後期高齢者医療制度の保険料軽減と窓口負担を整理する(2026年版・75歳以上のご家族向け申請の実務ガイド)

本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・受付期間はいずれも変更されることがあるため、申請前に必ず公式サイトおよびお住まいの市区町村窓口で最新情報をご確認ください。

この記事が整理すること

75歳になった親御さん、あるいはご自身が後期高齢者医療制度に加入したとき、こんな疑問が生まれることがあります。「保険料はどう決まるのか」「軽減があると聞いたが、自分で申請しないといけないのか」「病院の窓口で2割と言われたが、1割になる方法はあるのか」。

この記事が対象とするのは、75歳以上の方本人、そのご家族、そして親の医療費・保険料を一緒に考えたい方です。

整理するのは次の論点です。

後期高齢者医療制度の仕組み(対象者・加入方法・運営主体)、保険料の計算のしかた(均等割と所得割の計算方法と具体例)、均等割の軽減(7割・5割・2割の所得基準と自動適用のしくみ)、所得割の軽減(低所得者への特例)、元被扶養者への軽減措置(2年間の特例)、保険料の減免制度(災害・収入減少時の申請手続きと必要書類)、2026年度の保険料改定(上限85万円+子育て支援金2.1万円)、窓口負担割合のしくみ(1割・2割・3割の判定基準)、2割負担の対象者の具体的な年収・所得要件、2割負担の配慮措置終了(2025年10月以降)と現状、高額療養費制度(外来月18,000円上限・多数回該当)、保険料の納付方法(特別徴収・普通徴収)、マイナ保険証への移行と資格確認書、財政審による3割負担化提言(2026年4月)と今後の見通し。

さらに、多くの記事で曖昧なまま書かれている「軽減が自動適用か申請が必要か」の区別を一覧表で整理し、減免制度の申請フロー・必要書類・窓口まで実務的な粒度で解説します。入院時食事療養費や差額ベッド代など窓口負担以外の自己負担についても整理します。

本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成代行・法律的助言を行うものではありません。本記事の内容は一般的な情報であり、個別の状況により適用される制度・金額・手続きは異なります。申請前には必ず担当窓口にご確認ください。

制度の全体像

後期高齢者医療制度とは何か

後期高齢者医療制度(長寿医療制度)は、75歳以上の方が加入する独立した医療保険制度です。これまで会社員なら健康保険組合、自営業なら国民健康保険に入っていた方も、75歳になると自動的にこの制度に移行します。

運営しているのは、都道府県ごとに全市区町村が参加して設立した「後期高齢者医療広域連合」です。保険料の賦課(計算して通知すること)・医療給付の決定・資格の管理は広域連合が担い、保険料の徴収業務と窓口対応は市区町村が担当しています。実際に問い合わせたり書類を提出したりするのは市区町村の窓口になることが多いため、「広域連合」という名前を見ても戸惑う必要はありません。

65歳以上74歳以下の方で、一定の障害の状態にあると広域連合から認定を受けた場合も、希望すれば加入できます。ただし、この場合は申請が必要で、75歳到達のように自動的に移行するわけではありません。

加入手続きは原則として不要

75歳の誕生日が来ると、手続きなしで自動的に後期高齢者医療制度の被保険者となります。誕生月の前月末ごろに、お住まいの市区町村から「資格確認書」が郵送されてきます(2026年8月以降の詳細については後述します)。

会社の健康保険の被扶養者だった方も、75歳になると扶養からはずれてこの制度に自動加入します。勤務先や保険組合への連絡が必要になる場合はありますが、後期高齢者医療への加入手続きは不要です。

制度の財源構成

後期高齢者医療制度の財源は、被保険者が納める保険料(約1割)、現役世代の医療保険が負担する「後期高齢者支援金」(約4割)、国・都道府県・市区町村の公費(約5割)の3つで成り立っています。つまり、医療費の大半は公費と現役世代の支援によって賄われており、保険料の自己負担は費用全体の一部にあたります。

制度の全体像:何が自動で、何が申請が必要か

後期高齢者医療制度に関連する「軽減・減免・給付」の中で、申請が必要なものと不要なものは明確に区別されています。この区別を知らないまま放置すると、本来受け取れるはずの給付を見逃すことがあります。

項目申請の要否窓口備考
75歳到達での制度加入不要(自動加入)資格確認書が郵送される
均等割の軽減(7割・5割・2割)不要(所得判定で自動適用)前年の所得に基づく
元被扶養者の均等割5割軽減不要(広域連合が確認)2年間の特例
所得割の軽減(東京都等・独自)不要(自動適用)※自治体による都道府県の独自制度
保険料の減免(災害・収入減)要申請市区町村窓口申請期限あり
高額療養費原則不要(限度額適用認定証は申請)事後に還付される場合あり
葬祭費要申請市区町村窓口死亡から2年以内

【無料サンプル】保険料の計算を1ケース、最後まで全部見せます

保険料の計算方法を理解するには、実際の数字で追ってみるのが一番わかりやすいです。ここでは、典型的な一人暮らしの高齢者のケースを使って、2026年度(令和8年度)の保険料を計算します。あくまで制度のしくみを理解するための例示であり、実際の保険料は住所地の広域連合の保険料率によって異なります。

ケース設定

愛知県に住む76歳の女性(単身世帯)。収入は公的年金のみで、年金収入は180万円。他に所得なし。

なぜ愛知県かというと、令和8・9年度の全国平均月額7,989円に近い都道府県の一例として取り上げています(全国では東京都月10,352円から青森県月4,990円まで大きな差があり、計算例は一例にすぎません)。

ステップ1:計算に使う「所得」を求める

後期高齢者医療の保険料を計算するときに使う「賦課の基礎となる所得金額」は、前年(2025年)の総所得金額等から基礎控除(43万円)を引いた金額です。

年金収入には「公的年金等控除」が適用されます。

65歳以上の方の公的年金等控除額(年金収入が330万円以下の場合)は、収入金額から110万円を引いた金額が公的年金等に係る雑所得となります。

年金収入180万円 − 公的年金等控除110万円 = 雑所得70万円

ここから基礎控除43万円を引きます。

70万円 − 43万円 = 27万円

これが「賦課の基礎となる所得金額(賦課所得)」です。

ステップ2:均等割額を確認する

均等割額は、被保険者が所得に関係なく均等に負担する部分です。令和8年度の全国平均は年額56,083円(医療分)ですが、都道府県によって異なります。愛知県の令和8・9年度の均等割額は都道府県固有の数値になりますので、ここでは全国平均に近い仮の数字として「年額58,000円」で計算を進めます(実際の保険料はお住まいの広域連合の通知書で確認してください)。

ステップ3:軽減判定をする

均等割額の軽減には、7割・5割・2割の3段階があります。軽減は申請なしで自動的に適用されます。

軽減の判定は「同じ世帯の後期高齢者医療の被保険者全員+世帯主」の「総所得金額等の合計」で行われます。このケースでは単身世帯のため、本人の総所得金額等のみで判定します。

総所得金額等は年金収入から公的年金等控除を引いた雑所得で、このケースでは70万円です(基礎控除を引く前の数字で判定します)。

7割軽減の基準:43万円+10万円×(年金・給与所得者数−1)以下

このケースでは年金所得者は本人1人のため、43万円+10万円×(1−1)=43万円以下かどうかが判定基準です。

本人の総所得金額等は70万円なので、43万円を超えています。7割軽減の対象外です。

5割軽減の基準:43万円+31万円×被保険者数+10万円×(年金・給与所得者数−1)以下

単身世帯で被保険者は1人、年金所得者は1人のため:

43万円+31万円×1+10万円×0 = 74万円以下かどうかです。

本人の総所得金額等は70万円であり、74万円以下の基準を満たします。

このケースは5割軽減の対象です。

ステップ4:均等割額の軽減後の金額を求める

均等割額(仮)58,000円 × (1 − 0.5)= 29,000円(5割軽減後の均等割額)

ステップ5:所得割額を求める

所得割額は賦課所得に所得割率をかけて計算します。令和8年度の全国平均の所得割率は10.17%ですが、都道府県によって異なります。ここでは仮の所得割率として「10.0%」で計算します。

賦課所得27万円 × 10.0% = 27,000円

所得割額は27,000円です。

ステップ6:年間の保険料を計算する

均等割額(軽減後)29,000円 + 所得割額27,000円 = 年間保険料56,000円

これに加えて、令和8年度から新設された子育て支援金分(均等割1,351円+所得割27万円×0.25%=675円、合計2,026円)が別途加わります。

医療分の年間保険料56,000円 + 子育て支援金分2,026円 = 年間合計約58,026円

月割すると、おおむね月額4,800円前後という計算になります。

ここで押さえてほしい3つのポイント

一つ目は、均等割の軽減は自動適用という点です。申請書を出さなくても、前年の所得情報を基に毎年自動的に判定されます。引越しや世帯構成の変化があった場合は、市区町村に申告が必要になる場合があります。

