国民年金保険料の免除・納付猶予・学生納付特例を実務目線で整理する(追納と将来の年金額への影響まで)

本記事は2026年6月26日時点の公開情報に基づきます。金額・所得基準・申請期限はいずれも変更されることがあるため、申請前に必ず日本年金機構の公式サイトで最新情報をご確認ください。

この記事が整理すること

収入が不安定なフリーランスや自営業の方、学生の方、退職して一時的に収入が途絶えた方にとって、毎月の国民年金保険料は重い負担になりがちです。そこで使えるのが、保険料の免除・納付猶予・学生納付特例という制度です。本人が申請すれば、保険料の支払いを免除してもらったり、後払いに先送りしたりできます。

ただし、この3つの制度は名前が似ているうえに、選ぶ制度によって「将来もらえる年金額」への影響がまったく異なります。免除を受けた期間は将来の年金に一部反映されますが、納付猶予や学生納付特例の期間は反映されません。この違いを知らずに「とりあえず猶予にしておこう」と選ぶと、追納しないかぎり将来の年金が増えない、ということが起こります。

この記事では、3つの制度の所得基準・申請窓口・申請時期を整理したうえで、多くの方が判断に迷う「将来の年金額への反映」と「追納すべきかどうか」を、令和8年度の数字を使って具体的に解説します。本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行や書類作成の代行は行いません。

制度の全体像

国民年金の保険料は、令和8年度で1か月あたり17,920円です。これを納めるのが難しいときに使える主な制度が、次の3つです。いずれも本人が申請する制度で、自己申請が可能です。

1つ目が保険料免除制度です。前年の所得が一定額以下の場合に、保険料の全額、または4分の3・半額・4分の1のいずれかが免除されます。所得を審査する対象は本人・世帯主・配偶者の3者です。

2つ目が納付猶予制度です。20歳以上50歳未満の方を対象に、本人と配偶者の前年所得が一定額以下なら、保険料の納付が猶予(先送り)されます。免除と違って世帯主の所得は審査の対象になりません。親と同居している若い世代でも使いやすいのが特徴です。

3つ目が学生納付特例制度です。学生本人の前年所得が一定額以下なら、在学中の保険料の納付が猶予されます。家族の所得は問われず、本人の所得だけで判定されます。

この3つの最大の違いは、将来の老齢基礎年金への反映です。免除は保険料を納めていなくても一部が年金額に反映されますが、納付猶予と学生納付特例は反映されません。下の表で整理します。

制度所得を審査する人対象将来の年金額への反映
全額免除本人・世帯主・配偶者制限なし2分の1が反映される
4分の3免除本人・世帯主・配偶者制限なし8分の5が反映される
半額免除本人・世帯主・配偶者制限なし8分の6が反映される
4分の1免除本人・世帯主・配偶者制限なし8分の7が反映される
納付猶予本人・配偶者20歳以上50歳未満反映されない(追納が必要)
学生納付特例本人のみ学生反映されない(追納が必要)

免除でも猶予でも、承認された期間は年金を受け取るために必要な期間(受給資格期間。最低10年)にはカウントされます。年金そのものを受け取れなくなるわけではありません。違いはあくまで「年金額が増えるかどうか」です。

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3つの制度の中で判断がいちばん難しいのが、学生納付特例を使った後に「追納すべきかどうか」です。ここでは典型的な1ケースを取り上げ、追納でいくら年金が増えるのか、追納にいくらかかるのかを、途中の計算を省略せずに最後まで解いてみます。あくまで制度を理解するための一例であり、実際の金額は年度や所得によって変わる点はあらかじめご了承ください。

想定するのは、次のような方のケースです。

まず、学生納付特例の期間は将来の年金額に反映されないという前提を確認します。学生納付特例は「いまは納めなくてよいが、後で追納しなければ年金額には反映しない」という制度です。何もしなければ、この24か月分は将来の老齢基礎年金を1円も増やしません。受け取る権利(受給資格期間)にはカウントされますが、金額には効かない、という点が要注意です。

次に、追納するとどれだけ年金が増えるかを計算します。令和8年度の老齢基礎年金の満額は年額847,296円です。これは保険料を40年(480か月)すべて納めた場合の金額です。そこで、保険料1か月分が将来の年金にもたらす年額を求めます。

847,296円 ÷ 480か月 = 1,765円(1か月分が将来生み出す年金の年額)

