国民健康保険料の軽減・減免を整理する(7割・5割・2割軽減と、会社都合で辞めた人の保険料が大きく下がる「非自発的失業者軽減」)
本記事は2026年6月26日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・受付期間や年度ごとの判定基準はいずれも変更されることがあり、自治体によって扱いが異なる部分もあるため、申請前に必ずお住まいの市区町村の公式情報でご確認ください。
この記事が整理すること
会社を辞めたり、フリーランスとして独立したりすると、それまで給与から天引きされていた健康保険から、自分で加入する「国民健康保険」に切り替わることが多くあります。このとき多くの方が驚くのが、届いた保険料の通知書の金額です。前年の所得をもとに計算されるため、収入が下がった直後ほど負担が重く感じられる、という仕組みになっているからです。
ところが国民健康保険には、保険料を軽くするための制度がいくつも用意されています。所得が低い世帯の負担を自動的に減らす「7割・5割・2割軽減」、そして会社都合などで職を失った方の保険料を大きく下げる「非自発的失業者の保険料軽減」です。とくに後者は、前年の給与所得を実際の3割とみなして計算し直すという強力な制度であるにもかかわらず、自分で届け出ないと受けられないため、知らずに高い保険料を払い続けてしまう方が少なくありません。
この記事では、これらの軽減と、個別の事情に応じて申請する「減免」を、誰が・どんなとき・どのくらい・どこへ申請すればよいのかという実務目線で整理します。本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行や書類作成の代行は行いません。
制度の全体像
国民健康保険の保険料を下げる仕組みは、大きく「軽減」と「減免」の2つに分かれます。この2つは名前が似ていますが、性質がまったく違います。
軽減は、世帯の所得が一定額より低いときに、申請しなくても自動的に保険料の一部が割り引かれる仕組みです。代表が「7割・5割・2割軽減」で、所得が低いほど割引率が大きくなります。原則として手続きはいりませんが、世帯全員が所得の申告を済ませていることが前提になります(申告がないと所得を判定できず、軽減が適用されません)。
もうひとつ、軽減のなかでも特別な位置づけにあるのが「非自発的失業者の保険料軽減」です。これは倒産・解雇・雇止めなどで職を失った65歳未満の方が対象で、前年の給与所得を実際の100分の30(3割)とみなして保険料を計算し直す制度です。所得が下がっていなくても帳簿上の所得が大きく圧縮されるため、軽減効果が非常に大きくなります。ただしこれだけは、自分で市区町村の窓口に届け出る必要があります。
減免は、災害・失業・所得の大幅な減少といった個別の事情があるときに、申請して保険料を減額・免除してもらう仕組みです。要件も減免率も自治体ごとに大きく異なり、いずれも申請が必要です。
整理すると、次の表のようになります。
| 制度 | どんなとき | だれが対象 | 手続き | 申請窓口 |
|---|---|---|---|---|
| 7割・5割・2割軽減 | 世帯の所得が一定額以下 | 低所得の世帯 | 原則不要(自動/要・所得申告) | 市区町村の国保担当課 |
| 非自発的失業者軽減 | 会社都合等で離職(65歳未満) | 特定受給資格者・特定理由離職者 | 届出が必要 | 市区町村の国保担当課 |
| 減免(災害・所得激減・失業等) | 災害・倒産・廃業・所得激減など | 個別事情のある世帯 | 申請が必要 | 市区町村の国保担当課 |
申請する人は基本的にご本人(世帯主)で、窓口はいずれもお住まいの市区町村の国民健康保険担当課です。
【無料サンプル】会社都合で退職した人の「非自発的失業者軽減」で保険料がいくら下がるかを1ケースだけ無料で全部見せます
この記事でいちばん知っていただきたいのが「非自発的失業者の保険料軽減」です。会社都合などで退職した方の国民健康保険料を大きく下げられる制度ですが、自動では適用されず届出が必要なため、見落とされがちです。ここでは典型的な1ケースを、計算の途中まで省略せずに最後まで解いてみます。あくまで制度のしくみを理解するための一例で、実際の保険料は前年の所得・自治体の保険料率・世帯構成などで変わる点はあらかじめご了承ください。
想定するのは、次のような方のケースです。
- 40歳の単身世帯(介護保険第2号被保険者に当たる年齢のため、介護分の保険料もかかる)
- 勤めていた会社が事業を縮小し、解雇(会社都合)により退職した
- 退職した年の前年(昨年)の給与収入は450万円で、それ以外の収入はない
- 退職後は国民健康保険に加入し、当面は収入のない期間が続く見込み
まず、軽減を使わない場合の「所得」を確認します。国民健康保険料は、収入そのものではなく、給与収入から給与所得控除を引いた「給与所得」をもとに計算します。給与収入450万円の場合、給与所得控除は計算式により134万円となり、給与所得は次のようになります。
