごとが生じた場合は、いつでも再相談ができます。

自立相談支援機関が連携する関係機関

自立相談支援機関は単独で支援を完結させるわけではなく、地域のさまざまな機関と連携します。

ハローワーク(公共職業安定所):就職活動の支援・求人紹介。社会福祉協議会:生活福祉資金貸付(No.96)などの相談。医療機関:健康上の問題がある場合の受診調整。法テラス:法律問題(借金・離婚等)がある場合の紹介。行政窓口(生活保護担当):生活保護への接続が必要な場合。地域包括支援センター:高齢者の場合の連携。児童相談所・子ども家庭センター:子どもに関する問題がある場合。民生委員:地域の見守り支援。

複数の機関が連携することで、一つの問題だけでなく複合的な課題をまとめて解決に向けられます。

必須事業②住居確保給付金と自立相談支援機関の関係

No.26との違いと同一窓口であることの意味

住居確保給付金については補助金ラボのNo.26でも詳しく解説しています。本記事では重複を避けつつ、「自立相談支援制度の必須事業として、この給付金がどのように機能するか」という点に絞って解説します。

最大のポイントは、住居確保給付金の申請窓口が自立相談支援機関であるという点です。家賃の心配があって窓口に相談に来た方は、住居確保給付金の申請だけで終わらず、その他の支援(就労支援・家計改善など)も同時に案内を受けます。

「家賃が払えなくなりそう」という一つの不安を入口にして、生活全体の立て直しを支援する体制になっているのが特徴です。

住居確保給付金の支給要件の確認ポイント

支給要件の詳細はNo.26を参照してください。本記事では自立相談支援制度との文脈で補足します。

特に注意が必要なのは「求職活動義務」です。支給期間中は月4回以上の相談員面接、月2回以上のハローワーク利用が求められます。これは単に義務としてではなく、「定期的に専門家と会う機会を確保して再就職を加速させる」というセットの仕組みです。求職活動義務を負担に感じる方もいますが、支援員は相談者の味方であり、就職先を一緒に探してくれる存在でもあります。

任意事業①就労準備支援事業

「すぐには仕事に就けない」という状況へのアプローチ

就労準備支援事業は、直ちに一般就労への移行が難しい方を対象に、段階的に就労に向けた能力を養う事業です。「支援なしでいきなり就職するのはハードルが高い」という方のための、ステップアップの場です。

対象となる方の例として、長期間にわたりひきこもりや不就労状態が続いている方、精神的な不調や発達特性で職場での対人関係が難しい方、昼夜逆転など生活リズムが乱れていて出勤が難しい方、就職経験が少なく履歴書の書き方や面接の仕方がわからない方などが挙げられます。

3段階の支援の流れ

支援は大きく3段階で構成されています。

日常生活自立の段階

最初の段階では、生活リズムの安定化から始まります。毎日同じ時間に起きて支援の場所に来る、簡単な作業を継続する、人との最低限のコミュニケーションをとるといった、就労の土台となる日常生活の習慣を身につけます。

具体的なプログラムの例としては、支援センターへの通所(最初は週2〜3日から)、日課の記録(生活記録表の記入)、栄養バランスのとれた食事の習慣化、掃除・洗濯などの生活スキルの確認などがあります。

期間の目安としては、この段階で2〜3か月程度かける場合が多く、焦らず少しずつ生活の基盤を整えていきます。

社会生活自立の段階

日常生活が安定してきたら、次のステージに進みます。他者と協力して作業する経験を積み、職場に近い状況でのコミュニケーションを練習します。

具体的なプログラムの例としては、グループ活動(他の参加者と一緒に作業する)、模擬面接(支援員が面接官役で練習)、ビジネスマナーの基礎(挨拶の仕方・電話対応・報連相の概念)、外出・交通機関の利用練習(最寄りのスーパーへの買い物から始める例もあります)、パソコンの基本操作確認などがあります。

「ビジネスマナー」という言葉を聞いて難しく感じる方もいますが、この段階で扱うのは「おはようございます、ありがとうございます」という挨拶の習慣化から始まります。「笑顔で挨拶できる」「報告・連絡・相談の意味がわかる」という基礎的なことから丁寧に積み上げます。

模擬面接では、「なぜ前の仕事を辞めましたか」「体調面に不安はありませんか」など、実際の面接で聞かれやすい質問への答え方を一緒に考えます。いきなり完璧な回答を求めるのではなく、自分の言葉で答える練習を繰り返します。