学生納付特例の期間は反映ゼロなので、追納すればこの1,765円がまるごと上乗せされます。24か月分を追納すると、

1,765円 × 24か月 = 42,360円

つまり、24か月分を追納すると、将来の年金が1年あたり約42,360円増える計算です。これは一度きりではなく、年金を受け取っている間ずっと毎年増え続けます。

ここが重要なポイントです。仮に65歳から年金を受け取り、20年間(85歳まで)受給したとすると、

42,360円 × 20年 = 847,200円

追納で増える年金の総額は、20年受給で約84万円になります。

では、追納にいくらかかるかを見ます。当時の保険料額をもとに計算するため、ここでは令和8年度の保険料17,920円で単純化します。

17,920円 × 24か月 = 430,080円

追納にかかる費用は約43万円です(実際には、承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納する場合、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。早く追納するほど加算が少なくて済みます)。

ここまでをまとめると、約43万円を払って追納すると、将来の年金が毎年約42,360円増え、20年受給なら受け取り総額が約84万円増える計算になります。受給期間が長くなるほど、払った額に対する見返りは大きくなります。さらに、追納した保険料はその年の社会保険料控除の対象になるため、所得税・住民税が軽くなる効果もあります。

逆に言えば、追納しなければこの24か月は将来の年金に一切反映されません。学生時代に学生納付特例を使った方は、「とりあえず申請しておしまい」ではなく、就職して収入が安定したら早めに追納を検討する価値がある、ということになります。追納には10年という期限があり、加算は早いほど少ないため、判断は先送りにしないほうが有利です。

このように、学生納付特例は1ケースであれば、追納でいくら増えるか、いくらかかるかを最後まで具体的に計算できます。ただし実際には、免除と猶予で追納の優先順位が違ったり、全額免除なら追納しなくても年金が一部もらえたりと、制度ごとに判断が変わります。免除と猶予の違い・所得基準の具体例・申請の手順・追納の順序・チェックリスト・FAQはこの続きで解説します。

ここから先は、申請に直結する実務です。

3つの制度の違いを「将来の年金」で正しく理解する

この記事の中心は、免除・納付猶予・学生納付特例で将来の年金がどう変わるか、です。区分の名前と納付割合の対応が直感と逆になりやすいので、ここでていねいに整理します。

なぜ免除は「納めていないのに年金が一部もらえる」のか

国民年金(基礎年金)の財源は、加入者が納める保険料だけでなく、その2分の1を国(国庫)が負担しています。全額免除を受けた期間は、本人が保険料を1円も納めていなくても、この国庫負担の2分の1分が年金に反映されます。これが「全額免除=2分の1反映」の理由です。

一部免除の場合は、この国庫負担の2分の1に加えて、本人が実際に納めた割合が上乗せされます。

つまり、免除は「納めた分+国が出してくれる分」で年金が一部育っていく制度です。

なぜ猶予・特例は「反映ゼロ」なのか

一方、納付猶予と学生納付特例は、保険料の納付を将来に先送りする制度です。「いまは払えないから後で払ってもらう」という前提なので、追納してもらうまでは年金額に反映しません。追納しなければ、その期間は将来の年金を増やさないままになります。

この差は、追納の優先順位に直結します。

制度追納しない場合の年金反映1年分を追納すると増える年金(目安)
全額免除すでに2分の1は反映済み約1万円/年(残りの2分の1分が増える)
納付猶予反映ゼロ約2万円/年(満額相当が増える)
学生納付特例反映ゼロ約2万円/年(満額相当が増える)

日本年金機構も「全額免除の期間を追納すると老後の年金が年間で約1万円、納付猶予や学生納付特例の期間を追納すると年間で約2万円増える」と案内しています。全額免除はすでに半分が反映されているので追納で増える幅が小さく、猶予・特例はゼロからの上乗せなので増える幅が大きいわけです。

ここから言えるのは、追納に使えるお金が限られているなら、まず納付猶予・学生納付特例の期間を優先して追納するほうが、年金を増やす効率がよいということです。

所得基準の具体例:自分が対象になるか

免除・猶予・学生特例は、いずれも前年の所得(1月〜6月に申請する場合は前々年の所得)で判定します。所得基準は次の式で示されています。

区分前年所得の基準(目安)
全額免除(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
4分の3免除88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
半額免除128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
4分の1免除168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
納付猶予(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(全額免除と同じ)
学生納付特例128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等