450万円 − 134万円 = 316万円(給与所得)
国民健康保険料は、この所得に保険料率を掛ける「所得割」と、加入人数に応じてかかる「均等割」、世帯ごとにかかる「平等割」を合計して決まります。所得割の計算では、ここからさらに基礎控除43万円を引いた金額(旧ただし書き所得)を使うのが一般的です。
316万円 − 43万円 = 273万円(所得割の計算の元になる金額)
ここに、医療分・後期高齢者支援金分・介護分それぞれの所得割率を掛けます。料率は自治体ごとに異なりますが、ここでは説明のため、医療分7.0%・後期高齢者支援金分2.5%・介護分2.0%という、わかりやすい仮の料率で計算します(実際の料率はお住まいの自治体の通知書や公式サイトでご確認ください)。
- 医療分の所得割:273万円 × 7.0% = 19万1,100円
- 後期高齢者支援金分の所得割:273万円 × 2.5% = 6万8,250円
- 介護分の所得割:273万円 × 2.0% = 5万4,600円
所得割の合計は、19万1,100円 + 6万8,250円 + 5万4,600円 = 31万3,950円です。
これに均等割と平等割が加わります。仮に均等割と平等割の合計が1人あたり年6万円だとすると、軽減を使わない場合の年間保険料は、おおよそ次のようになります。
31万3,950円 + 6万円 = 37万3,950円(軽減なしの年間保険料の目安)
次に、非自発的失業者軽減を適用した場合を計算します。この制度のポイントは、前年の「給与所得」を100分の30(3割)とみなして計算し直すところにあります。先ほどの給与所得316万円が、計算上は次のように圧縮されます。
316万円 × 30 ÷ 100 = 94万8,000円(軽減後とみなされる給与所得)
この圧縮された所得から基礎控除43万円を引きます。
94万8,000円 − 43万円 = 51万8,000円(軽減後の所得割の計算の元になる金額)
先ほどと同じ仮の料率で所得割を計算し直します。
- 医療分の所得割:51万8,000円 × 7.0% = 3万6,260円
- 後期高齢者支援金分の所得割:51万8,000円 × 2.5% = 1万2,950円
- 介護分の所得割:51万8,000円 × 2.0% = 1万360円
所得割の合計は、3万6,260円 + 1万2,950円 + 1万360円 = 5万9,570円です。
ここで、もう一つ見逃せない効果があります。所得を3割とみなした結果、この方の所得は前に説明した「7割・5割・2割軽減」の判定にも届く水準まで下がり、均等割・平等割の軽減も受けられる可能性が出てきます。説明を単純にするため、ここでは均等割・平等割は軽減前の6万円のままとして合計すると、
5万9,570円 + 6万円 = 11万9,570円(非自発的失業者軽減を使った場合の年間保険料の目安)
となります。軽減なしの37万3,950円と比べると、年間でおよそ25万円もの差が生まれる計算です。
37万3,950円 − 11万9,570円 = 25万4,380円(差額の目安)
このように、非自発的失業者軽減は、前年の所得が高かった人ほど効果が大きくなります。退職直後で収入がない時期に、前年の高い所得をもとにした保険料を満額請求されるのは負担が重いものですが、この制度を届け出れば、所得割の計算の元になる金額を3割に圧縮できるため、保険料が大きく下がります。
注意したいのは、この軽減は会社都合などの離職であっても自動では適用されないという点です。雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)などを持って市区町村の窓口に届け出てはじめて適用されます。届出が遅れると遡って軽減できない場合もあるため、退職して国民健康保険に切り替えたら、できるだけ早く窓口に相談することが大切です。
ここまでが1ケースの全体像です。実際には、離職理由のコードが対象に当たるか、軽減の期間がいつまで続くか、ほかの軽減と重なるとどうなるか、料率はいくらかなど、確認すべき点が複数あります。対象になる離職理由・申請の具体的な手順・必要書類・複数ケースの計算例・7割5割2割軽減の判定基準・各種減免・FAQは、この続きで解説します。
ここから先は、申請に直結する実務です。
非自発的失業者の保険料軽減:対象になる人を見極める
無料サンプルで見たとおり、非自発的失業者軽減は効果が大きい制度です。ただし、誰でも使えるわけではなく、離職の理由が一定のものに当てはまる必要があります。ここを正しく見極めることが第一歩です。
対象になる2つのタイプ
対象になるのは、離職日の時点で65歳未満の方で、次のいずれかに当てはまる方です。判定は、ハローワークが発行する雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)に記載された「離職理由コード」で行います。