一般就労への移行段階

社会生活自立の段階を経て、実際の求職活動を始めます。ハローワークへの同行支援、求人票の読み方、履歴書・職務経歴書の作成サポート、面接への同行(可能な場合)、就職後の定着フォローが含まれます。

支援期間と費用

就労準備支援事業の支援期間は原則1年です。1年で卒業を目指す構成になっていますが、状況によって延長できる場合もあります。費用は無料です。

利用できるかどうかは、自立相談支援機関での初回相談を経てアセスメントを行い、就労準備支援事業の対象者として判断されることが前提です。

全国の実施状況

就労準備支援事業は任意事業であるため、実施している自治体とそうでない自治体があります。令和7年度時点では、政令市・中核市を中心に多くの都市部では実施されていますが、小規模な町村では実施されていないケースもあります。自立相談支援機関に相談した際に、近隣自治体の実施機関を紹介してもらえる場合もあります。

任意事業②家計改善支援事業

家計改善支援とは何か

家計改善支援事業は、家計に関する問題を専門的な支援員(家計相談支援員)が一緒に整理し、改善策を考える事業です。単に「節約しましょう」というアドバイスではなく、家計の状況を可視化して根本的な原因を特定し、具体的な解決策を一緒に実行していく支援です。

どんなことを相談できるか

家計改善支援事業で実際に相談できる内容は、想像よりずっと広いものです。

収支の整理:毎月どこにお金が出ているかわからない。収入と支出の把握ができていない。

借金の整理:消費者金融・クレジットカード・知人からの借入などが複数あり、返済が追い付いていない。

公共料金・家賃の滞納:電気・ガス・水道が止まりそう、あるいはすでに止まっている。家賃を2か月以上滞納している。

保険料の未払い:国民健康保険料・国民年金保険料を払えていない。医療機関に行けない状況になっている。

税金の滞納:住民税・固定資産税などが払えていない。差し押さえの予告通知が来た。

ギャンブル依存による家計崩壊:パチンコ・競馬・競輪などで生活費を使ってしまっている。本人または家族が相談できます。

将来の見通しが立てられない:老後の生活費、子どもの進学費用、家のローンが払えるかどうか心配で計算できない。

これらの問題は複合的に絡み合っていることが多く、家計相談支援員は一つひとつを切り離すのではなく、全体を見渡して優先順位をつけながら対応します。

支援の具体的な内容

家計改善支援事業では、具体的に次のような支援が行われます。

家計表(収支一覧)の作成支援:「今月いくら入ってきて、いくら出ていくか」を紙に書き出す作業を一緒に行います。最初は「どこに何を書けばいいかわからない」という方でも、支援員が項目を確認しながら進めます。家計表を見える化するだけで「ここが問題だったのか」と気づくケースも少なくありません。

優先順位の整理:多重債務や複数の滞納がある場合、どれを先に解決するかの優先順位を付けます。一般的には「住まい(家賃・電気)の確保」を最優先にして、次に健康保険・医療費など生活に直結するものを優先します。全部を一度に解決しようとすると圧倒されるため、一つひとつ順番を決めて取り組む方法を提案します。

減免・猶予制度への接続:公共料金の支払いが困難な場合、各事業者(電力・ガス等)の支払い猶予制度を案内します。国民健康保険料や住民税の減免・猶予制度(自治体が設けているもの)への申請を一緒に行う場合もあります。

法的整理への橋渡し:借金が多くて自力での返済が難しいと判断される場合、法律上の解決策(任意整理・個人再生・自己破産など)が選択肢になります。家計相談支援員は法律の専門家ではないため、法テラス(日本司法支援センター)や弁護士・司法書士への紹介を行います。この記事では法律上の手続きの個別指導は行いません。

貸付あっせん:緊急の資金が必要な場合、社会福祉協議会が行う生活福祉資金貸付(No.96)への橋渡しを行います。ただしこれは「貸付」であり返済が必要です。

支援を受けた後の経過

家計改善支援事業は、一度面談して終わりではなく、継続的な支援として数か月間行われます。最初に家計表を作り、翌月また収支を確認して、計画通りに進んでいるか確認します。うまくいかなかった月は原因を一緒に分析します。

目標は、支援が終了した後も自分で家計を管理できるようになることです。「どこに電話すればいいか」「どの書類を提出すればいいか」という知識とスキルを、支援員と一緒に身につけることが最終的なゴールです。

任意事業③子どもの学習・生活支援事業

制度の目的:貧困の連鎖を断ち切る

子どもの学習・生活支援事業は、生活困窮世帯の子どもへの学習支援・生活習慣の改善・進路相談・中退防止などを総合的に行う事業です。

この事業の背景には、「経済的に困窮した家庭に生まれた子どもは、進学の機会を失いやすく、貧困が世代をまたいで連鎖してしまう」という問題意識があります。習い事・塾・進学準備費用が払えない状況でも、学習の機会を確保することを目的にしています。

