産後ケア事業の使い方を整理する(宿泊・通所・訪問の3形態と自治体ごとの費用・申請手順)
本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。制度の金額・要件・実施形態は改定されることがあるため、申請前に必ず住んでいる市区町村の公式サイトや保健センターで最新情報をご確認ください。
この記事が整理すること
出産後、病院から自宅に退院してからの数週間は、体の回復と育児の両立という意味で、人生のなかでも特に体力的・精神的な負担が大きい時期です。夜間の授乳、乳房トラブル、育児への不安、慢性的な睡眠不足——これらが重なると、産後うつや育児困難のリスクも高まります。
こうした状況を支えるために、市区町村が運営している公的な支援が「産後ケア事業」です。助産師や看護師などの専門職が関わり、宿泊・通所・訪問のいずれかの方法で母子を支援します。費用の一部は公費でまかなわれ、住民税非課税世帯などは無料または大幅減額になる自治体も多くあります。
ただし、この制度が複雑なのは、金額・利用回数・申請方法が自治体によって大きく異なる点です。同じ都道府県内でも、宿泊を1泊2,000円以下で利用できる自治体がある一方で、補助が薄く1泊7,000円以上の自己負担が発生するケースもあります。「国の制度のはずなのにどこも情報が違う」と感じるのは、この仕組みの性質上、避けられない混乱です。
この記事では次のことを整理します。
- 産後ケア事業とは何か——制度の定義・法的根拠・対象者の変遷
- 3つの実施形態(宿泊型・通所型・訪問型)の違いと選び方
- 自己負担の仕組みと減免制度の原則
- 複数の自治体を例に、実際の費用と利用回数のイメージ
- 申請の手順と準備しておくべき書類
- 産後ケア事業と他の支援制度(No.04・No.12の育児給付)との違い
- 2025年4月からの制度変更と今後の展望
- よくある誤解・注意点とFAQ
本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成代行・医療的助言を行うものではありません。
産後ケア事業とは何か
制度の定義と目的
産後ケア事業は、出産後の母親と乳児を対象に、助産師や保健師・看護師などの専門職が、心身のケアと育児のサポートを行う事業です。退院後の早い時期から専門職が関わることで、産後うつの予防・早期発見、育児不安の軽減、孤立の防止を図ることを主な目的としています。
この事業が広く整備されるようになった背景には、日本の出産を取り巻く環境の変化があります。かつては産婦が退院するまでの入院期間が1週間以上あることも珍しくなく、その間に助産師や看護師が授乳・育児の指導を行うことができました。しかし医療コスト削減の流れのなかで、経腟分娩では産後4〜5日、帝王切開でも産後6〜7日前後での退院が標準的になっています。
退院後の「空白の時期」——専門職のサポートなしに自宅で育児と体の回復に取り組まなければならない期間——において、支援が届かないことが課題として認識されてきました。核家族化が進んで実家のサポートを受けにくい家庭が増えた現代では、退院直後から孤立した状態で育児をせざるを得ない母親も多く、産後うつや育児困難の背景にこの「孤立」があることが指摘されています。
産後ケア事業はまさにこの空白期間を埋めるために整備された制度であり、「退院後から産後1年の間に専門職が関わる機会を作る」ことが目的の核心にあります。
利用者が施設に宿泊してケアを受ける「宿泊型」、日帰りで通所する「通所型(デイサービス型)」、専門職が自宅を訪問する「訪問型(アウトリーチ型)」の3つの実施形態があり、市区町村が地域の医療機関や助産所に委託する形で運営されています。
法的根拠の変遷——母子保健法から子ども・子育て支援法へ
産後ケア事業は、もともと母子保健法の改正(令和元年法律第69号)によって市町村の努力義務として位置づけられ、令和3年(2021年)4月1日から施行されました。これにより、各市区町村が産後ケア事業を行うよう努めなければならないとする法的根拠が整備されました。
その後、2025年4月1日(令和7年4月1日)から、子ども・子育て支援法の改正によって、産後ケア事業は「地域子ども・子育て支援事業」の1つに位置づけが変更されました。これは単なる名称変更ではなく、財政の仕組みが根本的に変わることを意味します。
旧制度では国が費用の1/2を補助し、残り1/2を市町村が負担していました。新制度では国1/2・都道府県1/4・市町村1/4という3者分担に変わり、都道府県が新たに財政的な関与を担うことになりました。
この変更の実務的な意義は2点あります。1つ目は、市町村の財政負担が1/2から1/4に軽減されることで、特に財政力の弱い小規模自治体が産後ケア事業を継続・拡充しやすくなることです。2つ目は、都道府県が1/4の財政責任を持つことで、県内での広域調整(市町村をまたいだ利用など)が促進されやすくなることです。
対象者の変遷——「必要とする者」へのユニバーサル化
産後ケア事業の対象者は、かつて「心身の不調または育児不安等がある者」に限定されていました。この条件があることで、「自分はまだそこまでひどくない」「申請したら大げさと思われないか」という心理的なハードルが利用を妨げていたという指摘がありました。
2023年度以降の制度改正により、対象者の要件は「産後ケアを必要とする者」と改められ、ユニバーサル支援として広くすべての産後女性が使えるサービスとする方向が明確になりました。大阪市では令和8年(2026年)4月1日から、従来の制限を取り除き「誰でも利用いただけるようにした」と明記しています。各自治体によって移行のタイミングは異なりますが、この方向性は全国共通です。
利用期間の原則——産後1年以内
産後ケア事業は原則として「出産後1年を経過しない女性とその乳児」が対象です。ただし、宿泊型は子どもの月齢制限を設けている施設が多く、たとえば産後5か月未満までしか受け付けない施設も少なくありません。訪問型や通所型は産後1年未満全体を対象にしている自治体が多い傾向があります。
利用日数の上限は「宿泊型は原則7日以内」とガイドラインに記されており、多くの自治体がこれに準じています。ただし、延長が認められるかどうかは自治体の判断によります。早産や長期入院後などの場合に、期間を延長して対応している自治体もあります。
なお、産後ケア事業は「産後1年以内」を基本としていますが、これは医学的な「産褥期(分娩後6週間)」とは異なる概念です。産褥期は医学的な子宮回復・体の回復に注目した概念ですが、産後ケア事業の1年という期間は、育児の不安や孤立リスクが産後1年を通じて続くという観点から設定されています。特に産後3か月・6か月・1年のタイミングで育児環境の変化(職場復帰・保育施設入園など)が生じやすく、それぞれの時期に特有のサポートニーズがあることも踏まえての設定です。
3つの実施形態の詳細比較
産後ケア事業には宿泊型・通所型(デイサービス型)・訪問型(アウトリーチ型)の3形態があります。市区町村によって提供している形態の組み合わせが異なります。たとえば「宿泊型と訪問型のみ」「3形態すべてあるが施設は少ない」など、自治体の実態はさまざまです。まず自分の住む自治体がどの形態を提供しているかを確認することが第一歩です。
宿泊型(ショートステイ)
宿泊型は、市区町村が委託した病院・診療所・助産所・産後ケアセンターなどの施設に、母親と乳児が一緒に宿泊して支援を受ける形態です。
提供されるケアの内容は施設によって異なりますが、一般的には次のようなものが含まれます。
- 乳房ケア(おっぱいのトラブル、授乳姿勢の指導、乳腺炎への対応など)
- 授乳指導(ミルクと母乳のバランス、授乳量の確認)
- 沐浴指導(新生児の入浴の仕方)
- 母体の身体的な回復への観察とアドバイス
- 育児全般の相談・悩みへの対応
- 育児中に「赤ちゃんを預かってもらい母親が休む」という休息の提供
宿泊型の最大の特徴は、家事や育児から一時的に離れて身体を休める機会が得られることです。自宅では休もうとしても「赤ちゃんが泣けば対応しなければ」という状況になりますが、施設では夜間のミルクあげや見守りを専門職が担ってくれる時間を設けることができます。育児疲れや睡眠不足が深刻になっている母親にとって、身体的な回復という点で最もダイレクトに効果を発揮しやすいのが宿泊型です。
一方で、宿泊型を提供できる施設は他の2形態に比べて数が少ないという現実があります。空きベッドの確保が必要な宿泊型は、出産件数が減少するなかで産科病棟の縮小が進む地域では提供施設が限られることがあります。
宿泊型を選ぶ際は、施設ごとに以下を事前に確認することが重要です。
- 受け入れ月齢(産後何か月まで対応しているか)
- 夜間の対応体制(夜間も助産師が常駐しているか、夜間対応の形式)
- 提供するサービスの内容(乳房ケアに強い施設・育児全般に強い施設など)
- 差額料金の有無(個室・半個室・大部屋の違い、食事の内容など)
通所型(デイサービス型)
通所型は、施設に日帰りで通い、決まった時間帯にケアを受ける形態です。宿泊を伴わない分、費用が安く、施設の数も宿泊型より多い傾向があります。