二つ目は、子育て支援金分が令和8年度から新たに加わったという点です。後期高齢者の保険料に「子育て支援」の名目での負担が加わることに違和感を覚える方もいるかもしれませんが、少子化対策を社会全体で支える目的で設けられた制度です。令和8年度からの金額は年間で平均2,333円(月額194円)です。

三つ目は、保険料は都道府県によって大きく違うという点です。全国最高の東京都(月10,352円)と最低の青森県(月4,990円)では月5,362円の差があります。住所地の広域連合から届く保険料決定通知書(毎年7〜8月ごろ送付)で実際の金額を確認してください。

ここから先は、申請に直結する実務です。

均等割の軽減制度を詳しく整理する

3段階の軽減基準と自動適用のしくみ

均等割の軽減は、低所得の方の保険料負担を軽くするための国の制度です。

判定の基準となる「総所得金額等」は、前年の1月から12月の所得に基づきます。公的年金収入がある方の場合は、年金収入から公的年金等控除を差し引いた雑所得の金額で判断します。

重要なのは、判定に使う「世帯の総所得金額等の合計」が、被保険者本人だけでなく「同じ世帯の後期高齢者医療被保険者全員+世帯主」の合計であるという点です。つまり、被保険者本人の所得が低くても、世帯主(後期高齢者でない家族)の所得が高ければ、軽減が適用されない場合があります。

軽減区分所得基準軽減割合令和8・9年度の特例
7割軽減43万円+10万円×(年金・給与所得者数−1)以下均等割を7割軽減医療分のみ7.2割に拡充
5割軽減43万円+31万円×被保険者数+10万円×(年金・給与所得者数−1)以下均等割を5割軽減変更なし
2割軽減43万円+57万円×被保険者数+10万円×(年金・給与所得者数−1)以下均等割を2割軽減変更なし

※所得基準の「43万円」「31万円」「57万円」の数値は国の基準です。都道府県・広域連合によって若干の独自調整がある場合があります。

「年金・給与所得者数」とは、世帯内で年金収入または給与収入がある方の人数です。複数人いる場合は基準額が引き上げられ、軽減を受けやすくなるよう調整されています。

令和8・9年度の7.2割特例とは何か

令和8・9年度は、7割軽減に該当する方について「医療分の均等割」に限り、7割ではなく7.2割の軽減が適用される特例措置が設けられています。0.2割分の差は小さく見えますが、これは低所得の方を対象にした上乗せ軽減です。子育て支援金分については通常の7割軽減が適用されます(7.2割の対象外です)。

判定時期と更新のしくみ

軽減割合の判定は年に1回、主に毎年7月前後に前年の所得に基づいて行われます。所得が変わった翌年から軽減区分が変わる場合があります。年度の途中で収入が大きく変わっても、その年度内の軽減区分は変わらないのが原則です。

ただし、確定申告や住民税申告を行っていないと、所得が「不明」として扱われ、軽減が正しく適用されないことがあります。収入が年金のみで少額の方でも、市区町村への所得申告(住民税の申告)を毎年行っておくことが、正確な軽減適用につながります。

申請は不要だが、「届出」が必要なケース

均等割軽減は申請不要で自動適用されますが、以下の場合は市区町村への届出が必要になることがあります。

引越しして住所地が変わった場合は、転入届と合わせて後期高齢者医療の手続きが必要です。世帯の構成(世帯主の変更・世帯分離・世帯合併)が変わった場合も、翌年の軽減判定に影響します。前年に所得がなかった場合でも、申告がないと軽減が適用されないことがあるため、住民税の申告書の提出が必要です。

所得割の軽減について

国の制度と都道府県の独自制度

所得割についても、低所得の方を対象に軽減措置があります。ただし、均等割の軽減(7割・5割・2割)が国の統一制度として全都道府県共通で実施されているのとは異なり、所得割の軽減は各都道府県・広域連合が独自に実施しているケースが多く、対象となる所得の範囲や軽減率は都道府県によって差があります。

東京都の例では、賦課の基礎となる所得金額(賦課所得)が15万円以下(公的年金収入のみの場合、年金収入が168万円以下に相当)の方は所得割額が50%軽減、賦課所得が20万円以下(年金収入のみの場合173万円以下)の方は25%軽減されます(令和7年度時点。確認日:2026年6月27日。変更される場合があるため最新情報を東京都後期高齢者医療広域連合でご確認ください)。

所得割の軽減が設けられているかどうか、またその基準については、お住まいの後期高齢者医療広域連合の公式サイトまたはお住まいの市区町村窓口でご確認ください。この軽減も自動適用のケースが多いですが、自治体によって異なります。

元被扶養者への軽減措置(2年間の特例)

対象になる方

後期高齢者医療制度に加入する前日まで、次の保険の被扶養者だった方が対象です。

全国健康保険協会(協会けんぽ)、健康保険組合、共済組合、船員保険のいずれかの被保険者(会社員・公務員など)に扶養されていた方です。

なお、国民健康保険の被扶養者という制度はないため、前の保険が国民健康保険だった方はこの軽減の対象外です。

軽減内容

均等割額が加入した月から2年を経過する月まで(最長24か月間)5割軽減されます。

所得割額は、当面の間かかりません(0円)。

ただし、世帯全体の所得が低くて7割軽減の対象になる場合は、7割軽減が優先的に適用されます。5割軽減と7割軽減が重複して8.5割になるわけではありません。

申請は不要

広域連合が前の保険情報を確認して自動的に適用します。ただし、扶養の関係が正しく引き継がれているか確認するために、資格確認書が届いたら記載内容を確かめ、疑問があれば市区町村窓口に相談することをおすすめします。

「2年経過後」の保険料変化

元被扶養者の軽減は加入から2年間の特例です。2年が経過すると、軽減なしの所得割(賦課所得に所得割率をかけた額)が課されるようになります。年金収入があれば所得割が発生する可能性があるため、2年目が終わるころに保険料決定通知書の内容が変わることを覚えておいてください。

保険料の減免制度(申請が必要なもの)

均等割軽減との違い

均等割軽減(7割・5割・2割)は制度の恒久的な軽減であり申請不要です。一方、保険料の「減免」は、特別な事情が生じたときに一時的に保険料を軽くしてもらうための制度であり、申請が必要です。

この区別を知らずに「軽減の申請をしなくていい」と思い込んでいると、減免が受けられる状況でも手続きを取り損なうことがあります。

対象になる主な事由

後期高齢者医療制度の保険料の減免対象として広域連合が定めている主な事由は次の通りです。

一つ目は、災害による損害です。震災・風水害・火災・その他これらに類する災害によって、住宅・家財・その他の財産に著しい損害を受けた場合が対象になります。

二つ目は、家計維持者の変化による収入の著しい減少です。被保険者の属する世帯の主たる生計維持者が、死亡・重大な障害・6か月以上にわたる長期入院などにより、その世帯の収入が著しく減少した場合です。

三つ目は、その他の特別な事情です。事業の廃止・失業・死別・離婚など、被保険者本人の収入が著しく減少した場合も、自治体によっては減免対象となることがあります。

申請の流れ(具体的なステップ)

以下は減免申請の標準的な流れです。各市区町村によって書式・提出期限・判定基準が異なるため、事前に窓口に確認することをおすすめします。

ステップ1:事由の発生後、速やかに市区町村の後期高齢者医療担当窓口に相談します。減免には申請期限がある場合が多く、保険料の納期前に申請することが条件になっているケースがあります。

ステップ2:窓口で減免申請書を受け取ります(または自治体公式サイトからダウンロードします)。

ステップ3:必要書類を揃えます。

ステップ4:窓口に申請書と必要書類を提出します。

ステップ5:広域連合が審査し、結果が通知されます。

ステップ6:減免が認められた場合、保険料が軽減または免除されます。

必要書類の一覧

必要書類は事由によって異なります。主な書類を事由別に示します。

災害の場合に必要なもの:

「後期高齢者医療保険料減免申請書」(窓口またはダウンロード)、市区町村が発行する「り災証明書」(被害を証明するために不可欠です。市区町村の罹災証明担当窓口に申請して取得します)、本人確認書類(マイナンバーカード・資格確認書など)、収入状況が確認できる書類(年金支払通知書・銀行口座の残高証明書など)。

収入減少の場合に必要なもの:

「後期高齢者医療保険料減免申請書」、「収入状況等申告書」(給与証明書・年金支払通知書等で確認)、主たる生計維持者の死亡・入院を示す書類(死亡診断書の写し・入院証明書など)、世帯全員の収入が確認できる書類(直近の源泉徴収票・確定申告書の写しなど)、預貯金通帳の写し(残高確認のため)。

申請窓口と確認先

減免の申請窓口は「お住まいの市区町村の後期高齢者医療担当窓口」です(「国保年金課」「高齢者医療課」など名称は自治体によって異なります)。

申請書の様式・提出期限・判定基準は自治体ごとに設定されているため、事由が発生したら早めに窓口に相談してください。窓口が混み合う月末や年度末は待ち時間が長くなることがあります。可能であれば、事前に電話で確認してから来庁することをおすすめします。

2026年度の保険料改定(上限引き上げと子育て支援金の新設)