対象となる子どもの範囲

対象は「生活困窮世帯の子ども」とされており、世帯が自立相談支援機関を利用していること、または就学援助等を受けていることなどが目安となる場合があります。具体的な対象要件は自治体によって異なります。

学年については、主に中学生を中心に実施されていますが、一部の自治体では小学校高学年や高校生も対象にしています。高校中退防止や高校在学中の支援を重視する自治体も増えています。

支援の形態(3つのタイプ)

子どもの学習・生活支援事業には、実施形態に大きく3つのタイプがあります。

集合型(学習会・無料塾)

公民館・福祉施設・NPOの施設などに子どもたちが集まり、スタッフや大学生ボランティアと一緒に学習する形式です。宿題のサポートから高校受験対策まで、子どもの学力や目標に合わせて対応します。

週1〜2回程度、2時間程度の実施が多く見られます。同世代の仲間と一緒に勉強できる環境であり、孤立しがちな子どもが居場所を見つけるという副次的な効果もあります。

費用は無料です(交通費は自己負担の場合が多い)。

訪問型

子どもの家庭を大学生ボランティアやスタッフが訪問して、個別に学習支援を行います。不登校・ひきこもり・家庭環境の複雑さなどで、外に出ることが難しい子どもへのアプローチです。

週1回程度の訪問が一般的で、最初は雑談から始めて少しずつ学習に入っていく形が取られます。

オンライン型

新型コロナウイルスの影響もあり、タブレットやPC・スマートフォンを通じてオンラインで学習支援を行う形式が広がっています。地方の自治体でも実施しやすく、教員経験者や大学生との接続が可能です。デバイスを持っていない世帯への貸し出しを行っている自治体もあります。

自治体ごとの実施状況(地域例)

この事業の実施状況は自治体によって異なります。以下は確認日時点の参考例であり、要確認です。

東京都:23区のほぼすべてで何らかの形の学習支援事業が実施されており、中学生を中心にNPOへの委託等で対応しています。ただし区によって実施規模・対象学年・受入人数に違いがあります。

大阪府:大阪市では「子ども学習支援事業」が実施されており、市内複数か所に学習会の場が設けられています。大阪府下の各市でも独自の運営が行われています。

愛知県:名古屋市では学習支援・生活支援事業が実施されています。県内の各市でも状況が異なるため、最寄りの自立相談支援機関に確認が必要です。

地方の小規模な町村では、隣接する大きな市の機関に相談してつないでもらうケースや、社会福祉協議会が窓口となっている場合もあります。

学習支援以外の「生活支援」の部分

この事業は名称に「学習・生活支援」とあるとおり、学力向上だけが目的ではありません。

生活習慣の支援:夜更かしして学校に行けない、食事の習慣がない、身だしなみが整っていないといった子どもへのサポートも行います。子どもに対するアプローチだけでなく、家庭全体の状況を把握して必要に応じて親(保護者)への支援につなぐことも行います。

進路相談:高校進学を目指す中学生への学習指導や出願手続きのサポート、高校生の大学・専門学校進学を検討する相談、あるいは就職を選択する場合のキャリア相談なども行います。

中退防止:高校在学中に家庭の経済状況から中退を検討せざるを得ない状況の場合、奨学金・学費減免・アルバイト調整なども含めて、在学継続の方法を一緒に探します。

居場所の提供:学校にも家にも居場所のない子どもが安心して過ごせる場として機能させることも、この事業の重要な側面です。スタッフや大学生ボランティアとの関わりが子どもの自己肯定感を育てる効果も期待されています。

任意事業④居住支援事業(旧:一時生活支援事業)

住む場所がない状態への緊急対応

居住支援事業(2024年改正前の名称は一時生活支援事業)は、住居のない方に対して一定期間の宿泊場所・食事・衣類の提供を行う事業です。

対象は「住居を持たない方」または「不安定な居所にある方」です。具体的には、ネットカフェ・友人宅・路上などで生活している方が対象になります。

支援の内容と期間

提供されるサービスは次のものです。宿泊場所(シェルター・民間賃貸住宅等への橋渡しを含む)の提供、食事・衣類の提供、入浴・洗濯などの生活支援、自立に向けた相談支援(自立相談支援事業と連携)。

