高年齢雇用継続給付と60歳以降の働き方を支える給付(2026年版)

本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・支給率はいずれも改定される場合があるため、申請前に必ず公式サイトまたは最寄りのハローワークで最新情報をご確認ください。本記事は情報提供を目的とした一般的な制度解説であり、個別の申請代行・書類作成代行・法律的助言・社会保険労務士法に定める業務の代行を行うものではありません。

この記事が整理すること

定年後の再雇用や65歳までの継続勤務を選んだとき、多くの方が直面するのが「給与が下がった分の手取りをどうカバーするか」という問題です。60歳を境に月収が2〜3割以上下がるケースは珍しくなく、そうした方を対象にした制度が「高年齢雇用継続給付」です。

ただ、この給付は近年大きな見直しが相次いでいます。2025年4月には最高支給率が15%から10%に引き下げられ、65歳以上の別の給付との関係、老齢年金との同時受給時の調整、廃止も視野に入れた将来の縮小路線など、一度に把握しようとすると混乱しやすい制度になっています。

この記事では、高年齢雇用継続給付の2種類の違い(基本給付金と再就職給付金)から始まり、2025年4月改正の詳細、支給率の計算のしかた、在職老齢年金との組み合わせ、申請の実務手順、よくある誤解とつまずき、さらに2026年以降の在職老齢年金改正との組み合わせ効果まで、60歳以降の働き方を設計するために必要な情報をひとつの記事に整理します。

この記事の読者として想定しているのは、次のような方です。

定年を迎え、再雇用制度で働き続けることになったが給与がかなり下がった方。60歳以降の賃金設計を考えている企業の人事・総務担当の方。基本手当を受けたあとに再就職を考えている60代前半の方。老齢年金と雇用継続給付の同時受給でどちらがどう計算されるか知りたい方。

本記事は制度の一般的な情報提供にとどまり、個別の申請判断・書類作成・給付額の確定については、管轄のハローワークまたは社会保険労務士にご相談ください。

制度の全体像

60歳以降の働き方に関わる給付制度は複数ある中で、この記事で扱う「高年齢雇用継続給付」は、雇用保険の制度の一つです。まず全体の位置づけを整理します。

高年齢雇用継続給付の2種類

高年齢雇用継続給付には、2つの種類があります。利用できるのは必ずどちらか一方のみで、同時に両方を受けることはできません。

1つ目は「高年齢雇用継続基本給付金」です。これは、基本手当(いわゆる失業給付)を受け取らずに、継続して同じ会社や別の会社で働き続けている方を対象にした給付です。60歳到達時点からの継続勤務が主な想定で、多くの再雇用ケースがこちらに該当します。

2つ目は「高年齢再就職給付金」です。これは、一度会社を辞めて基本手当を受給したあとに再就職した方を対象にします。基本手当の支給残日数が一定以上あることが要件で、支給残日数の多さによって給付される期間が変わります。

この2種類は対象者が異なるため、自分がどちらに当てはまるかを最初に確認することが重要です。

制度の位置づけ(横断表)

項目高年齢雇用継続基本給付金高年齢再就職給付金
誰が対象か基本手当を受給せず60歳以降も雇用保険被保険者として継続勤務する方基本手当を受給したのち、60歳以降に再就職して被保険者となった方
年齢要件60歳以上65歳未満60歳以上65歳未満
雇用保険加入期間算定基礎期間5年以上算定基礎期間5年以上
賃金低下の条件60歳到達時と比べて現在の賃金が75%未満に低下再就職後の賃金が、基本手当の基礎となった賃金日額×30の75%未満に低下
支給期間60歳到達月から65歳到達月まで(最大約5年)残日数200日以上→最大2年、100〜200日未満→最大1年(いずれも65歳到達月まで)
最大支給率(2025年4月以降に60歳到達した人)賃金の10%賃金の10%
最大支給率(2025年3月以前に60歳到達した人)賃金の15%賃金の15%
申請先ハローワーク(原則事業主経由)ハローワーク(原則事業主経由)
初回申請期限最初の支給対象月の初日から4か月以内最初の支給対象月の初日から4か月以内

65歳以上の高年齢求職者給付金との違い

65歳以上になると「高年齢雇用継続給付」の対象からは外れますが、代わりに「高年齢求職者給付金」という別の制度があります。この2つは名称が似ているため混同されやすいですが、仕組みは大きく異なります。

高年齢求職者給付金は、65歳以上の高年齢被保険者が失業した場合に、基本手当に代えて一時金として支給される制度です。毎月の継続給付ではなく、失業時に一括で支給される点が根本的に異なります。また、就労中ではなく「失業状態」にある間が対象です。

高年齢雇用継続給付は60〜65歳未満の在職中の方を対象とした継続的な月次給付であり、就労している間は止まらない給付です。この2つは対象年齢も支給条件も支給形態もすべて異なるため、65歳になったら切り替わる、という関係で整理するとわかりやすくなります。

支給率の2025年4月改正

2025年(令和7年)4月1日以降に60歳に到達した方については、最高支給率が従来の15%から10%に引き下げられました。これは雇用保険法の改正によるもので、制度が段階的に縮小される流れの一環です。

重要なのは、この変更が「いつ60歳に到達したか」で適用が分かれる点です。すでに2025年3月31日以前に60歳に達していた方には、旧来の最高15%の支給率が引き続き適用されます。2025年4月1日以降に60歳に到達した方から、最高10%の新しい率が適用されます。同じ年齢・同じ職場・同じ条件で働いていても、誕生日によって適用される率が異なるという点は、企業の人事担当者にとっても把握しておくべき重要な情報です。