上限額(賦課限度額)の引き上げ

令和8年度(2026年4月〜)から、後期高齢者医療の保険料の上限額(賦課限度額)が次のように変わりました。

令和7年度まで:医療分の上限80万円(1本)

令和8年度から:医療分の上限85万円+子育て支援金分の上限2万1千円 = 合計87万1千円

医療分の上限が5万円引き上げられた上に、子育て支援金分2万1千円が新設されました。上限に到達するのは高所得者のみですが、上限に近い収入の方は合計で最大7万1千円分の負担増になりえます。

上限に達しない方にとっては、所得割率の変化(令和8・9年度は全国平均10.17%)と均等割の変化が保険料に影響します。

子ども・子育て支援納付金分(子育て支援金)とは

令和8年(2026年)4月から、医療保険制度全体で「子ども・子育て支援金」を徴収する仕組みが始まりました。少子化対策の費用を社会全体で分担する目的の制度で、後期高齢者医療においても保険料の一部として「子育て支援金分」が上乗せされます。

金額は小さく、全国平均で年間2,333円(月額194円)です。ただし、これは「医療分の保険料」とは別枠として計算される点に注意が必要です。均等割(年額1,351円)と所得割(率は0.25%)の2つで構成されており、医療分の上限(85万円)とは別に上限が2万1千円として設定されています。

「75歳以上の保険料が子育て支援に使われるのか」という疑問を持つ方もいますが、子ども・子育て支援金は「こども・子育て支援金」として創設された独立の財源であり、被用者保険・国保・後期高齢者医療のすべての医療保険加入者から徴収されます。

2026年度の全国平均保険料(月額)

令和8・9年度の全国平均は月額(医療分)7,989円で、前年度より578円増です。子育て支援金分194円を加えると合計で約8,183円となります。

窓口負担割合のしくみ(1割・2割・3割の判定方法)

3段階の区分

後期高齢者医療の被保険者が医療機関にかかるときの窓口負担割合は、所得に応じて1割・2割・3割の3段階に区分されています。

「現役並み所得者」と判定された方は3割負担、「2割負担の対象者」と判定された方は2割負担、それ以外の方(一般所得者等)は1割負担です。

判定は前年の所得(住民税の課税状況)に基づき、原則として年1回(8月)更新されます。

3割負担(現役並み所得者)の判定基準

現役並み所得者とは、住民税の課税所得(合計課税所得金額)が145万円以上の方です。ただし、複数の後期高齢者医療被保険者で構成される世帯の場合は、世帯の後期高齢者医療被保険者全員の収入の合計で判断する場合があります。

課税所得145万円は、収入に換算すると概ね年収383万円以上に相当します(年金収入が主の場合の目安)。ただしこの換算は単純化したものであり、他の所得・控除の状況によって異なります。

また、世帯内の後期高齢者医療被保険者の収入の合計が、単身世帯で383万円未満、複数世帯で520万円未満であれば、基準を下回るとして3割から1割(または2割)に変更される「基準収入額の適用」の申請ができます。この変更は自動ではなく、申請が必要です。

2割負担の対象者の判定基準(詳細)

2割負担の対象者は、次の2つの条件を両方とも満たす方です。

条件1:課税所得が28万円以上である。

条件2:「年金収入とその他の合計所得金額」が次のいずれかに該当する。

単身世帯(後期高齢者医療の被保険者が1人の場合):200万円以上

複数世帯(後期高齢者医療の被保険者が2人以上の場合):合計320万円以上

「年金収入とその他の合計所得金額」とは、公的年金等の収入額(遺族年金・障害年金は含みません)と、年金以外の合計所得金額を足した数値です。

たとえば単身世帯の場合、年金収入が200万円以上であっても、課税所得が28万円未満であれば2割の対象にはなりません。また、課税所得が28万円以上でも年金収入+その他所得合計が200万円未満であれば、2割にはなりません。2つの条件の両方を満たす場合にのみ2割です。

世帯区分課税所得年金+その他所得合計窓口負担
単身28万円以上200万円以上2割
単身28万円以上200万円未満1割
単身28万円未満1割
複数世帯28万円以上(世帯の被保険者全員)合計320万円以上2割
複数世帯28万円以上合計320万円未満1割

負担割合が記載される書類と確認方法

自分(または家族)の窓口負担割合は、広域連合または市区町村から送付される「資格確認書」に記載されています。毎年8月頃に負担割合が更新された新しい資格確認書が送られてきます。

医療機関の受付で資格確認書を提出すれば、記載されている負担割合で計算されます。

2割負担の配慮措置終了(2025年10月以降の実態)

配慮措置とは何だったか

2022年10月に後期高齢者医療制度に「2割負担」が新設されました。制度開始直後の負担増を緩和するため、2022年10月から2025年9月まで3年間の「配慮措置」が設けられていました。

具体的には、2割負担の対象者について「外来診療の月の自己負担増加額が3,000円を超えないようにする」という上限が設けられ、増加分を高額療養費として後から払い戻す形式で対応していました。

2025年10月以降の状況

配慮措置は2025年9月30日をもって終了しました。2025年10月1日以降は配慮措置の適用がなくなり、2割負担の方は実際の医療費の2割を窓口で支払う形になっています。

ただし、これは「上限のない自己負担」という意味ではありません。高額療養費制度は従来通り機能しており、外来診療の月の自己負担上限は18,000円(一般所得区分の場合)に変わりはありません。

配慮措置がなくなったことで「自己負担が突然大幅に増えた」という事態にはなっていません。ただし、配慮措置期間中は実質的に自己負担が1割に近い状態だった方にとっては、10月以降に自己負担が増えたと感じるケースがあります。

2割負担の確認・異議申し立て

現在の窓口負担割合が「2割」と書かれているが実態と合わない(所得が減少したなど)と感じる場合は、市区町村の担当窓口に申し出ることができます。前年の所得が変わった場合は、翌年8月の更新時に反映されるため、それまでの期間は変わらないのが原則です。ただし、「現役並み所得者の基準収入額適用」のように途中での変更申請が認められるものもあります。

高額療養費制度(外来上限・入院上限・多数回該当)

外来の自己負担上限

後期高齢者医療の被保険者が外来診療を利用したときの月の自己負担上限は、所得区分によって決まっています。

一般所得区分(3割負担でない方のほとんどが該当)の場合、外来個人単位で月18,000円が上限です。

この上限に達した分は高額療養費として後から払い戻されます。ただし払い戻しには手続きが必要な場合があります(初回のみ申請が必要で、2回目以降は自動的に適用される場合が多いです)。

外来の年間上限もあります。毎年8月1日から翌年7月31日の間に、外来診療の自己負担(一般所得区分)の合計が144,000円を超えた場合は、超過分が年間の高額療養費として払い戻されます。

入院との合算上限

同一月に外来と入院の両方が重なる場合は、外来の自己負担と入院の自己負担を合計した世帯単位の上限額が適用されます。

一般所得区分の場合、世帯合算の月の上限は57,600円です。

現役並み所得者の上限額

現役並み所得者(3割負担の方)は、課税所得に応じてさらに3つの区分に分かれます。

課税所得690万円以上(現役並みⅢ):252,600円+(総医療費−842,000円)×1%

課税所得380万円以上690万円未満(現役並みⅡ):167,400円+(総医療費−558,000円)×1%

課税所得145万円以上380万円未満(現役並みⅠ):80,100円+(総医療費−267,000円)×1%

低所得者の上限額

住民税非課税世帯の方は、さらに低い上限が設定されています。

住民税非課税世帯で、被保険者の所得が一定基準以下の方(低所得Ⅱ):外来個人8,000円、世帯合算24,600円

住民税非課税世帯で、所得がゼロ(低所得Ⅰ):外来個人8,000円、世帯合算15,000円

多数回該当とは

高額療養費の支給を直近12か月で3回受けた場合、4回目以降は「多数回該当」として上限額がさらに引き下げられます。多数回該当は医療費が高い状態が続く方への追加的な保護です。

ただし、外来の個人単位の月18,000円の上限だけが適用されている月は「高額療養費の支給」とはカウントされない場合があるため、多数回該当の実際の判定については広域連合または市区町村窓口で確認してください。

2026年8月以降の高額療養費改正について

「健康保険法等の一部を改正する法律」が2026年5月29日に成立し、高額療養費の自己負担上限額の引き上げが2026年8月から段階的に施行されることが確定しています。主な変更内容は月額上限の引き上げと、長期に高額医療が続く方に配慮した年間上限の新設で、2026年8月に第1段階、2027年8月に第2段階(現行の所得区分を細分化し限度額をさらに見直す)が実施されます。本記事の他のセクションに記載している外来個人月18,000円・世帯合算月57,600円などの上限額は、2026年7月までの現行水準です。2026年8月以降は所得区分や上限額が見直されるため、後期高齢者医療における改正後の具体的な限度額については、最新情報を厚生労働省および加入の広域連合の公式サイトでご確認ください。なお、直近12か月で3回以上上限に達した方の負担を軽くする「多数回該当」の仕組み自体は、改正後も維持される方向で示されています。