通所型で提供されるケア内容は宿泊型と基本的に重なります(乳房ケア・授乳指導・育児相談・沐浴指導など)。日中数時間を施設で過ごし、専門職のサポートを受けながら育児の不安を解消していく使い方が典型的です。
集団で行うグループ型と、個別に対応するマンツーマン型の両方を設けている自治体もあります。グループ型は同時期に出産した他のお母さんたちとの交流ができる点が特徴で、孤立感の軽減に効果があるという報告があります。一方でマンツーマン型は、具体的なトラブルや不安をじっくり相談したい方に向いています。
訪問型(アウトリーチ型)
訪問型は、助産師や保健師・看護師が利用者の自宅に出向き、その場でケアを行う形態です。「外出できる状態にない」「施設までの移動が難しい」という母親にとって、最もアクセスしやすい形態といえます。
自宅でのケアという性質上、自宅内の育児環境そのものを見てアドバイスできる点が他の2形態にない特徴です。授乳の姿勢が自宅の部屋のレイアウトと合っているかどうか、沐浴に使っている道具が適切かどうかなど、その家庭の実際の生活に即した具体的な指導が可能です。
訪問時間は1回おおむね1〜2時間が多く、双子など多胎児の場合は対応時間を長めに設定している自治体もあります。
訪問型の注意点として、対応できる助産師・看護師の人数が限られているため、予約が取りにくい場合があることが挙げられます。利用希望日の2週間以上前から予約の準備を始めると安心です。
3形態の比較
3つの形態は目的に応じて使い分けることが重要です。どれか一つを選ばなければならないわけではなく、同じ産後期間中に複数の形態を組み合わせて使える自治体も多くあります。
身体的な回復を最優先したい場合は宿泊型が向いています。日中のケアと育児相談を繰り返し受けたい場合は通所型が使いやすく、外出が難しい状況や自宅での実践的な指導を求める場合は訪問型が適しています。
時期によって使い分けるという視点も有効です。産後すぐの退院直後は宿泊型で集中的にサポートを受け、身体が安定してきた産後1〜2か月頃からは通所型で定期的なケアと他の母親との交流を活用し、育児の具体的な問題が出てきた時期に訪問型で自宅での実践指導を受ける——というように、産後の各段階で形態を変えて使うことが「総合的な産後支援」として有効です。
| 形態 | 主な対象ニーズ | 利用時期の目安 | 費用感(目安) |
|---|---|---|---|
| 宿泊型 | 身体的疲弊・睡眠不足・退院直後の乳房トラブル | 産後〜5か月(施設により異なる) | 1泊2,000〜7,000円程度(自治体・世帯区分により大きく異なる) |
| 通所型 | 育児相談の繰り返し・他の母親との交流 | 産後〜1年(利用回数上限あり) | 1回500〜2,000円程度 |
| 訪問型 | 外出困難・自宅での実践指導 | 産後〜1年(利用回数上限あり) | 1回500〜1,500円程度 |
(金額はあくまで参考目安。実際の金額は自治体・世帯区分・施設により異なります。確認日:2026年6月27日)
実施施設の種類と委託の仕組み
産後ケア事業を実施できる施設は、医療法に基づく医療機関(病院・診療所)と助産所が中心です。近年は「産後ケアセンター」として特化した施設も増えています。また、保健センターが直営で通所型を実施している自治体もあります。
市区町村は、これらの施設と委託契約を結ぶことで産後ケア事業を運営します。委託料の考え方としては、市区町村が施設に対して1日・1回あたりの委託料を支払い、利用者からは自己負担分だけを徴収するという構造です。自己負担額は市区町村が決定し、施設ごとに違う「標準料金」を市区町村がどの程度補助するかによって、利用者の実際の負担が変わります。
委託施設の確保が難しい地域では、市区町村の区域を超えた広域利用(他の市区町村の施設を使う)を認めている場合があります。この場合の事務手続きや補助の扱いは自治体によって異なるため、居住自治体の担当窓口に確認が必要です。
産後ケア施設に参入する事業者(助産所・クリニックなど)の立場からは、市区町村との委託契約に伴う事務手続きや、適切な人員の確保が参入の障壁になるケースがあります。大阪市などは新規委託事業者の公募を定期的に行い、施設数の拡充を図っています。
自己負担の仕組みと減免制度
費用の決まり方
産後ケア事業の費用は、全国共通の定額ではありません。「国が補助を出し、市区町村が委託料を支払い、その一部を利用者から自己負担として徴収する」という仕組みのため、委託料の設定・自己負担額の設定はすべて市区町村が行います。
結果として、同じ「宿泊型1日」でも、利用者の手出し額が500円未満の自治体から5,000円を超える自治体まで、大きな幅があります。
国の加算措置——2,500円減免・5,000円減免
国は産後ケア事業の利用者負担を軽減するための加算措置を設けています。2020年代以降の制度整備のなかで、以下の仕組みが設けられています。
一般世帯向けには、利用者負担額から2,500円を差し引く減額措置の加算が設けられています。千代田区の場合は「2,500円引きのクーポン最大5枚」という形で具体化されており、宿泊型・通所型・訪問型のいずれに使っても1回あたり2,500円が割り引かれます。
住民税非課税世帯・生活保護受給世帯に対しては、より大きな減免が設けられています。多くの自治体では、これらの世帯の自己負担を無料または象徴的な低額にとどめています。
これらの減免措置は市区町村に裁量があり、国の加算に上乗せして独自に自己負担を下げている自治体もあります。栃木市(栃木県)では2023年11月から自己負担を完全に無料化しており、財政力のある自治体では同様の取り組みが見られます。
多胎児・障害児への対応と加算
多胎児(双子・三つ子など)を育てている場合、1回の利用あたりの負担が大きくなります。神戸市の例では、多胎児1人追加するごとに宿泊500円・通所300円の加算が設定されており、子ども2人で利用する場合の費用が明示されています。
令和7年度(2025年度)以降、国の補助において兄弟児を連れての利用や、生後4か月以降の乳児の受け入れに対する加算が新たに設けられています。これは、兄弟児を自宅に残せない家庭が産後ケアを使えないという課題に対応するための措置です。ただし、各施設がこの加算の対象となっているかどうかは自治体ごとに確認が必要です。
外国籍の家庭の場合、対応できる言語やコミュニケーションの問題が障壁になるケースがあります。制度上の対象外要件ではありませんが、施設によって外国語対応の有無が異なるため、事前に確認することが重要です。
自治体別の費用・利用回数の具体例
以下の自治体例は、各自治体の公式サイトを2026年6月27日に確認した時点の情報です。制度は随時更新されるため、実際の申請前には必ず最新情報を各自治体の窓口またはウェブサイトで確認してください。
千代田区(東京都)
千代田区では、宿泊型・通所型・訪問型の3形態すべてを提供しています。
利用上限は、宿泊型が最大7日間(6泊7日・分割可)、通所型が最大5回、訪問型が最大5回(令和8年4月1日以降の出産から適用、それ以前は3回)です。
自己負担については、千代田区独自の「2,500円引きクーポン」が5枚(5回分)支給されます。各回の利用時にこのクーポンを適用することで、施設の通常料金から2,500円が差し引かれます。住民税非課税世帯・生活保護受給世帯・中国残留邦人支援給付受給世帯は自己負担が免除されます。
申請は妊娠28週以降にmila-e(行政手続きオンラインシステム)を通じて事前申請します。
出典:千代田区公式サイト(2026年6月27日確認)
渋谷区(東京都)
渋谷区では宿泊型・デイサービス型・訪問型の3形態を提供しています。
自己負担額は次の通りです(2026年6月27日確認時点)。
宿泊型は1泊2日で7,000円、それ以降は1日あたり3,500円の加算となります。最大5日間の利用が可能です。
デイサービス型は1回2,000円で最大7回まで、訪問型は1回1,000円(90分)で最大3回(多胎の場合120分)です。
生活保護世帯など一定の条件を満たす世帯は負担が免除されます。
申請は、LINE・郵送・窓口のいずれかで、妊娠28週から利用希望日の14日前までに受け付けています。
出典:渋谷区公式サイト(2026年6月27日確認)
目黒区(東京都)
目黒区は宿泊型の産後ケアを複数施設と委託契約しています。
利用上限は最大7日間(6泊7日・分割可)で、対象は産後5か月未満までとなっています。
自己負担は、施設によって1泊2日3,500〜7,500円の幅があります。住民税課税世帯には最大5泊分について1泊あたり2,500円の減免が適用されます(実際の負担は施設の通常料金から2,500円を引いた額)。住民税非課税世帯・生活保護受給世帯は利用料免除です(ただし差額室料やオプション費用は自己負担)。
申請は妊娠28週から申請フォームで受け付けており、承認まで約2週間かかります。
出典:目黒区公式サイト(2026年6月27日確認)
神戸市(兵庫県)
神戸市は宿泊型と通所型の産後ケアを提供しています(訪問型は別の事業として整備)。
自己負担額は世帯区分別に次の通りです(1日あたり、確認日2026年6月27日)。