【無料サンプル】再雇用で月収が下がった会社員のケースを1つ、計算から申請手順まで全部見せます

ここでは、60歳の誕生日が2025年5月(2025年4月1日以降なので新制度が適用)という会社員が再雇用制度で働き続けている場合を例に取り、毎月受け取れる給付額の計算と、申請に必要なステップを一通り見ていきます。

ケース設定

山田さん(仮名)は、2025年5月に60歳の誕生日を迎えました。60歳以前は総合職の正社員として勤務し、60歳到達時の賃金月額(雇用保険上の基準額)は45万円でした。60歳の誕生月に再雇用制度へ移行し、月給が29万円に下がりました。雇用保険の加入期間(算定基礎期間)は22年あります。

この場合、高年齢雇用継続基本給付金を受給できるかどうかを確認します。

ステップ1:受給資格を確認する

まず3つの条件を確認します。

1つ目は年齢です。山田さんは60歳以上65歳未満なのでクリアです。

2つ目は雇用保険の算定基礎期間が5年以上あることです。22年あるのでクリアです。

3つ目は賃金が60歳時の75%未満に低下していることです。60歳時の賃金45万円に対して現在29万円なので、低下率を計算します。

29万円 ÷ 45万円 × 100 = 64.4%

75%未満になっているのでクリアです。3つすべて満たしているため、受給資格があります。

ステップ2:支給率を確認する

山田さんの60歳到達は2025年5月なので、2025年4月1日以降となり新制度(最高10%)が適用されます。

低下率は64.4%です。新制度では64.0%以下の場合に最高10%が支給されますが、64.4%は64.0%をわずかに超えているため、「64%超〜75%未満」の範囲に入り、段階的に逓減する計算式で支給率が決まります。

この範囲での支給率は、厚生労働省が定める次の式で計算できます。

支給率(%)= (−64 × 低下率 + 4,800)÷ 110 × 100 ÷ 低下率

低下率64.4を代入すると、(−64 × 64.4 + 4,800)÷ 110 × 100 ÷ 64.4 = 9.58% となります(小数第3位を四捨五入)。早見表で確認しても、64.5%の欄が9.47%、64.0%以下が10.00%なので、64.4%は両者の間の約9.5%前後となり計算と整合します。

支給率9.58%で支給額を計算すると次のようになります。

29万円 × 9.58% = 2万7,772円

つまり1か月あたり約2万7,800円前後の補填が受けられる計算です。年換算すると約33万3,000円前後になります。なお山田さんの低下率がもう少し下がって64.0%以下になれば、支給率は上限の10%(29万円 × 10% = 2万9,000円)になります。

また、月賃金の29万円に給付金の約2万7,800円を足した合計額(約31万7,800円)が、支給限度額(令和8年8月1日以降は月397,369円)を超えないかも確認が必要です。今回は超えていないのでそのまま受給できます。

給付金は課税されません(所得税の対象外)。また社会保険料の算定基礎には含まれません。

ステップ3:初回の申請手順を確認する

申請の流れは次のようになります。

まず、会社(事業主)が在職事業所を管轄するハローワークに対して「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」を提出します。これは、60歳に達した日の前日から起算して10日以内が原則です。

次に、支給申請書を提出します。初回は「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」を使います。提出の期限は、最初に支給を受けようとする支給対象月の初日から4か月以内です。山田さんの場合、60歳に達した月(2025年5月)が最初の支給対象月となります。

初回に必要な書類は次の4種類です。

1つ目は「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」で、60歳前の賃金実績を証明するものです。雇用保険被保険者番号、氏名、生年月日、60歳前の賃金(原則として6か月分以上の完全月賃金)を記載します。この書類は事業主が作成し、ハローワークに届け出ます。

2つ目は「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」で、受給資格の確認と支給申請を同時に行う書類です。マイナンバーの記載も必要です。

3つ目は賃金台帳と出勤簿(またはタイムカード)で、現在の賃金の実績を証明するために必要です。

4つ目は本人の年齢確認書類(運転免許証やマイナンバーカード等)ですが、マイナンバーがハローワークに登録済みの場合は省略できます。

書類はすべて事業主を通じてハローワークに提出するのが原則ですが、本人が直接持参することも可能です。窓口は在職事業所の所在地を管轄するハローワークです。

ステップ4:2回目以降の申請

初回の申請が完了すると、次の申請日が指定された「高年齢雇用継続給付次回支給申請日指定通知書」がハローワークから交付されます。以降は原則として2か月ごとに申請を繰り返します。

2回目以降の提出書類は、支給申請書と賃金台帳・出勤簿が主です。初回より大幅に簡素化されています。なお、電子申請(事業主が雇用保険の電子申請システムを利用)も可能です。

ステップ5:給付が続く期間と終了のタイミング

山田さんのケースでは、60歳到達月(2025年5月)から65歳到達月まで受給できます。65歳になった月が最後の支給対象月です。

途中で賃金が60歳時の75%以上に戻った場合(給与が上がった場合)は、その月から支給停止になります。再び75%未満に下がれば再開申請できますが、支給が止まっている間は申請を怠らないことが重要です。

このケースから読み取れる重要なポイントを整理すると、次の3点になります。

第1に、申請は事業主が主役で自分1人では完結しない制度である点です。「六十歳到達時等賃金証明書」の作成と届け出は事業主の仕事です。60歳を迎えるにあたり、会社の担当部署に早めに確認することが出発点になります。