限度額適用・標準負担額減額認定証

低所得の方(住民税非課税世帯の方等)が申請すると、「限度額適用・標準負担額減額認定証」が交付されます。これを医療機関の窓口に提示することで、入院時の食事療養費の標準負担額が減額されます。高額療養費の仕組みとは異なりますが、入院費用を抑えるために重要な書類です。申請先はお住まいの市区町村窓口です。

窓口負担以外の自己負担を整理する(食事療養費・差額ベッド代)

入院時食事療養費

入院中の食事代は、高額療養費の計算対象外です。2026年6月1日から、一般所得者の入院時食事の自己負担は1食550円(1日3食1,650円)となっています。食材費の高騰を受けて2025年・2026年と段階的に引き上げられてきました(2024年以前は1食490円、2025年は510円)。

住民税非課税世帯の方(低所得Ⅱ)は1食210円、低所得Ⅰ(年金収入のみで80万円以下等)の方は1食130円の標準負担額に軽減されます(限度額適用・標準負担額減額認定証の提示が必要です)。

食事療養費の軽減を受けるためには前述の「限度額適用・標準負担額減額認定証」が必要です。申請を忘れると一般負担額が適用されてしまうため、入院が決まったら早めに市区町村に相談してください。

差額ベッド代(特別療養環境室の料金)

差額ベッド代(特別療養環境室料)は、患者が希望して個室や少人数室を利用する場合に病院が徴収できる料金です。高額療養費の対象外であり、全額が自己負担となります。金額は病院や病棟によって大きく異なり、1日数千円から数万円のケースがあります。

転院や入院先の検討をするときに、差額ベッドが発生するかどうかを事前に確認することが家計管理の観点から重要です。患者が希望した場合のみ徴収可能で、病院の都合や治療上の理由で個室に入った場合は徴収できない規定があります。

高齢者の「ダブル負担」ケーススタディ

75歳以上になると、後期高齢者医療の自己負担と介護保険の自己負担が同時にかかるケースがあります。

たとえば、自宅で介護サービスを利用しながら持病の通院を続けている方の場合、月の支出は次のように積み上がることがあります。

外来通院の窓口負担(最大18,000円)+訪問看護や訪問介護の利用料(介護保険の自己負担)+処方薬の薬局での自己負担(外来の18,000円には含まれますが、後期高齢者医療と合算して計算される点を確認してください)+入院した場合の食事療養費(高額療養費に含まれない)。

医療の高額療養費と介護の「高額介護合算療養費」は別制度ですが、医療と介護の両方の自己負担の合計が一定額を超えた場合に「高額医療・高額介護合算療養費」として払い戻しを受けられる制度があります(申請が必要です。申請先は市区町村の後期高齢者医療担当窓口と介護保険担当窓口、両方への申請が必要です)。

保険料の納付方法

特別徴収(年金からの天引き)

次の3つすべてを満たす方は、原則として年金から保険料が天引き(特別徴収)されます。

年額18万円以上の年金を受け取っている(受け取っている年金の年額が18万円以上かどうかで判定します)。

介護保険料が年金から特別徴収されている。

後期高齢者医療保険料と介護保険料の合計額が、特別徴収の対象となる年金額の2分の1以下である。

年金は年6回(4月・6月・8月・10月・12月・翌年2月)に支払われるため、保険料は年6回に分けて天引きされます。

普通徴収(自分で納付)

特別徴収の対象にならない方(年金が少ない・介護保険料が口座振替の方など)は、市区町村が発行する納付書または口座振替で納付します。

特別徴収の対象者でも、申し出ることで口座振替(普通徴収)に変更できます。「年金天引きよりも口座振替のほうが家計管理がしやすい」「年金が複数あって天引きの計算が複雑に感じる」といった場合に選択する方がいます。

口座振替への変更手続きはお住まいの市区町村窓口で申請します。

保険料を納期限までに払えない場合

生活が苦しくなり一時的に保険料の支払いが困難な場合は、「徴収猶予」という制度があります。災害・盗難・事業の廃止・失業などにより資産や収入が減少した場合に、申請により一定期間(通常最大1年間)保険料の徴収を猶予してもらえます。猶予中は滞納扱いにならないため、医療を受ける際の資格も維持されます。

徴収猶予の申請は市区町村窓口で行います。

マイナ保険証への移行と資格確認書

現状のまとめ(2026年6月27日時点)

2024年12月2日以降、従来の紙の健康保険証は新規発行が停止されています。後期高齢者医療の被保険者に送付されていた健康保険証(橙色の保険証)は2025年7月31日が有効期限の最終となりました。

現在、後期高齢者医療の被保険者は次のいずれかで医療機関を受診します。

マイナ保険証(マイナンバーカードを健康保険証として使う)。

資格確認書(後期高齢者医療広域連合から送付されるカード型の書類)。

資格確認書の仕組み

後期高齢者医療の被保険者に対しては、マイナ保険証の登録状況にかかわらず、申請不要で資格確認書が送付されます。これは、マイナンバーカードの取得が難しい高齢者への配慮措置として設けられています。

有効期限は広域連合ごとに異なりますが、2026年8月に一斉更新が予定されています。更新時には新しい資格確認書が自動的に送付される予定です。

現行の健康保険証の扱い(暫定措置)

現行の健康保険証(有効期限が2026年7月31日のもの)は、2026年7月末まで使用できます。暫定措置として期限が延長されていましたが、2026年8月以降はマイナ保険証または資格確認書が必要になります。

資格確認書を紛失した場合は、市区町村窓口で再交付申請ができます。

世帯分離が保険料に与える効果と注意点

世帯分離で均等割軽減が変わる可能性

均等割軽減は「同じ世帯の後期高齢者医療被保険者全員+世帯主」の総所得金額等の合計で判定されます。

たとえば、課税所得の高い子ども(50代)と同居している親(75歳以上)の場合、世帯主が子どもで合計所得が高くなると、親の均等割が本来であれば7割軽減になるところが2割軽減にしかならない、といったケースがあります。

この場合、世帯分離(同じ住所に住みながら別世帯として住民票に登録する)をすることで、高齢の親の世帯の総所得が低くなり、均等割軽減の区分が上がる(より多く軽減される)可能性があります。

世帯分離は4月1日時点の住民票情報に基づいて保険料判定に反映されるため、年度途中の変更は翌年度から効果が出ます。

介護保険料への相互影響

世帯分離で後期高齢者医療の均等割が下がっても、介護保険料や高額介護合算療養費にも影響があります。

介護保険料(第1号被保険者:65歳以上)の段階判定も、「世帯の住民税課税状況」と「本人の合計所得」で行われます。世帯分離によって親が住民税非課税世帯になると、介護保険料の段階が下がる可能性があります。

一方、世帯分離は「一部負担金(窓口負担)の減額認定」の判定にも影響します。高額介護合算療養費の計算は同一世帯内の医療費と介護費用を合算するため、世帯分離をすると合算の範囲が変わります。

世帯分離が全体として得になるかどうかは個別の状況によって異なります。市区町村の後期高齢者医療担当窓口と介護保険担当窓口に相談し、変更前後のシミュレーションをお願いすることをおすすめします。

世帯分離の手続き

住民票の世帯分離届は、お住まいの市区町村の住民課・市民課等で行います。届出には特別な理由は不要で、届出できる方は本人または同一世帯員です。本人確認書類(マイナンバーカード等)を持参してください。

後期高齢者医療の被保険者が亡くなった場合の手続き

資格喪失の届出

後期高齢者医療の被保険者が死亡した場合、資格は死亡日の翌日に自動的に喪失します。ただし、市区町村への死亡届(死亡診断書をもとに市区町村の戸籍担当窓口に提出するもの)が後処理の起点となり、後期高齢者医療の担当部署に情報が届きます。

資格確認書は、市区町村窓口に返還します(郵送でも可。確認書がない場合は不要)。

保険料の精算

亡くなった月の翌月以降は保険料が発生しません。亡くなった月までの保険料は「月割り」で計算されます。特別徴収(年金天引き)だった方の場合、死亡後に届く年金が「亡くなる月以後の期間分」に当たる場合、相続人や遺族がその年金の取り扱いについて年金事務所・日本年金機構に連絡する必要があります。

保険料に過払いがある場合は、相続人に還付されます。納付されていない保険料がある場合は、相続人が支払義務を引き継ぎます(市区町村窓口が連絡します)。

葬祭費の申請

後期高齢者医療の被保険者が亡くなったとき、葬祭を行った方(喪主)に「葬祭費」が支給されます。

支給額は多くの広域連合で5万円です(自治体によっては異なる場合があります。横浜市では5万円、豊島区(東京)では7万円など)。

申請先は、亡くなった方の住所地を管轄する市区町村の後期高齢者医療担当窓口です。

申請期限は、葬祭を行った日の翌日から2年以内です。この期限を過ぎると時効となり申請できなくなります。

申請に必要なもの(標準的な書類):