支援期間は原則3か月で、状況によって最長6か月まで延長が可能です。

2024年改正による変更点

2024年4月の法改正(令和6年法律第21号)により、一時生活支援事業は「居住支援事業」に改称・拡充されました。これまでの宿泊提供に加え、不安定な住まい状況にある方への地域での見守りや生活支援、住居確保に向けた包括的な支援が強化されました。

また、生活保護受給者も就労準備支援事業・家計改善支援事業の対象に追加されました。これにより、生活保護を受けながら自立相談支援機関の事業も利用できるケースが増えました。

支援を受ける流れの全体像

「相談する」ことへの心理的ハードルを越えるために

「生活困窮者」という言葉に抵抗を感じて相談をためらう方が少なくありません。「自分はそこまで困っていない」「他にもっと困っている人がいる」「相談したら何か不利になるのではないか」という気持ちが生まれるのは自然なことです。

しかしこの制度は、すでに困窮状態になってからでは遅く、「このままでは困窮するかもしれない」という段階から使うことで、より多くの選択肢が残ります。家賃の滞納が1か月の段階なら選択肢が広いですが、滞納が6か月に及んでから来る方は選択肢が大幅に狭まっています。

収入がゼロでなくても相談できます。仕事を持ちながら収支が合わない方、正社員から非正規雇用に変わって収入が下がった方、病気で休職中の方、自営業で売り上げが下がっている方、そのいずれも相談対象です。

「生活困窮者自立支援制度を使った」という事実は、他の機関(勤務先・学校・保険機関等)に知らされません。秘密保持は法律で義務づけられています。

相談窓口を探す具体的な方法

窓口を探す方法は複数あります。

市区町村の役所・役場に電話する:「生活が困窮している、相談窓口を教えてほしい」と伝えれば、担当窓口を案内してもらえます。「生活支援課」「福祉課」「自立支援担当」などの名称の部署が多いです。

困窮者支援情報共有サイトを使う:一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワークが運営する「minna-tunagaru.jp」の「相談窓口一覧」から、都道府県・市区町村を選んで最寄りの窓口を探せます。

厚生労働省ウェブサイト:「生活困窮者自立支援制度」のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059425.html)から都道府県別の窓口一覧へアクセスできます。

政府広報オンライン:「くらしの困りごとをご相談ください」という特設ページが政府広報オンライン(gov-online.go.jp)にあり、制度の概要と窓口の探し方が紹介されています。

社会福祉協議会に問い合わせる:市区町村の社会福祉協議会(「社協」と略されることが多い)が自立相談支援機関を運営している自治体では、直接相談を受け付けています。

相談当日に持参するもの

初回相談は「まず話を聞いてもらう」が目的のため、書類がなくても問題ありません。ただし、次の書類があると話が具体的になります。

身分証明書(運転免許証・マイナンバーカード・保険証等)。通帳の写し(収入・支出の把握に役立ちます)。直近の給与明細書または収入を示す書類。家賃の賃貸借契約書(家賃の支払い状況に関する相談の場合)。督促状・差し押さえ通知などの書類(あれば)。

自治体ごとの支援メニューの差異

実施状況はなぜ自治体によって異なるのか

生活困窮者自立支援制度の任意事業は、自治体の財政状況・人口規模・地域の実情などによって実施状況が異なります。必須事業(自立相談支援・住居確保給付金)は全自治体で受けられますが、任意事業については「実施していない」場合があります。

国は就労準備支援・家計改善支援を特に重要な支援として普及を促進していますが、現時点では全自治体での実施には至っていません。

地域ごとの参考例(確認日2026-06-27時点・内容は要確認)

以下は参考情報として、主要な自治体の実施状況の概要をまとめました。実際に利用する際は各自治体窓口で最新情報を確認してください。

東京都(区市町村が実施主体)

東京都内の23区は、それぞれが福祉事務所を設置しており、自立相談支援機関を区の直営または社会福祉法人・NPOへの委託で運営しています。多摩地区の市も同様に実施しています。町村部については、西多摩福祉事務所(あきる野市・瑞穂町・日の出町・ひのきん村)などが担当します。

就労準備支援事業・家計改善支援事業・子どもの学習支援は、多くの区市で実施されています。詳細は東京都福祉局ウェブサイト(www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp)から各区市の窓口一覧を確認してください。

大阪府(市町村が実施主体)

大阪市では「西成区あいりん相談センター」を含む複数の相談窓口が整備されており、就労準備・家計改善・学習支援・居住支援が実施されています。堺市・吹田市・豊中市・東大阪市など政令市・中核市でも各事業が整備されています。