第2に、60歳の誕生月の前に動き始めることが重要である点です。60歳到達後10日以内に賃金証明書の届け出が必要になるため、本人から会社へは60歳到達の2〜3か月前には申し出ておく方が余裕をもった準備ができます。

第3に、支給率は毎月の賃金によって変わりうる点です。賞与(ボーナス)は計算の対象外ですが、月々の基本給・残業代など「毎月の賃金」が変動すれば支給率も変わります。毎年8月には支給限度額も改定されるため、その時々の状況を確認しながら申請を続けることが大切です。

ここから先は、申請に直結する実務です。

2025年4月改正の詳細と支給率の計算方法

旧制度(2025年3月31日以前に60歳到達)と新制度(2025年4月1日以降に60歳到達)の違い

2025年4月1日の改正によって、何が変わったかを表で整理します。

比較項目旧制度(2025年3月以前に60歳到達)新制度(2025年4月以降に60歳到達)
最高支給率15%10%
最高支給率が適用される低下率61%以下64%以下
段階的逓減の範囲61%超〜75%未満64%超〜75%未満
給付なし75%以上75%以上

表にはない重要な点として、2025年3月31日以前に60歳に達していた方に対しては、2025年4月1日以降も旧制度の率(最高15%)が引き続き適用されます。これが「経過措置」です。経過措置の適用者は、65歳になるまで旧率が継続します。

支給率の具体的な計算方法

支給率は「賃金の低下率」によって決まります。低下率は次の式で計算します。

低下率(%)= 現在の賃金 ÷ 60歳到達時の賃金 × 100

低下率が求まったら、支給率早見表から対応する支給率を読み取ります。

以下は厚生労働省(愛知労働局)が公開している支給率早見表から、新制度(2025年4月以降に60歳到達した人)と旧制度(2025年3月31日以前に60歳到達した人)の主要な低下率に対応する支給率を抜き出したものです。低下率が0.5%刻みで区分されており、ここでは1%刻みの代表値を掲載します。

低下率(現在の賃金÷60歳時賃金)支給率(新制度)支給率(旧制度)
61%以下10.00%15.00%
62%10.00%13.70%
64%10.00%11.23%
65%8.95%10.05%
67%6.95%7.80%
70%4.16%4.67%
72%2.42%2.72%
74%0.79%0.88%
75%以上0%0%

新制度では低下率が64.0%以下になると最高の10.00%が適用され、64.0%を超えると0.5%刻みで支給率が下がります(たとえば64.5%で9.47%、65.0%で8.95%)。旧制度では61.0%以下で最高の15.00%が適用され、61.0%超では同じく0.5%刻みで逓減します(同じ低下率でも旧制度のほうが支給率が高い点に注意)。上記は2026年6月27日時点で愛知労働局が公開している早見表の値です。支給限度額は毎年8月に改定されますが、支給率そのものの区分は法令で固定されています。実際の申請時は管轄ハローワークが配布する最新の早見表で確認することをお勧めします。

支給額の計算式

支給額 = 支給対象月の賃金 × 支給率

ただし次の条件があります。

支給対象月の賃金と給付金の合計が支給限度額(令和8年8月1日以降は月397,369円)を超える場合は、支給限度額から賃金を引いた残りが支給額になります(つまり合計が限度額以上になる場合は全額受給できない)。

また、支給額が最低限度額(令和8年8月1日以降は2,562円。毎年8月に改定されるため、正確な額はハローワークで確認)を下回る場合は支給されません。

月収が変動する場合の注意

毎月の賃金が変動する場合(残業が多い月・少ない月など)は、その月の実際の賃金をもとに支給率が計算されます。ある月は支給されても、翌月は賃金が上がって75%を超えれば支給されないという状況が起こりえます。

注意すべきは、2か月ごとの申請サイクルで実績をもとに精算するため、各月の賃金実績が正確に申告されることが前提になっている点です。

高年齢再就職給付金の受給要件と注意点

基本手当と再就職給付金の選択

一度会社を辞めて失業した60歳以上の方が雇用保険を使う場合、「基本手当(失業給付)」と「高年齢再就職給付金」のどちらが得かを考える必要があります。ただし、基本手当の受給中は高年齢再就職給付金を同時に受けることができません。この2つは選択・併用ではなく、時系列で順番に受けるものです。

基本手当を受け取りながら再就職先を探し、再就職後に賃金が下がっていれば高年齢再就職給付金を申請するという流れになります。

受給要件の詳細

高年齢再就職給付金を受けるには、次の要件をすべて満たす必要があります。

年齢は60歳以上65歳未満であること。

雇用保険の算定基礎期間が5年以上あること(基本手当の受給に必要な要件と重なりますが、こちらは算定基礎期間であり、受給期間とは異なります)。

再就職前の日における基本手当の支給残日数が100日以上あること。この「残日数」は、基本手当の受給資格決定時の所定給付日数から、すでに受給した日数(待機・給付制限中の日数は除く)を差し引いた残りです。ハローワークで確認できます。

再就職後の各月に支払われる賃金額が、基本手当の基礎となった賃金日額の30倍(これを「みなし賃金日額×30」と呼ぶ)の75%未満に低下していること。

安定した職業に就いて雇用保険の被保険者になっていること(一時的な仕事やフリーランスは対象外)。

支給期間のしくみ

支給される期間は、再就職前の基本手当の支給残日数によって決まります。

残日数が200日以上の場合は、再就職日の翌日から2年間が支給期間です(ただし65歳の誕生月で打ち切り)。残日数が100日以上200日未満の場合は、再就職日の翌日から1年間が支給期間です(同じく65歳で打ち切り)。残日数が100日に満たない場合は、高年齢再就職給付金を受けることができません。