葬祭費支給申請書(窓口で受け取るか公式サイトからダウンロード)、亡くなった方の資格確認書(返却済みの場合は不要)、会葬礼状または葬儀の領収書(喪主の氏名・亡くなった方の氏名・葬祭日が確認できるもの)、喪主名義の振込先口座の通帳、喪主の印鑑(朱肉を使用するもの)。

バタバタする中での手続きになることが多いため、2年間という期限があることを覚えておき、落ち着いてから申請しても問題ありません。

財政審による3割負担提言(2026年4月)と今後の見通し

提言の内容

財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)の分科会は、2026年4月28日に「高齢者の医療費の窓口負担を原則3割に引き上げるための制度改革の工程表を2026年度内に作成すべき」という意見をまとめました。

現在、70歳以上は現役並み所得者を除いて1〜2割負担とされており、75歳以上で3割負担が適用されているのは全体の約7%にとどまっています。財政審は世代間の公平性と現役世代の保険料負担軽減を目的として、高齢者負担の引き上げを求めています。具体的には、現在原則2割負担の70〜74歳をまず3割に改め、75歳以上についても経過措置を視野に入れつつ同じ負担割合に近づけるべきだという内容が報じられています。ただし、これはあくまで審議会の意見の段階であり、後述のとおり実際の制度変更には法改正が必要です。

「確定ではない」ということ

財政審の提言は、財務省の諮問機関が出した意見書です。提言が出ても、実際に制度が変わるためには国会での法改正が必要です。

2026年6月27日時点では、法改正の具体的な内容・対象者・施行時期は決定されていません。政府は2026年度内に制度設計の方針をまとめることを検討中とされていますが、国会審議・与野党調整・政治状況によって変わりえます。

「2027年から全員3割になる」「来年から変わる」といった情報が出回ることがありますが、2026年6月27日時点では確定情報ではありません。最新の動向は厚生労働省・政府広報オンラインの発表でご確認ください。

今後の注目ポイント

制度改正の議論として、以下の点が今後の焦点になると見られています。

対象範囲(全員3割か、所得に応じた段階的引き上げか)、施行時期(経過措置をどう設けるか)、高額療養費の上限との連動(2026年8月以降の改正との整合)、低所得高齢者への配慮措置の設計。

これらの動向は、後期高齢者医療に加入している方・ご家族にとって家計に直結する問題です。政府の公式発表を定期的に確認することをおすすめします。

都道府県間の保険料格差

格差の実態

令和8・9年度の後期高齢者医療制度の保険料は、都道府県によって大きく差があります。

全国最高は東京都で月額10,352円、全国最低は青森県で月額4,990円です。最高と最低の差は月額5,362円(年額で64,344円以上)にのぼり、2倍以上の開きがあります。

上位(高い)は東京都・神奈川県・愛知県・大阪府・沖縄県など都市部、下位(低い)は青森県・岩手県・福島県・秋田県・新潟県など東北・北陸に多い傾向があります。

なぜ差があるのか

後期高齢者医療の保険料は「各都道府県の広域連合が管轄する被保険者全体の医療費」を基に設定されます。一人あたりの医療費が多い(受診頻度・診療報酬の高い医療機関が多いなど)地域では保険料が高くなります。東京都は診療報酬の高い高度医療機関が多いことなどが、保険料水準を押し上げる一因とされています。

逆に、地方の県では一人あたりの医療費が相対的に低いため保険料も低くなります。

この格差は、「同じ75歳以上の国民でも、住んでいる都道府県によって保険料が2倍以上違う」という点で議論の対象になっていますが、制度上は各広域連合が独立して保険料を設定する仕組みです。

保険料・窓口負担の試算ケーススタディ

ケース1:年金収入120万円・単身世帯(東京在住・76歳女性)

年金収入120万円から公的年金等控除110万円を引くと雑所得10万円。基礎控除43万円を引くと、賦課所得はゼロ(マイナスになる場合は0円として扱われます)。

世帯の総所得金額等は10万円(雑所得)で、7割軽減の基準43万円以下のため7割軽減の対象です。

均等割(東京都の令和8年度の実際の額は東京都広域連合で確認。仮に7万円として計算)の7割軽減後:70,000円×(1−0.7)=21,000円

所得割:賦課所得がゼロのため所得割はゼロ。

年間保険料(医療分):21,000円前後(令和8・9年度の特例で7.2割軽減が適用されるため、実際はさらに低くなります)。

子育て支援金分:均等割相当の7割軽減が適用されて約405円(1,351円×30%)。所得割ゼロ。

課税所得はゼロ(非課税)のため、窓口負担割合は1割。外来上限は月8,000円(低所得Ⅱ)の可能性があります(住民税非課税であれば)。

ケース2:年金収入300万円・単身世帯(愛知在住・78歳男性)

年金収入300万円から公的年金等控除(65歳以上・300万円超330万円以下の場合:収入×25%+275,000円=1,025,000円)を引くと雑所得1,975,000円。基礎控除43万円を引くと賦課所得1,545,000円(154.5万円)。

世帯の総所得金額等(住民税申告上の数字)は197.5万円で、5割軽減・2割軽減のどちらの基準(それぞれ74万円・106万円相当)も超えているため、軽減なし(均等割100%)。

均等割(愛知県・仮に年額56,000円として計算):56,000円(軽減なし)

所得割(愛知県の所得割率が仮に10.5%として計算):154.5万円×10.5%=162,225円

年間保険料(医療分):56,000円+162,225円=218,225円(賦課限度額85万円に届かない)

窓口負担割合の判定:課税所得が28万円以上か(154.5万円なので該当)。年金収入+その他所得合計が200万円以上か(年金収入300万円なので該当)。2つの条件を両方満たすため2割負担。

外来の月の上限は18,000円(一般所得の場合)。

ケース3:夫婦2人世帯(夫78歳・妻75歳、年金収入計360万円)

夫の年金収入220万円・妻の年金収入140万円の世帯です(2人とも後期高齢者医療の被保険者)。

2割負担の判定は「複数世帯の場合、後期高齢者医療被保険者の年金収入+その他所得の合計が320万円以上か」で見ます。夫220万円+妻140万円=360万円で、320万円以上のため課税所得要件(両者が28万円以上かどうか)も確認が必要です。夫は課税所得が28万円以上(具体的には個別計算が必要)、妻は課税所得が28万円未満の可能性があります。

条件の両方を満たす被保険者が2割負担になるため、夫が2割・妻が1割といったケースもありえます。

このケースは世帯の所得合計が高いため、均等割軽減はどの区分にも該当しない可能性が高いです(2割軽減の基準:43万円+57万円×2=157万円以上の場合が多く、この世帯の総所得はこれを超えると考えられます)。

申請チェックリスト

後期高齢者医療制度に関連して「申請・届出・確認が必要なもの」と「申請不要のもの」をまとめます。

申請・届出が必要なもの

保険料の減免(災害・収入減少時):事由発生後速やかに市区町村へ。期限あり。

葬祭費:葬祭日の翌日から2年以内に市区町村へ。

高額療養費の初回申請:医療機関から広域連合に連絡が届いていない場合は市区町村へ。

限度額適用・標準負担額減額認定証:住民税非課税世帯の方が入院する場合に市区町村へ事前申請。

高額医療・高額介護合算療養費:医療と介護の自己負担の合計が高い場合に市区町村へ(医療・介護の両方の担当窓口に申請)。

現役並み所得者の基準収入額の適用変更:世帯の実収入が基準より低い場合に申請。

世帯分離届:市区町村の住民課へ(届出)。

口座振替への変更:特別徴収から変更を希望する場合は市区町村へ。

資格確認書の再交付:紛失した場合は市区町村へ。

申請不要のもの(自動適用または自動送付)

75歳到達による後期高齢者医療への加入:自動。

均等割の軽減(7割・5割・2割):自動判定・自動適用。

元被扶養者の均等割5割軽減:広域連合が確認して自動適用。

資格確認書の送付:自動(誕生月前月末ごろに郵送)。

保険料決定通知書:毎年7〜8月ごろに自動送付。

よくある誤解・つまずきポイント

誤解1:「軽減は申請しないといけない」

均等割の軽減(7割・5割・2割)は申請不要で自動適用されます。ただし、前年の所得の申告(住民税の申告)が必要です。所得が少なくて申告義務がなかったとしても、申告がないと「所得不明」として扱われ軽減が適用されないことがあります。収入が年金のみで少額の方でも、住民税の申告書を提出することで正確な軽減が受けられます。

誤解2:「保険料の減免も自動でやってもらえる」

減免は申請が必要です。災害や収入急減があった場合、待っていても減免はされません。事由が発生したらできるだけ早く市区町村窓口に相談してください。

誤解3:「2割負担の配慮措置が終わったので実質3割になった」

配慮措置が終わっても負担が3割になったわけではありません。2割負担の方は外来で月18,000円の高額療養費の上限があります。配慮措置は「2割負担導入直後の急激な負担増を3,000円に抑える特別な仕組み」でしたが、それが終了しても2割は2割のままです。