1つ目は「特定受給資格者」です。倒産・事業所の廃止・解雇など、会社側の事情で職を失った方が中心です。離職理由コードは「11、12、21、22、31、32」のいずれかです。
2つ目は「特定理由離職者」です。雇用期間満了による雇止めや、正当な理由のある自己都合離職(病気や家庭の事情など)が中心です。離職理由コードは「23、33、34」のいずれかです。
一方で、雇用保険の「特例受給資格者」や「高年齢受給資格者」は対象外です。また、雇用保険に加入していなかった方や、自己都合でコードが上記に当てはまらない方も対象外となります。自分が対象かどうかは、雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)の離職理由コードを確認するのが確実です。
軽減の内容と期間
軽減の内容は、前年の「給与所得」を100分の30(3割)とみなして保険料を計算するというものです。ここで対象になるのは給与所得だけで、事業所得・不動産所得・年金所得など給与以外の所得は圧縮されません。また、世帯のなかにほかの被保険者(家族)がいる場合、その方の所得は対象外です。あくまで離職した本人の給与所得だけが3割とみなされます。
軽減が続く期間は、離職日の翌日が属する月から、その月が属する年度の翌年度末までです。年度は4月から翌年3月までを指します。たとえば2026年(令和8年)の春に離職した場合は、その年度(令和8年度)の途中から始まり、翌年度(令和9年度)の3月末まで軽減が続く形になります。離職の時期によって、実質的に軽減を受けられる月数が変わる点に注意してください。また、期間の途中で就職して別の健康保険に入り、国民健康保険を脱退したときは、その時点で軽減も終わります。
申請(届出)の具体的な手順
非自発的失業者軽減は届出制です。会社都合の離職であっても、市区町村が自動で適用してくれるわけではありません。次の手順で進めます。
ステップ1:退職後すぐに国民健康保険へ加入する
会社の健康保険を脱退したら、原則として14日以内に市区町村で国民健康保険の加入手続きをします。このとき、健康保険の資格喪失日がわかる書類(資格喪失証明書など)が必要です。加入手続きと軽減の届出はまとめて窓口で行えることが多いので、後述の必要書類も一緒に持参すると一度で済みます。
なお、退職時には「国民健康保険に切り替える」「前の会社の健康保険を任意で続ける(任意継続)」「家族の健康保険の扶養に入る」という選択肢があります。非自発的失業者軽減を使うと国民健康保険料が大きく下がるため、任意継続より国民健康保険のほうが安くなるケースが少なくありません。どちらが安いかは保険料を試算して比べるのがよいでしょう。
ステップ2:軽減の届出をする
国民健康保険担当課の窓口で、非自発的失業者軽減の届出をします。自治体によっては「特例対象被保険者等に係る届出書」という名前の書類に記入します。窓口で記入する場合がほとんどなので、事前に用意するものは次の必要書類です。
必要書類
- 雇用保険受給資格者証、または雇用保険受給資格通知(離職理由コードが確認できるもの。原本が必要なことが多い)
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど顔写真付きは1点、顔写真のないものは2点)
- 国民健康保険の資格確認書または資格情報のお知らせ(加入後に届くもの)
雇用保険受給資格者証は、退職後にハローワークで求職の手続きをすると交付されます。これが手元にないと離職理由コードを確認できず、軽減の届出ができません。先にハローワークでの手続きを済ませておくとスムーズです。
ステップ3:保険料の再計算を待つ
届出が受理されると、市区町村が保険料を計算し直します。すでに通知済みの保険料がある場合は、後日、軽減後の金額に修正された通知書が届きます。すでに納めすぎていた分があれば、還付(返金)されるか、その後の納付に充てられます。
注意点として、届出が離職日から1年以上遅れると、過去にさかのぼって軽減できない場合があります(取り扱いは自治体によって異なります)。気づいたらできるだけ早く届け出ることが大切です。
7割・5割・2割軽減:自動で適用される低所得世帯の軽減
非自発的失業者軽減とは別に、世帯の所得が一定額より低い場合に、申請しなくても保険料の「均等割」と「平等割」が割り引かれる制度があります。これが7割・5割・2割軽減です。割引の対象は、所得に応じてかかる「所得割」ではなく、人数や世帯ごとに定額でかかる均等割・平等割の部分です。
判定の基準(令和8年度の基準)
軽減の判定は、世帯主とすべての被保険者(および同じ世帯にいる後期高齢者医療制度へ移行した方)の前年中の総所得金額等の合計が、次の基準以下かどうかで行います。以下は令和8年度(2026年度)の基準額です。
| 軽減割合 | 総所得金額等が次の額以下なら該当 |
|---|---|
| 7割軽減 | 43万円 + 10万円 ×(給与所得者等の数 − 1) |
| 5割軽減 | 43万円 + 31万円 × 被保険者数 + 10万円 ×(給与所得者等の数 − 1) |
