未熟児養育医療給付制度の実務ガイド(小さく生まれた赤ちゃんの入院医療費を公費でカバーする仕組み)
本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・申請手続きはいずれも変更されることがあるため、申請前に必ず各市区町村の窓口または公式サイトで最新情報をご確認ください。本記事は情報提供を目的とするものであり、個別の申請代行・書類作成代行・法律的助言は行いません。
この記事が整理すること
小さく生まれたお子さんがNICU(新生児集中治療室)などに長期入院したとき、医療費はどのような仕組みでカバーされるのか、そして保護者が実際に動かなければならない手続きは何か。この記事はその2点を軸に整理します。
こうした状況に直面されているご家族は、お子さんの容態への不安と手続きの多さが重なって、どこから手をつければよいかわからなくなることがあります。この記事を読むことで、制度の全体像と申請の流れが整理でき、病院のソーシャルワーカーや窓口担当者との会話をスムーズに進める手がかりになることを目指しています。
対象の読者は、主に以下のような方です。
- お子さんが2,000g以下で生まれ、NICUや保育器での入院治療を受けている、またはこれから受ける予定のご家族
- 体重は2,000gを超えていても、医師から「入院して養育が必要」と説明されたご家族
- 双子・三つ子など多胎のお子さんがいるご家族
- 子ども医療費助成との関係や「実質いくらかかるのか」を知りたい方
- すでに退院したが、制度を使えたのかどうかを後から確認したい方
整理する制度は「未熟児養育医療給付」(母子保健法第20条)の1本です。子ども医療費助成(各自治体の小児医療費助成)とは別の制度であり、高額療養費(健康保険)とも仕組みが異なります。この記事では3つの制度の関係を整理した上で、養育医療を中心に手順・書類・計算例を詳しく解説します。
制度の全体像
未熟児養育医療とは何か
未熟児養育医療は、母子保健法第20条に根拠を持つ制度です。市町村が実施主体となり、「入院して養育が必要な未熟児」の医療費を公費で負担します。給付を受けた保護者は、世帯の市町村民税額に応じた自己負担(徴収金)を市町村に納付しますが、この自己負担分はさらに自治体の子ども医療費助成でカバーされることが多く、結果的に窓口での実質負担がゼロになるケースが多くみられます。
制度の枠組みをひと言でいうと、「健康保険→養育医療→子ども医療費助成」という3層の仕組みが順番に機能し、お子さんの医療費の全体をカバーするように設計されています。それぞれの層の役割と順序が重要なポイントです。
「未熟児」の定義と法律上の根拠
母子保健法第6条は、「未熟児」を「身体の発育が未熟のまま出生した乳児であつて、正常児が出生時に有する諸機能を得るに至るまでのものをいう」と定めています。体重のみで決まるものではなく、身体機能の成熟度が基準の中心に置かれている点が特徴です。
第20条(養育医療)は次のように規定しています。市町村は、「病院又は診療所への入院を必要とする未熟児」に対し、養育に必要な医療の給付またはその費用を支給することができる、とされています。給付の内容は、診察・薬剤や治療材料の支給・医学的処置・手術その他の治療・入院および療養に伴う看護・移送です。市町村は、都道府県知事が指定した医療機関(指定養育医療機関)に委託して給付を行います。
制度の基本情報(一覧)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法 | 母子保健法第20条 |
| 実施主体 | 市区町村 |
| 対象者 | 満1歳未満の未熟児で入院養育を必要とするもの |
| 対象要件 | 体重2,000g以下、または医師が認めた5症状基準のいずれか |
| 給付内容 | 指定養育医療機関での保険診療自己負担分・入院時食事療養費自己負担分 |
| 給付対象外 | 差額ベッド代・おむつ代・保険外診療 |
| 給付期間 | 入院開始日〜退院日(最長1歳の誕生日の前々日まで) |
| 自己負担 | 世帯の市町村民税額に応じた階層区分で決定 |
| 申請窓口 | お住まいの市区町村(保健センター・子ども家庭課・区役所等) |
| 申請タイミング | 入院中(できるだけ早期に) |
対象となる2つの条件
養育医療の対象になるには、次の2つの条件のいずれかを満たすことが必要です。
条件1は、出生時体重が2,000g以下であることです。この条件はシンプルで、体重の計測値だけで判断されます。在胎週数は条件の明文には含まれていませんが、実際には低体重と早産は密接に関連しています(横浜市のように「在胎週数37週未満の早産児」を別途対象に加えている自治体もあります。自治体の実施要領で確認することをおすすめします)。
条件2は、体重が2,000gを超えていても、医師が「入院養育を必要と認めた」場合の5症状基準です。この症状基準は昭和62年7月31日付の通知(児発第668号)に定められており、以下の5カテゴリーから構成されます。
第1カテゴリーは一般状態です。「運動不安または痙攣があるもの」「運動が異常に少ないもの」がこれにあたります。生後まもない赤ちゃんの動きが乏しい場合や、震えや痙攣がある場合が対象になります。
第2カテゴリーは体温です。「体温が摂氏34度以下であるもの」が該当します。正常な新生児の体温は通常36度台半ばから37度台前半であり、34度以下は低体温として深刻な状態とされます。
第3カテゴリーは呼吸器・循環器系です。チアノーゼの持続(口唇や末梢の青みが続く状態)、呼吸数の異常(速すぎる・遅すぎる)、出血傾向などがこのカテゴリーに含まれます。
第4カテゴリーは消化器系です。排便異常、繰り返す嘔吐、消化器からの出血に関する症状が含まれます。
第5カテゴリーは黄疸です。「生後数時間以内に現れる黄疸、または異常に強い黄疸があるもの」がこれにあたります。生後2〜3日頃に現れる生理的黄疸とは異なる、早期発現・高度の黄疸が対象です。
5つのカテゴリーのどれか1つでも当てはまり、医師が入院養育を必要と認めれば、体重が2,000gを超えていても対象となります。医師の判断(意見書)が制度適用のカギになる点が重要です。
「出生体重2001g以上で症状基準に該当するケース」について
体重2,000gをわずかに超えているが症状基準には当てはまる、というケースで「うちの子は対象になるの?」と疑問に思われる方がいます。この場合、5症状カテゴリーのいずれかを満たし、かつ医師が「入院養育が必要」と判断して養育医療意見書を記入した場合には、体重2,001g以上であっても対象になります。現場では、NICUや新生児病棟の担当医が状態を診て意見書を作成するかどうかを判断します。保護者から医師に「意見書を書いてもらえますか」と相談することは可能です。
【無料サンプル】体重1,800gで生まれた赤ちゃんのNICU入院1か月分を1ケース、手順・金額・窓口まで全部見せます
このケースの前提
生後すぐにNICUへ入院したお子さんについて、1か月分の医療費がどのような制度でカバーされ、保護者の実際の負担はどうなるのかを、手順・金額・窓口まで順番に解説します。
前提となる条件は次の通りです。
- 出生体重:1,800g
- 在胎週数:33週
- 入院先:指定養育医療機関であるNICUを備えた総合病院
- 入院期間:出生後からちょうど30日間(1か月)
- 健康保険:父親が社会保険(協会けんぽ)加入。乳幼児医療証取得済みまたは取得予定
- 世帯の市町村民税(所得割額):約30,000円(D2階層に相当する水準と仮定)
- 居住地:子ども医療費助成(乳幼児医療費助成)で0歳は自己負担ゼロの自治体
ステップ1:健康保険が1次的に機能する
医療費の総額がどれだけかかっても、まず健康保険が適用されます。NICUでの保険診療であれば、医療費の7割(就学前のお子さんの場合)が健康保険から支払われます。
NICU入院1か月の医療費総額は、病院の施設基準や処置の内容によって大きく異なりますが、重症度が高い場合は月100万〜300万円以上になることもあります。このケースでは仮に1か月の保険診療費が100万円だったとして計算します。
健康保険の自己負担割合は、0歳の乳幼児(義務教育就学前)は2割です。
100万円 × 20% = 20万円(健康保険適用後の自己負担)
ただし、20万円をそのまま家庭が負担するわけではありません。次の養育医療が機能するからです。
ステップ2:養育医療給付が2次的に機能する
養育医療は、健康保険を適用した後の自己負担分(上の例では20万円)を公費でカバーする制度です。ただし保護者には「徴収金(自己負担)」として一定額の負担があります。
このケースの世帯の市町村民税所得割額は約30,000円で、D2階層(所得割額15,001円〜21,000円)付近と仮定します。国の通知に基づく各自治体の規則では、D2階層の徴収基準月額は概ね10,800円とされています(金額は自治体によって若干異なる場合があります。2026年6月27日時点・要確認)。
入院が30日間(1か月)であれば、日割り計算で月額がそのまま適用されます。
養育医療の自己負担(徴収金)=10,800円(1か月・D2階層の例)
残りの20万円 − 10,800円 = 189,200円が養育医療給付から支出されます。
保護者が窓口で支払う(または後に市町村に納付する)のは、原則として10,800円です。ただし次のステップが機能するとこれもゼロになります。