大阪府内の町村部(島本町を除く)については、大阪府が設置する子ども家庭センター(箕面・富田林・貝塚)内の自立相談支援機関が担当しています。大阪府のウェブサイト(pref.osaka.lg.jp)から窓口一覧を確認できます。

愛知県(市町村が実施主体)

名古屋市は「生活困窮者自立支援センターなごや」を設置しており、各区の区役所窓口とも連携しています。豊橋市・岡崎市・豊田市など各市でも窓口が設けられています。

愛知県内の町村については、愛知県(地域福祉課)が実施主体となっており、尾張・三河の各保健所が窓口機能を担っています。愛知県のウェブサイト(pref.aichi.jp)から窓口一覧のPDF等を確認できます。

北海道・東北地方

政令市である札幌市は「生活困窮者自立支援窓口さっぽろ」を設置し、就労準備・家計改善・子ども学習支援事業を実施しています。道内の各市でも窓口が整備されています。

地方の小規模市町村では、任意事業の一部が未実施の場合があります。その場合は、隣接する市や都道府県が設置する窓口に案内される場合があります。

九州地方

福岡市は「生活・就労相談センターよりそい」を設置。就労準備支援・家計改善・子ども学習支援・一時生活支援を実施しています。福岡県では各市に窓口が設けられ、町村部は福岡県が担当しています。

「実施していない」と言われたときの対処法

最寄りの窓口を訪れて「その事業は当自治体ではやっていません」と言われた場合、次の対処法があります。

近隣の自治体への紹介を依頼する:自立相談支援機関によっては、隣接する自治体の実施機関を紹介してくれます。

都道府県の窓口に相談する:町村部の住民は都道府県が実施主体となる場合があります。都道府県の福祉担当部署に問い合わせることで、利用できる窓口を案内してもらえます。

社会福祉協議会に相談する:自立相談支援機関と社会福祉協議会は連携しており、生活福祉資金貸付(No.96)を含め、代替的な支援策を案内してもらえる場合があります。

生活保護との違い・接続関係

2つの制度の根本的な違い

生活困窮者自立支援制度と生活保護は、よく混同されますが、目的も対象者の要件も異なります。

生活困窮者自立支援制度は「自立に向けた支援」が目的で、相談・就労準備・家計改善などの過程を経て自立を目指す仕組みです。収入・資産の要件はなく、「困窮するおそれ」があれば相談できます。原則として相談者が自立に向けて取り組むことが求められます。

生活保護は「最低生活の保障」が目的で、収入・資産・扶養義務者のすべての要件を審査した上で、最低生活費に不足する部分を補填する仕組みです。資産や収入が一定水準を超えると支給されません。

比較項目生活困窮者自立支援制度生活保護
目的自立を促進するための支援最低限度の生活の保障
収入要件なし(「おそれ」があれば相談可)最低生活費を下回ることが要件
資産要件なし(支援メニューによって異なる)活用できる資産がないこと
給付住居確保給付金など一部の給付のみ生活扶助・住宅扶助・医療扶助など複数の扶助
就労義務就労に向けた取り組みを求める(任意事業による)状況に応じて就労義務がある
費用相談・各種支援は無料支給は無料(医療費等の自己負担なし)

どちらを使うか・両方使えるか

生活困窮者自立支援制度を先に利用し、自立が難しいと判断された場合に生活保護申請につなぐ、というのが典型的な流れです。ただし、すでに生活保護要件を満たしている方が生活困窮者自立支援制度の窓口に来た場合は、そのまま生活保護申請に案内されることが適切な対応です。「生活困窮者自立支援の窓口に来たから生活保護は申請できない」ということはありません。

2024年改正後は、生活保護受給者も就労準備支援事業・家計改善支援事業を利用できるようになりました。生活保護を受けながら就労支援や家計管理を学ぶ、という組み合わせが可能になっています。

生活保護申請を同時に勧められるケース

自立相談支援機関での相談の中で、「すぐに生活保護を申請すべき状況」と判断されることがあります。その主な場合は次のとおりです。

収入がほぼゼロで、手持ちの資金が底をついている。健康上の理由ですぐには就労できない状況にある。家賃滞納が深刻で、住居を失う差し迫った危険がある。

このような場合、自立相談支援機関の担当者が生活保護申請の窓口(市区町村の生活保護担当課)に同行することもあります。生活困窮者自立支援制度は「自立を目指すための制度」ですが、状況によって「最低限の生活を守るために生活保護を使いながら自立を目指す」という選択は恥ずかしいことでも間違いでもありません。

申請の具体的な手順と必要書類(事業別)