支給期間は「再就職してから何年間もらえるか」という話であり、この期間中も2か月ごとの申請は必要です。

基本手当の「待機・給付制限」と残日数の計算に関する盲点

高年齢再就職給付金を受けるにあたり、実務上でつまずきやすいのが「残日数のカウント方法」です。

基本手当には、ハローワークに離職を申し出てから7日間の待機期間があり、自己都合退職の場合はさらに給付制限期間(2か月または3か月)があります。この待機期間・給付制限期間は「基本手当を受給していない期間」ですが、所定給付日数は消費されます(給付制限期間中はカウントされない部分もあるため、詳細はハローワークで確認が必要です)。

問題は、基本手当をたくさん受給すればするほど残日数が減るという点です。もし再就職のめどが早期に立ちそうであれば、あえて基本手当を多く受給しすぎず、100日以上の残日数を確保した上で再就職することで、高年齢再就職給付金を受けられる可能性があります。

また、再就職するタイミングが早いほど残日数も多くなりますが、就職困難な状況が続いて受給が長引くと残日数が減り、給付期間が短くなるか、または給付対象外になることがあります。

基本手当を受給せずに再就職した場合との比較

定年後に自ら転職を選んで60歳以降に新しい職場に就いた場合、基本手当を受給せずに直接働き始めると「高年齢雇用継続基本給付金」の対象になります。この場合は支給期間が65歳まで最大約5年と長期になります。

一方で、一度基本手当を受給してから再就職した場合は「高年齢再就職給付金」の対象となり、残日数によっては支給期間が1〜2年と短くなります。

どちらが有利かは状況によります。基本手当を受給している間は給付金を受けられますが、基本手当の受給完了まで時間がかかるほど高年齢再就職給付金の期間が短くなるという関係があります。60歳直後に再就職できる場合は、基本手当を受給せずに雇用継続基本給付金を選ぶほうが、トータルの給付期間は長くなる傾向があります。ただし実際の得失は、賃金の低下幅・再就職後の賃金・残日数・年金との組み合わせなどで変わるため、ハローワークに個別相談することをお勧めします。

在職老齢年金との同時受給と調整の仕組み

在職老齢年金とは何か

在職老齢年金は、厚生年金に加入しながら働いている間に老齢厚生年金を受け取る仕組みです。ただし、一定の基準を超えると年金の一部または全部が支給停止されます。

2026年4月以降の改正では、支給停止の基準額(「支給停止調整額」と呼ばれる)が月62万円に引き上げられました。さらに賃金スライドが反映された令和8年度の実際の基準額は月65万円となっています。つまり2026年4月以降は、月収と年金の合計が月65万円を超える部分について、その半分が支給停止されるというルールになります。

この改正は、60代後半(65歳以上)だけでなく、特別支給の老齢厚生年金(64歳以下でも受け取れる場合がある制度)を受けている65歳未満の方にも関係します。

高年齢雇用継続給付と在職老齢年金の「二重の調整」

高年齢雇用継続給付を受けながら老齢厚生年金も受け取っている場合、年金は2段階の調整を受けることがあります。

第1段階が、在職老齢年金のルール(賃金と年金の合計が基準額を超えた場合の支給停止)です。

第2段階が、高年齢雇用継続給付を受給していることによる追加の年金停止です。この追加停止の率は、標準報酬月額に対して最大6%(旧制度適用者)または最大4%(2025年4月以降に60歳到達した人=新制度適用者)です。

つまり、高年齢雇用継続給付を受けると、在職老齢年金による調整に加えてさらに年金が減る可能性があります。これは多くの方が見落としているポイントです。

追加停止の計算方法

追加停止額の計算は、「現在の賃金(標準報酬月額)」に応じた停止率を掛けます。賃金の低下率が小さいほど(賃金がほとんど下がっていないほど)追加停止率も低くなり、低下率が大きいほど(賃金が大幅に下がっているほど)追加停止率が高くなります。最大値は新制度で4%、旧制度で6%です。

たとえば標準報酬月額が30万円で、新制度の最大停止率(4%)が適用される場合、追加で月1万2,000円の年金が停止されます。

停止額の計算は複雑で個人差が大きいため、具体的な金額は年金事務所(日本年金機構)で確認することをお勧めします。

2026年4月改正が年金受給者の実態に与える効果

2026年4月から在職老齢年金の基準額が引き上げられた(賃金スライド後65万円)ことで、これまで年金停止の対象だった方の一部が全額受給できるようになりました。

影響が大きいのは、月収が50万円前後で以前は調整を受けていた方です。たとえば月収45万円・老齢厚生年金15万円の場合(合計60万円)、令和7年度(2025年度)の51万円基準では合計60万円が基準を超えるため、超過分9万円の半分にあたる月約4.5万円の年金が停止されていました。2026年4月以降は65万円が新しい基準となり、合計60万円はその範囲内に収まるため、年金が全額受給できる可能性があります。

ただし高年齢雇用継続給付による追加停止は、在職老齢年金の調整とは独立して適用されます。2026年改正で年金停止が緩和されても、継続給付の受給中は追加停止(最大4%)は残ります。

年収別・年齢別のシミュレーション

シミュレーション1:60歳時月収45万円、再雇用後28万円のケース(新制度)