ステップ3:子ども医療費助成が3次的に機能する(実質ゼロになる自治体)
多くの自治体では、0歳児(乳幼児)の医療費を「自己負担ゼロ」で助成しています。この助成は、健康保険適用後の自己負担だけでなく、養育医療の徴収金(保護者負担分)もカバーの対象になることがあります。
居住地がそのような自治体(東京都内の多くの区市・大阪市・名古屋市等)の場合、養育医療の徴収金10,800円も子ども医療費助成で支払われるため、保護者が実際に窓口で支払う金額はゼロになります。
ただしこの仕組みは自治体によって異なります。子ども医療費助成の自己負担額・助成の上限・対象年齢は自治体ごとに設定されているため、必ずお住まいの市区町村に確認することが必要です。
また、差額ベッド代・おむつ代・面会のための交通費・駐車場代・食事代(付き添い家族分)は制度の対象外であり、これらは自費で負担します。
ステップ4:申請の手順(入院中に動く)
費用のカバーが最大限機能するためには、入院中に申請手続きを完了させることが重要です。退院後では意見書の取得が難しくなる場合があります。
手順は次の通りです。
まず、入院先の病院(担当医または医療ソーシャルワーカー)に「養育医療を申請したい」と伝え、養育医療意見書(第2号様式)の記入を依頼します。意見書は医師が記入する書類で、入院養育の必要性と診断内容が記載されます。
次に、お住まいの市区町村の担当窓口(保健センター・子ども家庭課・区役所こども家庭支援課等)に電話または訪問し、必要書類一式を確認します。申請書(第1号様式)と世帯調書は窓口でもらえます。
必要書類がそろったら、窓口に提出します(郵送申請を認めている自治体もあります。電子申請(マイナポータル経由)が可能な自治体も増えています)。
申請が受理されると、市区町村から「養育医療券」が発行されます。この券を入院先の病院に提出することで、病院側の請求の流れが変わり、保護者への直接請求分が養育医療の仕組みで処理されます。
申請から養育医療券の発行まで数日〜1週間程度かかることがあります。入院直後は容態対応で手がまわらないこともありますが、できるだけ早期に動くことで遡及処理がスムーズになります。
ステップ5:申請窓口の具体例
| 自治体 | 窓口名 | 申請方法 |
|---|---|---|
| 東京都江戸川区 | 各健康サポートセンター | 窓口または電子申請(ぴったりサービス) |
| 横浜市 | 区役所こども家庭支援課 | 窓口・郵送・アプリ(パマトコ) |
| 大阪市 | 各区保健福祉センター(郵送先:大阪市保健所管理課) | 窓口または郵送 |
| 札幌市 | 各区の健康・子ども課(10か所) | 窓口 |
| 京都市 | 各区役所・支所保健福祉センター子どもはぐくみ室 | 窓口または郵送 |
| 仙台市 | 各区区役所保育給付課 | 窓口 |
窓口の名称は自治体・年度によって変わることがあります。電話で確認してから来庁することをおすすめします。
これが1か月入院・D2階層の世帯を例にした、申請から給付までの一連の流れです。自己負担が最大でも月1万円台に抑えられ、子ども医療費助成が充実した自治体では実質ゼロになることが多い——この仕組みを理解した上で、続きの実務詳細へ進みます。
ここから先は、申請に直結する実務です。
制度の法的根拠と歴史的背景を詳しく
母子保健法が制定された背景
母子保健法は昭和40年(1965年)に制定されました。当時の日本では、出生直後に亡くなる乳児の数(乳児死亡率)が今よりも高く、特に低出生体重児(未熟児)のケアが医療上の課題でした。制定当初から第20条に「養育医療」の規定が置かれ、国・都道府県・市町村が連携して未熟児の医療費を公費で負担する仕組みが設けられました。
2013年(平成25年)には、児童福祉法の改正によって養育医療の実施主体が「都道府県・指定都市・中核市」から「市区町村」に移管されました。これにより、より住民に近い市区町村の窓口で申請・相談ができるようになりました。
昭和62年通知が今も現役である理由
養育医療の対象となる5症状基準は、昭和62年(1987年)7月31日付の通知(児発第668号「未熟児養育事業の実施について」)に定められており、2026年時点でも基本的な枠組みは変わっていません。医療技術は格段に進歩しましたが、「生活力が特に薄弱」な状態を判断するための臨床的な基準として、この通知の内容が各自治体の実施要綱に引き継がれています。
ただし、医療の現場では超低出生体重児(1,000g未満)や超早産児(在胎22〜24週)のケアが標準化され、これらの乳児が対象となるケースが増えています。制度の文言は昭和62年のままでも、実際の対象範囲は時代とともに広がっています。
2013年の移管以降の変化
市区町村への移管後、手続きの窓口が身近になった一方で、自治体ごとの取り扱いの差が生じやすくなりました。たとえば、子ども医療費助成との連携の仕方(養育医療の徴収金を子ども医療費助成でカバーするかどうか)は自治体ごとに運用が異なります。また、電子申請(マイナポータル経由のぴったりサービス等)に対応しているかどうかも自治体によります。
5症状基準を具体的な臨床像と照らして理解する
5症状基準は、医師が判断するものですが、保護者がその内容を知っておくと、担当医との会話がよりスムーズになります。また、体重が2,000gを超えているお子さんの場合、「うちの子は基準に当てはまるか」を考える材料になります。
一般状態:運動の異常
第1カテゴリーは「一般状態」で、「運動不安や痙攣があるもの」「運動が異常に少ないもの」が基準です。
「運動不安」とは、手足がひきつるように震えたり、体全体が小刻みに動いたりする状態を指します。新生児の神経系はまだ未熟で、血糖値の低下・電解質の異常・低酸素・感染症などが原因で運動異常が起こることがあります。
「運動が異常に少ない」とは、刺激に対して反応が乏しく、ぐったりしている状態です。新生児は通常、手足を活発に動かしており、刺激に反応しますが、状態が悪くなると反応が鈍くなります。これを医師は「筋緊張低下(hypotonia)」と呼ぶことがあります。
体温:34度以下の低体温
第2カテゴリーは「体温」で、「摂氏34度以下のもの」です。
正常な新生児の体温は36.5度〜37.5度程度です。未熟な赤ちゃんは自分で体温を保つ能力(体温調節機能)が未発達なため、周囲の温度の影響を受けて体温が急激に下がることがあります。34度以下の低体温は代謝・循環・呼吸のすべてに悪影響を及ぼす危険な状態であり、保育器や暖かい環境での管理が不可欠です。
呼吸器・循環器:チアノーゼと呼吸の異常
第3カテゴリーは「呼吸器・循環器系」で、チアノーゼの持続、呼吸数の異常、出血傾向などが含まれます。
チアノーゼとは、口唇・爪床・皮膚が青みがかった色(紫がかった色)になる状態で、血中の酸素が不足していることを示します。健康な新生児でも生後直後に一時的なチアノーゼが出ることがありますが、数分以内に消えるのが普通です。それが持続する場合は心疾患・肺疾患・感染症等の可能性があり、入院管理が必要です。
呼吸数の異常には、「多呼吸(呼吸が速い)」と「無呼吸発作(呼吸が一時的に止まる)」の両方が含まれます。新生児の正常な呼吸数は1分間に40〜60回とされており、これを大幅に超えたり、20秒以上呼吸が止まる無呼吸が繰り返される場合が対象となります。
消化器:嘔吐・排便・出血
第4カテゴリーは「消化器系」で、繰り返す嘔吐・排便異常・消化管出血が含まれます。
未熟な消化器は、消化・吸収・排泄のすべてが未発達です。繰り返す嘔吐は哺乳力の低下・腸管の異常(腸閉塞・壊死性腸炎)のサインである場合があります。壊死性腸炎(NEC)は早産低出生体重児に起こりやすい重篤な消化器疾患で、手術が必要になることもあります。消化管からの出血も緊急性の高い状態です。
黄疸:早期発現または高度の黄疸
第5カテゴリーは「黄疸」で、「生後数時間以内に現れるもの、または異常に強い黄疸のあるもの」です。
新生児黄疸には2種類あります。生後2〜3日頃に出る「生理的黄疸」は、多くの新生児に起こる一時的なもので自然に消えます。一方、生後数時間以内に現れる黄疸(早発黄疸)は溶血性疾患(ABO不適合・Rh不適合等)が原因のことが多く、迅速な治療が必要です。また、黄疸の強さ(ビリルビン値)が高くなりすぎると、核黄疸(脳への障害)のリスクがあるため、光線療法や交換輸血が必要になることがあります。
申請に必要な書類の正式名称・取得先・記入上の注意
申請書類の全一覧
市区町村によって若干の差はありますが、養育医療給付申請に必要な書類は概ね次の6種類です。記入に迷いやすい箇所と取得先も合わせて説明します。
第1の書類は「養育医療給付申請書(第1号様式)」です。これは保護者が記入する申請書で、お子さんの氏名・生年月日・住所・保険情報・指定養育医療機関の名称などを記入します。様式は市区町村の窓口でもらえる他、多くの自治体でウェブサイトからダウンロードできます。記入時の注意点として、健康保険の種別(社会保険・国民健康保険・共済等)を正確に記入する必要があります。また、住民票と現住所が異なる場合は事前に住民票の状況を確認しておくと手続きがスムーズです。