自立相談支援事業の利用手順と書類

自立相談支援事業の利用手順は、申請という形ではなく「相談」から始まります。

ステップ1:窓口に電話・来所(予約の要否は自治体による)

ステップ2:初回相談(インテーク)。現在の状況を話す。

ステップ3:アセスメント面接(複数回の場合あり)。

ステップ4:支援プランの作成・同意。

ステップ5:各支援メニューの利用開始。

アセスメントの際に準備しておくと役立つ書類は以下の通りです。

住居確保給付金の申請に必要な書類

住居確保給付金の申請は自立相談支援機関を通じて行います。必要書類は自治体によって異なりますが、一般的に必要なものは以下の通りです。

住居確保給付金は、支給期間中に求職活動実績報告書等の提出が月次で求められる場合があります。

就労準備支援事業の利用手順

就労準備支援事業は、自立相談支援機関での相談→アセスメント→支援プランの流れを経て、対象者として判断された方が利用できます。別途「申請書」を出すというよりも、担当者が利用調整を行い、事業所につなぐ形です。

利用に際して確認が必要な事項として、最寄りの自立相談支援機関がこの事業を実施しているかどうか(または委託先機関を紹介してもらえるか)があります。

家計改善支援事業の利用手順

家計改善支援事業も、自立相談支援機関からの紹介という形で利用します。自立相談支援機関との初回相談の中で「家計のことを相談したい」と伝えれば、家計改善支援員との面談につないでもらえます。

初回相談のとき、または家計改善の面談の前に準備しておくと役立つ書類は次の通りです。

子どもの学習・生活支援事業の利用手順

子どもの学習・生活支援事業の利用は、自立相談支援機関からの紹介か、子どもの通う学校・担任からの連携で始まる場合があります。

保護者が自立相談支援機関に相談に来た際、子どもの学習について心配な点を伝えれば、担当者が事業実施機関への紹介状を書いてくれます。または、学校からの情報提供で支援が開始される場合もあります。

お子さん自身が学習支援の場所に行くことへの抵抗感がある場合は、まず保護者と支援員が面談を重ね、徐々に子どもとの関係を作っていくアプローチも取られます。

よくある誤解とつまずきポイント

誤解1:「収入があると相談できない」

生活困窮者自立支援制度の相談に収入要件はありません。毎月の収入があっても、支出が収入を上回っている、あるいは近いうちに生活が立ち行かなくなる見通しがある場合は相談対象です。

誤解2:「一度相談したら生活保護を強制される」

そのようなことはありません。生活困窮者自立支援制度の相談は、まず状況を把握して一緒に解決策を考えるプロセスです。相談した結果「生活保護が適切」と判断されても、申請するかどうかは相談者本人の意思によります。

誤解3:「生活保護より先に使わなければならない」

そのような縛りはありません。生活困窮者自立支援制度を使うことが先決という義務はなく、すでに生活保護の要件を満たしている場合は直接申請できます。ただし、生活困窮者自立支援機関の窓口から生活保護申請につなぐという流れは一般的です。

誤解4:「住居確保給付金は本人に現金が振り込まれる」

住居確保給付金は、多くの自治体で「代理納付方式」を採用しています。つまり、給付金は申請者本人の口座ではなく、大家さんや管理会社の口座に直接振り込まれます。「もらったお金を生活費に使ってしまい家賃が払えなかった」という事態を防ぐための仕組みです。

誤解5:「一度就職したら次は使えない」

再離職・再困窮した場合でも、生活困窮者自立支援制度の窓口に再相談できます。「前に使ったから次はダメ」というルールはありません。ただし住居確保給付金については、過去に受給した期間がある場合は要件が変わることがあります。

誤解6:「支援員に厳しく問い詰められる」

自立相談支援機関の担当者は、相談者の味方として働きます。「なぜこんな状況になったのか」を責めることはなく、現在の状況から今後どうするかを一緒に考えることが役割です。ただし、支援員も人それぞれで、相談者が「この担当者は合わない」と感じる場合もゼロではありません。

誤解7:「就労準備支援事業は厳しいプログラム」

就労準備支援事業は、最初から厳しいトレーニングを課すものではありません。生活リズムの整え方から少しずつ始まる緩やかなプログラムで、参加者の状況に合わせて進むペースを調整します。「こんなことから始めるのか」と感じるほど、基礎的なことから丁寧に積み上げます。

つまずきポイント1:書類収集に時間がかかる

アセスメントや給付申請に必要な書類の収集に時間がかかるケースがあります。特に離職票は、退職から10日〜2週間程度で交付されるため、退職直後に相談した場合は書類が揃うまで待つ必要が生じることがあります。書類収集中も相談・アセスメントは並行して進められるため、先に相談に行くことが大切です。