数式だけだとイメージしにくいので、扶養親族がいない単身者の例で計算してみます。

全額免除(および納付猶予)の基準は、扶養親族0人の場合、

(0+1)×35万円+32万円 = 67万円

前年の所得が67万円以下なら、全額免除や納付猶予の対象になり得ます。所得は収入から必要経費(給与なら給与所得控除)を引いた後の金額なので、給与収入で言えばこれより高い水準まで対象に入ります。

学生納付特例の基準は、扶養親族0人の場合、

128万円+0×38万円 = 128万円(+社会保険料控除等)

学生本人の前年所得が128万円程度以下なら対象になり得ます。アルバイト収入だけの学生であれば、多くの方が対象に入る水準です。学生の場合、家族の所得は一切問われず、本人の所得だけで判定される点が大きな特徴です。

注意点として、4分の3免除・半額免除・4分の1免除の式にある「社会保険料控除額等」は人によって金額が異なります。正確な判定は申請して年金事務所・市区町村が行いますので、上の数字はあくまで目安として、迷ったら申請してみることをおすすめします。

失業・退職したときの特例

退職して収入が途絶えた場合は、通常の所得基準とは別の特例があります。退職した本人の前年所得をゼロとみなして審査するしくみです。これにより、前年に十分な収入があった方でも、退職後は免除や猶予の対象になりやすくなります。

ただし、ゼロとみなされるのは退職した本人の所得だけです。世帯主や配偶者の所得は通常どおり審査の対象に含まれます。配偶者に十分な収入がある場合などは、特例を使っても承認されないことがあります。

申請には、退職の事実を確認できる書類が必要です。具体的には、雇用保険被保険者離職票、雇用保険受給資格者証、雇用保険受給資格通知などです。これらをハローワークで受け取ったら、免除申請書に添えて提出します。

2026年10月から始まる育児免除制度

本テーマの主役である免除・猶予・特例とは別枠ですが、関連する新制度として、令和8年(2026年)10月から国民年金保険料の育児免除制度が始まります。

これは、子を養育する国民年金第1号被保険者(自営業者・農業者・学生・無職の方など)を対象に、所得に関係なく保険料を免除する制度です。免除される期間は、実母の場合は産前産後免除に引き続く9か月(最大13か月)、実父・養父母の場合は子を養育することとなった月から1歳の誕生日の前月までの最大12か月です。

この育児免除の大きな特徴は、免除された期間が「保険料を納付したもの」として将来の老齢基礎年金額に満額反映される点です。前述の通常の全額免除(2分の1反映)や納付猶予・学生特例(反映なし)と違い、追納しなくても満額が反映されます。所得制限もありません。子育て世代にとっては申請しない理由がほとんどない制度なので、対象になる方は開始後に忘れず申請することをおすすめします。

申請の具体手順

ここでは、免除・納付猶予・学生納付特例を申請する流れを整理します。いずれも本人が申請でき、士業に代行を依頼する必要はありません。

ステップ1:申請窓口を選ぶ

申請できる窓口は次の通りです。

郵送での提出も可能です。来庁が難しい方はマイナポータルの電子申請が便利です。

ステップ2:必要書類を準備する

基本は「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」(学生は「国民年金保険料 学生納付特例申請書」)です。状況によって次の書類を添えます。

申請書は日本年金機構の公式サイトからダウンロードでき、年金事務所・市区町村窓口にも備え付けられています。

ステップ3:提出する

窓口・郵送・電子申請のいずれかで提出します。審査の結果は後日、承認・却下の通知が届きます。

ステップ4:申請時期と年度に注意する

申請できる年度の区切りは、制度によって異なります。

複数年度を申請したい場合は、原則として年度ごとに申請書を出す必要があります。ただし、継続審査の対象になるのは全額免除または納付猶予で、承認後に継続を希望する旨を申請書で出しておくと、翌年度以降は新たな申請書を出さなくても継続審査が行われます(一部免除はこの継続審査の対象ではないため、毎年の申請が必要です)。学生は進級・進学のたびに4月始まりで申請する意識を持っておくとよいでしょう。