第2の書類は「養育医療意見書(第2号様式)」です。これは入院先の担当医師が記入する書類で、診断名・入院の必要性・生活力の状況(5症状基準への該当状況)などが記載されます。保護者が直接記入することはなく、医師が作成します。病院の医事課や病棟の担当者に「養育医療を申請したいので意見書を作成してもらえますか」と伝えると対応してもらえます。意見書は入院中に作成してもらう必要があり、退院後では取得が困難になる場合があるため、入院が確定したらできるだけ早く依頼することが重要です。
第3の書類は「世帯調書(第3号様式)」です。世帯の構成員(氏名・続柄・生年月日・職業)と扶養義務者の状況を記入します。自己負担額の算定(階層区分)に使用される書類です。住民票を参照しながら記入すると正確に書けます。
第4の書類は「健康保険の資格確認書類」です。お子さんが加入している健康保険の被保険者証(または健康保険資格確認書)のコピーが必要です。お子さんが生まれたばかりで健康保険証の手続き中の場合は、「加入手続き中である旨」を窓口で説明すると柔軟に対応してもらえることが多いです(後日コピーを提出する形をとる自治体もあります)。
第5の書類は「マイナンバー確認書類・本人確認書類」です。2016年(平成28年)1月からマイナンバーの利用が開始されており、申請書へのマイナンバー記入と、本人確認(マイナンバーカード・通知カード+運転免許証等)が必要になっています。
第6の書類は「市民税(市町村民税)の課税状況確認書類」です。自己負担額の階層区分を判定するために使います。同一市区町村に住民登録があり、自治体が税情報を参照できる場合は提出不要のケースもあります。非課税の場合はその旨の証明書(課税証明書・非課税証明書)を取得します。証明書は通常、住民税を申告した年度の6月以降に市区町村の税務課で発行してもらえます(発行手数料は数百円程度)。
その他、自治体によっては委任状・同意書・誓約書の提出を求める場合があります。また、乳幼児医療証(子ども医療費助成の受給者証)を申請書と一緒に提出するよう求める自治体もあります(京都市の例)。
書類の取得先まとめ
| 書類名 | 取得先 |
|---|---|
| 養育医療給付申請書(第1号様式) | 市区町村の窓口またはウェブサイト |
| 養育医療意見書(第2号様式) | 入院先の担当医師(病院内で完結) |
| 世帯調書(第3号様式) | 市区町村の窓口またはウェブサイト |
| 健康保険資格確認書類 | 加入している健康保険の保険者(コピー) |
| マイナンバー確認書類 | 手元のマイナンバーカードまたは通知カード |
| 市区町村民税課税証明書 | お住まいの市区町村の税務課(6月以降) |
自己負担(徴収金)の仕組みと階層区分の詳細
階層区分とは何か
養育医療の自己負担は、世帯全員の市町村民税(所得割額)を合算した額に応じて決まります。これを「階層区分」と呼び、A・B・C・D(D1〜D15)の区分に分けられています。国が定める通知(昭和62年通知に基づく徴収基準額表)を各自治体が条例・規則として実施しています。
階層区分は大きく4つのカテゴリーに分かれます。
A階層は生活保護受給世帯で、徴収基準月額は0円です。
B階層は市町村民税非課税世帯(所得税が非課税の世帯)で、徴収基準月額は2,600円です(自治体確認値・2026年6月27日時点・要確認)。
C階層は市町村民税の均等割のみが課税されている世帯(所得割がゼロ)で、徴収基準月額は5,400円です(自治体確認値・2026年6月27日時点・要確認)。
D階層は市町村民税の所得割が課税されている世帯で、所得割の額に応じてD1〜D15の15段階に細分化されます。
D階層の主要な段階と月額の目安
次の表は久留米市の養育医療負担金徴収規則(2026年6月27日確認)をもとにした参考値です。国の通知に基づく共通の枠組みがありますが、自治体によって細部が異なる場合があります。申請前に必ずお住まいの市区町村の窓口で現行の金額を確認してください。
| 階層 | 市町村民税所得割額の範囲 | 徴収基準月額(目安) |
|---|---|---|
| A | 生活保護受給 | 0円 |
| B | 非課税 | 2,600円 |
| C | 均等割のみ(所得割ゼロ) | 5,400円 |
| D1 | 15,000円以下 | 7,900円 |
| D2 | 15,001〜21,000円 | 10,800円 |
| D3 | 21,001〜51,000円 | 16,200円 |
| D4 | 51,001〜87,000円 | 22,400円 |
| D5 | 87,001〜171,300円 | 34,800円 |
| D10 | 579,001〜700,900円(目安) | 123,400円 |
| D15以上 | 1,423,501円以上 | 全額自己負担 |
※D3〜D14の詳細金額および所得割額の区切りは自治体の条例・規則でご確認ください。D15以上は医療費の実費負担となりますが、これに高額療養費(健康保険)が適用されます。
日割り計算の考え方
入院が1か月に満たない場合(月の途中から入院・月の途中に退院)は、徴収基準月額を日割りで計算します。
計算式:徴収基準月額 ÷ 入院月の日数 × 入院日数
例えば、D2階層(月額10,800円)で、4月(30日)に15日間入院した場合は次のようになります。
10,800円 ÷ 30日 × 15日 = 5,400円
入院期間が複数月にまたがる場合は、月ごとにこの計算を行います。
多胎(双子・三つ子)の場合の加算
双子や三つ子などで同一世帯から2人以上が同時に養育医療給付を受ける場合、2人目以降については「加算基準月額」が適用されます。
加算基準月額は、各階層の徴収基準月額のおおよそ10%です。たとえばD2階層(徴収基準月額10,800円)の世帯で双子が同時入院した場合、1人目は10,800円、2人目は加算基準月額(約1,080円相当)が適用されます。つまり合計は11,880円程度となります。
ただしこの計算方法も自治体の条例によって定められているため、双子・三つ子のご家族は窓口で「多胎の場合の計算方法」を具体的に確認することをおすすめします。
申請手続きの詳細フロー(全ステップ)
フロー全体の概要
養育医療の申請から給付を受けるまでの全体の流れは次の通りです。
- 入院確定→担当医に意見書を依頼
- 申請書類の準備
- 市区町村の窓口に提出
- 市区町村が審査・養育医療券を発行
- 養育医療券を病院に提出
- 医療機関からの請求が養育医療で処理される
- 保護者は徴収金(自己負担)のみを市区町村に納付
- 徴収金が子ども医療費助成でカバーされる(自治体による)
以下、各ステップを詳しく解説します。
STEP1:担当医に意見書を依頼する(入院直後〜数日以内)
入院が決まったら、できるだけ早く入院先の担当医(新生児科・小児科)に「未熟児養育医療の申請のために意見書(養育医療意見書)を作成していただけますか」と依頼します。病院によっては、入院後に医療ソーシャルワーカー(MSW)から制度の説明と書類の案内があります。積極的に「養育医療を使いたい」と申し出ることが大切です。
意見書は入院先の病院内で作成されるため、保護者が別途取得に動く必要はありません。ただし、意見書には医師が診察した内容(入院の必要性・症状の状況)を記入するため、入院中の状態が記録されている必要があります。退院後に遡って意見書を作成してもらうことは、病院・医師によっては断られる場合があるため、「入院中に」依頼することが原則です。
STEP2:市区町村の窓口に連絡し書類を確認する(入院後できるだけ早期に)
お子さんの住民票のある市区町村の担当窓口(保健センター・子ども家庭課・区役所等)に電話し、「未熟児養育医療の申請をしたい」と伝えます。窓口の担当者から「必要書類一覧」「申請書・世帯調書の様式」「提出先」「受付時間」などを確認します。
入院中で直接来庁できない場合は、病院のソーシャルワーカーに依頼して書類のやり取りをサポートしてもらうことも可能です。郵送申請を認めている自治体では、必要書類を郵送で提出できます。
STEP3:書類を準備して窓口に提出する
準備した6種類の書類(前述)を窓口に持参または郵送します。マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類を忘れずに持参してください。健康保険証の手続き中の場合は、「加入手続き中のため後日提出」と申し出て、発行後に追加提出する形を自治体に相談してみてください。
提出後、市区町村が審査を行います。審査には数日〜1週間程度かかることが多いです。
STEP4:養育医療券の発行と病院への提出
審査が完了すると、市区町村から「養育医療券」が発行されます。この券には有効期間(給付の対象期間)が記載されています。発行された養育医療券を入院先の病院に提出します。
病院は養育医療券を受け取ることで、保険診療の自己負担分(2割または3割)の請求先を保護者から市区町村に切り替えます。これによって保護者への直接請求額が大幅に減ります。
STEP5:徴収金の納付
市区町村は、保護者の階層区分に応じた徴収金(自己負担額)を通知します。保護者は指定された方法で市区町村に納付します。自治体によっては、子ども医療費助成との連携で徴収金そのものが発生しない(窓口負担ゼロ)場合もあります。
横浜市の例では、養育医療券を提出することで「横浜市が保護者に代わって負担するため、医療機関からは請求されない」という運用になっています。また、江戸川区では別の小児医療費助成制度で支払うため、申請者からの徴収は行わないとされています。