つまずきポイント2:求職活動義務が継続できない

住居確保給付金を受給中に、体調不良や介護・育児の事情で求職活動を継続できなくなるケースがあります。この場合、黙って活動をやめるのではなく、すぐに担当の支援員に連絡して状況を伝えることが重要です。正当な理由があれば対応策を一緒に考えてもらえます。

つまずきポイント3:子どもが学習支援の場に行きたがらない

不登校傾向のある子どもや、人見知りの強い子どもが学習支援の場になじむまで時間がかかる場合があります。無理に連れていくことを避け、まず保護者と支援員が関係を作り、子どもへのアプローチを徐々に進める方法が一般的です。

つまずきポイント4:家計改善支援が途中で滞る

家計改善支援は継続的な取り組みが求められますが、「次の面談がおっくうになってきた」「なかなか改善しないから申し訳ない」と感じて来なくなるケースがあります。うまくいかない月があるのは当然です。支援員は責めることなく一緒に原因を分析しますので、状況を正直に伝えることが解決への近道です。

支援がうまく進まない場合の対処法

「支援を断られた」と感じたとき

自立相談支援機関を訪れたときに、「当自治体ではその事業は実施していない」「要件を満たさない」などの案内を受ける場合があります。その場合の対処法は次のとおりです。

別の窓口に相談する:都道府県の相談窓口、社会福祉協議会、法テラス、ハローワーク、NPOの相談窓口など、複数の相談先があります。一か所で断られても、他の窓口で支援につながれる可能性があります。

上位機関に問い合わせる:都道府県の福祉担当部署に「この自治体では〇〇の事業が受けられなかった。どうすればよいか」と相談することで、適切な窓口を紹介してもらえる場合があります。

記録を残す:「何月何日に〇〇窓口を訪れ、△△の回答を受けた」という記録を残しておくことで、改めて相談するときに状況を正確に伝えられます。

「担当支援員と合わない」と感じたとき

担当者の変更を申し出ることができます。支援機関に「担当者を変えてほしい」と伝えることは珍しくありません。担当者の変更に抵抗を感じる場合は、「別のスタッフにも一緒に話を聞いてほしい」という形で依頼することもできます。

苦情・意見を伝える窓口

自立相談支援機関の対応に不満がある場合、設置自治体(市区町村の担当課)に意見・苦情として伝えることができます。また、都道府県の「社会福祉に関する苦情申し立て窓口」(各都道府県の社会福祉協議会が設置しているケースが多い)に相談する方法もあります。

2024年法改正の要点(平易な解説)

改正法の概要

2024年4月24日に「生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律」が成立・公布されました(令和6年法律第21号)。主な施行は2025年4月1日以降です。

何が変わったか

居住支援の強化

従来の「一時生活支援事業」が「居住支援事業」に改称・拡充されました。宿泊の提供だけでなく、不安定な住まい状況にある方への見守り支援・生活支援が加わりました。都道府県・市区町村は必要と認める部分について、居住支援事業を実施する努力義務が定められました。

生活保護受給者も就労準備・家計改善事業を利用可に

従来は生活困窮者自立支援制度の就労準備支援事業・家計改善支援事業は、生活保護受給者は対象外でした。2024年改正により、生活保護受給者も対象に追加されました。生活保護を受けながら就労準備のプログラムに参加したり、家計管理の支援を受けることができるようになっています。

就労準備支援・家計改善支援の必須事業化は見送り

現場の支援者や関係団体からは、就労準備支援事業・家計改善支援事業を必須事業(全自治体で実施義務)にするよう強く求める声がありました。しかし2024年改正では、必須事業化は見送られました。両事業の重要性は認識されており、今後の課題として残っています。

現時点でこれらの事業が未実施の自治体に住んでいる方は、最寄りの自立相談支援機関に相談して隣接する実施自治体や委託先機関への紹介を求めることが一つの方法です。

申請チェックリスト

自立相談支援機関を訪れる前に確認しておきたいことのリストです。

相談前チェックリスト(全員向け)

住居確保給付金の申請前チェックリスト

就労準備支援事業の利用検討チェックリスト

家計改善支援事業の利用検討チェックリスト

子どもの学習支援の検討チェックリスト

よくある質問(FAQ)

Q1: 収入がある場合は相談できませんか?

相談できます。自立相談支援制度の対象者の定義に収入要件はありません。「このままでは最低限度の生活を維持できなくなるおそれがある」という状況であれば、収入がある段階から相談できます。給料をもらいながらも借金返済で毎月赤字、という状況でも相談対象です。

Q2: 相談したことは勤務先や学校に知られますか?