設定:60歳到達2025年9月、再雇用後月収28万円、基礎年金加入中で特別支給の老齢厚生年金なし(年金受給は65歳から)。

低下率 = 28万円 ÷ 45万円 × 100 = 62.2%

低下率62.2%は新制度の64%以下に該当するため、支給率は10%です。

高年齢雇用継続給付額 = 28万円 × 10% = 2万8,000円

65歳まで(60か月)受給した場合の給付総額の目安:2万8,000円 × 60か月 = 168万円

ただし毎年8月に支給限度額が改定されるため、年々の実際の支給額は変動します。年金の停止はないケースなので、シンプルに給付が手取りに上乗せされます。

シミュレーション2:60歳時月収50万円、再雇用後32万円、特別支給の老齢厚生年金8万円受給中のケース(新制度)

設定:60歳到達2025年11月、再雇用後月収32万円(標準報酬月額32万円)、特別支給の老齢厚生年金8万円/月。

低下率 = 32万円 ÷ 50万円 × 100 = 64.0%

ぴったり64%以下なので、支給率は10%です。

給付額 = 32万円 × 10% = 3万2,000円

在職老齢年金の調整:月収32万円 + 年金8万円 = 40万円が基準額65万円を大幅に下回るため、在職老齢年金による年金停止はなし。

高年齢雇用継続給付による追加年金停止:低下率64%なので最大停止率4%が適用されます。

追加停止額 = 標準報酬月額32万円 × 4% = 1万2,800円

この追加停止によって年金8万円のうち1万2,800円が停止され、実際に受け取れる年金は6万7,200円になります。

手取りのイメージ(給与):32万円

受取年金:6万7,200円

給付金:3万2,000円

合計:41万9,200円

給付金3万2,000円を受ける代わりに年金1万2,800円が止まるため、ネットの恩恵(純増)は3万2,000円 - 1万2,800円 = 1万9,200円となります。

この「純増」を意識することが重要です。特別支給の老齢厚生年金を受給しながら高年齢雇用継続給付を受けると、給付金の受取額がそのまま手取りに加わるわけではなく、年金が一部止まるためです。

シミュレーション3:旧制度(2025年3月以前に60歳到達)の受給者との比較

同じ状況(月収28万円、60歳時月収45万円)でも、60歳到達が2025年3月以前かどうかで受取額が変わります。

旧制度の場合(最高15%):低下率62.2%は61%を超えているため、最高の15%ではなく、旧計算式による逓減後の率が適用されます。旧制度の計算式(支給額 = −183÷280 × 現在の賃金 + 137.25÷280 × 60歳時賃金)に当てはめると、支給率は約13.45%になります。

給付額(旧制度・約13.45%)= 28万円 × 13.45% = 約3万7,660円

給付額(新制度・10%)= 28万円 × 10% = 2万8,000円

差 = 約9,660円/月

年換算すると約11万6,000円の差です。60歳到達日が2025年4月1日の前か後かで、最大65歳まで受け取れる給付の総額が、このケースでは5年間で約58万円変わることになります。誕生日が数日違うだけで受け取れる総額がこれだけ動くため、2025年3月から4月にかけて60歳を迎える方は、自分がどちらの制度の対象かを賃金証明書の60歳到達日で必ず確認しておくことが大切です。

2030年廃止の議論と将来の生活設計

廃止スケジュールについて正確に把握する

「高年齢雇用継続給付は2030年に廃止される」という情報が各所で流布しています。この根拠となっているのは、雇用保険部会(厚生労働省の審議会)での議論です。2019年(令和元年)12月の雇用保険部会報告書では、2025年4月からの支給率引き下げを施行しつつ、「廃止も含め引き続き検討する」と明記されました。

ただし2026年6月時点では、厚生労働省から「2030年4月に廃止する」という確定的な公式発表は確認されていません。2025年4月から最高支給率を15%から10%に引き下げることは確定・施行済みですが、それ以降の縮小・廃止については「検討中」の段階です。

記事内で「2030年廃止が確定している」という前提で話を進めるのは、公式情報として確認できないため不正確です。ただし、廃止を含めた縮小路線が続く可能性が高い制度であることは事実であり、「2030年以降は給付がなくなる可能性がある」という想定で将来設計を立てておくことは合理的です。

廃止を前提とした生活設計の考え方

高年齢雇用継続給付が今後縮小・廃止された場合、60〜65歳の手取り収入がさらに減る可能性があります。現在この給付を受けている方や、将来受ける予定の方は、給付ゼロを想定した手取りシミュレーションを持っておくことが重要です。

たとえば月収28万円で給付金2万8,000円(10%)を受けている方の場合、給付がゼロになると月2万8,000円の収入減になります。これを補う手段として考えられるのは次のような選択肢です。

定年延長や65歳定年への移行を会社と交渉する。70歳まで働ける制度(努力義務)を活用して就労期間を延ばし、老齢年金の繰下げ受給で年金額を増やす。iDeCo(個人型確定拠出年金)を60歳以降も継続拠出(2022年改正で75歳まで可能)し、受取を繰り下げる。老齢厚生年金の繰下げを活用する(1か月繰り下げるごとに0.7%増額)。

特に「65歳以降の年金額をいくら確保できるか」が、60代前半の給付縮小を補う長期的な鍵になります。ねんきん定期便やねんきんネットで自分の年金見込み額を確認し、繰下げした場合のシミュレーションと比較することをお勧めします。

定年延長・65歳定年化を選んだ企業での注意点

企業が65歳定年に変更した場合、60歳前後での賃金変化がない(同じ賃金が継続される)ケースがあります。この場合、賃金が「60歳時の75%未満に低下」という条件を満たさないため、高年齢雇用継続給付は受給できません。