申請を早めた方がよい理由
「退院してから申請しても間に合いますか」という質問がよく寄せられます。原則的な答えは「退院後の申請は困難または不可能になる場合がある」です。理由は次の2点です。
1点目は、養育医療意見書の取得が退院後は難しくなることです。意見書は入院中のお子さんの状態(症状基準への該当状況)を医師が確認した上で記入するものであり、退院後に遡って作成してもらうことを断られるケースがあります。
2点目は、遡及(さかのぼり)適用の限界です。多くの自治体では、入院開始日に遡って給付を認める運用をしていますが、申請受付自体を「入院中のみ」とする自治体もあります。退院後に初めて申請しようとしても、受け付けてもらえない場合があります。入院が決まった段階で、なるべく早く手続きを開始することが重要です。
指定養育医療機関について詳しく
指定の仕組みと意味
養育医療給付は、「都道府県知事が指定した医療機関」(指定養育医療機関)での入院に限って適用されます。どの病院でもよいわけではなく、指定を受けた医療機関でなければ給付の対象になりません。
指定養育医療機関になるためには、都道府県知事に指定を申請し、一定の要件を満たしていることが審査されます。実際にはNICUを持つ周産期医療センター・総合病院・こども病院などが多く指定を受けています。
指定養育医療機関かどうかは、通常は病院側が把握しており、「養育医療券を使えますか」と尋ねれば即座に確認してもらえます。
指定養育医療機関の探し方
都道府県ごとに指定養育医療機関の一覧が公開されています。埼玉県ではPDF形式で「埼玉県内指定養育医療機関名簿」を公開しています(https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/19065/r0109youikuiryoukikanmeibo.pdf)。他の都道府県でも同様の一覧が保健所・都道府県の母子保健担当部署のウェブサイトで公開されています。
「(都道府県名) 指定養育医療機関 一覧」で検索すると見つかる場合が多いです。
指定外の病院に転院した場合
入院後に何らかの事情で指定養育医療機関以外の病院に転院した場合、転院後の医療費は原則として養育医療の対象外となります。ただし、転院先も指定養育医療機関であれば継続して適用されます。
転院が見込まれる場合は、早めに市区町村の窓口に相談し、転院後の扱いを確認することをおすすめします。養育医療券の有効期間の変更手続き(指定医療機関の変更)が必要になる場合があります。
高額療養費との関係
D15以上の高所得世帯の場合
D15階層以上(市町村民税所得割額が1,423,501円以上の世帯)は、養育医療の自己負担が「全額」とされています。これは、養育医療の公費給付の恩恵がほとんど受けられない水準です。
しかし、この場合でも健康保険の高額療養費制度が機能します。健康保険では、1か月の医療費の自己負担が「高額療養費の上限額(世帯の所得に応じて異なる)」を超えた部分について、後から払い戻しを受けられます。高所得世帯であっても、月の自己負担上限は区分ウ(年収約370〜770万円)の場合で80,100円+(医療費−267,000円)×1%、区分ア(年収約1,160万円超)で252,600円+(医療費−842,000円)×1%となっています(協会けんぽ等の健康保険適用。2026年6月27日時点)。
NICUの月の医療費が高額な場合、高額療養費の計算上限を大幅に超えることがあります。高額療養費制度の「限度額適用認定証」を事前に取得しておくと、窓口での支払いを上限額以内に抑えることができます(後から払い戻しを受けるのではなく、最初から上限額の支払いで済む)。
限度額適用認定証は、加入している健康保険の保険者(協会けんぽ・健保組合等)に申請します。申請から発行まで1週間程度かかることがあるため、入院が決まったら早めに申請しておくとよいでしょう。
高額療養費と養育医療の重なり
養育医療が適用される入院(D1〜D14階層)の場合、保険診療の自己負担のほとんどが養育医療でカバーされるため、高額療養費の計算対象となる「保護者が実際に支払った金額」は養育医療の徴収金のみになります。この徴収金は月額数千〜数万円と高額療養費の上限額を下回るため、高額療養費が実際に機能するケースは少なくなります。
一方、D15以上の高所得世帯では養育医療の恩恵が薄い分、高額療養費の役割が大きくなります。
子ども医療費助成との制度的な位置づけの整理
2つの制度の根本的な違い
「養育医療」と「子ども医療費助成(乳幼児医療費助成等)」は、名前が似ているため混同されやすい制度です。しかし、根拠法・対象・役割がまったく異なります。
養育医療は、母子保健法第20条に基づき、「入院を必要とする未熟児」に特化した制度で、全国どの市区町村でも実施されます。給付は入院医療費に限定され、退院後の通院は対象外です。保護者の自己負担(徴収金)は世帯の市町村民税額で決まります。
子ども医療費助成(小児医療費助成・こども医療費助成等)は、各都道府県・市区町村が独自に実施する制度です。根拠法は都道府県・自治体の条例で、金額・対象年齢・自己負担の有無は自治体によって大きく異なります。
優先順位の関係
2つの制度を使う順序は、「養育医療→子ども医療費助成」の順番です。養育医療が入院医療費の自己負担を徴収金まで圧縮し、その徴収金に対して子ども医療費助成が適用されます。子ども医療費助成が「最後の一皿」として機能する設計です。
「子ども医療費助成だけで養育医療分もカバーできるのでは」と考える方もいますが、子ども医療費助成は原則として「健康保険の自己負担分」を対象とする制度です。健康保険と養育医療の適用を経た後の残額(徴収金相当分)を子ども医療費助成でカバーする、という重層構造が正しい理解です。
申請の時期と書類の種類が異なる
養育医療と子ども医療費助成では、申請のタイミングと必要書類が異なります。養育医療は「入院中に申請し、養育医療券を取得して病院に提出する」必要があります。一方、子ども医療費助成は「出生後に親の加入する健康保険でお子さんを扶養に追加し、その後に自治体に乳幼児医療証の申請を行う」という流れが一般的です。
NICU入院中の状況では、複数の手続きを同時並行で進める必要があります。病院のソーシャルワーカーや担当看護師に相談しながら、漏れなく手続きを進めることをおすすめします。
「実質自己負担ゼロ」になる条件
いくつかの条件が重なると、保護者の窓口負担が実質ゼロになります。
条件1:入院先が指定養育医療機関であること
条件2:養育医療の対象要件(体重2,000g以下または5症状基準)を満たすこと
条件3:入院中に養育医療の申請を完了し、養育医療券を取得すること
条件4:居住地の自治体で、0歳児の子ども医療費助成が自己負担ゼロであること(または養育医療の徴収金を助成の対象としていること)
条件4については、東京都(ほぼ全区市)・大阪市・横浜市・名古屋市などでは0歳児は通常自己負担ゼロとなっています。ただし所得制限を設けている自治体や、一定の自己負担が残る自治体もあるため、居住自治体の助成内容を確認することが必要です。
NICUに長期入院した場合の費用イメージと各制度の適用
NICUの医療費の規模感
NICUの医療費は、入院する施設の機能や赤ちゃんの状態によって大きく異なりますが、重症度の高い状態(超低出生体重児・1,000g未満等)で高度な管理が続いた場合、月の保険診療費は100万〜300万円を超えることも珍しくありません。
しかし、制度をフルに使えば、この医療費が実際には数千〜1万数千円の自己負担(または完全ゼロ)に圧縮されます。金額の大きさに驚かれるご家族も多いですが、まず制度の仕組みを理解した上で、冷静に申請手続きを進めることが大切です。
長期入院(3か月・6か月)のケースの費用イメージ
在胎23〜25週台の超早産児では、NICUでの入院が3か月〜6か月以上に及ぶことがあります。このような長期入院の場合の費用イメージを整理します。
医療費総額(3か月・保険診療):仮に月200万円×3か月=600万円と想定
健康保険の自己負担(2割):600万円×20%=120万円
養育医療給付(D3階層・月16,200円の場合):16,200円×3か月=48,600円(保護者の徴収金合計)
子ども医療費助成で48,600円がカバーされれば:保護者の実質負担=0円
つまり、医療費総額600万円が制度によって最終的には数万円以下(または完全ゼロ)に圧縮されるケースがあります。これは制度設計の目的通りの機能です。
ただしこれはあくまでも計算例であり、実際の費用は医療の内容・保険の種類・自治体の助成内容によって変わります。
給付期間の上限:1歳の誕生日の前々日まで
養育医療の給付期間は、入院開始日から退院日まで(最長で満1歳の誕生日の前々日まで)です。
「前々日」という少し特殊な表現の理由は、法令上の「1歳未満」が「1歳の誕生日の前日まで」とされているため、給付の有効期間の終了日がその1日前(前々日)に設定されているからです。実務上は「1歳の誕生日の2日前まで」が上限と理解しておくとよいでしょう。
在胎22〜23週台で生まれた超早産の赤ちゃんで、生後1年近くにわたって入院が続いた場合でも、この上限内であれば養育医療の給付対象となります。
地域別の自己負担・制度例(確認日時点・要確認)