宿泊型の場合、課税世帯は3,000円、非課税世帯は1,500円、生活保護世帯は1,000円です。多胎児の追加は1人あたり宿泊500円が加わります。
通所型の場合、課税世帯は2,000円、非課税世帯は1,000円、生活保護世帯は800円です。多胎児の追加は1人あたり通所300円が加わります。
利用上限は宿泊・通所それぞれ最大7日間(6泊7日など分割可)です。
申請はオンラインでアカウントを作成し(妊娠8か月以降から対応)、市への申請を経て施設予約に進みます。
出典:神戸市公式サイト(2026年6月27日確認)
大阪市(大阪府)
大阪市は宿泊型(ショートステイ)・通所型(デイケア)・訪問型(アウトリーチ)の3形態を提供しています。令和8年4月1日から対象者要件が拡大され、「誰でもご利用いただける」形になりました。
自己負担額は次の通りです(2026年6月27日確認)。
ショートステイは1泊2日で4,250円(住民税非課税世帯2,500円)、以降1日ごとに2,125円追加(非課税1,250円)です。
デイケアは1日1,500円(非課税1,000円)、アウトリーチは1回500円(非課税は無料)です。
利用上限は、ショートステイ通算7日間、デイケア通算7日間、アウトリーチ通算5回です。
出典:大阪市公式サイト(2026年6月27日確認)
北九州市(福岡県)
北九州市は宿泊型・通所型(通常と短時間)・居宅訪問型の3形態を提供しています。
自己負担額の目安(一般世帯)は宿泊型3,000円、通所型1,000円、短時間通所500円、居宅訪問型1,000円です。いずれも減免世帯はこれより低額です。
利用上限は通算最大7日間で、短時間通所型は産後4か月未満・最大3日間に限定されます。
申請は利用希望の事業所に連絡して日程調整後、登録利用申請書を事業所に提出します。市外施設を使う場合は利用2週間前までに市の子育て支援課への申請が原則必要です。
出典:北九州市公式サイト(2026年6月27日確認)
産後ケア事業が対象外になるケース
産後ケア事業には、「利用できない」または「利用に制限がかかる」ケースがあります。事前に把握しておくことで、別の選択肢を検討できます。
医療行為が必要な状態
産後ケア事業は「医療行為が不要な」母子を対象としています。産後の創傷ケアや縫合部の処置が必要な状態、乳腺炎が重症化して治療を要する状態、新生児に医療処置が必要な状態などは、産後ケア施設では対応できません。まず医療機関で治療を受け、安定した後に産後ケアを利用することになります。
感染症がある場合
インフルエンザ・胃腸炎・新型コロナウイルス感染症などの感染症に罹患している状態では、施設内での他の利用者への感染防止の観点から、利用を断られることがあります。感染が落ち着いた後に改めて予約を入れることが必要です。
産後1年を超えた場合
産後ケア事業の対象は産後1年以内です。1年を過ぎると制度の対象外となります。特に宿泊型では施設ごとに受け入れ月齢の上限(産後4〜5か月程度)が設定されている場合もあるため、使いたい場合は早めに動くことが重要です。
住民票がない自治体での利用
居住市区町村に住民票がない状態では、その自治体の産後ケア事業は原則として利用できません。里帰り出産中の場合、住民票がある自治体に戻ってから利用するか、広域利用の調整を事前に行う必要があります。
産後ケア事業と産前産後サポート事業の違い
産後ケア事業と混同されやすい制度に「産前産後サポート事業」があります。名前が似ていますが、目的と内容が明確に異なります。
産前産後サポート事業は、妊産婦の「孤立防止」を主眼においた相談・交流支援です。母子保健推進員や研修を受けたシニア世代のボランティア、保育士・保健師などが相談を受け、不安の傾聴や生活上の悩みの解決を支援します。専門的な医療・助産的なケアは原則として含まれません。
産後ケア事業は、助産師・看護師・保健師などの専門職が中心となって「心身のケア」と「育児のサポート」を提供する事業です。乳房ケア・授乳指導・沐浴指導・母体の身体的回復への観察などの専門的な支援が含まれる点が本質的な違いです。
わかりやすく言えば、産前産後サポート事業は「話を聞いてもらい、孤独を解消する」ためのもので、産後ケア事業は「専門職に身体と育児の具体的な問題を診てもらう」ためのものです。
両事業は重複して使えることが多く、産後サポートを受けながら産後ケアも利用するというケースも珍しくありません。
産後うつ・メンタルヘルスとの関連
産後うつとは何か
産後うつ(産後うつ病)は、出産後の女性の10〜15%程度が経験するといわれています。産後の急激なホルモン変化、慢性的な睡眠不足、育児への責任感、孤立などが複合的に重なって発症するとされており、放置すると母子ともに深刻な影響が出ることがあります。
産後ケア事業は産後うつの予防と早期発見の観点からも重要な位置づけにあります。専門職が定期的に関わることで、精神的な不調のサインに気づきやすくなります。
多くの自治体では、産後1か月健診の際にエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS:Edinburgh Postnatal Depression Scale)というスクリーニングツールを使っています。EPDSは産後うつの確定診断をするものではなく、「うつ病の可能性があるかどうかを大まかにスクリーニングする」ためのツールです。10項目の質問に答えて合計点を算出し、一定のスコアを超えた場合は保健師や助産師との面談、産後ケア事業の利用、必要であれば精神科への紹介につなげるという流れが整備されています。
精神疾患が疑われる場合は、産後ケア施設だけでの対応には限界があります。産後ケア施設と精神科医療機関・市町村・保健センターとのネットワークを通じて連携することが必要であり、ガイドラインでもこの連携体制の構築が求められています。
産後ケア事業を利用する際に「うつっぽい気がする」「死にたいという気持ちがわいてくる」という状態がある場合は、施設内の助産師や保健センターに率直に伝えることが、適切な連携につながります。本記事は医療的助言を行うものではありませんが、精神的な危機感がある場合は医療機関への受診や産後ケアの専門職への相談を検討されることをおすすめします。
産後ケア事業がメンタルヘルスに与える効果と限界
産後ケア事業の宿泊型では、夜間に赤ちゃんを預かってもらうことで母親が連続した睡眠を取れる可能性があります。睡眠不足は産後うつのリスクを高める因子の一つとされており、「一晩でもまとめて眠れた」ことが精神的な回復につながると報告する声も聞かれます。
通所型や訪問型では、専門職と話す機会が「誰かに話を聞いてもらえる」という安心感をもたらすことがあります。孤立感の軽減という観点では、産後ケア事業はメンタルヘルスの直接的な治療ではありませんが、孤立予防の場として一定の効果があるとされています。
一方で産後ケア事業は、精神科的な治療(薬物療法・精神療法)の代替にはなりません。EPDSスコアが高い場合や、日常生活に支障が出るほどの抑うつ症状がある場合は、精神科・心療内科への受診が優先されます。産後ケア事業はあくまでも「予防的・補完的な支援」として位置づけられています。
地域差が生まれる構造的な理由
施設偏在と委託先確保の困難
産後ケア事業における自治体間の差が大きい最大の理由は、「委託できる施設があるかどうか」という物理的な問題です。
宿泊型の産後ケアを実施するには、空きベッドを持つ産科施設(病院・助産所など)が地域内にある必要があります。しかし、出産件数の減少が続くなかで産科病棟を持つ医療機関の数は全国的に縮小しており、特に地方の小規模自治体では委託可能な施設を見つけること自体が難しい状況にあります。
訪問型は施設の建物を必要としないため参入のハードルは低いのですが、担当できる助産師の数が限られているため、大都市圏でもキャパシティ不足になりやすいという問題があります。
財政力の差
自治体の財政力の差も、産後ケアの充実度に影響しています。国の補助は引き続き1/2ですが、残りの費用は自治体(令和7年度からは都道府県1/4・市町村1/4)が負担します。財政に余裕のある自治体は独自の上乗せ補助を実施して利用者の自己負担をゼロにしたり、委託施設を増やしたりできますが、財政が厳しい自治体では国の最低限の水準にとどまることになります。
2025年4月からの都道府県1/4負担の導入は、この格差を少し緩和する効果が期待されています。都道府県が費用の一部を担うことで、財政力の弱い市町村がある地域でも都道府県からの広域支援が入りやすくなるためです。
人口密度と施設配置の関係
人口の多い都市部では、複数の産科施設が一定の範囲内に存在するため、宿泊型を複数施設と委託できる可能性が高くなります。一方で地方の人口が少ない地域では、施設の数自体が限られるため選択肢が少なくなります。
こうした物理的な偏在を補う仕組みとして、市町村の区域を超えた広域利用(居住市区町村の外にある施設を使う)を認める運用や、都道府県が県内の産後ケア施設の調整を担うといった取り組みが進んでいます。
地域差を読み解く視点
産後ケア事業の自治体間差を「格差」と見るだけでなく、「どの要素が違いを生んでいるのか」を理解した上で自分の状況に使えるかどうかを判断することが重要です。