知られません。自立相談支援機関のスタッフには法律(生活困窮者自立支援法第5条第3項)で秘密保持義務が課されており、相談者の同意なく第三者に情報を伝えることは禁止されています。

Q3: 住居確保給付金はいくら受け取れますか?

給付額は「家賃のうち、自治体が定める上限額以下」の実費です。上限額は自治体・世帯人数によって異なります。実際の金額は申請先の自立相談支援機関に確認してください。

Q4: 就労準備支援事業はいつから使えますか?

自立相談支援機関での相談・アセスメントを経て、就労準備支援事業の対象として認定された後から利用できます。利用可能な時期は個人の状況と機関の受入状況によります。

Q5: 子どもだけで学習支援を申し込めますか?

一般的には保護者(親権者)が自立相談支援機関を通じて申し込む形になります。ただし、高校生以上で本人が希望する場合は本人が相談する窓口が設けられているケースもあります。お子さんの通う学校や担任を通じて紹介されるルートもあります。

Q6: 生活保護と同時に利用できますか?

2024年改正以降、生活保護受給者も就労準備支援事業・家計改善支援事業の対象になりました。生活保護を受けながら就労準備の訓練や家計管理のサポートを受けることができます。

Q7: 一度支援が終了した後に再び相談できますか?

できます。生活困窮者自立支援制度の窓口は何度でも利用できます。再就職後に再離職した場合、生活が安定した後に状況が変わった場合など、いつでも再相談ができます。ただし、住居確保給付金については過去の受給実績によって要件が変わる場合があります。

Q8: 支援を受けているあいだに就職が決まったら?

支援員にすぐ報告してください。就職が決まれば、住居確保給付金の受給終了・就労準備支援の修了など、各支援の終了手続きが始まります。就職直後に定着できるかのフォローアップも行われますので、就職後もしばらくは担当者との連絡を続けることをお勧めします。

Q9: 申請に時間はどれくらいかかりますか?

初回相談から支援プラン確定まで、通常2〜4週間程度かかります。住居確保給付金の審査・決定まではさらに2週間〜1か月程度かかる自治体が多いです。緊急性が高い場合(今月家賃が払えない等)は、その旨を最初の相談で明確に伝えてください。緊急対応の手順を取ってもらえる場合があります。

Q10: 一時生活支援(居住支援)を受けた後はどうなりますか?

原則3か月(延長があれば最長6か月)の宿泊・食事提供の期間中に、自立相談支援機関の担当者が就労支援・住居確保などを並行して進めます。支援期間終了後は、アパート等の賃貸住宅への転居支援(家賃の保証人サポートなど)につながることを目指します。支援期間だけで問題が完全に解決しない場合は、地域の生活保護担当や関係機関との連携を継続します。

出典一覧

本記事の作成にあたり、次の公式情報を参照しました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059425.html

確認日: 2026-06-27

https://laws.e-gov.go.jp/law/425AC0000000105

確認日: 2026-06-27

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/21320240424021.htm

確認日: 2026-06-27

https://www.sn-hoki.co.jp/article/pickup_hourei/pickup_hourei3621794/

確認日: 2026-06-27

https://minna-tunagaru.jp/ichiran/

確認日: 2026-06-27

https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/seikatsu/seikatsukonnkyuu/jiritsu

確認日: 2026-06-27

https://www.pref.osaka.lg.jp/o090020/shakaiengo/seikon_gaiyou/index.html

確認日: 2026-06-27

https://www.pref.aichi.jp/soshiki/chiikifukushi/seikatsukonkyu.html

確認日: 2026-06-27

https://corona-support.mhlw.go.jp/jukyokakuhokyufukin/counter.html

確認日: 2026-06-27

https://minna-tunagaru.jp/know/shurou/

確認日: 2026-06-27

https://minna-tunagaru.jp/know/kyojyu/

確認日: 2026-06-27

https://www.rofuku.net/20240417/

確認日: 2026-06-27

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の申請可否・支給額・要件の判断は行いません。記載した金額・要件・手続き内容は2026年6月27日時点の公開情報に基づくものであり、法改正・運用変更によって変わる場合があります。申請前に必ず各自立相談支援機関および自治体公式サイトで最新情報をご確認ください。

本記事に含まれる情報は法律上・税務上・医療上の個別助言ではありません。また、申請書類の作成代行・手続き代行は行いません。法律上の問題(借金・離婚等)については法テラス(0570-078374)または弁護士・司法書士にご相談ください。