自治体によって子ども医療費助成の助成水準が異なるため、養育医療の徴収金が実際に保護者負担になるかどうかが変わります。以下は各自治体の2026年6月27日時点の情報をもとにした例です。最新の状況は各自治体の窓口でご確認ください。
東京都(各区市)の例
東京都内の多くの区・市では、0歳児の医療費は「窓口負担ゼロ(完全無料)」です。これは東京都が実施する「子供医療費助成(マル子)」制度と、各区市の上乗せ助成が組み合わさったものです。
江戸川区では、養育医療の徴収金に相当する自己負担は小児医療費助成(マル乳)でカバーされるため、申請者からの直接徴収は行っていないと明記しています(2026年6月27日確認)。
東京都23区・市内では、養育医療+子ども医療費助成の組み合わせで、NICUの入院費の実質負担がゼロになるケースが多いです。
横浜市の例
横浜市では、養育医療券を病院に提出することで「横浜市が保護者に代わって負担するため、医療機関からは請求されない」という仕組みになっています(2026年6月27日確認)。0歳児の医療費助成(こども医療費助成)も充実しており、実質的な窓口負担がゼロになるケースが多いです。
横浜市外の指定養育医療機関に入院した場合でも申請は可能ですが、医療機関の所在地の自治体にも確認が必要な場合があります。
大阪市の例
大阪市では、各区の保健福祉センターが窓口になります。郵送申請も可能で、送付先は大阪市保健所管理課です(2026年6月27日確認)。
自己負担の徴収金は世帯の市民税額に応じて決まりますが、大阪市の子ども医療費助成(子ども医療証)が適用されることで、実質負担がゼロになるケースが多いと考えられます。
申請前に確認すべき自治体別の差異ポイント
自治体によって次のポイントが異なります。お住まいの市区町村の窓口で事前に確認することをおすすめします。
- 子ども医療費助成の対象年齢(0歳限定か・就学前まで無料か・中学生まで無料か等)
- 子ども医療費助成の自己負担額(完全ゼロか・1回200円等の自己負担があるか)
- 養育医療の徴収金が子ども医療費助成の対象になるかどうか
- 電子申請・郵送申請の可否
- 提出書類の種類(自治体によって追加書類を求める場合がある)
よくある誤解・つまずきポイント
誤解1:「子ども医療費助成があるから養育医療は申請しなくてよい」
子ども医療費助成だけを申請して養育医療を申請しない方がまれにいます。しかし、子ども医療費助成は健康保険の自己負担分をカバーする制度であり、養育医療を間に挟まないと制度のフル活用にならないケースがあります。特に0歳児でも所得に応じた自己負担が残る自治体では、養育医療を申請することで徴収金が大幅に抑えられます。
また、子ども医療費助成の対象は通院も含みますが、養育医療の給付は入院のみです。入院中は養育医療を使い、退院後の通院では子ども医療費助成を使う、という役割分担が正しい理解です。
誤解2:「退院してから落ち着いて申請しようと思っている」
退院後に申請しようとして意見書が取得できず、給付を受けられなかったという事例があります。養育医療意見書は入院中の状態を記録したものであり、退院後に担当医が遡って記入することを断るケースがあります。また、自治体によっては「入院中の申請」を要件とする場合もあります。
入院が確定した段階で、まず市区町村の窓口に電話して「養育医療の申請をしたい」と伝えることが最優先アクションです。
誤解3:「体重が2,001gだったから対象外だと言われた」
出生時体重が2,000gをわずかに超えていても、5症状基準のいずれかに該当し、かつ医師が入院養育を必要と認めれば対象になります。「2,000g以下でなければ対象外」というのは誤りです。担当医に「症状基準での申請を検討していますか」と確認することをおすすめします。
誤解4:「養育医療で全額無料になる」
養育医療は保険診療の自己負担分と入院時食事療養費の自己負担分をカバーしますが、差額ベッド代・おむつ代・保険外診療は対象外です。また、世帯の所得に応じた徴収金があるため、完全に無料にはならない場合があります(子ども医療費助成との組み合わせで実質ゼロになるケースはあります)。
誤解5:「退院後の通院も養育医療で無料になる」
養育医療の給付対象は入院中のみです。退院後の通院(定期受診・フォローアップ外来等)は対象外です。退院後の通院費については、子ども医療費助成(乳幼児医療費助成等)の対象となる場合があります。
誤解6:「養育医療券が発行される前に退院した場合は申請できない」
申請から養育医療券の発行まで数日〜1週間かかることがあり、その間に退院が決まってしまうケースもあります。この場合でも申請自体は可能なことが多く、入院期間に遡って給付が認められる場合があります。窓口に「申請中に退院となったのですが」と相談してみてください。
誤解7:「高所得世帯は制度を使えない」
D15以上の高所得世帯は養育医療の公費給付が全額自己負担となりますが、健康保険の高額療養費制度が機能します。また、申請自体は収入に関係なく行うことができます(受給できる公費の金額が所得によって変わる)。
誤解8:「双子の場合は1回の申請でまとめて手続きできる」
双子・三つ子の場合、お子さんそれぞれについて申請書と意見書が必要です。意見書は各お子さんの担当医がそれぞれ作成します。加算基準月額の計算があるため、窓口で「双子です」と必ず伝えてください。
申請チェックリスト
以下を入院後できるだけ早い時期に確認・実施してください。
入院直後(1〜3日以内)
- お子さんの担当医(新生児科・小児科)に養育医療を申請したい旨を伝えた
- 担当医または病院のソーシャルワーカーに養育医療意見書(第2号様式)の作成を依頼した
- 病院が指定養育医療機関であることを確認した(ほとんどのNICUは指定を受けています)
- お子さんを父(母)の健康保険の扶養に追加する手続きを会社・保険者に連絡した
入院後数日以内
- お住まいの市区町村の担当窓口(保健センター・子ども家庭課等)に電話して、必要書類と提出方法を確認した
- 申請書(第1号様式)と世帯調書(第3号様式)の様式を入手した(窓口またはウェブサイト)
- マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類を準備した
- 市区町村民税の課税証明書が必要か確認した(自治体が税情報を参照できる場合は不要のケースも)
書類提出
- 養育医療給付申請書(第1号様式)に保護者が記入した
- 養育医療意見書(第2号様式)を医師に作成してもらった
- 世帯調書(第3号様式)に記入した
- 健康保険証(資格確認書)のコピーを準備した
- 上記書類を市区町村窓口に提出した(または郵送した)
養育医療券取得後
- 市区町村から発行された養育医療券を受け取った
- 養育医療券を入院先の病院に提出した
- 双子・三つ子の場合は2人目以降分も同様の手続きを完了した
- 高額療養費の限度額適用認定証(必要な場合)を加入の健保に申請した
退院後
- 子ども医療費助成(乳幼児医療証等)の申請・更新状況を確認した
- 退院後の定期通院に子ども医療費助成を使えるよう、乳幼児医療証を病院に提示した
- 次セクションの「FAQ」で退院後の制度を確認した
よくある質問(FAQ)
Q1. 申請はいつまでにすれば間に合いますか。
入院中、できるだけ早く手続きを開始することを強くおすすめします。法令上の明確な「申請期限」は自治体によって異なりますが、養育医療意見書は入院中の状態に基づいて医師が作成するものであり、退院後には取得が難しくなる場合があります。入院が決まったその日のうちに市区町村の窓口に電話することが理想です。
Q2. 体重が2,000gを超えていても使えますか。
はい、条件を満たせば使えます。出生体重2,000gを超えていても、5症状カテゴリー(一般状態・体温・呼吸器循環器・消化器・黄疸)のいずれかに該当し、医師が入院養育を必要と認めれば対象になります。担当医に確認してみてください。
Q3. 養育医療の申請と別に、子ども医療費助成の申請も必要ですか。
はい、両方の申請が必要です。養育医療と子ども医療費助成は別の制度です。出生後に子ども医療費助成(乳幼児医療証等)の申請を行い、乳幼児医療証を取得することで、退院後の通院や養育医療の徴収金(自己負担分)のカバーに使えるようになります。
Q4. 双子の場合の手続きはどうなりますか。
双子のお子さん2人それぞれについて、申請書と意見書が必要です。2人目以降は加算基準月額(約10%)の自己負担になるため、1人目より低い自己負担額になります。申請時に「双子です」と窓口に必ず伝えてください。
Q5. 出生した病院が指定養育医療機関ではない場合はどうなりますか。
指定養育医療機関以外での入院は、原則として給付対象外です。ただし、地域の医療事情によってはかかりつけの産科から転院して指定機関でケアを受けることもあります。転院後から給付が適用される形になります。転院の可能性がある場合は、転院前に市区町村窓口に「転院した場合はどうなりますか」と確認しておくとよいでしょう。
Q6. 退院後の通院費は養育医療でカバーされますか。
いいえ、養育医療は入院中のみが対象です。退院後の通院費(フォローアップ外来・定期受診等)は養育医療の対象外です。退院後は子ども医療費助成(乳幼児医療費助成)で通院費がカバーされる場合があります。
Q7. 養育医療の給付期間が1歳の誕生日の前々日までですが、入院が続いた場合は?