自治体の実施形態(宿泊型のみ・通所型のみ・3形態すべてなど)は、委託先の確保状況によって決まります。宿泊型がなければ通所型・訪問型を優先的に使うという発想の転換が必要なケースもあります。
費用についても、自治体によって「減免加算を手厚くして自己負担ゼロに近づけている自治体」と「減免が最低限にとどまっている自治体」の差があります。自己負担が気になる場合は、住んでいる自治体の減免制度の詳細(どの世帯区分まで対象になるか、減免の申請に必要な書類は何か)を事前に確認しておくことで、実際の負担感を具体的に把握できます。
利用率が低い背景と改善に向けた動き
利用率10.9%という数字
令和4年度の調査によると、産後ケア事業を実施している自治体における産婦の利用率は10.9%とされています(令和3年度は6.1%)。一方、実施市町村数は令和5年度時点で1,547自治体(全市区町村の89.5%)に達しており、実施はしているが使われていないというギャップが大きいことがわかります。
利用率が低い理由
利用率が低い背景には複数の要因が重なっています。
認知不足が最も基本的な問題です。令和5年度の調査では、今後利用する可能性がある20〜30代の女性のうち産後ケア事業を知らないと答えた割合が約45.5%に達していると報告されています。制度は存在しているが、当事者に届いていないのです。
申請の煩雑さも利用のハードルになっています。妊娠中に事前登録が必要な自治体が多く、産後の疲弊した状態では新たな手続きを調べる余力がない場合があります。この問題への対応として、マイナポータルを活用した電子申請の整備や、妊婦健診・母親学級の場での情報提供の強化が進められています。
費用の負担感も影響しています。1回あたり数千円の自己負担があると、何度も利用するには金銭的な負担感が積み重なります。「無料化」を実施した自治体では利用率が大幅に上昇したという事例報告もあります。
施設の予約が取りにくいという物理的な制約もあります。産後に最もサポートが必要な時期(退院直後の1〜2週間)に予約が集中するため、特に宿泊型は希望通りの日程で利用できないことがあります。
改善に向けた取り組み
こども家庭庁は産後ケア事業の充実に向けた予算の拡充を進めています。令和8年度(2026年度)の予算案では母子保健対策全体で188億円が計上されており、令和7年度の176億円から増額されています(令和8年度概算要求時点では269億円規模が要求されていましたが、予算案では圧縮されています)。
個別の施策としては、兄弟児加算(兄弟を連れての利用を可能にする施設への補助)・生後4か月以降の受け入れ加算(月齢制限を緩和した施設への補助)・夜間2名配置加算(夜間の安全体制を強化した宿泊施設への補助)といった加算が令和7年度(2025年度)に設けられています。
産後ケア事業に係る費用の医療費控除・税務上の取り扱い
産後ケアの自己負担額が医療費控除の対象になるかどうかは、利用施設の種類によって異なります。
医療法上の医療機関(病院・診療所・助産所)が実施する産後ケア事業を利用した場合、医療費控除の対象になる可能性があります。「助産師や看護師による医学的処置・診察を伴うケア」として認められる可能性があります。
一方で、保健師や助産師が訪問する訪問型のケアのうち、医療行為を含まない「育児相談・指導」のみの場合は医療費控除の対象とならないことがあります。
この点については、国税庁の確定申告相談窓口に問い合わせるか、税理士に確認することをおすすめします。産後ケアの自己負担額が年間10万円以上(または合計所得金額の5%を超える場合)に達した場合に確定申告で還付を受けられる可能性があるため、領収書・明細書は保管しておくとよいでしょう。
なお、会社員の場合でも、医療費控除は年末調整では申告できず、確定申告が必要です。
宿泊型施設が少ない地域での代替手段
産後ケア事業の宿泊型施設が地域にない場合や、希望日に予約が取れない場合の代替手段として、次のような選択肢があります。
ファミリーサポートセンターは、市区町村が設置する育児の相互援助を促進する仕組みです。依頼会員(支援を求める側)とサポート会員(支援を提供する側)がマッチングされ、一定の費用で育児援助を受けることができます。専門職によるケアとは異なりますが、一時的に子どもを預かってもらうといった形で休息を取る手段として機能します。
産後ドゥーラは、産後の家庭支援を専門とする民間の支援者(サポーター)です。育児・家事の手伝い、授乳サポートなどを行いますが、民間サービスのため費用は自己負担が基本です(一部自治体で補助を設けているケースもあります)。専門的な医療行為は行わないため、乳腺炎や身体的な問題がある場合は医療機関や産後ケア施設の専門職に相談する必要があります。
里帰り出産の活用も選択肢の一つですが、実家のある地域での産後ケア事業の利用と居住地の制度の使い分けには、手続き上の注意が必要です。多くの産後ケア事業は「住民票がある市区町村の事業を使う」という前提ですが、里帰り先の自治体との調整で利用できる場合もあります。
また、産後ドゥーラ・育児支援ヘルパー・ファミリーサポートなどの民間・自治体の育児支援と産後ケア事業を組み合わせることで、より包括的な産後サポートが実現できます。産後ケア事業では「専門職によるケア」を受けつつ、日常の家事・育児の手伝いは育児支援ヘルパーに担ってもらうという分担が有効なケースがあります。
2025年4月の制度変更の実務的な影響
令和7年(2025年)4月1日に施行された子ども・子育て支援法の改正は、産後ケア事業に次のような変化をもたらしました。
補助の仕組みが「国1/2・市町村1/2」から「国1/2・都道府県1/4・市町村1/4」に変わりました。市町村の負担割合が半分に下がることで、財政力の弱い市町村が産後ケア事業を継続・拡大しやすくなることが期待されています。
都道府県が1/4の費用を負担するようになることで、都道府県は産後ケア事業への関与を強める必要が生じます。これにより、都道府県が県内市町村の実施状況を把握し、未実施・実施が不十分な市町村への支援や、広域調整(市境を越えた利用の調整)に積極的に関わる体制が整いやすくなります。
補助上限の撤廃(委託施設数の上限廃止)は2024年度から先行して実施されていましたが、この制度変更によりさらに制度的に定着することになりました。以前は補助対象となる委託施設数に上限(おおむね6か所程度)があったため、施設数を増やしても一定数以上は補助が出なかった問題が解消されています。
利用者にとっての直接的な影響は、自己負担額や使える施設数が変わることです。改正後の効果は自治体によって対応のスピードが異なるため、居住自治体の情報を随時確認することが重要です。
産後ケア事業と他の育児給付制度との住み分け
この記事(No.46)で扱う産後ケア事業は、育児休業給付(No.04)や出産育児一時金(No.12)とは制度の目的・仕組みが根本的に異なります。
出産育児一時金(No.12)は、出産費用に対する現金給付です。令和5年(2023年)4月1日以降の出産については原則50万円(産科医療補償制度に加入する医療機関等での出産の場合。同制度の対象外となる出産は48万8,000円)が健康保険から支給され、出産という医療行為にかかった費用を補てんするものです。なお、令和5年3月31日以前の出産は従来どおり原則42万円でした。産後のケアサービスの利用料には充当できません。
育児休業給付金(No.04)は、育児のために仕事を休んだ期間の所得を一定程度補てんするものです。雇用保険から支給され、産後ケア事業の利用料には直接充てることはできません。
産後ケア事業は現金給付ではなく「現物サービス(ケアという行為そのもの)」の提供であり、利用者が専門職によるサポートを受けることに対して市区町村が費用の大部分を負担する仕組みです。これら3つの制度は重複して利用できます——出産育児一時金で出産費用をまかない、育児休業給付で所得を確保しながら、産後ケア事業でケアのサポートを受ける、というのが理想的な活用の形です。
自分の自治体のサービスを探す方法
検索・確認の具体的な手順
産後ケア事業は市区町村が実施主体であるため、まず居住する市区町村の公式ウェブサイトを調べることが第一歩です。「○○市 産後ケア事業」で検索すると、多くの場合、市区町村の健康・子育て担当ページに情報が掲載されています。
ウェブサイトで見つからない場合は、次の手順を試してください。
まず、市区町村の代表電話に問い合わせて「産後ケア事業について聞きたい」と伝えると、担当窓口(保健センター・子育て支援課・健康推進課など)に転送してもらえます。担当部署の名称は自治体によって異なります。
次に、妊娠届出(母子手帳交付)の際に保健センターから産後ケア事業の案内を受け取ることも多くあります。母子手帳を交付してくれる保健師・助産師に「産後ケア事業の利用方法を教えてください」と聞くと、その場で説明を受けられることが多いです。この機会に詳細を聞いておくと、事前申請のタイミングを逃さずに済みます。
また、「mila-e(ミラエ)」や「ぴよログ」など、自治体の子育て支援のポータルアプリを活用している市区町村では、アプリ内から産後ケア事業の申請や情報確認ができる場合があります。
