フリーランス・自営業で出産するとき、国民年金保険料は免除できる(産前産後免除制度の実務ガイド)
本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・手続きの詳細はいつでも変更されることがあるため、申請前には必ず日本年金機構または市区町村の公式情報で最新の内容をご確認ください。
この記事が整理すること
フリーランスや自営業で出産を迎える方が、意外と知らないままでいる制度があります。それが「産前産後期間の国民年金保険料免除」です。
会社員には産前産後休業中の厚生年金保険料免除があることはある程度知られています。それとは別に、国民年金第1号被保険者、つまり自営業やフリーランス、無職の方を対象にした産前産後免除の制度が、平成31年(2019年)4月から始まっています。
この制度が知られにくい理由の一つは、「通常の国民年金保険料免除(所得免除)」と混同されやすいことです。所得免除は前年の収入が一定額以下でないと申請できませんが、産前産後免除は出産することが要件であり、所得の大小にかかわらず利用できます。
この記事では、産前産後免除の対象期間・届出のタイミング・年金記録への影響を整理し、どう動けばよいかをわかりやすく解説します。本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成代行・法律的助言は行いません。
制度の全体像
誰が・いつ・何を・どこへ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 国民年金第1号被保険者で、平成31年2月1日以降に出産した方 |
| 免除期間(単胎) | 出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間 |
| 免除期間(多胎) | 出産予定日または出産日が属する月の3か月前から6か月間 |
| 届出先 | お住まいの市区町村の国民年金担当窓口(または年金事務所、マイナポータル) |
| 届出タイミング | 出産予定日の6か月前から可。出産後はいつでも可 |
| 所得要件 | なし |
| 年金額への影響 | 免除期間は保険料を納付したものとして老齢基礎年金の受給額に反映 |
「出産」の定義に注意
この制度でいう「出産」には、妊娠85日(4か月)以上の出産がすべて含まれます。早産、死産、流産、人工妊娠中絶も対象です。妊娠85日未満の場合は対象になりませんが、妊娠85日以上であれば、結果として通常の出産に至らなかった場合でも届出ができます。
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ケース設定
フリーランスのデザイナーであるAさん(32歳)が、2026年5月15日を出産予定日として妊娠中です(単胎妊娠)。国民年金第1号被保険者として毎月保険料を納付しています。
ステップ1:自分が免除を受けられる期間を計算する
単胎妊娠の場合、免除期間は「出産予定日が属する月の前月から4か月間」です。
2026年5月が出産予定日の属する月なので、その前月は2026年4月です。そこから4か月間というのは、4月・5月・6月・7月の4か月になります。
つまり、Aさんが免除を受けられる期間は2026年4月分から7月分の国民年金保険料です。
2026年度(令和8年度)の国民年金保険料は月額17,920円(日本年金機構公式・確認日2026年6月27日。毎年4月に改定されるため必ず最新額を公式で確認してください)のため、4か月分で71,680円が免除される計算になります。
ただしこの金額は参考であり、実際の月額保険料は毎年4月に改定されるため、必ず日本年金機構または市区町村の最新情報で確認してください。
ステップ2:いつ届出できるかを確認する
出産予定日の6か月前から届出ができます。2026年5月15日が予定日であれば、6か月前は2025年11月15日となるため、Aさんは2025年11月15日から届出が可能です。
出産後に届け出ることも可能です。「いつ届け出ても遡及して免除が認められる」かどうかは自治体によって細かな扱いが異なるため、届出を忘れていた場合は早めに市区町村の担当窓口に確認することをおすすめします。
ステップ3:何を持って届出に行くか
市区町村窓口で出産前に届出をする場合、一般的に以下の書類が必要です。
- 国民年金被保険者関係届書(申出書):窓口または日本年金機構ウェブサイトから入手できます。
- 出産予定日が確認できる書類:母子健康手帳の出産予定日が記載されているページの写しが一般的です。医療機関が発行した証明書でも可です。
- 基礎年金番号が確認できる書類:年金手帳(ある場合)または基礎年金番号通知書。マイナンバーカードを持参すればマイナンバーで確認できる市区町村も増えています。