1歳の誕生日の前々日を過ぎた後の入院費は、養育医療の給付対象外になります。その後は通常の健康保険の自己負担(就学前は2割)と子ども医療費助成の対象となります。
Q8. 高額療養費との関係はどうなりますか。
低・中所得の世帯(D1〜D14階層)では、養育医療が入院費の大部分をカバーするため、高額療養費の出番は少ない場合が多いです。一方、D15以上の高所得世帯では養育医療の恩恵が薄くなるため、高額療養費(限度額適用認定証の活用)が重要になります。
Q9. 申請したが審査が長引き、退院してしまいました。給付は受けられますか。
審査中に退院した場合でも、入院期間に遡って給付が認められるケースが多いです。ただし自治体の運用によって違いがあるため、「申請中に退院となった」旨を窓口に速やかに連絡し、対応を確認してください。
Q10. 養育医療の申請書類を病院の外で記入する余裕がありません。
入院中でお子さんのそばを離れられない状況は十分理解できます。多くの自治体では郵送申請が可能で、一部の自治体ではマイナポータルからの電子申請にも対応しています。病院のソーシャルワーカー(MSW)に相談すれば、書類の取り寄せや記入の補助をしてもらえる場合があります。窓口への連絡だけ早めに行っておくと、後の手続きがスムーズです。
Q11. 所得が変わった場合、階層区分は変わりますか。
階層区分の判定には、申請時点の市町村民税の情報が使われます。年度の途中で所得が大きく変わった場合でも、申請時点の確定した税情報をもとに算定されることが一般的です。詳細はお住まいの市区町村の窓口にご確認ください。
Q12. 養育医療券の有効期間はどのように決まりますか。
入院開始日を起点として、主治医の意見書に記載された養育医療が必要な期間と医療機関が設定する期間をもとに、市区町村が有効期間を設定します。入院が長期化した場合は、期間延長の手続きが必要になることがあります。養育医療券の期限が近づいたら、病院または市区町村窓口に延長の可否を確認してください。
Q13. 養育医療は申請代理(代わりに誰かが申請)できますか。
保護者が申請することが原則ですが、窓口申請に来られない場合は代理人が提出することも可能です(代理人は委任状が必要な自治体もあります)。詳細は窓口にご確認ください。
Q13-2. マイナンバーカードを持っていませんが、通知カードも見当たりません。どうすればよいですか。
マイナンバーの確認は、マイナンバーカード・通知カード・マイナンバーが記載された住民票の写し、いずれかで対応できます。住民票の写しはお住まいの市区町村の窓口(コンビニでも可能なことがあります)で取得できます。通知カードを紛失した場合も、住民票を取得することでマイナンバーを確認できます。
Q13-3. 申請書にマイナンバーを記入すると情報が広まる心配はありますか。
養育医療給付申請に際して提供するマイナンバーは、法律(行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)に基づいて利用されるものです。申請書を受け取った市区町村は、法令の定める範囲でしか情報を利用・提供できません。心配な点は、申請先の窓口担当者に「情報の利用範囲を教えてください」と質問することで確認できます。
Q14. 退院後、しばらくしてから養育医療を申請しようとしたら断られました。どうすればよいですか。
自治体によっては入院中の申請を要件としている場合があります。断られた場合でも、自治体の上位窓口(市区町村の保健所・こども家庭庁の管轄窓口)に相談することで対応を検討してもらえる場合があります。まず窓口で「入院中に申請できなかった理由・事情」を丁寧に説明してみることをおすすめします。
複数ケースの計算例(続き)
ケース1:出生体重820gの超低出生体重児(B階層世帯)
前提条件は次の通りです。出生体重820gの超低出生体重児。在胎25週で出生し、NICU入院期間は約4か月(120日間)。世帯は市町村民税が非課税(B階層)。居住地は子ども医療費助成で0歳の自己負担ゼロの自治体。
月の保険診療費は200万円と仮定(超低出生体重児の場合、高度管理加算等により高額になることが多い)。
健康保険の自己負担(2割):200万円 × 20% = 40万円/月
養育医療の徴収基準月額(B階層):2,600円/月
養育医療給付額:40万円 − 2,600円 = 397,400円/月が公費負担
4か月合計での養育医療の徴収金:2,600円 × 4か月 = 10,400円
子ども医療費助成(0歳無料)でこの10,400円がカバーされる自治体では、保護者の実質負担は0円です。
差額ベッド代・おむつ代等の自費負担は別途かかります。仮に1か月3万円の諸費用がかかれば、4か月で約12万円の実費負担があります。
ケース2:出生体重2,500gで黄疸が早期発現(D3階層世帯)
前提条件は次の通りです。出生体重2,500g(体重基準は非該当)。生後1時間以内に高度の黄疸が出現し、担当医が5症状基準(黄疸カテゴリー)に該当すると判断。光線療法・交換輸血のため7日間入院。
世帯の市町村民税所得割額は25,000円(D3階層に相当)。居住地は乳幼児医療費助成で一定の自己負担(1回200円)がある自治体。
月の保険診療費を30万円と仮定(7日間の入院)。
健康保険の自己負担(2割):30万円 × 20% = 6万円
養育医療の徴収基準月額(D3階層):16,200円(久留米市条例参考値・2026年6月27日確認・要確認)
7日間(31日換算)の日割り:16,200円 ÷ 31日 × 7日 = 約3,658円(日割り計算の例)
保護者の養育医療自己負担:約3,658円
乳幼児医療費助成(1回200円の自己負担がある自治体):通院ではなく入院の場合、助成の計算方法は自治体によって異なります。入院の場合は通院と別の計算になることが多いため、窓口に確認してください。
このケースでの重要ポイントは「体重が2,000gを超えていても5症状基準で対象になった」点です。黄疸のみが基準に該当した場合でも、医師が入院養育を必要と認めれば養育医療の対象になります。
ケース3:双子(1,600gと1,800g)が同時にNICU入院(C階層世帯)
前提条件は次の通りです。双子のお子さんで、第1子が1,600g・第2子が1,800gで出生。両者とも体重基準に該当(2,000g以下)。NICU入院期間は2人とも2か月間(60日)。
世帯の市町村民税は均等割のみ課税(C階層)。
月の保険診療費は1人あたり150万円と仮定(2人合計300万円/月)。
健康保険の自己負担(2割・2人合計):300万円 × 20% = 60万円/月
養育医療の徴収金計算:
- 第1子(徴収基準月額・C階層):5,400円/月
- 第2子(加算基準月額・C階層の約10%):約540円/月
- 1か月合計:約5,940円
2か月間の合計徴収金:5,940円 × 2か月 = 11,880円
子ども医療費助成(0歳無料)の自治体では、この11,880円も実質ゼロになります。
双子の場合の申請上の注意点は次の通りです。申請書(第1号様式)と意見書(第2号様式)はそれぞれのお子さんについて1セットずつ必要です。2人分の世帯調書は1通にまとめることができる自治体もありますが、自治体によって対応が異なります。双子の旨を窓口に伝え、指示に従って書類を準備してください。
ケース4:転院が発生したケース
前提条件:出生体重1,400gで総合病院に入院。生後2週目に高度な外科的処置が必要となり、指定養育医療機関でもある小児専門病院に転院。
転院後も引き続き入院して養育医療が適用される場合、市区町村に「養育医療機関の変更届」を提出する必要があります。養育医療券の内容(指定する医療機関名)を変更してもらう手続きです。転院が決まったら、速やかに市区町村の担当窓口に連絡し、手続き方法を確認してください。
転院先が指定養育医療機関でない場合は、転院後の医療費が養育医療の対象外となります。緊急を要する転院で指定外の病院へ移った場合は、後から窓口に相談することをおすすめします(特例的な対応をしてもらえる場合もあります)。
申請書類の記入例・記入時のつまずきポイント
養育医療給付申請書(第1号様式)の主な記入項目と注意点
申請書には通常、次のような項目があります。
お子さんに関する情報として、氏名(ふりがな)・性別・生年月日・住民票上の住所・本籍(都道府県名まで)などを記入します。生まれたばかりで出生届が未了の場合は、その旨を窓口に伝えます。出生届を先に提出し、住民票にお子さんが記載されてから申請するのが原則ですが、緊急性のある入院で出生届前に相談を始めることも可能です。
保護者・申請者に関する情報として、保護者の氏名・続柄(父・母)・住所・連絡先・マイナンバーを記入します。
指定養育医療機関に関する情報として、入院している病院の正式名称・所在地を記入します。病院の正式名称は、保険証や病院が発行する入院書類に記載されている「法人名+施設名」が正式名称です(例:「医療法人○○会○○病院」ではなく「○○病院」と書くべきかは自治体の指示に従ってください)。