誤解4:「3割負担への変更はもう決まった」

財政審の提言(2026年4月)は「工程表を作るべき」という意見であり、法律として成立したわけではありません。2026年6月27日時点で3割負担への変更を規定した法律はありません。

誤解5:「世帯分離すれば必ず保険料が安くなる」

世帯分離は保険料が下がる場合もありますが、世帯構成や所得の組み合わせによっては変化しないことや、介護保険の自己負担区分に影響する場合があります。変更前に市区町村で試算してもらうことをおすすめします。

誤解6:「病院で払った窓口負担と食事代を全部合算して高額療養費がもらえる」

入院時の食事療養費(1食550円)と差額ベッド代は高額療養費の計算に含まれません。高額療養費の対象は保険が適用される診療費(処方薬も含む)に限られます。

誤解7:「子育て支援金分は医療費に使われる」

子育て支援金分は、医療費ではなく「こども・子育て支援金」として少子化対策に使われます。医療分の保険料とは別の財源です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 75歳になったら何か手続きが必要ですか。

原則として手続きは不要です。75歳の誕生日が来ると自動的に後期高齢者医療制度に加入し、資格確認書が郵送されます。ただし、会社の健康保険の被扶養者だった場合は、勤務先や健康保険組合への連絡が必要になることがあります。

Q2. 保険料はいつ決まり、いつ通知が来ますか。

前年の所得をもとに毎年7月前後に保険料が決定し、7〜8月ごろに「後期高齢者医療保険料額決定通知書」が郵送されます。特別徴収(年金天引き)の場合は天引き開始月も同時に通知されます。

Q3. 年金収入が少なく住民税の申告をしていませんでした。軽減は受けられますか。

住民税の申告(確定申告・住民税申告)がされていないと、所得が「不明」として扱われ、軽減が正しく適用されないことがあります。申告義務がなくても、市区町村の住民税担当窓口に所得の申告をすることで正確な軽減が受けられるようになります。過去の年度分についても相談できる場合があります。

Q4. 年の途中で収入が大幅に減りました。保険料は下がりますか。

原則として、年度内の保険料は前年の所得に基づいて変わりません(翌年度から変更されます)。ただし、災害・収入急減などによる「減免」の申請ができる場合があります。まず市区町村の後期高齢者医療担当窓口に相談してください。

Q5. 子どもの扶養に入れてもらえば保険料が安くなりますか。

後期高齢者医療は独立した制度であり、子どもの健康保険の被扶養者になることはできません。ただし、同居している子ども(世帯主)の所得が世帯判定に影響する場合があります(均等割軽減の判定基準に世帯主が含まれます)。世帯分離で影響が変わる可能性があります。

Q6. 窓口で「2割です」と言われましたが、もっと払っているように感じます。なぜですか。

同じ月に複数の医療機関を受診したり、処方薬の薬局での支払いが加わったりすると、月の医療費の合計が大きくなることがあります。外来の月の自己負担上限は18,000円(一般の場合)のため、これを超えた分は高額療養費として後で戻ってきます(初回は申請が必要な場合あり)。

Q7. 入院が長引きそうです。費用がどれくらいかかりますか。

入院の自己負担は、窓口で支払う診療費(1割・2割・3割)、食事療養費(1食550円・一般所得の場合)、差額ベッド代(希望した場合のみ)に分かれます。診療費部分は高額療養費制度で月の上限があります。費用の見通しは入院先の医療ソーシャルワーカーや医療費相談窓口に相談することをおすすめします。

Q8. 医療費が高い月が続いています。もっと楽になる制度はありますか。

高額療養費の多数回該当(直近12か月で3回以上支給後の4回目以降は上限額が引き下がる)に該当する場合があります。また、医療費と介護費用の両方が高い場合は「高額医療・高額介護合算療養費」の申請が可能です(市区町村の両担当窓口へ)。

Q9. 家族が先月亡くなりました。後期高齢者医療の手続きはどうしたらよいですか。

まず市区町村に死亡届を提出します(死亡後7日以内)。後期高齢者医療の資格は自動的に喪失しますが、資格確認書の返還、保険料の精算(過払い還付または未払い分の相続)、葬祭費の申請(葬祭日翌日から2年以内)などの手続きが発生します。市区町村の後期高齢者医療担当窓口に一括して相談することをおすすめします。

Q10. マイナ保険証を持っていないと受診できませんか。

マイナ保険証がなくても、後期高齢者医療の資格確認書があれば受診できます。資格確認書は申請不要で郵送されてきます。紛失した場合は市区町村窓口で再交付申請ができます。

Q11. 保険料が払えない場合はどうなりますか。

保険料の滞納が続くと、最終的には医療機関での一部負担金の割合変更などの措置が取られることがあります。ただし、支払いが困難な事情がある場合は「徴収猶予」の制度があります。滞納が続く前に、早めに市区町村窓口に相談することが大切です。

Q12. 財政審の3割提言はいつ実施されますか。

2026年6月27日時点では、3割負担への変更を定めた法律は成立していません。財政審の提言は法的拘束力のない意見であり、実現するためには国会での法改正が必要です。2026年度内に制度設計の方針がまとまる可能性はありますが、施行時期は未定です。最新情報は厚生労働省の公式サイトをご確認ください。

保険料計算の詳細:均等割と所得割のしくみを丁寧に解説する

均等割とは何か

均等割は、被保険者全員が同じ金額を負担する部分です。世帯の所得や医療の利用量に関係なく、加入者1人ひとりに同額が課されます。金額は都道府県の広域連合が2年に1回(令和8年度から令和9年度の2年間が一区切り)設定します。

令和8年度の全国平均の均等割額は年額56,083円(医療分)です。最も高い東京都では年額75,000円以上になる一方、最も低い県では35,000円台になるなど、地域差があります。

均等割は「薄く広く」全員が負担するという設計思想に基づいており、低所得者には7割・5割・2割の軽減が用意されています。軽減後の実質的な均等割負担を整理すると次のようになります。

7割軽減の場合:均等割の30%分のみ負担。全国平均の均等割56,083円なら30%で16,825円(さらに令和8・9年度の特例で7.2割軽減のため28%分、15,703円前後)。

5割軽減の場合:均等割の50%分のみ負担。全国平均なら28,042円前後。

2割軽減の場合:均等割の80%分のみ負担。全国平均なら44,866円前後。

軽減なしの場合:均等割の100%全額。全国平均なら56,083円。

所得割とは何か

所得割は、前年の所得(賦課の基礎となる所得金額)に応じて課される部分です。所得が高いほど負担が大きくなる設計です。所得割率も都道府県の広域連合が設定し、令和8年度の全国平均は10.17%です。

所得割の計算に使う「賦課の基礎となる所得金額」は、前年の総所得金額等から基礎控除(43万円)を引いた金額です。ゼロ以下の場合は0円として扱われ、所得割は発生しません。

所得が低い方は所得割がゼロか非常に小さくなり、保険料はほぼ均等割のみとなります。一方、所得が高い方は所得割が大きくなりますが、賦課限度額(医療分85万円)の上限があります。

子育て支援金分の計算方法

子育て支援金分は医療分とは別に計算されます。

均等割:全国平均で年額1,351円(令和8年度)

所得割:所得割率0.25%(令和8年度)。賦課所得100万円の場合は0.25%をかけて2,500円。

上限:2万1千円(令和8年度)

子育て支援金分の所得割率0.25%は医療分の10.17%と比べると非常に小さく、ほとんどの方にとっての負担増は月200円程度(全国平均年2,333円)にとどまります。

保険料の全体像を金額帯別に整理

年金収入別の保険料感覚を全国平均の保険料率を使って整理します(実際の保険料は都道府県別に異なります。以下はあくまで全国平均を使った参考値です)。

年金収入80万円以下(賦課所得ゼロ・均等割7割軽減・7.2割特例適用):均等割のみで年間16,000〜17,000円前後。所得割ゼロ。月額1,300〜1,400円程度。

年金収入150万円(賦課所得ゼロまたはわずか・均等割7割軽減):均等割のみで年間17,000〜20,000円程度。月額1,400〜1,700円程度。

年金収入200万円(賦課所得小・均等割5割軽減):均等割と小さな所得割。年間30,000〜40,000円程度。月額2,500〜3,300円程度。

年金収入300万円(賦課所得中程度・軽減なし):均等割全額と所得割。年間150,000〜220,000円程度(都道府県によって大きく異なる)。月額12,000〜18,000円程度。

年金収入500万円以上(賦課所得大・軽減なし):上限(85万円)に近づく可能性がある。

これらはあくまで目安です。実際の保険料は毎年7〜8月ごろに届く「後期高齢者医療保険料額決定通知書(兼納入通知書)」に記載されます。

保険料の計算例(複数ケース・続き詳細)

ケース4:障害認定で65歳から後期高齢者医療に加入した方

65歳以上74歳以下で、一定の障害状態にあると広域連合に認定されて後期高齢者医療に加入している方も、75歳到達と同じ仕組みで保険料を負担します。

障害年金を受け取っている場合、障害年金は遺族年金と同様に「年金収入+その他の合計所得金額」の計算に含まれません(2割負担の所得判定における例外)。ただし、保険料の計算では公的年金等控除の対象となるため、保険料の計算上の「賦課所得」には影響します。