過去にさかのぼっての申請

申請を忘れていた期間についても、保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1か月前まで)であれば、さかのぼって申請できます。未納のまま放置しているより、さかのぼって免除や猶予を受けておくほうが安心です。未納期間中に万一の障害や死亡があると、障害年金・遺族年金が受け取れなくなる恐れがあるため、早めの申請をおすすめします。

追納の手順と順序

承認された期間の保険料は、後から納める(追納する)ことができます。追納すれば、その分だけ将来の年金額が増えます。

追納できる期間と窓口

追納できるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除等期間です。10年を過ぎると追納できなくなるため、注意が必要です。追納の申し込みは、お近くの年金事務所で行います(街角の年金相談センターでは手続きできません)。

追納の順序

原則として、古い期間の保険料から納めます。ただし、免除の期間と納付猶予・学生納付特例の期間が両方ある方は、どちらから納めるべきか年金事務所に相談することになっています。

前述の通り、年金を増やす効率で考えると、反映ゼロの納付猶予・学生納付特例の期間を優先して追納するほうが効果は大きくなります。一方で「古い期間から」という原則や、3年度目以降の加算は古い期間ほど大きくなりやすい点もあります。どの期間から追納するのが自分にとって有利かは、年金事務所で具体的に確認することをおすすめします。

加算額に注意

承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納する場合、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。つまり、追納は早ければ早いほど安く済みます。学生時代に学生納付特例を使った方は、就職して収入が安定したら早めに追納を検討すると、加算が少なくて済みます。

追納できない場合

すでに老齢基礎年金を受け取ることができる方は、追納できません。年金を受け取り始める前に追納を済ませる必要があります。

金額の計算例(複数ケース)

無料サンプルとは別の条件で、3つのケースの計算を示します。いずれも令和8年度の数字(保険料17,920円・老齢基礎年金満額847,296円・1か月分の年金価値1,765円)で計算しています。実際の金額は年度や所得、加算額によって変わります。

ケース1:全額免除を3年間受けた自営業者が追納すべきか

想定するのは、収入が落ち込んだ時期に全額免除を3年間(36か月)受けた自営業の方が、収入が回復して追納を検討するケースです。

全額免除はすでに2分の1が年金に反映されています。追納すると、残りの2分の1分が上乗せされます。1か月分の年金価値1,765円のうち、追納で増えるのはその2分の1にあたる約882円です。

36か月分を追納すると、

882円 × 36か月 = 31,752円(将来の年金が1年あたり増える額)

将来の年金が毎年約3万円増える計算です。一方、追納にかかる費用は、

17,920円 × 36か月 = 645,120円(加算は別)

約65万円です。全額免除はもともと半分が反映されているため、追納で増える幅は猶予・特例より小さくなります。手元資金に余裕がある場合や、長く年金を受け取る見込みがある場合に検討する、という位置づけになります。

ケース2:納付猶予を2年間受けた人が追納すべきか

想定するのは、世帯主の所得は高いものの本人と配偶者の所得が低かったため、納付猶予を2年間(24か月)受けた方のケースです。

納付猶予は年金に反映されないため、追納すると1か月分の年金価値1,765円がまるごと上乗せされます。24か月分を追納すると、

1,765円 × 24か月 = 42,360円(将来の年金が1年あたり増える額)

将来の年金が毎年約42,360円増えます。追納費用は、

17,920円 × 24か月 = 430,080円(加算は別)

約43万円です。全額免除(ケース1)と同じ24か月でも、納付猶予のほうが追納で増える年金が大きいことがわかります。反映ゼロの期間を埋めるほうが、年金を増やす効率がよいという原則がここでも確認できます。

ケース3:一部免除(半額免除)を受けた人が、納める保険料を払わなかった場合

想定するのは、半額免除の承認を受けたものの、納めるべき半額分(令和8年度で月8,960円)を支払わなかったケースです。

ここが見落とされやすいのですが、一部免除は「免除されない部分の保険料を自分で納めて初めて」その免除が成立します。半額免除の承認を受けても、納めるべき半額(月8,960円)を納めないと、その月は「未納」と同じ扱いになり、年金額に反映されないだけでなく、受給資格期間にもカウントされません。

つまり、半額免除なら毎月8,960円、4分の3免除なら毎月4,480円、4分の1免除なら毎月13,440円を、忘れずに納める必要があります。一部免除を選んだら、減額後の保険料の納付をセットで管理することが大切です。