| 2割軽減 | 43万円 + 57万円 × 被保険者数 + 10万円 ×(給与所得者等の数 − 1) |
ここでいう「被保険者数」は、その世帯の国民健康保険加入者の数(後期高齢者医療制度へ移った旧加入者を含めて数える自治体が多い)です。「給与所得者等の数」は、世帯のなかで給与収入が55万円を超える方や、一定額を超える公的年金を受け取っている方の人数を指し、この人数が0または1のときは「10万円 ×(給与所得者等の数 − 1)」の項目は0になります。
この軽減は申請不要で、所得が基準以下であれば自動的に適用されます。ただし、世帯のなかに所得を申告していない方がいると、所得を判定できず軽減が受けられません。収入がなかった年も、住民税の申告(または非課税であることの申告)をしておくことが、軽減を確実に受けるための前提になります。
重要:年度ごとに基準が見直される点
5割軽減・2割軽減で使う「被保険者あたりの加算額」(上の表の31万円・57万円)は、毎年度の政令改正で見直されます。令和8年度(2026年度)は、令和7年度の30.5万円・56万円から、それぞれ31万円・57万円へ引き上げられました(国民健康保険法施行令の改正政令により令和8年4月1日施行)。7割軽減の基礎部分(43万円)と「給与所得者等の数」による加算(10万円)の考え方は維持されています。今後も年度ごとに見直されることがあるため、実際に判定される年度の正確な基準額は、お住まいの市区町村の公式サイトでご確認ください。
保険料の上限:賦課(課税)限度額
国民健康保険料には「これ以上は上がらない」という上限があります。これを賦課限度額(自治体によっては課税限度額)といいます。所得が高い世帯でも、保険料はこの上限で頭打ちになります。
令和8年度(2026年度)の賦課限度額は、全国共通の政令上の上限として合計113万円で、内訳は次のとおりです。
| 区分 | 令和7年度の上限額 | 令和8年度の上限額 |
|---|---|---|
| 医療分(基礎賦課額) | 66万円 | 67万円 |
| 後期高齢者支援金等分 | 26万円 | 26万円 |
| 介護納付金分(40〜64歳のみ) | 17万円 | 17万円 |
| 子ども・子育て支援納付金分 | (なし) | 3万円(新設) |
| 合計 | 109万円 | 113万円 |
令和8年度(2026年度)から、子育てを支えるための「子ども・子育て支援納付金分」が新たに加わり、医療分(基礎賦課額)の上限が66万円から67万円へ引き上げられました(国民健康保険法施行令の改正政令により令和8年4月1日施行)。この結果、賦課限度額の合計は前年度の109万円から113万円になりました。
子ども・子育て支援納付金分は、すべての加入者にかかる新しい区分ですが、18歳未満の被保険者については、この区分の均等割が全額軽減され、実質的な負担はありません。
介護納付金分は、40歳から64歳までの介護保険第2号被保険者にかかる部分です。39歳以下と65歳以上の方にはこの部分がかからないため、その方々の上限は介護分を除いた額になります。
賦課限度額や区分は今後も年度ごとに改定されることがあり、実際の保険料率や上限額は各自治体が条例で定めます。お住まいの市区町村の公式サイトで最新の額を確認してください。
減免:個別の事情に応じて申請する制度
軽減(7割・5割・2割や非自発的失業者軽減)は、所得や離職理由という客観的な基準で機械的に決まる制度です。これに対して減免は、災害や急な所得の減少といった個別の事情がある世帯が、市区町村に申請して保険料を減額・免除してもらう制度です。要件も減免率も自治体ごとに大きく異なり、いずれも自分で申請する必要があります。
代表的な減免の類型には、次のようなものがあります(具体的な内容は自治体によって異なります)。
- 災害減免:震災・風水害・火災などで住宅や家財に大きな損害を受けたとき。たとえば大阪市では、全壊・全焼は保険料の100%、半壊・半焼は70%、床上浸水は50%といった減免率が定められています。
- 所得激減による減免:退職・倒産・廃業・失業などで、その年の所得が前年に比べて大きく減る見込みのとき。前年比で一定割合以下に下がることなどが条件で、所得割を中心に減免されます。
- 旧被扶養者減免:会社の健康保険の被扶養者だった方が、ご家族の後期高齢者医療制度への移行に伴って国民健康保険に加入することになったとき。一定期間、所得割が全額減免されるなどの扱いがあります。
- 拘禁・収監中の減免:刑事施設などに収容されている期間について、保険給付を受けられないことに対応して保険料が減免されます。
非自発的失業者軽減の対象にならない離職(コードが当てはまらない自己都合退職など)でも、所得激減による減免の対象になる場合があります。会社都合ではない退職で保険料が重いと感じるときは、減免の相談をしてみる価値があります。減免は申請が前提なので、該当しそうなときは早めに国民健康保険担当課に相談してください。
軽減と減免の使い分け:自分の状況から逆算する