65歳定年化・定年延長の選択は従業員の待遇安定に貢献しますが、雇用継続給付の観点では「賃金が下がっていなければ給付なし」という点に注意が必要です。

企業によっては60歳以降も正社員賃金を維持しながら65歳定年にした結果、本人が給付の存在自体を知らずに過ごすケースもあります。逆に、60歳で再雇用として別の賃金体系に移行している場合は給付の対象になりやすい、という違いがあります。

企業側の実務対応

再雇用後の賃金設計と高年齢雇用継続給付の関係

企業が60歳以降の再雇用制度を設計する際、高年齢雇用継続給付を活用することを前提にした賃金設計が行われることがあります。たとえば「再雇用後の月収を60歳前の70%程度に設定し、差額の一部を給付金で補う」という考え方です。

ただし、2025年4月以降の改正で給付率の上限が下がったため、以前の設計よりも給付額が少なくなっています。再雇用制度の賃金設計を見直していない場合、従業員が期待していた補填が得られないという状況になることがあります。

特に「旧制度適用者(2025年3月以前に60歳到達)」と「新制度適用者(2025年4月以降に60歳到達)」が社内に混在する場合、同じ再雇用賃金でも受け取る給付金の額が異なります。これは人事担当者が個別に管理しなければならない点であり、特に旧制度から新制度への移行期(2025年〜数年間)に採用・再雇用を行う企業では混乱が生じやすいです。

混在管理の実務上の対処法

社内に旧率(15%)適用者と新率(10%)適用者が混在する場合、次のような管理が必要になります。

まず従業員ごとに60歳到達日を把握し、2025年4月1日の前後で区分を記録します。給与システムや人事台帳に「高年齢雇用継続給付:旧制度/新制度」のフラグを立てると、申請書類の作成時に取り違えを防げます。

申請書類は事業主が作成・届け出るため、書類の取り違えが給付額の誤りに直結します。六十歳到達時等賃金証明書を作成する際は、対象者の60歳到達日を改めて確認し、適用制度を誤らないよう注意が必要です。

就業規則の整備と従業員への説明

高年齢雇用継続給付は、就業規則や再雇用規程に直接記載される制度ではありませんが、「再雇用後の賃金については高年齢雇用継続給付を活用することがある」という説明を採用・退職予定者向けの説明書に盛り込む企業が増えています。

ただし注意が必要なのは、「給付金は必ず受け取れる」と会社側が保証する内容を書かないことです。支給は本人の要件・ハローワークの審査・予算状況に依存するため、「受給できる場合がある」という表現にとどめるべきです。

また2025年4月の改正を機に、再雇用規程や賃金規程の見直しをしていない企業では、「従来の再雇用賃金は給付金込みで設計されていたが、給付率が下がったため実質的な手取りが想定より少ない」という問題が顕在化しています。人事担当者はこの点を経営層に共有し、賃金テーブルの点検を行うことが推奨されます。

よくある誤解・つまずきポイント

誤解1:「60歳を過ぎたら自動的にもらえる」

高年齢雇用継続給付は、資格を満たしていても申請しなければ受給できません。申請は事業主経由で行う必要があり、会社が動かなければ手続きが進みません。60歳を迎えるにあたり、会社の総務・人事部門に早めに申し出ることが第一歩です。

また、初回申請の期限(最初の支給対象月の初日から4か月以内)を過ぎると、その期間分の給付は受けられなくなります。「申請できる期間はあるから後でやればいい」と思って放置すると、気づいたときには期限切れになっているケースがあります。

誤解2:「ボーナスも計算に入る」

毎月の支給対象月の賃金の計算に使うのは、「毎月決まって受け取る賃金」です。賞与(ボーナス)は支給対象月の賃金に含まれません。ボーナスを多くもらった月も、雇用継続給付の支給対象月の賃金は変わらず、ボーナスによって低下率が変わることはありません(ただし、賃金証明書の作成における「60歳時賃金の算出」にはボーナスを含む賃金が使われる場合がありますので、詳細はハローワークで確認してください)。

誤解3:「給付金は年金より先に受け取れるからメリットしかない」

高年齢雇用継続給付を受けながら特別支給の老齢厚生年金(64歳以下で受け取れる制度)も受給している場合、年金が一部追加停止されます(新制度では標準報酬月額の最大4%)。給付金を受け取ることで手取りが増えるのは間違いありませんが、年金が一部止まる点を差し引いて考える必要があります。

特に標準報酬月額が高い方(たとえば月40万円以上)は、年金の追加停止額も大きくなるため、ネットでの恩恵が想定より少ない場合があります。

誤解4:「給付中は年金停止が解除される」

給付金の受給が終わっても(65歳に達した場合など)、在職中であれば在職老齢年金のルールは引き続き適用されます。高年齢雇用継続給付による追加停止は65歳到達で終わりますが、在職老齢年金の調整は65歳以降も継続します(ただし65歳以降の在職老齢年金は、65歳未満と同様の調整が適用されます)。

誤解5:「申請が遅れても遡って受給できる」

申請期限(最初の支給対象月の初日から4か月以内)を超えた場合、その期間の給付を遡って受けることは基本的にできません。期限切れになってしまうと、その月の給付は永久に失われます。これは最もよくある失敗で、気づかずに数か月分を損するケースが実際にあります。

事業主が従業員の60歳到達を見落として手続きを怠ったことによる損失については、従業員との間でトラブルになることもあるため、企業の人事担当者は60歳を迎える従業員のリストを年間で把握しておく必要があります。

誤解6:「再就職給付金は基本手当を受け取り切ってから申請できる」

高年齢再就職給付金は、基本手当の受給を完了してから申請するものではありません。基本手当の支給残日数が100日以上ある状態で再就職した場合に申請するものです。つまり「基本手当を受け続けながら探し続けて、残日数が100日以上あるうちに就職を決める」ことが条件です。