一部免除の区分毎月納める保険料(令和8年度)納めなかった場合
4分の3免除4,480円未納扱い・年金に反映されず受給資格期間にも入らない
半額免除8,960円未納扱い・年金に反映されず受給資格期間にも入らない
4分の1免除13,440円未納扱い・年金に反映されず受給資格期間にも入らない

よくある誤解・つまずきポイント

「猶予にしておけば後で困らない」という誤解

納付猶予や学生納付特例を選ぶと、その期間は将来の年金額に反映されません。追納しなければ、年金が増えないままです。「とりあえず猶予にしておけば安心」と考えていると、追納のタイミングを逃して年金額が低くなることがあります。猶予・特例は「先送り」であって「免除」ではない、と理解しておくことが大切です。

全額免除と納付猶予は所得基準が同じでも意味が違う

全額免除と納付猶予は所得基準が同じ式です。しかし、全額免除は2分の1が年金に反映されるのに対し、納付猶予は反映されません。両方の対象になり得る場合(50歳未満で世帯主の所得も低い場合など)は、年金額に有利な全額免除のほうを選べるよう、申請時に確認するとよいでしょう。世帯主の所得が高くて全額免除に通らない場合に、世帯主を審査対象に含めない納付猶予が選択肢になる、という関係です。

一部免除は「納めて初めて成立する」

前述の通り、4分の3免除・半額免除・4分の1免除は、免除されない部分を自分で納めないと未納扱いになります。承認通知が届いて安心して、減額後の保険料を払い忘れるケースがあります。納付書や口座振替の設定を確認しましょう。

学生特例は申請しないと「ただの未納」になる

学生でアルバイト収入が基準以下でも、申請しなければ自動的に特例にはなりません。申請しないまま納めずにいると未納扱いになり、受給資格期間にもカウントされません。万一の障害時に障害基礎年金が受け取れなくなる恐れもあるため、対象になる学生は必ず申請することが重要です。

追納の10年期限と加算を見落とす

追納は10年以内という期限があり、3年度目以降は加算がつきます。「いつか追納すればいい」と先送りしているうちに、10年を過ぎて追納できなくなったり、加算で割高になったりします。収入が安定したら、早めに年金事務所で追納額を確認することをおすすめします。

申請チェックリスト

ここでは、免除・納付猶予・学生納付特例を申請する場合と、追納する場合に分けて、準備しておきたいことを整理します。様式や必要書類は変更されることがあるため、最終的には年金事務所・市区町村・公式サイトで最新の様式を確認してください。

免除・納付猶予を申請する場合に準備するものの目安は、おおむね次の通りです。

学生納付特例を申請する場合に準備するものの目安は、次の通りです。

追納する場合に確認・用意しておきたいことは、次の通りです。

期限と窓口について押さえておきたい点を挙げます。申請は、市区町村の国民年金担当窓口・年金事務所・マイナポータルのいずれでも行えます。過去分は納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1か月前まで)さかのぼれます。追納は10年以内で、申し込みは年金事務所(街角の年金相談センターでは不可)です。

よくある質問(FAQ)

免除・納付猶予・学生納付特例について、迷いやすい点をQ&A形式で整理します。最終的な判断の前には、年金事務所や公式サイトで確認することをおすすめします。

Q1. 免除と納付猶予は何が違うのですか。

大きな違いは2つです。1つは所得を審査する人の範囲で、免除は本人・世帯主・配偶者を見ますが、納付猶予は世帯主を見ず本人・配偶者だけを見ます。もう1つは将来の年金への反映で、全額免除は2分の1が反映されるのに対し、納付猶予は反映されません(追納が必要です)。世帯主の所得が高くて免除に通らない若い方が猶予を使う、という関係になります。

Q2. 学生納付特例を受けた期間は、追納しないと年金にまったく反映されないのですか。

はい、追納しないかぎり老齢基礎年金の額には反映されません。ただし、年金を受け取るために必要な受給資格期間(最低10年)にはカウントされます。年金がもらえなくなるわけではなく、金額が増えない、という違いです。

Q3. 追納すると、いくら年金が増えますか。

日本年金機構の案内では、全額免除の期間を追納すると老後の年金が年間で約1万円、納付猶予や学生納付特例の期間を追納すると年間で約2万円増えるとされています。全額免除はすでに半分が反映されているため、追納で増える幅が小さくなります。