ここまでの制度を、自分の状況からどれを使えるかという順番で整理します。
まず、会社都合・雇止め・正当な理由のある自己都合で退職した65歳未満の方は、非自発的失業者軽減を最優先で検討してください。効果が大きく、前年の所得が高かった方ほど下がり幅が大きくなります。届出が必要なので、退職後すぐに窓口へ相談します。
次に、世帯全体の所得が低い場合は、7割・5割・2割軽減が自動で適用されます。退職して所得が下がった翌年は、この軽減に該当することが多くあります。前提として、世帯全員が所得の申告(収入がなければ非課税の申告)を済ませておくことが重要です。
それでも保険料が重い、あるいは非自発的失業者軽減の対象にならない離職だった場合は、所得激減による減免が使えないかを相談します。これは申請が必要で、要件は自治体ごとに異なります。
災害に遭ったときは、災害減免を申請します。会社の健康保険の被扶養者からご家族の後期高齢者医療制度移行に伴って国保へ加入した方は、旧被扶養者減免の対象になる可能性があります。
このように、軽減と減免は重ねて検討できます。たとえば非自発的失業者軽減で所得割が下がった結果、7割・5割・2割軽減の判定にも該当し、均等割・平等割まで下がる、という形で効果が積み重なることがあります。窓口では「会社都合で退職した」「収入が大きく減った」と具体的に伝えると、使える制度を案内してもらいやすくなります。
計算例・記入例(複数ケース)
無料サンプルとは別の条件で、3つのケースを取り上げます。いずれも制度の理解を助けるための一例で、保険料率は自治体によって異なるため、ここでは説明用の仮の料率(医療分7.0%・後期高齢者支援金分2.5%・介護分2.0%)を使います。実際の額はお住まいの自治体の料率でご確認ください。
ケース1:自己都合だが特定理由離職者に当たる方(前年給与収入300万円・45歳・単身)
体調の悪化を理由に退職し、雇用保険受給資格者証の離職理由コードが「33」だったケースです。これは特定理由離職者に当たるため、非自発的失業者軽減の対象になります。
前年の給与収入300万円の給与所得は、給与所得控除を引いて202万円です。これを3割とみなします。
202万円 × 30 ÷ 100 = 60万6,000円(軽減後とみなす給与所得)
基礎控除43万円を引くと、
60万6,000円 − 43万円 = 17万6,000円(所得割の計算の元になる金額)
仮の料率で所得割を計算すると、医療分1万2,320円、後期高齢者支援金分4,400円、介護分3,520円で、合計2万240円です。さらに、所得が大きく下がったことで7割・5割・2割軽減の判定にも該当し、均等割・平等割も軽減される可能性があります。記入のポイントは、自己都合退職であっても離職理由コードが23・33・34であれば対象になるため、雇用保険受給資格者証のコードを必ず確認することです。
ケース2:給与以外の所得がある方(前年給与収入400万円+事業所得100万円・50歳)
会社員をしながら副業で事業所得があり、会社都合で退職したケースです。非自発的失業者軽減で圧縮できるのは「給与所得」だけで、事業所得は対象外という点が重要です。
給与収入400万円の給与所得は276万円です。これを3割とみなします。
276万円 × 30 ÷ 100 = 82万8,000円(軽減後とみなす給与所得)
これに事業所得100万円を足します(事業所得は圧縮されません)。
82万8,000円 + 100万円 = 182万8,000円
基礎控除43万円を引くと、
182万8,000円 − 43万円 = 139万8,000円(所得割の計算の元になる金額)
仮の料率での所得割は、医療分9万7,860円、後期高齢者支援金分3万4,950円、介護分2万7,960円で、合計16万770円です。給与所得は3割に圧縮されますが、事業所得はそのまま残るため、軽減後でも一定の保険料がかかります。記入のポイントは、給与と給与以外の所得を分けて把握しておくことです。
ケース3:非自発的失業者軽減の対象外だが減免を検討するケース(自己都合退職・コード非該当)
特定の理由がない自己都合退職で、離職理由コードが非自発的失業者軽減の対象(11・12・21・22・31・32・23・33・34)に当てはまらなかったケースです。この場合、非自発的失業者軽減は使えません。
ただし、退職によって今年の所得が前年より大きく減る見込みであれば、所得激減による減免の対象になる可能性があります。減免の要件(前年比で所得が何割以下に下がるか、減免率はいくらか)は自治体ごとに異なるため、市区町村の国民健康保険担当課に「自己都合で退職し、今年の収入が大きく減る見込み」と具体的に伝えて相談します。減免は申請が必要で、申請書のほかに退職を証明する書類や所得の見込みを示す資料を求められることがあります。記入のポイントは、減免は「前年の所得」ではなく「申請する年の所得の見込み」で判断されることが多いため、見込みの根拠を説明できるようにしておくことです。