こども家庭庁・都道府県のリソース
こども家庭庁のウェブサイトにも産後ケア事業に関する情報ページがあります(https://www.cfa.go.jp/)。都道府県の子ども・子育て担当部署のウェブサイトから、管内市区町村の実施状況をまとめたページにたどり着ける場合もあります。
都道府県の母子保健担当課(「健康福祉部 母子保健課」などの名称が多い)に問い合わせると、県内の産後ケア実施市区町村の一覧情報を案内してもらえることがあります。
施設選びのポイント
産後ケア事業の委託施設が複数ある場合、どの施設を選ぶかは重要な判断です。以下の点を複数施設に問い合わせて比較することをおすすめします。
- 受け入れ月齢の上限(施設によって産後4か月・5か月・6か月などの違いがある)
- 夜間の体制(夜間も助産師が常駐しているか、夜中に赤ちゃんを預けて眠れる時間があるか)
- 乳房ケアの対応力(乳腺炎のケア・搾乳支援など、専門的な対応ができるかどうか)
- 施設の設備(個室か大部屋か・食事の内容・シャワーの有無)
- 兄弟児の同行可否(上のお子さんを連れて来ることができるかどうか)
- 外国語対応(外国籍の方は希望する言語に対応できる施設かどうか)
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産後ケア事業は「どんな感じで動けばいいのか」がわかりにくいという声が多いため、ここでは東京都渋谷区を例に、宿泊型産後ケアを1回(1泊2日)利用するケースを最初から最後まで具体的に紹介します。
渋谷区を選んだ理由は、公式サイトで情報が整理されており、費用・手順が明確に公表されているためです。他の自治体でも手順の骨格は共通していますが、金額・回数・申請方法は必ず居住自治体の公式情報を確認してください。
想定するのは次のような状況です。
渋谷区在住の方が第1子を出産し、退院後2週間が経過しました。夜間授乳が続いて睡眠が十分に取れず、乳房に張りと痛みが出てきています。夫は仕事が多忙で日中はほぼいない状況で、実家も遠く家族のサポートが受けられない状態です。「一度専門職に見てもらいたい」「体を休めたい」と感じています。
ステップ1:妊娠中に事前申請をしておく(申請受付:妊娠28週〜)
渋谷区の産後ケア事業は、妊娠28週から利用希望日の14日前までに申請が必要です。産後になってから申請しようとすると、疲弊した状態で手続きをすることになります。妊娠中(8か月以降)に事前に申請しておくことで、産後すぐに使えるようにしておくことができます。
申請方法は3つあります。渋谷区公式LINEアカウントから申請する方法、窓口に来所する方法(渋谷区保健センター)、郵送で申請書を送る方法です。
産後ケア事業利用申請書(渋谷区が指定の様式)に氏名・連絡先・妊娠週数・出産予定日・利用希望の形態などを記入します。
住民税非課税世帯など減免対象の場合は、「世帯全員の住民税非課税証明書」または「生活保護受給証明書」を添付します。一般世帯の場合は本人確認書類があれば申請できます。
申請後、渋谷区から承認の通知(利用登録承認通知)が届きます。これが「使える状態」になったことを示す書類です。
ステップ2:出産後、施設を選んで予約する
渋谷区が宿泊型で委託している施設の一覧は、区のウェブサイトに掲載されています。施設ごとに得意とするケアの内容、月齢の受け入れ範囲、空き状況などが異なるため、いくつかの施設に問い合わせて比較することをおすすめします。
退院後すぐに使いたい場合、退院前に施設に電話して予約を入れておくことも可能です。施設によって予約の方法が異なるため(電話のみ・ウェブ予約あり等)、事前に確認しておきます。
ステップ3:費用のイメージを確認する
渋谷区の宿泊型の自己負担は、1泊2日で7,000円です(2026年6月27日確認時点)。
「施設の通常料金から渋谷区の補助を引いた残りが7,000円」という仕組みです。施設の料金体系によっては追加の差額(食事代・アメニティなど)が発生することがあります。利用前に施設に「実際に支払う合計はいくらか」を確認しておくと安心です。
住民税非課税世帯・生活保護受給世帯については、利用者負担が免除されます(渋谷区の場合)。
5日間を上限として利用できますが、ここでは1泊2日の1回利用を想定します。
ステップ4:施設に持参するもの
渋谷区が発行した利用登録承認通知(利用者証)を施設に提示します。これがないと自己負担の割引が適用されないため、必ず持参してください。
施設側で準備を必要とするものは事前に確認します。一般的には、母子健康手帳(乳児の健康状態の確認に使います)・着替え・タオル・産褥パッドなどが必要です。施設によって「持ち込みOKなもの・不要なもの」が異なるため、予約時に確認しておきます。
ステップ5:施設で受けるケアの流れ
チェックイン後、担当の助産師などから現在の状況をヒアリングされます。今困っていること・気になっていること(乳房の張り・授乳の悩みなど)を遠慮なく伝えてください。
この方の場合、乳房の張りと痛みが主訴なので、助産師による乳房のアセスメント(状態の確認)と必要に応じたケアが行われます。授乳姿勢の確認・改善、ミルクの量の見直しなどのアドバイスも受けられます。
夜間は、施設のスタッフが乳児の見守りを行う時間を設けてくれることで、母親が連続して休眠できる時間を確保できます(施設の方針・体制によって異なります)。
ステップ6:チェックアウトと次のステップ
1泊2日の利用が終わったら、担当スタッフから帰宅後の過ごし方についてアドバイスを受けます。解決しなかった問題があれば、次の利用(デイサービス型や訪問型、または2回目の宿泊型)の検討について相談できます。
渋谷区の場合、宿泊型の上限は5日間(1泊2日+それ以降は1日3,500円の加算)、デイサービス型は最大7回、訪問型は最大3回です。今回の1回を使っても、まだ複数回の利用余地があります。状況に応じて継続的な利用を検討してください。
この1ケースから読み取れること
渋谷区の例では、宿泊型1泊2日の自己負担は7,000円です。一見高く感じるかもしれませんが、助産師によるケア・夜間の赤ちゃんの見守り・施設内での休息という内容を含むことを考えると、民間の産後ケアサービスや産後ケアホテルに比べると公費負担で大幅に抑えられています。
また、渋谷区の費用は他の自治体と比べると高めの部類に入ります。千代田区や神戸市・大阪市など他の自治体では、同じ宿泊1回の自己負担がより低額に設定されているケースがあります(前述の自治体別比較参照)。
重要なのは、「料金が高いから使えない」ではなく、自分の自治体の制度を事前に確認した上で、妊娠中に登録を済ませておくことです。産後になってから「もっと早く知っていれば」という後悔をしないために、妊娠8か月になったら保健センターへの確認と申請手続きを行動の優先事項としてください。
ここから先は、申請に直結する実務です。
申請の具体的な手順(全形態共通)
産後ケア事業は市区町村ごとに手順が異なりますが、多くの自治体で共通するおおまかな流れは次の通りです。
全体の流れ
第1段階は「利用登録の申請」です。多くの自治体が妊娠28週(8か月)以降からの事前申請を推奨しています。保健センターの窓口・郵送・オンラインのいずれかで申請書を提出します。この段階では、利用する施設や日程は決めなくてよいことが多く、「登録しておく」という意味合いです。
第2段階は「承認通知の受領」です。申請後、おおむね1〜2週間で市区町村から「産後ケア事業利用登録承認決定通知書」(名称は自治体ごとに異なります)と「利用者カード」などが郵送されてきます。これが手元にあることで、実際の利用ができる状態になります。
第3段階は「施設への予約」です。承認後、利用したい施設や訪問型の担当助産師に直接連絡して日程を調整します。宿泊型は特に人気が高いため、早めに予約を入れることをおすすめします。希望の日程が取れない場合は複数の施設に問い合わせる方法もあります。
第4段階は「利用当日」です。施設に承認通知書・利用者カードを提示し、自己負担額を支払います。減免対象の場合は証明書が必要なことがあります。
第5段階は「利用後の手続き」です。自治体によってはアンケートへの協力が求められることがあります。また、追加で利用したい場合は上限日数・回数の残りを確認して予約します。
必要書類の正式名称と取得先
自治体ごとに様式・名称が異なりますが、多くの場合に必要になる書類の一覧です。
全世帯が提出するもの
「産後ケア事業利用(登録)申請書」——市区町村の保健センター窓口または公式ウェブサイトのダウンロードページから入手します。板橋区のように「産後ケア事業利用登録申請書」という正式名称の様式を設けている自治体が多くあります。
本人確認書類——マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど写真付きのものを使います。
母子健康手帳——妊娠届出の際に市区町村から交付されます。乳児の情報(生年月日・在胎週数・出生時の状況など)の確認に使われることがあります。
減免を受ける世帯が追加で提出するもの