Q4. 追納にはいつまでという期限がありますか。

あります。追納できるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除等期間です。10年を過ぎると追納できなくなります。また、3年度目以降に追納する場合は加算がつくため、早く追納するほど費用は安く済みます。

Q5. 一部免除(半額免除など)の承認を受けたら、何もしなくてよいのですか。

いいえ。一部免除は、免除されない部分の保険料を自分で納めて初めて成立します。たとえば半額免除なら毎月8,960円(令和8年度)を納める必要があります。これを納めないと未納扱いになり、年金額にも反映されず、受給資格期間にもカウントされません。

Q6. 全額免除と納付猶予の両方に該当する場合、どちらを選ぶべきですか。

将来の年金額だけで見れば、2分の1が反映される全額免除のほうが有利です。所得基準は同じ式ですが、全額免除は世帯主の所得も審査されるため、世帯主の所得が高いと全額免除には通らず、納付猶予なら通ることがあります。まず全額免除で申請し、世帯主の所得で通らない場合に納付猶予を検討する、という順序が考えやすいでしょう。

Q7. 申請を忘れていた過去の期間も、いまから申請できますか。

保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1か月前まで)であれば、さかのぼって申請できます。未納のまま放置していると、万一の障害・死亡の際に障害年金・遺族年金が受け取れなくなる恐れがあるため、早めの申請をおすすめします。

Q8. 退職して収入がなくなりました。前年は収入があったのですが、免除は受けられますか。

失業(退職)特例があります。退職した本人の前年所得をゼロとみなして審査するため、前年に収入があった方でも免除や猶予の対象になりやすくなります。ただし、世帯主や配偶者の所得は通常どおり審査されます。申請には離職票や雇用保険受給資格者証などが必要です。

Q9. 免除や猶予の申請は、毎年しなければいけませんか。

原則として年度ごとに申請が必要です。ただし、全額免除または納付猶予が承認され、継続を希望する場合は、申請書で継続希望を出しておくと、翌年度以降は新たな申請なしで継続審査が行われます。一部免除は継続審査の対象外で、毎年の申請が必要です。学生納付特例も、進級・進学に合わせて毎年申請します。

Q10. 追納した保険料は、税金の面でメリットがありますか。

あります。追納した保険料は、その年の社会保険料控除の対象になります。確定申告や年末調整で申告すれば、所得税・住民税が軽くなります。年金が増えるだけでなく、その年の税負担も軽くなる点は、追納を検討する材料になります。

Q11. 子どもが生まれたら使える免除はありますか。

令和8年(2026年)10月から、子を養育する国民年金第1号被保険者を対象にした育児免除制度が始まります。所得に関係なく保険料が免除され、しかも免除された期間は保険料を納付したものとして年金額に満額反映されます(追納も不要です)。対象になる方は開始後に申請するとよいでしょう。

Q12. 申請は本人がするのですか。誰かに代行してもらえますか。

本人が申請できる制度で、市区町村・年金事務所・マイナポータル・郵送で手続きできます。本記事は情報提供にとどめており、申請書類の作成代行や個別手続きの代行は行いません。手続きで不明な点は、年金事務所や市区町村の国民年金担当窓口に直接ご相談ください。

出典一覧(URL・確認日)

本記事は以下の一次情報(日本年金機構公式サイト)を確認した上で執筆しています。

https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html

確認日:2026年6月26日

https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150514.html

確認日:2026年6月26日

https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150331.html

確認日:2026年6月26日

https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hokenryo.html

確認日:2026年6月26日

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202604/0401.html

確認日:2026年6月26日

https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150402-01.html

確認日:2026年6月26日

https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/ikujimenjo.html

確認日:2026年6月26日

https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/taishoku_menjo.html

確認日:2026年6月26日

https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kokunen/menjoyuyo/koninhenko.html

確認日:2026年6月26日

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成代行・法律的助言を行うものではありません。制度の詳細・最新の所得基準・申請手続きについては、年金事務所、お住まいの市区町村の国民年金担当窓口、または日本年金機構の公式サイトで直接ご確認ください。記載した金額・所得基準・年金額は令和8年度(2026年度)時点のもので、毎年度改定されます。免除・納付猶予・学生納付特例の承認は所得等の要件に基づいて行われるものであり、要件を満たした全員が必ず承認されることを保証するものではありません。