よくある誤解・つまずきポイント
「会社都合で辞めたら自動で安くなる」という誤解
非自発的失業者軽減は、会社都合の離職であっても自動では適用されません。市区町村への届出が必要です。離職票や雇用保険受給資格者証が手元にあっても、窓口で届け出なければ保険料は前年の所得そのままで計算されます。退職して国民健康保険に切り替えたら、軽減の届出も忘れずに行ってください。
任意継続と国民健康保険を比べないまま決めてしまう
退職時に「とりあえず前の会社の健康保険を任意継続する」と決めてしまう方がいますが、非自発的失業者軽減を使うと国民健康保険のほうが安くなることが少なくありません。任意継続と、軽減適用後の国民健康保険料の両方を試算して、安いほうを選ぶのが基本です。どちらの試算も市区町村や元の健康保険の窓口で相談できます。
収入がない年に申告をしないと軽減が受けられない
7割・5割・2割軽減は申請不要ですが、所得の申告がないと判定できません。退職して収入がなかった年も、住民税の申告(収入がなければその旨の申告)をしておかないと、所得を低いと判定してもらえず、軽減が適用されないことがあります。世帯のなかに未申告の方がいると、世帯全体の軽減判定に影響します。
雇用保険受給資格者証がないと届出できない
非自発的失業者軽減の届出には、離職理由コードが確認できる雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)が必要です。これは退職後にハローワークで求職の手続きをすると交付されます。先に国民健康保険の窓口に行っても、コードが確認できないと軽減の届出が進まないことがあるため、ハローワークでの手続きを先に済ませておくとスムーズです。
軽減と減免を混同する
「軽減」は所得や離職理由で機械的に決まる制度、「減免」は個別の事情で申請して認めてもらう制度です。窓口で「減免したい」と言っても、まず該当するのは軽減のことが多くあります。自分の状況(退職した・収入が減った・災害に遭った)を具体的に伝えて、どの制度に当たるかを確認するのが確実です。
自治体によって金額も呼び方も違う
国民健康保険料の料率・均等割・平等割の額、減免の要件や減免率は、市区町村ごとに大きく異なります。「保険料」と呼ぶ自治体と「保険税」と呼ぶ自治体があり、平等割がない自治体もあります。他の市区町村の例や、ネット上の試算ツールの結果はあくまで参考にとどめ、最終的にはお住まいの自治体の通知書・公式サイト・窓口で確認してください。
申請チェックリスト
退職して国民健康保険に切り替え、軽減・減免を使う場合に、何をいつまでに準備すればよいかを整理します。様式や必要書類は自治体や年によって変わることがあるため、最終的には市区町村の窓口で最新の案内を確認してください。
退職後にまず行うことの目安は、次のとおりです。
- 会社の健康保険の資格喪失日がわかる書類(資格喪失証明書など)を受け取る
- ハローワークで求職の手続きをし、雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)の交付を受ける(離職理由コードの確認のため)
- 市区町村で国民健康保険の加入手続きをする(原則として退職後14日以内)
非自発的失業者軽減の届出で用意するものの目安は、次のとおりです。
- 雇用保険受給資格者証、または雇用保険受給資格通知(離職理由コードが確認できるもの。原本が必要なことが多い)
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど顔写真付きは1点、顔写真なしは2点)
- 国民健康保険の資格確認書または資格情報のお知らせ
- 自治体所定の届出書(特例対象被保険者等に係る届出書など。窓口で記入できることが多い)
7割・5割・2割軽減を確実に受けるための準備は、次のとおりです。
- 世帯全員が前年の所得を申告していること(収入がなければ非課税の申告をしておく)
- 世帯構成(被保険者数)や年齢を最新の状態にしておくこと
減免(災害・所得激減など)を申請する場合に確認・用意したいことは、次のとおりです。
- 減免の要件と減免率(自治体の公式サイトや窓口で確認)
- 申請書(自治体所定の様式)
- 事情を証明する資料(罹災証明書、退職を証明する書類、所得の見込みを示す資料など)
- 申請期限(減免は申請期限が定められていることがあるため、早めに相談する)
よくある質問(FAQ)
制度の詳細や最新の要件・金額は変わることがあり、自治体によって扱いが異なります。最終的な判断の前には、お住まいの市区町村の公式サイトや窓口での確認をおすすめします。
Q1. 非自発的失業者軽減は、どのくらい保険料が下がりますか。
前年の給与所得を100分の30(3割)とみなして計算し直すため、前年の所得が高かった方ほど下がり幅が大きくなります。所得割の計算の元になる金額が大きく圧縮され、結果として7割・5割・2割軽減の判定にも該当して均等割・平等割まで下がることがあります。下がる額は前年の所得・自治体の料率・世帯構成によって変わります。