受給し続けて残日数が99日以下になってから就職した場合は、再就職給付金の対象外になります。このタイミングの管理が実務上の最大の注意点です。

誤解7:「社会保険料が増える」

高年齢雇用継続給付の給付金は社会保険料(健康保険・厚生年金保険の保険料)の算定基礎に含まれません。給付金を受け取っても保険料は変わりません。ただし、給付金受給中に年金が追加停止されている場合、年金停止の計算には標準報酬月額(実際の賃金をもとにした額)が使われます。給付金そのものが社会保険料に影響するわけではありませんが、賃金自体の変動は標準報酬月額に反映されます。

高年齢雇用継続給付受給終了後(65歳以降)の生活設計へのつなぎ

65歳でリセットされること・継続されること

65歳の誕生月に高年齢雇用継続給付は終了します。同時に、在職老齢年金による年金追加停止(高年齢雇用継続給付に連動した最大4%の停止)も終わります。

一方で変わらないこととして、引き続き就労している場合は厚生年金保険の被保険者であり続けるため、在職老齢年金のルール(賃金と年金の合計が基準額を超える部分の年金が停止される)は65歳以降も適用されます。

65歳以降に離職した場合は、「高年齢求職者給付金」の対象になります。これは一時金の支給(失業認定後に所定給付日数分が一括で支給)であり、継続的な月次給付ではありません。

65歳以降の年金繰下げという選択

高年齢雇用継続給付を受けている間(60〜65歳)は、老齢基礎年金や老齢厚生年金を繰り下げることができます。繰下げ受給は、65歳を過ぎてから年金を受け始めるという選択で、1か月ごとに0.7%の割増が永続的に適用されます。

60歳時の賃金から大幅に下がっても、雇用継続給付で補填しながら年金の繰下げを続ければ、65歳以降の毎月の年金が増えるという長期的な戦略が成立します。特に70歳まで繰り下げると42%の増額になるため、元気で働ける間は就労を続けながら繰り下げる選択は、長命リスクへの備えとして有効です。

65歳超雇用推進助成金(企業向け)

65歳以降まで雇用する制度を整備した企業向けに、「65歳超雇用推進助成金」(厚生労働省)が用意されています。高年齢労働者処遇改善促進助成金が2025年3月31日に廃止されたことに伴い、代替的な制度として活用が期待されています。

この助成金には3つのコースがあります。

65歳超継続雇用促進コースは、65歳以上への定年引き上げ、定年廃止、66歳以上の希望者全員を対象とする継続雇用制度の導入、他社での継続雇用制度導入のいずれかを実施した事業主が対象です。

高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは、高年齢者向けの評価・配置・賃金制度などの雇用管理制度を整備した事業主が対象です。

高年齢者無期雇用転換コースは、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換した事業主が対象です。

助成額・要件の詳細は、厚生労働省または高齢・障害・求職者雇用支援機構(都道府県支部)に直接確認してください。

申請チェックリスト

以下は、高年齢雇用継続基本給付金を申請する際に確認すべき事項の一覧です。実際の申請では管轄ハローワークの指示に従ってください。

申請前の確認

初回申請に必要な書類の準備

申請期限の管理

継続受給中の確認

年金との組み合わせ

よくある質問(FAQ)

Q1. 高年齢雇用継続給付の対象になるかどうかは誰が決めるのですか。

ハローワークが決定します。事業主を通じて書類を提出し、ハローワークが支給要件を審査した上で支給・不支給を決定します。本人が自分で計算して「対象になる」と判断しても、書類の内容や実態が要件を満たしていなければ支給されません。

Q2. 給付金は毎月自動的に振り込まれますか。

そうではありません。2か月ごとに申請書を提出する必要があります。申請期限を過ぎると、その期間の給付は受けられなくなります。

Q3. 会社を辞めて別の会社に再就職した場合はどうなりますか。

転職先でも雇用保険の被保険者になる場合は、転職先での賃金状況によっては引き続き高年齢雇用継続基本給付金の対象になる可能性があります。ただし、一度離職して基本手当を受給した場合は「高年齢再就職給付金」に切り替わります。どちらが適用されるかは状況次第なので、転職のタイミングで管轄のハローワークに確認してください。

Q4. フリーランス(個人事業主)になった場合も受給できますか。

雇用保険の被保険者でなくなるため、受給できなくなります。高年齢雇用継続給付は雇用保険の制度であり、被用者(雇われている人)が対象です。フリーランスや個人事業主は雇用保険に加入できないため、受給資格を失います。

Q5. 支給対象月の途中で65歳になった場合はどうなりますか。

65歳に達した月が最後の支給対象月となります。月の途中で65歳になった場合でも、その月分の給付(1か月分)を受けられます。65歳を超えた月からは支給されません。

Q6. 育児休業中も高年齢雇用継続給付を受けられますか。

同一の月に育児休業給付を受けている場合は、高年齢雇用継続給付は受けられません(同月支給不可)。育児休業が終わり、職場に復帰した後は改めて要件を確認することになります。

Q7. 高年齢再就職給付金は、再就職後いつから受給できますか。

最初の支給対象月の初日から4か月以内に申請すれば、再就職した月(支給要件を満たした最初の月)から遡って受給できます。申請が遅れると、4か月を超えた部分の給付は受けられなくなります。