入院期間の予定として、入院開始日と予定退院日(予定が未定の場合は「未定」と記入)を書きます。
健康保険に関する情報として、加入している保険の種類(社会保険・国民健康保険・共済等)・保険者名・被保険者証の記号番号を記入します。お子さんが健康保険に加入手続き中の場合は、「手続き中」と記入して後日写しを提出する形を窓口に相談してください。
世帯調書(第3号様式)の記入のコツ
世帯調書には、世帯全員(お子さんを含む)の氏名・続柄・生年月日・職業・続柄などを記入します。
「扶養義務者」の欄には、民法上の扶養義務(配偶者・直系血族・兄弟姉妹等)がある方全員の市町村民税の状況を記入することが求められます。同居していない扶養義務者(別居の配偶者等)の情報も必要な場合があります。不明な点は窓口に相談してください。
証明書の請求方法
市区町村民税の「課税証明書」または「非課税証明書」は、お住まいの市区町村の税務課(市民税課等)の窓口で請求できます。窓口に来られない場合は、郵送請求や一部の自治体ではコンビニ交付(マイナンバーカード必要)でも取得可能です。
請求に必要なものは通常、本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)と手数料(数百円)です。代理人が請求する場合は委任状が必要な場合があります。
発行タイミングの注意点として、その年の市町村民税の証明書は、通常6月以降に取得できます(1〜5月の場合は前年度の証明書を提出することになります)。申請時期によって証明書の「年度」の取り扱いが異なるため、窓口で「何年度の証明書が必要か」を確認してください。
退院後に使える制度案内
養育医療の給付は入院中のみですが、退院後のお子さんの通院・育児に使える別の制度があります。
子ども医療費助成(乳幼児医療費助成・こども医療費助成)
都道府県・市区町村が実施する制度で、0歳〜一定年齢までの医療費(通院・入院)の自己負担を助成します。助成の内容(対象年齢・自己負担の有無・上限額)は自治体によって異なりますが、多くの自治体で0歳の通院費は無料または低負担となっています。
乳幼児医療証(こども医療費受給者証等)を持参することで、通院の窓口負担が抑えられます。退院後すぐに使えるよう、入院中に申請しておくか、退院後すぐに申請することをおすすめします。
障害児福祉手当(重度の場合)
NICUで治療を受けたお子さんの中には、退院後も後遺症や障害が残る場合があります。後遺症・障害の程度によっては、障害者手帳の取得や障害児福祉手当の申請の検討が必要になることがあります。詳細は主治医や市区町村の福祉担当窓口にご相談ください。
乳幼児健康診査の活用
退院後の定期的な発達フォローとして、市区町村が実施する乳幼児健康診査(4か月・10か月・1歳6か月・3歳等)を活用することができます。在胎週数が早かったお子さんでは、修正月齢(実際の月齢から早産分を差し引いた発達の目安)での評価が大切です。主治医や担当の保健師にご相談ください。
小児慢性特定疾病医療費助成制度
NICUでの治療を経た後、特定の疾患が残っているお子さんには「小児慢性特定疾病医療費助成制度」が適用される場合があります。この制度は、小児慢性特定疾病(16疾患群・788疾病が対象、2026年現在)の治療を受けている18歳未満(引き続き治療が必要な場合は20歳まで延長可)のお子さんについて、医療費の自己負担を軽減するものです。
対象疾患かどうかは担当医に確認し、認定を受けることで医療費が大幅に軽減されることがあります。申請先はお住まいの都道府県・指定都市です。
訪問型産後ケア・育児支援
NICUへの入院後、退院するまでのお母さん・ご家族の心身の疲労は大きいものです。地域の保健センターや産後ケア事業(宿泊型・日帰り型・訪問型)を利用することも選択肢のひとつです。
入院中の保護者が知っておくべき実務的なポイント
NICU入院中は、医療費以外にも多くのことが同時に動きます。制度の手続きを進める上で知っておくと役立つ実務情報を整理します。
健康保険へのお子さんの加入手続きを最優先する
養育医療給付を受けるには、お子さんが健康保険に加入していることが前提となります。出生後14日以内(健保組合によっては5日以内等、組合ごとに異なります)に、父または母の加入する健康保険にお子さんを扶養として追加する届出を行います。
勤め先の総務・人事担当に「子どもが生まれた」「すぐに入院している」と連絡し、扶養追加の手続きを最速で進めてもらうよう依頼することが最優先です。健康保険証(またはマイナ保険証の資格情報)が発行されると、医療機関での保険診療が始まります。
健康保険に加入する前の診療費は、全額自己負担(10割)になります。後から遡って保険給付を受けることができますが(出産育児一時金等の手続きと合わせて)、手続きが複雑になるため、できるだけ早く加入手続きを完了させることが重要です。
出産育児一時金の申請も忘れない
健康保険の加入者が出産した場合、1子あたり50万円(2023年4月以降・産科医療補償制度加算含む)の出産育児一時金が支給されます(金額は保険者によって若干異なる場合があります。2026年6月27日時点)。
多くの場合、入院した病院に「直接支払制度」の説明書を記入することで、出産育児一時金が病院に直接支払われ、保護者への請求額が50万円減額されます。早産・低出生体重の場合は出産費用が高額になることが多いため、直接支払制度の手続きを入院病棟の担当者に早めに確認してください。
双子・三つ子の場合は子どもの数だけ出産育児一時金が支給されます(双子なら100万円・三つ子なら150万円)。
傷病手当金・育児休業給付金との関係
お母さんが早産で緊急入院・帝王切開になった場合、産後の育児休業や傷病手当金(健康保険から支給)の扱いについて確認が必要になることがあります。
傷病手当金は、仕事を休んで給与の支払いがない期間に、給与の約3分の2が健康保険から支給される制度です。早産で急いで産休・育休に入ることになった場合でも、要件を満たせば申請できます。
育児休業給付金は、育児休業期間中に雇用保険から支給される給付です。NICUのお子さんが退院して自宅に帰ってくるまで育児休業を延長する必要がある場合は、会社の担当者と相談してください。
これらの給付は養育医療とは別の制度であり、申請窓口(会社・健康保険組合・ハローワーク)も異なります。
医療費控除の活用
1年間に支払った医療費が世帯合計で10万円(または所得の5%のいずれか低い方)を超えた場合、確定申告で医療費控除を受けることができます。
NICUの入院費のうち、健康保険・養育医療・子ども医療費助成でカバーされなかった実費部分(差額ベッド代・おむつ代等)は医療費控除の対象になることがあります。ただし、差額ベッド代のような「直接治療のために必要でない費用」は医療費控除の対象外とされる場合もあるため、国税庁の最新情報を確認するか、税務署に確認してください。
領収書は医療費控除の申請に使えるため、病院から受け取った領収書はすべて保管しておくことをおすすめします。
こども家庭庁の動向と制度の今後
こども家庭庁が養育医療を管轄
2023年(令和5年)4月のこども家庭庁設置以降、母子保健に関する施策の主管は厚生労働省からこども家庭庁に移管されました。養育医療の実施通知・ガイドライン類は、こども家庭庁が更新・管理しています。
制度の改定・通知の更新があった場合は、こども家庭庁のウェブサイト(https://www.cfa.go.jp/)の「母子保健」に関するページで確認できます。
低出生体重児の長期フォローアップの重要性
医療技術の進歩により、超低出生体重児(1,000g未満)の生存率は大幅に向上しました。一方で、NICU退院後に発達面・神経面の定期フォローアップが必要なお子さんも少なくありません。
定期健診や発達評価のための外来通院は、養育医療の対象外ですが、子ども医療費助成(乳幼児医療費助成)の対象になります。また、発達に関して支援が必要と判断された場合は、療育(発達支援)サービスや受給者証の取得について、市区町村の相談窓口(子ども発達支援センター・保健センター等)でご相談ください。
一部自治体の先行的な取り組み
子ども医療費助成を高校生まで無償化する自治体が増加傾向にあります。養育医療を経た後のお子さんが退院後に継続的な医療を受ける場合、居住自治体の助成水準が家計に大きく影響します。自治体の子ども医療費助成の対象年齢・自己負担について定期的に確認することをおすすめします。
実際によくある手続きのつまずきパターンと対処法
制度の申請に携わった方から寄せられることが多いつまずきのパターンと、それぞれの対処法を整理します。
パターン1:健康保険証がまだない状態で入院した
出生直後に緊急入院が必要な場合、健康保険証の手続きが間に合わないことがあります。この場合、まず親の健康保険組合に電話して状況を説明します。「出産直後で赤ちゃんが緊急入院中のため、できるだけ早く扶養追加の手続きをしたい」と伝えると、優先的に対応してもらえる場合があります。