Q2. 自己都合で退職した場合は対象外ですか。
すべての自己都合退職が対象外というわけではありません。雇用保険受給資格者証の離職理由コードが23・33・34(特定理由離職者)であれば、自己都合でも対象になります。病気や家庭の事情など正当な理由のある離職がこれに当たることがあります。コードが11・12・21・22・31・32(特定受給資格者)または23・33・34に当てはまるかどうかで判断されます。
Q3. 軽減はいつまで続きますか。
非自発的失業者軽減は、離職日の翌日が属する月から、その月が属する年度の翌年度末(年度は4月〜翌年3月)まで続きます。離職の時期によって実質的な月数が変わります。途中で就職して別の健康保険に入り国民健康保険を脱退したときは、その時点で軽減も終わります。
Q4. 7割・5割・2割軽減は自分で申請するのですか。
原則として申請は不要で、所得が基準以下であれば自動的に適用されます。ただし、世帯のなかに所得を申告していない方がいると判定できず適用されません。収入がなかった年も申告をしておくことが大切です。
Q5. 雇用保険に加入していなかった場合でも非自発的失業者軽減は使えますか。
この軽減は雇用保険の離職理由コードで判定するため、雇用保険に加入しておらず受給資格者証が交付されない場合は対象になりません。ただし、所得が下がった場合は7割・5割・2割軽減や、所得激減による減免の対象になる可能性があります。窓口で相談してください。
Q6. 退職してから時間が経ってしまいましたが、今からでも軽減を受けられますか。
非自発的失業者軽減は、届出が離職日から1年以上遅れると過去にさかのぼって軽減できない場合があります(取り扱いは自治体によって異なります)。気づいた時点でできるだけ早く市区町村の窓口に相談してください。
Q7. 任意継続と国民健康保険のどちらが得ですか。
一概には言えませんが、非自発的失業者軽減を使うと国民健康保険のほうが安くなるケースが多くあります。両方の保険料を試算して比べるのが基本です。試算は市区町村の国民健康保険担当課や、元の会社の健康保険の窓口で相談できます。
Q8. 減免と軽減はどう違いますか。
軽減は所得や離職理由という客観的な基準で機械的に決まる制度で、7割・5割・2割軽減や非自発的失業者軽減が当たります。減免は、災害や所得の大幅な減少といった個別の事情がある世帯が申請して認めてもらう制度です。減免はいずれも申請が必要で、要件や減免率は自治体ごとに異なります。
Q9. 給与以外に事業所得や年金がある場合も全部3割になりますか。
いいえ。非自発的失業者軽減で3割とみなされるのは「給与所得」だけです。事業所得・不動産所得・年金所得などはそのまま計算に含まれます。また、世帯のなかのほかの被保険者の所得も軽減対象外です。
Q10. フリーランスとして独立した場合も使えますか。
会社を退職した時点で離職理由コードが対象(特定受給資格者・特定理由離職者)に当たれば、その後にフリーランスとして活動していても、退職に基づく非自発的失業者軽減の対象になります。ただし軽減されるのは退職前の給与所得部分で、独立後に得た事業所得は対象外です。独立直後で前年の給与所得が高い時期に効果が大きい制度です。
Q11. 保険料はいくらまで上がりますか。
賦課限度額という上限があり、所得が高い世帯でも保険料はその額で頭打ちになります。令和8年度は合計113万円(医療分67万円・後期高齢者支援金分26万円・介護分17万円・子ども子育て支援分3万円)が政令上の上限です。前年度の109万円から、子ども・子育て支援分の新設などにより引き上げられました。年度ごとに見直されるため、最新の上限は自治体の公式サイトで確認してください。
Q12. 引っ越したら軽減はどうなりますか。
国民健康保険は市区町村ごとに運営されており、引っ越すと加入先の市区町村が変わります。非自発的失業者軽減は引っ越し先でも引き続き受けられますが、改めて転入先の市区町村で届出が必要になる場合があります。料率も変わるため、転入先の窓口で確認してください。
Q13. 確定申告や住民税の申告をしていれば、軽減のための特別な申告は必要ですか。
7割・5割・2割軽減については、確定申告や住民税の申告で所得が把握されていれば、軽減のための別の申告は原則不要です。一方、非自発的失業者軽減と各種減免は、所得の申告とは別に、市区町村への届出・申請が必要です。
Q14. 制度の金額や基準は毎年変わるのですか。
賦課限度額や、5割・2割軽減の被保険者あたりの加算額などは、年度ごとの政令改正で見直されます。たとえば令和8年度は、賦課限度額の合計が109万円から113万円へ、5割軽減の加算額が30.5万円から31万円へ、2割軽減の加算額が56万円から57万円へ改められました。実際に適用される基準額・料率は各自治体が年度ごとに条例で定めるため、必ずその年度の自治体の公式情報で確認してください。
出典一覧(URL・確認日)