住民税非課税世帯の場合:「市区町村民税(非)課税証明書(世帯全員分)」が必要です。市区町村の税務窓口または市民窓口で交付を受けます(マイナポータルからオンライン申請できる自治体もあります)。取得には1週間程度かかることがあるため早めに準備します。費用は数百円程度の手数料がかかることが多いです。
生活保護受給世帯の場合:「生活保護受給証明書」が必要です。担当のケースワーカーまたは福祉事務所に申請して交付を受けます。
中国残留邦人等支援給付受給世帯の場合:支援給付の受給を証明する書類が必要です。担当機関に確認します。
施設利用時に持参するもの
「産後ケア事業利用登録承認決定通知書(利用者証)」——これがないと自己負担の減額が適用されない場合があるため、必ず持参します。
母子健康手帳——施設での健康状態確認・記録に使います。
保険証(健康保険証またはマイナ保険証)——医療機関が施設の場合に求められることがあります。
入院・宿泊に必要な持ち物(着替え・タオル・産褥パッド等)——施設ごとに「持ち込みリスト」が異なるため、予約時に確認します。
帝王切開・早産・NICUを経た場合の申請の注意点
産後ケア事業は自然分娩に限らず、帝王切開・早産・NICU(新生児集中治療室)入院後でも利用できます。ただし、それぞれに注意点があります。
帝王切開後の場合
帝王切開の場合、術後の創傷(傷口)の管理が必要なため、退院後も傷の状態に注意が必要です。産後ケア事業の施設は医療行為を提供する場ではないため、創傷処置や抜糸が必要な状態では利用が難しい場合があります。退院時に担当医から「産後ケアは使えるか」を確認しておくことをおすすめします。
また、帝王切開後は経腟分娩より回復に時間がかかる場合があり、退院直後の宿泊型産後ケアへの移動・入所自体が身体的に辛いケースもあります。退院から1〜2週間、身体が落ち着いてから宿泊型を利用するか、まず訪問型を使うという選択肢も有効です。
早産・NICU入院後の場合
乳児がNICUに入院中は、母親が産後ケアを使いたくても乳児と同行できないため、宿泊型の産後ケアを使いにくい状況があります。この場合は乳児が退院してから、産後ケア事業の利用可能期間(産後1年以内)に入所するという計画になります。
早産では赤ちゃんの月齢制限(施設の受け入れ基準)の算定が修正月齢(実際の出産日ではなく出産予定日からの経過)で考えるべきケースもあります。施設に「早産です・NICU退院直後です」と伝えた上で受け入れの相談をすることをおすすめします。
自治体によっては、早産・NICU入院を経た場合に、通常の産後1年という対象期間を延長する柔軟な対応を認めているケースがあります。余裕をもって担当窓口に相談してください。
申請でつまずきやすいポイント
申請のタイミングを逃す
産後ケア事業でよくある失敗の第1位は、「産後になってから申請しようとして、疲弊して動けなくなる」というパターンです。申請から承認まで1〜2週間かかるため、退院直後に使いたい場合は妊娠中から準備が必要です。
具体的には、妊娠28週になったら以下を実施することを計画に入れてください。
- 居住市区町村の産後ケア事業の情報をウェブで確認する
- 申請書をダウンロードまたは保健センターで入手する
- 申請書を提出し、承認通知を受け取る
これだけで、産後に使える準備が整います。「申請書を出す」だけで施設を決める必要はないため、気軽に手続きを進めてください。
住民票のある自治体しか使えない
産後ケア事業は原則として、利用者が住民票を置いている市区町村の事業を使います。里帰り出産で実家に戻っている場合、実家の市区町村の事業は使えない場合があります(自治体間の調整ができる場合もありますが、事前に確認が必要です)。
産後は居住市区町村に戻ってから利用する、または産後すぐ里帰り先から戻ることを想定した計画を立てておくことが重要です。
施設ごとに月齢制限がある
宿泊型では、施設ごとに対象となる乳児の月齢(産後何か月まで)が設定されています。「産後6か月まで」「産後5か月未満まで」「産後4か月以内のみ」など施設によって異なります。
申請後に気がついても施設が利用できないということがないよう、希望する施設の月齢制限を事前に確認してから予約を入れてください。
承認通知を忘れずに持参する
承認通知書・利用者カードは施設でチェック時に提示するものですが、忘れがちなアイテムです。施設が「確認できない場合は全額実費負担」という運用をしている場合もあります。利用当日の持ち物リストに入れておいてください。
予算の有無を確認する
産後ケア事業の補助には年度予算があります。年度後半(秋以降)に予算が逼迫している自治体では、新規の利用登録受付を一時停止したり、利用回数を制限したりする場合があります。年度をまたぐ場合は次年度の状況を確認することも必要です。
複数ケースの費用シミュレーション
ここでは、異なる居住自治体・異なる世帯状況での費用イメージを比較します。いずれも2026年6月27日時点の各自治体公式情報に基づく試算であり、変更される場合があります。
ケース1:渋谷区在住の住民税課税世帯・宿泊型3回利用
渋谷区では宿泊型は1泊2日が基本です(初回7,000円、2日目以降は1日3,500円追加)。5日間の上限まで使う場合を計算してみます。
1泊2日(初回):7,000円
1泊2日(2回目・2泊3日扱いなら3日分):7,000円+3,500円=10,500円
という形になります。5日間を上限として分割利用する場合は合計での上限があります。1泊2日×2回+1泊=計5日分とすると、7,000円+7,000円+3,500円=17,500円が自己負担の目安です。ただし施設ごとの差額料金は含まない金額です。
住民税非課税世帯の場合は利用者負担が免除されるため、施設の差額料金・実費以外の自己負担はゼロになります。
ケース2:大阪市在住の住民税課税世帯・デイケア5回+アウトリーチ2回
大阪市のデイケア(通所型)は1回1,500円、アウトリーチ(訪問型)は1回500円です。
デイケア5回:1,500円×5回=7,500円
アウトリーチ2回:500円×2回=1,000円
合計:8,500円
これが実際の支払額の目安です(別途交通費等が発生します)。住民税非課税世帯ではデイケアが1,000円、アウトリーチが無料になるため、5回+2回の合計は1,000円×5=5,000円になります。
ケース3:神戸市在住の住民税非課税世帯・宿泊型4日間利用
神戸市の宿泊型は課税世帯3,000円/日・非課税世帯1,500円/日です(多胎なし)。4日間利用した場合は1,500円×4日間=6,000円の自己負担になります。
課税世帯であれば同じ4日間で3,000円×4日間=12,000円になるため、世帯区分によって倍の差が生じます。
ケース4:北九州市在住の課税世帯・宿泊型2日+通所型3日
北九州市の宿泊型は3,000円/日、通所型は1,000円/日です。
宿泊2日:3,000円×2=6,000円
通所3日:1,000円×3=3,000円
合計:9,000円(7日の上限内)
通算7日という上限の範囲であれば、宿泊・通所を組み合わせて利用することができます。
よくある誤解・つまずきポイント
「産後ケア事業は産後うつの人だけが使うもの」という誤解
かつては「心身の不調または育児不安がある者」が対象とされていたため、「自分は大丈夫」と思って利用しなかった方が多くいました。しかし現在は「産後ケアを必要とする者」へと対象が広がっており、体の回復中の誰もが使える事業になっています。「うつではないから使えない」と思い込まず、産後の回復期間に積極的に活用することが本来の使い方です。
「申請が難しい」という思い込み
産後ケア事業の申請は、実際には難しいものではありません。ほとんどの自治体で申請書が1〜2ページ程度で、記入事項も氏名・住所・出産予定日・利用希望の形態程度です。オンラインで申請できる自治体も増えています。難しいと思われる理由の多くは「情報が見つけにくい」という認知の問題であり、申請書自体は複雑ではありません。
「産後ケア施設は豪華なホテルで高い」という誤解
「産後ケアホテル」と呼ばれる高級民間施設と、市区町村が補助する産後ケア事業を混同するケースがあります。高級産後ケアホテルは1泊数万円になることもありますが、産後ケア事業で委託されている助産所・病院での宿泊ケアは、自己負担が数千円程度に抑えられています。両者は別物です。
「産後1年を過ぎても使える」という誤解
産後ケア事業の対象は「出産後1年を経過しない」女性と乳児です。1年を過ぎた場合は原則として対象外となります。産後6か月・産後11か月など後半になると利用できる施設が限られる場合もあります(宿泊型は産後4〜5か月が上限という施設も)。遅くとも産後3か月以内には利用を検討することをおすすめします。
「宿泊型は子どもと別々に過ごせる」という誤解
産後ケア事業の宿泊型は、「母子」がともに宿泊するケアです。子どもだけを施設に預けて母親は自宅で休む、という使い方はできません。母子同室でのケアが基本です(施設によって夜間の一時的な別室での見守りを行う場合はあります)。
「利用した翌年は使えない」という誤解
産後ケア事業の利用上限(宿泊7日・通所7回など)は、1回の出産ごとにリセットされます。2人目・3人目の出産時にはまた改めて申請して利用できます。ただし、年度をまたいだ場合は申請の更新が必要な自治体もあるため確認が必要です。