- 本人確認書類:マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど。
Aさんが2025年11月に出産前届出をする場合、母子健康手帳を持参して市区町村の国民年金担当窓口に届書を提出します。その場で確認が取れれば、手続きはこれだけです。
ステップ4:届出後に起きること
届出が受理されると、免除期間として認定された4か月分(2026年4月〜7月)は「保険料を納付したものとして」老齢基礎年金の計算に算入されます。将来受け取る年金額が産前産後免除によって減ることはありません。
また、この期間に付加保険料(月額400円)を継続して納付したい場合は、引き続き納付できます。通常の所得免除では付加保険料を納付できませんが、産前産後免除ではこの点が異なります。
届出後に免除期間が変更になる場合(たとえば出産が予定より早まった・遅れた)は、改めて届出が必要になることがあります。
ここから先は、申請に直結する実務です。
届出先と手続きの詳細
どこに届け出るか
届出先は主に3つです。
- お住まいの市区町村の国民年金担当窓口(最も一般的な方法)
- 最寄りの年金事務所(日本年金機構)
- マイナポータル(電子申請)
自治体によっては、区役所・市役所の本庁のみ受け付けており、出張所や支所では受け付けていない場合があります(世田谷区の例では、出張所・総合支所くみん窓口は不可とされています)。事前に自分の自治体のウェブサイトで受付窓口を確認してから出向くと二度手間を防げます。
郵送でも受け付けている自治体が多くあります。その場合は届書に加えて必要書類のコピーを同封します。
マイナポータルでの電子申請
マイナンバーカードがあれば、マイナポータル(https://myna.go.jp/)から「国民年金保険料の産前産後免除該当の届出」として電子申請できます。24時間365日いつでも送信可能です。
出産前に電子申請する場合は、出産予定日が確認できる書類(母子健康手帳のページ画像など)をアップロードします。出産後の申請では原則として添付書類が不要ですが、審査に時間がかかることがあります。
必要書類の一覧
| 申請の状況 | 必要書類 |
|---|---|
| 出産前・窓口または郵送 | 届書、母子健康手帳(または医療機関の証明書)、基礎年金番号または個人番号確認書類、本人確認書類 |
| 出産後・窓口または郵送 | 届書、戸籍謄本もしくは出生届出済証明書または母子健康手帳(出産後のページ)、基礎年金番号または個人番号確認書類、本人確認書類 |
| 出産前・マイナポータル | 出産予定日が確認できる書類の画像ファイル(母子健康手帳等) |
| 出産後・マイナポータル | 原則添付不要(審査に時間がかかる場合あり) |
マイナンバーカードを窓口に持参する場合は、基礎年金番号確認書類と本人確認書類を兼ねられる自治体が多いです。
多胎妊娠(双子・三つ子以上)の場合
多胎妊娠の場合、免除対象期間が単胎より長くなります。
単胎が「出産予定日が属する月の前月から4か月間」なのに対し、多胎は「出産予定日が属する月の3か月前から6か月間」です。
たとえば2026年5月15日が出産予定日の多胎妊娠の場合、属する月(5月)の3か月前は2月です。そこから6か月間で、2月・3月・4月・5月・6月・7月の6か月分の保険料が免除対象になります。
単胎・多胎の区別は届書に記載します。届出時点で単胎・多胎が確定していない場合でも、出産後に改めて届出することができます。
届出時に使う書類(母子健康手帳等)に単胎・多胎の別が記載されているかどうかを事前に確認しておくとスムーズです。
年金記録の確認方法
産前産後免除の届出が受理された後、自分の年金記録に正しく反映されているかを確認することができます。
ねんきんネット
日本年金機構が運営するオンラインサービスです(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)。マイナポータルからログインするか、日本年金機構のサイトから登録してアクセスできます。加入期間・保険料の納付状況・老齢年金の見込額などをいつでも確認できます。産前産後免除期間が「納付済期間」として記録されているかを確認する場合にも使えます。
ねんきん定期便
毎年誕生月頃に日本年金機構から郵送されます。35歳・45歳・59歳の方には全加入期間の記録が届きます。それ以外の年齢では直近13か月分等の記録になります。
窓口での確認
年金事務所または市区町村の国民年金担当窓口でも確認できます。
通常の国民年金免除(所得免除)との違い一覧
この制度を知らずに通常の所得免除だけを認識している方のために、2つの制度の比較を整理します。
| 比較項目 | 産前産後免除(本制度) | 通常の所得免除(全額・一部) |
|---|---|---|
| 申請要件 | 出産(妊娠85日以上) | 前年所得が一定基準以下 |