障害認定で加入した方の退出(離脱)は、障害が回復した場合や本人が申し出た場合に可能です。これは75歳到達のように自動的に卒業するものではなく、申請が必要です。

ケース5:会社の健康保険から75歳で移行するケース(ひとり親・特定疾病)

75歳直前まで会社の健康保険(被保険者本人として加入)に入っていた方が75歳で後期高齢者医療に移行する場合、「特定疾病療養受療証」が必要な方は注意が必要です。

特定疾病(長期療養を要するものとして厚生労働大臣が定めた病気。人工透析が必要な慢性腎不全、血友病など)に該当する方は、従来の健康保険で特定疾病として認定されていても、後期高齢者医療では新たに「特定疾病療養受療証」の申請が必要です。

特定疾病療養受療証があると、高額療養費の計算で「特定疾病に係る上限額」として月10,000円(一般・低所得の方の場合)が適用されます。申請先はお住まいの市区町村の後期高齢者医療担当窓口です。長期にわたって高額の医療費がかかる状況の方には、大きな負担軽減効果があります。

実際の申請手順・記入例

保険料減免申請書の記入ポイント

保険料の減免申請書には、申請理由と状況の説明が求められます。書式は各市区町村・広域連合によって異なりますが、多くの場合、次の欄が設けられています。

申請者(被保険者)の氏名・生年月日・住所・電話番号:資格確認書に記載された情報と一致させます。

被保険者証番号(資格確認書番号):資格確認書の番号を転記します。

減免を申請する保険料の年度と期(第1期〜第8期など、年金天引きの場合は期の記載がない場合もあります):対象の期を明記します。

申請理由:「災害(風水害・火災等)により財産に著しい損害を受けた」「世帯の収入が著しく減少した」など、該当する理由を選択または記入します。

事実の概要:災害の場合は発生日時・場所・被害の概要、収入減少の場合は減少の原因・時期・程度を具体的に記入します。

記入のポイントとして、特に収入減少の場合は「いつから・なぜ・どの程度収入が減ったか」を具体的に書くことが重要です。「収入が減った」だけでは審査に時間がかかる場合があります。「令和〇年〇月に交通事故で入院し、〇か月間就労できず収入がゼロになった」のように事実を書くと審査がスムーズです。

り災証明書の取得方法

災害で保険料の減免を申請する場合に必要な「り災証明書」は、市区町村が発行します。

申請先:被害を受けた住所を管轄する市区町村の担当窓口(「罹災証明」「危機管理課」「総務課」など名称は市区町村により異なります)。

申請に必要なもの:本人確認書類、被害を受けた建物の所在地・種別(自己居住建物・店舗・家財等の種別)、被害の状況がわかる写真(撮っておくと手続きがスムーズです)。

発行までの期間:小規模な被害の場合は数日〜2週間程度、大規模災害の場合は数か月かかることがあります。

り災証明書は保険料減免申請以外にも、税の特例(被災による雑損控除など)や各種支援金の申請にも必要になるため、被害が発生したら早めに申請することをおすすめします。

高額療養費の申請手順

外来診療で月の自己負担が上限額(一般の場合18,000円)を超えた場合、超えた分は高額療養費として払い戻されます。

初回の払い戻しは、医療機関からの請求データが広域連合に届いた後、広域連合から「支給のお知らせ」と「支給申請書」が届く形が一般的です。申請書に振込先口座を記入して返送するか、市区町村窓口に提出します。

2回目以降は、一度登録した口座に自動的に振り込まれる広域連合が多いです。ただし、振込口座が変わった場合は変更届が必要です。

払い戻しのタイミングは、診療月から概ね2〜3か月後になります。外来診療が多い月は、医療費の支払い後にまとめて払い戻されることを覚えておくと家計の見通しが立てやすくなります。

入院の場合は、事前に「限度額適用認定証」を取得して医療機関の窓口に提示すると、支払い時点から上限額を超えた分を支払わなくてよくなります(高額療養費の事後申請ではなく「現物給付」的な対応)。住民税非課税の方は「限度額適用・標準負担額減額認定証」で食事療養費も同時に軽減されます。

窓口負担の詳細な計算例(外来・入院)

外来診療のケース別計算

外来で1割負担の方が1か月に次の受診をした場合の自己負担額を計算します。

内科(かかりつけ医):診療報酬(10割)10,000円 → 自己負担1,000円

眼科(白内障の定期検診):診療報酬(10割)8,000円 → 自己負担800円

薬局(処方薬):薬局での診療報酬(10割)15,000円 → 自己負担1,500円

合計自己負担:3,300円

この月の自己負担は3,300円であり、外来個人上限18,000円の範囲内のため高額療養費は発生しません。

次に、2割負担の方が同じ受診をした場合を計算します。

内科:自己負担2,000円

眼科:自己負担1,600円

薬局:自己負担3,000円

合計自己負担:6,600円

この場合も18,000円未満のため高額療養費は発生しません。

さらに、2割負担の方が大きな医療費がかかった月を計算します。

外科(手術を伴う日帰り手術):診療報酬(10割)150,000円 → 2割で30,000円

この場合、外来個人上限18,000円を超えているため、高額療養費として12,000円が後日払い戻されます。実際の自己負担は18,000円となります。

入院のケース別計算

1割負担の方が1か月入院(一般病棟)した場合を計算します。

入院の診療費(10割):600,000円 → 1割で60,000円

一般所得区分の場合、入院を含む世帯合算の月の上限は57,600円です。60,000円が57,600円を超えているため、高額療養費として2,400円が払い戻されます。実際の診療費自己負担は57,600円となります。

これに加えて高額療養費の対象外の費用が別途かかります。

入院時食事療養費:1食550円×3食×30日間=49,500円(一般所得の場合。限度額適用・標準負担額減額認定証があれば大幅に軽減)

差額ベッド代:個室の場合は病院によって1日5,000〜20,000円などさまざまです。4人室などの一般病床は差額ベッド代がかかりません。

この例では食事代49,500円が高額療養費の対象外として全額自己負担となります。

知っておきたい関連給付と制度

療養費の払い戻し

緊急の場合などに保険証(資格確認書)を持たずに受診し、全額を自費で支払った場合、後で申請すると保険が適用された場合の自己負担額を超えた分が払い戻されます。

申請先:市区町村の後期高齢者医療担当窓口。

申請期限:費用の支払い日から2年以内。

必要書類:療養費支給申請書、領収書(診療内容が明記されたもの)、被保険者の口座情報。

保険適用外の診療(自由診療・審美目的など)は対象外です。

訪問看護の利用と後期高齢者医療

医師の指示に基づいて訪問看護ステーションから訪問看護を受ける場合、後期高齢者医療の給付の対象になります(介護保険の訪問看護とは別の扱いです)。

ただし、介護保険の訪問看護と後期高齢者医療の訪問看護のどちらが優先されるかは、利用者の介護保険認定の状況や医師の判断によります。介護認定を受けている方は、原則として介護保険の訪問看護が優先されます。

訪問看護にかかる費用の自己負担は、窓口負担割合(1割・2割・3割)と同じ割合です。

出産育児一時金との関係

後期高齢者医療の被保険者本人が出産することはまれですが、制度として出産育児一時金は存在します。後期高齢者医療においても、被保険者が出産した場合(例外的ですが、74歳で加入して75歳に達するまでの間に出産した場合など)には支給されます。金額は50万円(産科医療補償制度に加入している医療機関での出産の場合)です。

一部負担金の減額・免除・猶予

医療機関での窓口負担(一部負担金)そのものを、一定の場合に減額・免除・猶予できる制度があります。これは「保険料の減免」とは別の制度です。

対象となる場合:震災・風水害等の災害、死亡や長期入院などによる収入の著しい減少。

申請先:市区町村の後期高齢者医療担当窓口。

対象期間:通常6か月以内(延長できる場合もあります)。

必要書類:一部負担金減額・免除・猶予申請書、事情を示す書類(り災証明書・入院証明書等)、収入・資産状況確認書類。

保険料の支払いが困難で減免を受けながら、医療機関の窓口負担も苦しい状況が同時に発生した場合には、両方の制度について窓口に相談することができます。

後期高齢者医療と介護保険の「ダブル負担」を整理する

75歳以上が直面しがちな費用の重なり

75歳以上になると、医療費と介護費用が同時にかかることが珍しくなくなります。たとえば次のような状況がありえます。

骨折で入院・リハビリ:後期高齢者医療で診療費の自己負担(高額療養費の上限まで)+食事療養費が発生。退院後は介護保険のリハビリ(通所リハビリ・訪問リハビリ)の利用料が発生。

持病(高血圧・糖尿病等)の定期通院+要介護認定でデイサービス利用:毎月の外来通院費用(後期高齢者医療)+デイサービスの利用料(介護保険の自己負担)が並行して発生。