Q8. 賃金証明書の「60歳時の賃金」はどうやって計算されますか。

「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」には、60歳到達前の賃金実績を記入します。原則として60歳の誕生日前の完全月賃金が6か月以上必要で、ハローワークが賃金算出方法のルールを定めています。日給・時給・月給など賃金形態によって算出方法が異なるため、詳細は事業主を通じてハローワークに確認してください。

Q9. 病気で休んで賃金が減った月も支給対象になりますか。

傷病により欠勤して賃金が減少した場合でも、月の初日から末日まで被保険者であれば原則として支給対象になります。ただし傷病手当金(健康保険の給付)と同時に受給できるかどうかは制度ごとに確認が必要です。高年齢雇用継続給付は賃金が支払われていることを前提としているため、無給の欠勤が続いて賃金がゼロになった月については支給の対象外となる可能性があります。

Q10. 特別支給の老齢厚生年金を受け取っていると申請できないのですか。

申請できます。ただし、高年齢雇用継続給付を受けながら老齢厚生年金を同時に受給する場合は、年金が一部追加停止されます(新制度では標準報酬月額の最大4%)。申請できないということはなく、給付金を受けながら年金の一部が止まるという調整が入ります。

Q11. 高年齢雇用継続給付の申請を会社に頼めない場合はどうすればよいですか。

本人が直接ハローワークに申請することも可能です。ただし「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」は事業主が作成・提出する義務があるため、会社がこの書類を作成・提出しないと手続きが進みません。会社が協力しない場合は、ハローワークに相談すると対応方法についてアドバイスを受けられます。

Q12. 60歳以降に複数の会社でパートとして働いた場合も対象になりますか。

複数の事業所で短時間勤務をしている場合、雇用保険はどちらか一方の事業所で加入するルール(主たる事業所で加入)になっています。雇用保険の被保険者として算定基礎期間が5年以上あり、賃金が75%未満に低下していれば、原則として対象になりえます。ただし複数就業の取り扱いは複雑なため、ハローワークで個別に確認してください。

Q13. 2025年4月に改正があったと聞きましたが、現在受給中の人は影響を受けますか。

2025年3月31日以前にすでに60歳に達して受給していた方は、旧制度(最高15%)のままで継続受給できます。2025年4月1日以降に新たに60歳に達した方から、新制度(最高10%)が適用されます。現在受給中の方が自動的に率を切り下げられるという変更はありません。

Q14. 2030年に廃止されると聞きましたが、本当ですか。

2026年6月時点で確認できる厚生労働省の公式情報では、2030年廃止を確定した発表は見当たりません。雇用保険部会では廃止も含めた検討が続いており、2025年4月に最高支給率を10%に引き下げる改正が施行されました。今後さらに縮小・廃止される可能性は否定できませんが、現時点では確定情報ではありません。最新の動向は厚生労働省の公式サイトで確認することをお勧めします。

出典一覧(URL・確認日)

本記事は以下の一次情報を確認した上で執筆しています。

令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00043.html

確認日:2026年6月27日

ハローワークインターネットサービス 雇用継続給付(ハローワーク・厚生労働省)

https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html

確認日:2026年6月27日

Q&A〜高年齢雇用継続給付〜(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158464.html

確認日:2026年6月27日

年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整(日本年金機構)

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/koyou-chosei/20140421-02.html

確認日:2026年6月27日

在職老齢年金制度の見直しについて(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00022.html

確認日:2026年6月27日

65歳超雇用推進助成金(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139692.html

確認日:2026年6月27日

高年齢労働者処遇改善促進助成金 令和7年3月31日廃止(山梨労働局/厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00050.html

確認日:2026年6月27日

高年齢雇用継続給付支給率早見表・支給額早見表(令和7年4月1日以降/令和7年3月31日以前)(愛知労働局/厚生労働省)

https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/content/contents/002344403.pdf

確認日:2026年6月27日(本記事の支給率テーブルはこの公式早見表の値に基づく)

令和8年度の年金額改定・在職老齢年金の支給停止調整額65万円(社会保険労務士PSRネットワーク)

https://www.psrn.jp/topics/detail.php?id=39623

確認日:2026年6月27日

令和7年8月1日からの雇用保険の支給限度額・最低限度額の変更(社会保険労務士PSRネットワーク)

https://www.psrn.jp/topics/detail.php?id=37320

確認日:2026年6月27日

高年齢雇用継続給付の給付率の引き下げに伴う老齢厚生年金の支給停止率の改正について(Primary Associates・社会保険労務士解説)

https://primary-office.com/sr-blog/高年齢雇用継続給付の給付率の引き下げに伴う老齢/

確認日:2026年6月27日(参考情報として参照。確定情報は一次情報で確認)

高年齢雇用継続給付の計算と申請【2026年版】(CalcEasy)

https://calceasy.net/blog/employment-retention-benefit-guide-2026

確認日:2026年6月27日(参考情報として参照。支給率テーブルは上記の愛知労働局公式早見表で確認済み)

免責事項

本記事は情報提供を目的とした制度解説であり、個別の申請代行・書類作成代行・社会保険労務士法に定める業務の代行を行うものではありません。記載している給付率・金額・要件・期限は2026年6月27日時点の公開情報に基づくものであり、今後の法改正・規則変更によって変わる場合があります。申請前には必ず管轄のハローワークまたは厚生労働省の公式サイトで最新情報をご確認ください。

高年齢雇用継続給付の受給可否・金額の確定はハローワークの審査によるものであり、本記事の記載は受給を保証するものではありません。年金との調整については日本年金機構(年金事務所)に、個別の手続き相談については社会保険労務士にご相談ください。個別の法律的助言・投資助言・医療助言は行っておりません。