| 所得制限 | なし | あり |
| 対象期間 | 出産前後の固定4か月間(多胎6か月間) | 申請年度(7月〜翌6月)単位 |
| 年金額への反映 | 全額納付済として算入(将来の年金が減らない) | 免除割合に応じて按分(全額免除は標準額の半分算入) |
| 付加保険料の納付 | できる | できない |
| 他の免除との関係 | 産前産後免除が優先される | 通常は申請年度ごとに承認 |
| 自動適用 | なし(届出必要) | なし(申請必要) |
もし出産前後の時期に通常の所得免除もすでに承認されていた場合は、その期間が産前産後免除に切り替わる形になります。産前産後免除のほうが年金額への反映が有利なため、届出をした場合は自動的に産前産後免除が優先されます。
よくある誤解・つまずきポイント
誤解1:申請しなくても自動的に免除される
産前産後免除は自動適用ではありません。届出をしなければ保険料は通常通り発生します。出産後に知って届け出た場合でも遡及して免除になるケースがありますが、自治体によって取り扱いが異なるため、早めに確認・届出をすることをおすすめします。
誤解2:フリーランスには産休がないから産前産後免除もない
フリーランスや自営業には法律上の産休制度はありませんが、産前産後の国民年金保険料免除は第1号被保険者を対象とした独立した制度です。収入の有無や仕事を休んでいるかどうかは問われません。産休を取らずに仕事を続けていても、届出をすれば免除を受けられます。
誤解3:死産や流産では使えない
妊娠85日(4か月)以上の死産・流産・人工妊娠中絶も、この制度の「出産」として扱われます。大変つらい状況の中での届出になりますが、制度上は対象となります。必要書類については、担当窓口に事前にご相談ください。
誤解4:収入が多いから免除は受けられない
通常の所得免除とは別枠の制度であり、所得要件がありません。収入が多い場合でも届出をすれば免除を受けられます。
誤解5:免除を受けると将来の年金が減る
産前産後免除は「保険料を納付したものとして」老齢基礎年金の受給額に反映されます。通常の所得免除(全額免除)では将来受け取る年金が標準の半額ほどに算入されますが、産前産後免除ではそのような減額はなく、保険料を全額納付した場合と同じ扱いになります。
申請チェックリスト
届出前の確認
- 国民年金第1号被保険者(フリーランス・自営業・無職等)であることを確認した
- 出産予定日または出産日から「免除期間の4か月間(多胎は6か月間)」を自分で計算した
- 届出のタイミング(出産予定日の6か月前から可)を確認した
- 届出先(市区町村窓口・年金事務所・マイナポータル)を確認した
- 自治体の受付窓口が本庁のみかどうかを確認した(出張所では受け付けない自治体あり)
準備書類の確認
- 国民年金被保険者関係届書(申出書)を入手した(窓口または日本年金機構ウェブサイト)
- 母子健康手帳を手元に用意した(出産前届出の場合は出産予定日のページ)
- 基礎年金番号通知書または年金手帳を確認した(マイナンバーカードで代替可の自治体も多い)
- 本人確認書類を用意した(マイナンバーカード、運転免許証等)
届出後の確認
- 免除が受理されたことを確認した(受付票の控えを保管するか、後日ねんきんネットで確認)
- 「免除期間中も付加保険料を継続したいかどうか」を確認した
- 出産後に実際の出産日が予定日と異なった場合、追加届出が必要かを確認した
- 年金記録がねんきんネットまたはねんきん定期便で正しく反映されているかを確認した
よくある質問(FAQ)
Q1. 出産後に知りました。今から届け出ても遡及して免除を受けられますか。
出産後でも届出が可能です。遡及して免除が認められるかどうか、遡及できる期間に制限があるかどうかは市区町村や年金事務所に直接確認することをおすすめします。時間が経てば経つほど手続きが複雑になることがあるため、なるべく早めに連絡することが得策です。
Q2. 夫(配偶者)も国民年金第1号被保険者です。夫の保険料も免除になりますか。
産前産後免除は出産した本人(妻)を対象とする制度です。配偶者(夫)の保険料は対象になりません。なお、2026年10月から開始予定の育児免除(別制度)は、実父・養父母も対象となる予定です。
Q3. フリーランスで確定申告をしています。所得が高くても申請できますか。
産前産後免除には所得要件がないため、所得金額にかかわらず届出できます。
Q4. 会社員(第2号被保険者)の夫の扶養に入っています(第3号被保険者)。この制度は使えますか。
産前産後免除は国民年金第1号被保険者が対象です。第3号被保険者(厚生年金被保険者の被扶養配偶者)は対象外です。第3号被保険者はそもそも保険料の負担がないため、この免除制度の適用場面がありません。
Q5. 産前産後免除の期間と、通常の所得免除の期間が重なってしまいます。どうなりますか。