申請チェックリスト
産後ケア事業を利用するにあたって、準備・確認すべき項目を一覧にまとめます。
妊娠中に行うこと(妊娠28週以降)
- 居住する市区町村の公式サイトで「産後ケア事業」のページを見つける
- 実施している形態(宿泊型・通所型・訪問型)を確認する
- 委託施設の一覧を入手し、気になる施設に問い合わせる(月齢制限・提供内容・予約方法)
- 利用申請書を入手する(ダウンロードまたは窓口で受領)
- 住民税非課税世帯などの場合は証明書を入手して添付する
- 申請書を提出する(窓口・郵送・オンライン)
- 承認通知書が届いたことを確認する(届かない場合は窓口に問い合わせる)
出産後・退院後に行うこと
- 承認通知書・利用者カードの保管場所を確認する
- 利用したい施設に連絡して日程を予約する(退院前に入れることも可能)
- 施設の持ち物リストを確認する
- 利用当日の支払い金額を確認しておく(施設に確認、差額料金含む)
利用当日の持ち物
- 産後ケア事業利用登録承認決定通知書(利用者証)——絶対に忘れずに
- 母子健康手帳
- 保険証(健康保険証またはマイナ保険証)
- 現金(自己負担額+念のための余裕分)
- 着替え・タオル・産褥パッド・乳児用品(施設の指示に従う)
- 乳房トラブルや困っていることのメモ(後でケアしてもらいやすくなります)
利用後の確認
- 残りの利用可能回数・日数を確認する
- 次回の予約を入れるかどうかを検討する
- 施設からアドバイスを受けた内容をメモに残す
よくある質問(FAQ)
産後ケア事業について寄せられやすい疑問をまとめます。制度の詳細・最新の要件は変わることがあるため、最終的な判断の前に市区町村の窓口またはウェブサイトで確認をしてください。
Q1. 産後ケア事業は住民票がある市区町村しか使えないのですか。
原則として、住民票のある市区町村の事業を利用する仕組みです。里帰り出産中で実家が別の市区町村にある場合、住民票がある自治体と実家の自治体の間で調整が必要になります。自治体によっては広域利用を認めているケースもありますが、事前に住民票のある市区町村の担当窓口に相談することをおすすめします。
Q2. 妊娠中に申請したが、出産が予定より早かった場合も使えますか。
早産になった場合でも、出産後1年以内という条件を満たしていれば産後ケア事業を利用できます。ただし、早産の乳児は月齢・修正月齢の関係で、施設の受け入れ月齢制限に注意が必要です。施設によっては早産児の受け入れに対応していない場合があります。また、早産後の母子は入院が長引くことも多いため、退院後の状況を踏まえて窓口に相談することをおすすめします。
Q3. 双子(多胎)の場合はどうなりますか。
多胎の場合も産後ケア事業を利用できます。神戸市や一部の自治体では「多胎加算」として、乳児1人追加するごとに費用が加算される設定になっています。ただし、施設によっては多胎の受け入れを行っていない場合もあるため、予約時に確認が必要です。訪問型の場合は対応時間を長めに設定してもらえることがあります。
Q4. シングルマザーや未婚の場合も使えますか。
婚姻状況は産後ケア事業の対象要件に含まれていません。市区町村に住民票があり、出産後1年以内の乳児を持つ母親であれば、婚姻状況にかかわらず利用できます。むしろ、家族のサポートが受けにくい状況であることは、産後ケア事業の利用ニーズが高い理由の一つとして挙げられています。
Q5. 妊娠中に申請した後、転居した場合はどうなりますか。
転居によって住民票が別の市区町村に移った場合、元の市区町村の事業は使えなくなります。新しい市区町村で改めて申請が必要になります。転居直後は引き継ぎ手続きの余裕がない場合もあるため、妊娠中の転居が見込まれる場合は転居後に新しい自治体での申請を優先してください。
Q6. 産後ケア事業を使うと「福祉のお世話になっている」という記録が残りますか。
産後ケア事業は福祉の「給付」ではなく「予防的な子育て支援」として位置づけられています。利用した記録は市区町村の保健業務として管理されますが、福祉関係の支援記録には通常含まれません。利用が将来の生活に影響することはありません。
Q7. 産後ケアを使った後、追加で延長はできますか。
多くの自治体では利用上限が設けられており(宿泊型7日・通所7回など)、原則としてこの範囲内での利用となります。早産やNICU(新生児集中治療室)入院後など特別な事情がある場合に、市区町村の判断で延長を認めるケースがあります。上限に近づいてきたら、余裕をもって窓口に相談してください。
Q8. 産後1年を過ぎても育児が不安な場合はどうすればよいですか。
産後ケア事業の対象期間は産後1年以内ですが、子育て支援の窓口は産後1年を過ぎても使えます。乳幼児健診(1歳6か月健診・3歳健診など)の機会に保健師に相談することが最初のステップです。子育て支援センター・こども家庭センターでも相談を受け付けています。育児不安が強い場合は、かかりつけの小児科や産婦人科に相談することも一つの手段です。
Q9. 利用した費用の確定申告(医療費控除)はできますか。
産後ケア事業の自己負担額は医療費控除の対象になる場合とならない場合があります。施設が医療機関(病院・診療所・助産所)である場合は医療費控除の対象になる可能性がありますが、産後ケアに特化したサービス施設の場合は対象にならないことがあります。医療費控除の適用については、国税庁のウェブサイトまたは最寄りの税務署に確認することをおすすめします。
Q10. 「産後ケア施設」と「産後ケア事業の委託施設」は同じものですか。
違います。民間の「産後ケア施設」「産後ケアホテル」は、市区町村の産後ケア事業とは別に運営されている民間サービスです。市区町村の補助を受けていないため、費用は1泊あたり数万円になることがあります。市区町村の産後ケア事業の委託施設は、市区町村と協定を結んだ施設であり、公費補助によって自己負担が数千円に抑えられています。申し込む前に、「市区町村の事業」なのか「民間サービス」なのかを必ず確認してください。
Q11. 産後ケア事業と産前産後サポート事業の両方を同時期に使えますか。
重複して利用できます。産前産後サポート事業(孤立防止・相談支援)と産後ケア事業(専門的ケア)は目的・対象が異なるため、どちらも利用が認められています。保健センターでの相談(産前産後サポート系)と施設での宿泊ケア(産後ケア事業)を組み合わせることが、よりきめ細かなサポートにつながります。
Q12. 産後うつのスクリーニング(EPDS)でスコアが高かった場合はどうすればよいですか。
EPDSは産後うつの確定診断ではなく、スクリーニング(ふるい分け)のためのツールです。スコアが高かった場合は、保健師や担当医が面談や専門機関への紹介を提案します。産後ケア事業は産後うつの「予防・軽減」には適しています。ただし、精神疾患が疑われる場合は産後ケア施設だけの対応には限界があり、精神科医療機関との連携が必要になります。「死にたい気持ちがある」「自分や赤ちゃんを傷つけそう」という状態がある場合はすぐに担当医・保健師または緊急の相談窓口に連絡してください。
Q13. 産後ケア事業を利用している間、上の子(兄弟姉妹)はどうすればよいですか。
宿泊型は「母親と乳児」が対象のため、原則として上の子(兄弟児)を一緒に連れて入所することは難しいケースが多いです。ただし、令和7年度(2025年度)から「兄弟児受け入れ加算」が設けられており、一定の条件を満たして兄弟児を受け入れる施設に対して補助が加算される仕組みになっています。兄弟児を連れての利用を希望する場合は、予約時に施設に相談してください。通所型では施設によって対応が異なります。
訪問型(アウトリーチ型)は自宅でのケアのため、上の子が自宅にいる状況でのケアになります。助産師が訪問している間の上の子の対応が必要な場合は、ファミリーサポートや育児支援ヘルパーなどと組み合わせる方法もあります。
Q14. 産後ケア事業で「乳腺炎」は対応してもらえますか。
軽度の乳房トラブル(乳管詰まり・うっ滞性乳腺炎の初期)であれば、産後ケア施設の助産師が乳房マッサージ・授乳指導・ポジショニングの改善などを通じてケアできるケースがあります。
ただし、感染性乳腺炎(発熱・膿が出るなど炎症が進行している状態)は医療行為が必要であり、産後ケア事業の対象ではなく、医療機関の受診が優先されます。乳房の痛みや張りがある場合は、施設に「現在の状態」を正直に伝えた上で、受け入れ可能かどうかを確認してください。
Q15. 産後ケア事業を使いたいが、パートナーや家族が「そんなもの必要ない」と言う場合はどうすればよいですか。
産後ケア事業は母親本人の意思で申請・利用できる公的サービスです。家族の同意は申請の要件ではありません。ただし、宿泊型を利用する際は自宅を一時的に離れることになるため、残る家族との調整が現実的に必要になる場合があります。
「産後のケアは医療と同様に必要なもの」という社会的な認識の変化がまだ追いついていないことも、家族の理解が得られにくい背景の一つです。市区町村の保健師から直接説明を受けることで、家族への説明が得やすくなる場合もあります。妊娠中の母親学級・両親学級に二人で参加した際に産後ケア事業の情報を共有するのも一つの方法です。