保険証が届くまでの間、病院に「健康保険の加入手続き中です」と伝えておくと、後から遡って保険診療として処理してもらえる場合があります。手続きが完了したら速やかに病院と市区町村の窓口に連絡してください。
パターン2:申請書類を準備している間に退院日が近づいた
入院期間が予想より短く、書類の準備が間に合わないことがあります。退院が決まりそうな場合は、まず「申請する旨の意思表示(口頭でも)」を市区町村の窓口に伝えておくことが重要です。
その上で、意見書だけは退院前に担当医に作成してもらい、申請書・世帯調書は退院後に提出する、という分割対応を自治体に相談してみてください。窓口担当者が柔軟に対応してくれる場合が多いです。
パターン3:転居が伴う場合
入院中または入院後に住所が変わる場合(里帰り出産後の自宅への転居等)、申請先の市区町村が変わることがあります。
養育医療の申請はお子さんの住民票のある市区町村(申請時点)が窓口です。転居後に住民票の住所が変われば、申請先も変わります。転居が予定されている場合は、元の自治体に「転居する予定がある」旨を事前に伝え、引き継ぎの手続き方法を確認しておくとよいでしょう。
パターン4:意見書の様式が自治体ごとに異なる
養育医療意見書の様式は厚生労働省が示す標準様式がありますが、自治体によって様式を独自に定めている場合があります。
入院先の病院が複数の自治体の患者を受け入れている場合、「どの自治体の様式を使えばよいか」が問題になることがあります。お住まいの市区町村の担当窓口に「意見書の様式を送ってもらえますか」と連絡し、正式な様式を病院に持参して医師に記入してもらうのが確実です。
パターン5:書類の「扶養義務者全員分」の市民税がわからない
世帯調書では「扶養義務者全員」の市町村民税の状況を記入することが求められる場合があります。民法上の扶養義務者は配偶者・親子・兄弟姉妹等ですが、実際には世帯の収入状況によって変わります。
不明な場合は窓口に「扶養義務者の範囲が不明なのですが」と相談すると、担当者が状況に応じて案内してくれます。一般的には、同居の配偶者と本人の市民税が主な対象になることが多いです。
出典一覧(URL・確認日)
本記事は以下の一次情報を確認した上で執筆しています。
- 母子保健法(e-Gov法令検索)
https://hourei.net/law/340AC0000000141
確認日:2026年6月27日
- 未熟児養育事業の実施について(昭和62年7月31日 児発第668号通知、厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta9644&dataType=1&pageNo=1
確認日:2026年6月27日
- 未熟児養育医療の給付(大阪市)
https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000371473.html
確認日:2026年6月27日
- 未熟児養育医療給付制度(横浜市)
https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/kenko-iryo/iryohijosei/yoiku-2019.html
確認日:2026年6月27日
- 未熟児養育医療(江戸川区)
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e052/kenko/kenko/kodomo/iryohi/youikuiryou.html
確認日:2026年6月27日
- 養育医療(札幌市)
https://www.city.sapporo.jp/eisei/shoni/syouni/youiku.html
確認日:2026年6月27日
- 未熟児養育医療の給付(川崎市)
https://www.city.kawasaki.jp/450/page/0000030566.html
確認日:2026年6月27日
- 未熟児養育医療(広島市)
https://www.city.hiroshima.lg.jp/living/kosodate/1003057/1025816/1023773.html
確認日:2026年6月27日
- 未熟児養育医療給付(仙台市)
https://www.city.sendai.jp/kodomo-chiiki/kurashi/kenkotofukushi/kosodate/teate/kyufu.html
確認日:2026年6月27日
- 未熟児養育医療給付事業(京都市)
https://www.city.kyoto.lg.jp/hagukumi/page/0000112622.html
確認日:2026年6月27日
- 久留米市養育医療負担金徴収規則(階層区分・徴収基準月額の参照元)
https://www1.city.kurume.fukuoka.jp/reiki_int/reiki_honbun/q005RG00001080.html
確認日:2026年6月27日
- 未熟児養育医療給付について(埼玉県)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0704/boshi/youiku.html
確認日:2026年6月27日
- 埼玉県内指定養育医療機関名簿(PDF)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/19065/r0109youikuiryoukikanmeibo.pdf
確認日:2026年6月27日
- NICU入院費が払えないと感じたら読む完全ガイド(中央会計)
https://chuokaikei.co.jp/siharai-dekinai/haraenai-nicu/
確認日:2026年6月27日(制度の重層構造の解説参照)
各種書類の取得先・連絡先まとめ
手続きが多くなるNICU入院中に、どの書類をどこで入手するかを一覧でまとめます。
| 書類名または手続き | 入手先・連絡先 |
|---|---|
| 養育医療給付申請書(第1号様式) | お住まいの市区町村窓口またはウェブサイト |
| 養育医療意見書(第2号様式) | 入院先の担当医(病院に依頼) |
| 世帯調書(第3号様式) | お住まいの市区町村窓口またはウェブサイト |
| 健康保険の扶養追加手続き | 父または母の勤め先の総務・人事部門 |
| 健康保険証(資格確認書) | 加入の健保組合・協会けんぽ等(会社経由) |
| 限度額適用認定証 | 加入の健保組合・協会けんぽ等(電話またはウェブ申請) |
| 市区町村民税課税証明書 | お住まいの市区町村税務課(6月以降) |
| 乳幼児医療証(子ども医療費助成) | お住まいの市区町村の子育て担当窓口 |
| 出産育児一時金 | 加入の健保組合・協会けんぽ等(または分娩病院経由の直接支払) |
| 指定養育医療機関の一覧 | お住まいの都道府県のウェブサイト(「指定養育医療機関 一覧」で検索) |
申請の優先順位タイムライン
手続きが多い中で何を先にすべきかを、優先順位と時期の目安で整理します。
入院当日〜翌日(最優先):
- 担当医に「養育医療の意見書を作成してもらえるか」確認する
- お子さんの父または母の会社に「赤ちゃんが入院した。健康保険の扶養追加を急いでほしい」と連絡する
- お住まいの市区町村の養育医療担当窓口に電話し、「NICU入院中です。養育医療の申請をしたい。書類を郵送か電子で入手したい」と連絡する
入院後2〜3日以内(高優先):
- 申請書(第1号様式)・世帯調書(第3号様式)の様式を入手して記入開始する
- 限度額適用認定証を健保に申請する
- 出産育児一時金の直接支払制度の書類を分娩病院または転院先病院で確認する
入院後1週間以内(標準):
- 健康保険証(資格確認書)が届いたらコピーを準備する
- 市区町村民税課税証明書が必要か確認し、必要なら取得する
- 申請書類一式を市区町村窓口に提出する(郵送・電子申請可能な場合はその方法で)
- 乳幼児医療証の申請を行う(まだの場合)
養育医療券取得後:
- 養育医療券を入院先の病院に提出する
- 双子・三つ子は2枚目以降も病院に提出する
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成代行・医療的助言・法律的助言を行うものではありません。制度の詳細・最新の要件・申請手続きについては、各公式サイトまたはお住まいの市区町村の担当窓口に直接ご確認ください。
本記事に記載した金額(徴収基準月額・高額療養費の上限等)は2026年6月27日時点の情報をもとにしており、制度改定によって変更される可能性があります。申請前には必ず最新の公式情報を確認してください。
本制度は医療に関わる内容を扱っていますが、個別の症状・治療内容・受診に関する判断は必ず担当医師にご相談ください。本記事は医療的助言を提供するものではありません。