認知症で施設入所を検討:医療費(後期高齢者医療)+施設利用料(介護保険)+食費・居住費(施設で別途)。

これらの費用が重なると、月あたりの自己負担が数万円から十数万円規模になることがあります。

高額医療・高額介護合算療養費

医療費と介護費用の両方の自己負担合計が高い場合に、超えた分を払い戻してもらえる制度が「高額医療・高額介護合算療養費」です。

計算期間:毎年8月1日〜翌年7月31日の12か月間。

合算対象:後期高齢者医療の自己負担額(医療費の窓口負担のうち高額療養費として支給された分は除く)+介護保険の自己負担額(高額介護サービス費として支給された分は除く)。

上限額(一般所得区分の場合):年間56万円(在宅療養の場合・住民税課税世帯)。住民税非課税世帯はさらに低い設定(31万円・19万円など)。

申請先:市区町村の後期高齢者医療担当窓口(介護保険の担当窓口にも同時に申請が必要です)。

申請タイミング:計算期間終了後(翌年8月以降)に市区町村から支給申請書が届きます。届いたら期限内に提出してください。

介護保険料との相互影響(世帯所得による)

65歳以上の介護保険料(第1号被保険者)も、世帯の住民税課税状況と本人の合計所得金額によって9〜14段階程度に区分されています(市区町村によって段階数や境界線が異なります)。

後期高齢者医療の保険料軽減(均等割7割・5割・2割)の対象になるほど所得が低い方は、介護保険料も低い段階に設定されている可能性が高いです。一方で、世帯分離の効果は医療・介護の両方に影響するため、単純に「世帯分離すれば介護保険料が安くなる」とは言い切れず、個別のシミュレーションが必要です。

他の医療保険・制度との比較で理解する

国民健康保険との違い

70〜74歳の方は、国民健康保険(市区町村国保または組合国保)または会社の健康保険のどちらかに加入しています。75歳になって後期高齢者医療に移行する際に変わる主な点を整理します。

項目国民健康保険(70〜74歳)後期高齢者医療(75歳〜)
保険料の種類均等割・平等割・所得割・資産割(自治体による)均等割・所得割の2種類
家族の扶養世帯に加入者全員分の保険料が発生被保険者ごとに保険料が発生(扶養の概念なし)
軽減制度7割・5割・2割軽減(国民健康保険の軽減)7割・5割・2割軽減(後期高齢者医療の軽減)
窓口負担70〜74歳は原則2割(現役並み所得者は3割)75歳〜は1割・2割・3割
運営市区町村または国保組合都道府県の後期高齢者医療広域連合

74歳の12月31日まで国保に入っていた方が、翌年1月に75歳になった場合、1月から後期高齢者医療に自動加入します。国保の脱退手続きは市区町村が自動的に処理しますが、確認のために市区町村窓口に一報入れることをおすすめします。

健康保険(会社の保険)から移行する場合の注意

75歳まで会社の健康保険の被保険者として現役で働いていた方、または配偶者の健康保険の被扶養者だった方が後期高齢者医療に移行する場合、次の点に注意してください。

任意継続被保険者(前の会社の健康保険を2年間継続していた方)も、75歳になると後期高齢者医療に自動的に移行します。任意継続の脱退手続きは、健康保険組合(または協会けんぽ)に連絡が必要です。

高額療養費の多数回該当のカウントは、後期高齢者医療への移行後にリセットされます。前の保険での高額療養費の支給回数は引き継がれません。

よくある質問(FAQ)(続き)

Q13. 複数の医療機関にかかっています。高額療養費の合算はどうなりますか。

同じ月(1日〜月末)に複数の医療機関を受診した場合、外来の自己負担は医療機関ごとに発生しますが、高額療養費の計算では「外来個人ごとの上限18,000円」として、複数機関の合計で判断します。合計が18,000円を超えた分は高額療養費として払い戻されます(一般所得の場合)。

Q14. 薬局での支払いも高額療養費の対象ですか。

処方薬を薬局で受け取る際の自己負担も高額療養費の計算に含まれます。ただし、薬局分と診療機関分は別々に計算されるのではなく、「同じ医師の処方に基づく薬局の自己負担」は対応する医療機関の受診と合算して計算します。複数の医療機関の処方がある場合は、それぞれ対応させて合算します。

Q15. 在宅での医療(訪問診療・往診)も高額療養費の対象ですか。

はい、訪問診療や往診の費用も後期高齢者医療の給付対象であり、高額療養費の計算に含まれます。自己負担割合は外来受診と同じ(1割・2割・3割)です。

Q16. 海外で医療を受けた場合はどうなりますか。

海外で急病・怪我により医療を受けた場合、帰国後に「海外療養費」として申請できる場合があります。ただし、日本の保険が適用できる診療範囲・自己負担割合で計算されるため、現地で支払った全額が返ってくるわけではありません。申請先は市区町村の後期高齢者医療担当窓口です。

Q17. 特定健康診査(後期高齢者の健康診査)は保険料とは別の費用がかかりますか。

後期高齢者医療制度では「後期高齢者医療健康診査(健診)」が実施されています。自己負担額は都道府県・市区町村によって無料または少額(数百円程度)のことが多いです。内容は身体測定・血圧・血液検査・尿検査などです。後期高齢者医療の健診は、40〜74歳が対象の「特定健康診査(メタボ健診)」とは別の制度です。

Q18. 保険料の通知書が届かない場合はどうすればよいですか。

毎年7〜8月ごろに届く予定の保険料決定通知書が届かない場合は、住所変更の届出が完了しているか確認した上で、市区町村の後期高齢者医療担当窓口に問い合わせてください。転入直後や住所変更手続きの後は、通知が遅れる場合があります。

出典一覧(URL・確認日)

本記事は以下の一次情報を確認した上で執筆しています。

後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21060.html

確認日:2026年6月27日

後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72371.html

確認日:2026年6月27日

令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_00009.html

確認日:2026年6月27日

保険料軽減策(東京都保健医療局)

https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kenkou/kokuho/kouki/keigennsaku

確認日:2026年6月27日

保険料額の軽減について(神奈川県後期高齢者医療広域連合)

https://www.union.kanagawa.lg.jp/1000009/1000559/1002008.html

確認日:2026年6月27日

高額療養費(東京都後期高齢者医療広域連合)

https://www.tokyo-ikiiki.net/seido/kyufu/1002187/1000525.html

確認日:2026年6月27日

高額療養費(神奈川県後期高齢者医療広域連合)

https://www.union.kanagawa.lg.jp/1000010/1000638.html

確認日:2026年6月27日

保険料の減免(埼玉県後期高齢者医療広域連合)

https://www.saitama-koukikourei.org/seido/hokenryo/hokenryo-genmen/genmen/

確認日:2026年6月27日

葬祭費支給申請について(横浜市)

https://www.city.yokohama.lg.jp/faq/kukyoku/kenko/kenko-iryou/20211015163927943.html

確認日:2026年6月27日

令和8年度の後期高齢者医療制度の保険料の賦課限度額などを盛り込んだ改正政令を公布(PSRネットワーク)

https://www.psrn.jp/topics/detail.php?id=39581

確認日:2026年6月27日

マイナ保険証・資格確認書について(埼玉県後期高齢者医療広域連合)

https://www.saitama-koukikourei.org/seido/taisho/hokensho-2-2-2-2/

確認日:2026年6月27日

入院時の食費・光熱水費について(厚生労働省・社会保障審議会医療保険部会 令和7年12月4日)

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001604409.pdf

確認日:2026年6月27日

高齢者の医療費「原則3割負担へ工程表を」財制審(日本経済新聞)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2812Z0Y6A420C2000000/

確認日:2026年6月27日

高齢者医療、3割負担へ工程表 年度内決着向け―財政審(時事ドットコム)

https://www.jiji.com/jc/article?k=2026042800441&g=eco

確認日:2026年6月27日

医療保険制度改正法が成立しました(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_00014.html

確認日:2026年6月27日

後期高齢者医療制度の被保険者実態調査(e-Stat・政府統計の総合窓口)

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?layout=dataset&toukei=00450388&statdisp_id=0003371314

確認日:2026年6月27日

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成代行・法律的助言・税務上の助言・医療上の助言を行うものではありません。後期高齢者医療制度の保険料は地方税の賦課・徴収に準じた取り扱いを含むため、個別の税務相談は税理士法により税理士の業務とされており、また社会保険に関する申請書類の作成代行は社会保険労務士法により社会保険労務士の業務とされています。本記事はこれらの士業の業務を代替・代行するものではなく、制度の一般的な情報提供にとどまります。具体的な申請書類の作成や個別の税務・社会保険の判断が必要な場合は、市区町村の担当窓口、または税理士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。本記事に記載した制度の詳細・金額・要件・申請手続きについては、各公式サイトまたは担当窓口(市区町村の後期高齢者医療担当窓口・後期高齢者医療広域連合)に直接ご確認ください。保険料の軽減・減免および各種給付は、要件を満たした方が必ず受給できることを保証するものではありません。申請期限・必要書類・窓口は自治体によって異なる場合があります。記載内容は2026年6月27日時点の公開情報に基づくものであり、制度改定により変更される場合があります。