本記事は以下の一次情報を確認した上で執筆しています。制度の数値・要件は年度ごとに改定され、自治体によって扱いが異なるため、申請前に必ずお住まいの市区町村の公式情報をご確認ください。
- 練馬区「非自発的失業者軽減制度」(東京都練馬区・国民健康保険)
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/nenkinhoken/kokuminkenkohoken/hoken_hokenryo/kokuho_hijihatu.html
確認日:2026年6月26日
- 大阪市「保険料の軽減・減免」(大阪市・国民健康保険)
https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000369751.html
確認日:2026年6月26日
- 松山市「非自発的失業者に対する軽減措置(特例対象被保険者等に係る届出書)」(愛媛県松山市)
https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/tetsuzuki/kokuho/kokuhoryokinn/keigen_hijihatsu.html
確認日:2026年6月26日
- 国分寺市「非自発的失業者(倒産・解雇・雇止めなどによる離職)に対する保険税軽減について」(東京都国分寺市)
https://www.city.kokubunji.tokyo.jp/kenkou-fukushi/iryou/1011822/1001026.html
確認日:2026年6月26日
- 東京都北区「非自発的失業者の保険料軽減制度(国民健康保険)」
https://www.city.kita.lg.jp/living/insurance-pension/1001703/1001723/1001733/1001734.html
確認日:2026年6月26日
- 厚生労働省「国民健康保険・後期高齢者医療の低所得者の保険料軽減措置の拡充」(7割・5割・2割軽減の判定式の基本資料)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/seido/dl/140331-02.pdf
確認日:2026年6月26日
- 厚生労働省 保発0115第9号「国民健康保険法施行令及び国民健康保険の国庫負担金等の算定に関する政令の一部を改正する政令の施行について」(令和8年政令第2号、令和8年1月15日公布・令和8年4月1日施行。賦課限度額の改正と子ども・子育て支援納付金分の新設、5割・2割軽減の加算額改正を通知)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9681&dataType=1&pageNo=1
確認日:2026年6月26日
- 厚生労働省 第205回 社会保障審議会医療保険部会(令和7年11月27日)「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」(改正前の検討資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001599957.pdf
確認日:2026年6月26日
- 仙台市「国民健康保険料の料率・賦課限度額(令和8年度)」(宮城県仙台市・改正後の4区分の施行を確認)
https://www.city.sendai.jp/kenko-hoken/kurashi/tetsuzuki/kokumin/kenkohoken/hokenryo.html
確認日:2026年6月26日
- 大津市「国民健康保険料の軽減について」(滋賀県大津市)
https://www.city.otsu.lg.jp/soshiki/020/1403/g/kokuho/hokenryo/1388990414144.html
確認日:2026年6月26日
- 板橋区「国民健康保険料の軽減・減免」(東京都板橋区)
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kenko/kokuho/kokuho/hokenryo/1003138.html
確認日:2026年6月26日
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成代行・法律的助言(税務・社会保険の個別判断を含む)を行うものではありません。制度の詳細・最新の要件・申請手続き・保険料率・減免率については、各公式サイトまたは担当窓口(お住まいの市区町村の国民健康保険担当課)に直接ご確認ください。国民健康保険料の料率・均等割・平等割・減免の要件は市区町村ごとに大きく異なり、賦課限度額や軽減判定の基準額は年度ごとに改定されます。本記事の計算例で用いた保険料率は説明のための仮の数値であり、実際の保険料を示すものではありません。軽減・減免は要件を満たした場合に適用されるもので、すべての方が必ず適用を受けられることを保証するものではありません。