重複した場合は産前産後免除が優先されます。通常の所得免除を受けていた期間であっても、産前産後免除の届出をすると産前産後免除に切り替わります。産前産後免除のほうが年金記録への算入が有利なため、切り替えを忘れずに行うことをおすすめします。
Q6. 付加年金(付加保険料)を払っています。産前産後免除期間も続けて払えますか。
続けて払えます。通常の所得免除期間は付加保険料を納付できませんが、産前産後免除期間は付加保険料の納付が可能です。付加年金を継続したい方は届出と合わせて担当窓口に確認してください。
Q7. 2026年10月から育児免除が始まると聞きました。産前産後免除とは別の制度ですか。
別の制度です。2026年10月開始予定の育児免除は、子が1歳になるまでの期間の保険料が免除される制度で、実父・養父母も対象になる見込みです。実母の場合は、産前産後免除(単胎は最大4か月・多胎は最大6か月)の後に引き続いて育児免除(9か月)が適用される予定です。日本年金機構の特設ページでは、産前産後免除と合わせて単胎で最大13か月(4か月+9か月)と案内されています。多胎の場合は計算上、最大15か月(6か月+9か月)となる見込みですが、最終的な取り扱いは制度開始時の公式情報でご確認ください。育児免除の詳細は日本年金機構の特設ページ(https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/ikujimenjo.html)でご確認ください。
Q8. 国民健康保険の保険料も免除になりますか。
産前産後免除はあくまで国民年金保険料の免除制度です。国民健康保険料の免除は別制度で、市区町村によって内容が異なります。2024年1月からは国民健康保険料についても産前産後期間の減額制度が始まっていますが、手続き・窓口・対象期間は国民年金とは別に確認が必要です。
Q9. 保険料を免除された期間は年金受給資格(10年)のカウントに入りますか。
産前産後免除期間は保険料を納付したものとして扱われるため、受給資格期間にカウントされます。
Q10. 届出書類はどこで入手できますか。
「国民年金被保険者関係届書(申出書)」は、市区町村の国民年金担当窓口または年金事務所で入手できます。日本年金機構のウェブサイトでも書式が公開されています(https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20180810.html)。マイナポータルで電子申請する場合は書類の持参・印刷は不要です。
出典一覧(URL・確認日)
本記事は以下の一次情報を確認した上で執筆しています。
- 日本年金機構「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20180810.html
確認日:2026年6月27日
- 日本年金機構「育児免除制度(2026年10月開始)特設ページ」
https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/ikujimenjo.html
確認日:2026年6月27日
- 厚生労働省「国民年金の産前産後期間の保険料免除制度について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000193798_00001.html
確認日:2026年6月27日
- 大阪市「国民年金保険料の産前産後期間免除制度」
https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000463444.html
確認日:2026年6月27日
- 世田谷区「国民年金保険料 産前産後期間の免除について」
https://www.city.setagaya.lg.jp/02060/364.html
確認日:2026年6月27日
- 東京都北区「国民年金保険料の産前産後・育児期間の免除」
https://www.city.kita.lg.jp/living/insurance-pension/1001688/1001694/1001697.html
確認日:2026年6月27日
- 日本年金機構「ねんきんネット」
https://www.nenkin.go.jp/n_net/
確認日:2026年6月27日
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成代行・税務・法律的助言を行うものではありません。制度の詳細・最新の要件・申請手続きについては、日本年金機構、お住まいの市区町村の国民年金担当窓口、または年金事務所に直接ご確認ください。保険料免除の認定は届出の内容によって異なり、本記事の記載内容が必ず適用されることを保証するものではありません。