産後ケア事業と育児給付の比較一覧
産後ケア事業に関連して、出産前後に使える制度を整理して比較しておきます。
| 制度名 | 支給形式 | 主な財源 | 申請窓口 | 産後ケア利用料との関係 |
|---|---|---|---|---|
| 産後ケア事業 | 現物サービス(ケア提供) | 公費(国・都道府県・市町村) | 市区町村保健センター等 | この記事の対象 |
| 出産育児一時金(No.12) | 現金給付(原則50万円。令和5年4月1日以降の出産) | 健康保険 | 健康保険組合・協会けんぽ等 | 産後ケア利用料には充当不可 |
| 育児休業給付金(No.04) | 現金給付(休業中の所得保障) | 雇用保険 | ハローワーク(事業主経由) | 産後ケア利用料には充当不可 |
| 産前産後サポート事業 | 現物サービス(相談支援) | 公費(国・市町村) | 市区町村保健センター等 | 別制度として重複利用可 |
(各制度の詳細は本シリーズの各回を参照。確認日:2026年6月27日)
産後ケア事業は上記の給付制度と「重複して使える」制度です。出産育児一時金で出産費用を賄い、育児休業中に産後ケアを利用するというケースが最も一般的な活用パターンです。産後ケア事業の自己負担額は、育児休業給付金の受給中に家計から支出することができます。
産後ケア事業の今後——マイナポータル活用と広域化の展望
産後ケア事業は現在も進化が続いている制度です。今後の方向性として注目されている点をいくつか挙げます。
マイナポータルを活用した母子保健のデジタル化が進められています。妊娠届・産後ケア事業の申請・乳幼児健診の記録などがマイナポータルに統合されるイメージで整備が進んでいます。将来的には申請手続きが一元化され、転居時の自治体間での情報引き継ぎもスムーズになることが期待されています。
2025年4月から都道府県が1/4の費用を負担するようになったことで、都道府県による広域調整が強化される方向にあります。複数の市町村をまとめてカバーする「広域産後ケアネットワーク」のような仕組みが整備されれば、委託施設の少ない地域の方が近隣自治体の施設を使いやすくなることが期待されます。
産後ケア事業の利用率を上げるための認知度向上も課題とされています。妊婦健診の場での情報提供強化や、SNSを使った周知活動など、自治体ごとにさまざまな取り組みが見られます。
制度の拡充が続いている一方で、「利用したくても施設が足りない」という供給側の問題の解決はまだ途上です。助産師や産科看護師の養成・確保、産科施設の維持などを含む包括的な取り組みが求められています。
産後ケア事業をより多くの方が使える環境を整えるためには、制度側の充実だけでなく、「使っていいんだ」という社会的な意識の変化も重要です。産後のケアは育児の「贅沢」ではなく、必要な回復と安全のためのものです。利用を「甘え」と感じる必要はなく、専門職のサポートを受けることが、母子ともに健やかな産後を過ごすことにつながります。
居住地の制度を確認し、妊娠中に申請を済ませておくことで、産後の最もサポートが必要な時期に制度を使える状態にしておいてください。
出典一覧(URL・確認日)
本記事は以下の一次情報を確認した上で執筆しています。
こども家庭庁「産前・産後サポート事業ガイドライン 産後ケア事業ガイドライン(令和7年3月改定版)」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0ac0f291-e4c2-475d-83fe-f1c39a6e551e/3c162d34/20250404_policies_boshihoken_tsuuchi_2025_19.pdf
確認日:2026年6月27日
こども家庭庁「産後ケア事業について(第4回こども家庭審議会成育医療等分科会・令和6年11月20日 資料2-1)」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0238af12-b583-4c09-9a67-0f2f7cb19c1c/028b6e96/20241120_councils_shingikai_seiiku_iryou_0238af12_04.pdf
確認日:2026年6月27日
こども家庭庁「令和8年度母子保健対策関係予算案の概要(令和8年1月14日)」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/ff38becb-bbd1-41f3-a95e-3a22ddac09d8/32ab1a53/20260114_policies_boshihoken_172.pdf
確認日:2026年6月27日
こども家庭庁「母子保健の主な動き(通知・事務連絡等)2025年」
https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/tsuuchi/2025
確認日:2026年6月27日
千代田区「産後ケア事業(宿泊型、通所型、訪問型)」
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kosodate/kosodate/ninshin/sango.html
確認日:2026年6月27日
渋谷区「産後ケア事業(妊娠・出産に関する相談・学級)」
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kodomo/ninshin/ninshin-sodan/sango_care.html
確認日:2026年6月27日
目黒区「産後ケア事業(宿泊型)」
https://www.city.meguro.tokyo.jp/chiikihoken/kosodatekyouiku/ninshin/syukuhaku81.html
確認日:2026年6月27日
神戸市「産後ケア事業(宿泊・通所)」
https://www.city.kobe.lg.jp/a86732/kosodate/maternity/consult/sangokea.html
確認日:2026年6月27日
大阪市「産後ケア事業について」
https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000370578.html
確認日:2026年6月27日
北九州市「産後のお母さんを支援します(産後ケア事業)」
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/11700307.html
確認日:2026年6月27日
板橋区「産後ケア事業」
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kosodate/ninshin/ninshin/1051233.html
確認日:2026年6月27日
日本経済新聞「産後ケア事業、自治体への補助上限を撤廃 こども家庭庁」(2024年5月)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2297U0S4A520C2000000/
確認日:2026年6月27日
こども家庭庁「産後ケア事業について(第2回こども家庭審議会成育医療等分科会・令和5年11月22日 資料1-2)」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/ce28e632-7504-4f83-86e7-7e0706090e3f/1d73c9a2/20231122_councils_shingikai_seiiku_iryou_tWs1V94m_04.pdf
確認日:2026年6月27日
日本産後ケア協会「産前・産後サポート事業と産後ケア事業、何が違う?」
https://sango-care.jp/news/news-5967/
確認日:2026年6月27日
厚生労働省「出産育児一時金等について」(令和5年4月から原則50万円に引き上げ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shussan/index.html
確認日:2026年6月27日
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成代行・医療的助言・法律的助言を行うものではありません。産後ケア事業の詳細・最新の要件・申請手続きについては、居住する市区町村の公式サイトまたは担当窓口(保健センター・子育て支援担当課など)に直接ご確認ください。
制度の金額・要件・対象者は改定されることがあります。本記事に記載した金額・利用回数などは2026年6月27日時点の確認情報であり、現時点では変更されている可能性があります。
産後のメンタルヘルスについては、専門の医療機関・助産師・保健師にご相談ください。本記事の情報をもって医療的な判断・行動の根拠にしないようご注意ください。
本記事は制度の一般的な情報提供にとどまるものであり、特定の行政機関・施設・サービスの利用を推奨するものではありません。