高額医療・高額介護合算療養費を申請する(医療費と介護費の両方が重い世帯向け)
本記事は2026年7月17日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・申請先は変更されることがあるため、申請前に必ず加入保険者または市区町村の窓口で最新情報をご確認ください。なお、本記事に掲載している年間上限額は2018年(平成30年)8月以降の水準です。2026年8月施行の高額療養費制度改正が合算制度の上限額に影響するかどうかは、2026年7月17日時点では公式情報を確認できていません。
この記事が整理すること
病気が長引いて病院通いが続く一方で、介護サービスも利用している——そうした状況にあるご本人やご家族の方を対象にした記事です。
医療費と介護費は、それぞれ月ごとに「高額療養費」「高額介護サービス費」という制度で自己負担が抑えられますが、両方の費用を合計すると依然として家計の負担が重いというケースがあります。そのときに使えるのが「高額医療・高額介護合算療養費制度」です。
この制度は1年間の医療費と介護費を合算して上限額を超えた場合に、超過分が戻ってくる仕組みです。しかし、月ごとの高額療養費と混同されやすく、また申請が自動ではないため見落とされがちな制度でもあります。
この記事では、制度の全体像と計算の考え方を整理し、実際の申請につなげるための情報を提供します。本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行や書類作成の代行は行いません。
制度の全体像
いつ・誰に・いくら・どこへ申請するか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計算期間 | 毎年8月1日から翌年7月31日(1年間) |
| 対象 | 医療保険と介護保険の両方に自己負担が生じた世帯(同一世帯内で合算) |
| 上限額 | 所得区分と年齢によって異なる(後述) |
| 申請先(国保・後期高齢者) | 市区町村の国民健康保険または後期高齢者医療担当窓口 |
| 申請先(被用者保険) | 勤務先を経由して健保組合・協会けんぽ等に申請(保険者によって異なる) |
| 申請のタイミング | 計算期間終了後、保険者から通知・申請書が送付される。届いたら窓口へ持参 |
| 時効 | 計算基準日(7月31日)の翌日から2年 |
月ごとの制度との違い
3つの制度を横断して整理すると、役割の違いが見えてきます。
| 制度 | 対象 | 計算単位 |
|---|---|---|
| 高額療養費 | 医療保険の自己負担のみ | 月ごと |
| 高額介護サービス費 | 介護保険の自己負担のみ | 月ごと |
| 高額医療・高額介護合算療養費 | 医療+介護の自己負担を合算 | 年間(8月〜翌7月) |
高額療養費や高額介護サービス費を適用した後でも、年間の合計負担が大きい場合に、この合算制度でさらに軽減が受けられます。
【無料サンプル】75歳以上・「一般」区分の世帯で年間上限を超えた場合の還付計算を1ケース無料で全部見せます
後期高齢者医療制度(75歳以上)に加入し、介護保険も利用しているBさんの世帯を例に、合算療養費の計算を最後まで追ってみます。制度を理解するための一例として示すものであり、実際の支給額は年収・課税状況・高額療養費の適用状況などによって変わります。
想定するBさんの状況
- 80歳、後期高齢者医療制度加入者
- 所得区分:一般(課税所得が145万円未満の世帯)
- 負担割合:医療1割・介護1割
- 計算期間:2024年8月〜2025年7月
計算期間の1年間に支払った自己負担の合計は次の通りです。
- 医療保険の自己負担(高額療養費の支給後の残額):40万円
- 介護保険の自己負担(高額介護サービス費の支給後の残額):20万円
- 合計:60万円
ステップ1:年間上限額を確認する
Bさんの所得区分「一般」(後期高齢者医療)の年間上限額は56万円です。
ステップ2:合計負担額と上限額を比べる
60万円(合計負担)- 56万円(年間上限額)= 4万円
合計負担が上限額を4万円超えていることがわかります。この4万円が「高額医療・高額介護合算療養費」として支給される金額です。
ステップ3:医療分と介護分で按分して支給される
超過額の4万円は、医療保険と介護保険の負担割合に応じて按分されます。
- 医療保険分(後期高齢者医療から支給):4万円 × 40万円÷60万円 ≒ 2万7,000円
- 介護保険分(市区町村から支給):4万円 × 20万円÷60万円 ≒ 1万3,000円
(端数処理により合計が微妙にずれることがあります。実際の計算は各保険者が行います)
このケースで押さえるポイント
高額療養費や高額介護サービス費で月々の負担は抑えられていても、年間トータルで見ると上限額を超えるケースがあります。特に医療と介護を長期間にわたって併用している高齢世帯では、この合算制度が実質的な家計の支えになります。
一方で、超過額が500円以下の場合は支給されない点に注意が必要です。また、食事代や差額ベッド代、住宅改修費などは計算の対象外です。
ここから先は、申請に直結する実務です。
所得区分別の年間上限額一覧
70歳未満の方
70歳未満の場合、所得区分は5段階(区分ア〜オ)に分かれています。
| 区分 | 所得の目安(年収) | 年間上限額 |
|---|---|---|
| ア | 901万円超 | 212万円 |
| イ | 600万円超901万円以下 | 141万円 |
| ウ | 210万円超600万円以下 | 67万円 |
| エ | 210万円以下 | 60万円 |
| オ | 世帯主・世帯全員が住民税非課税 | 34万円 |
70歳未満は同一世帯に被保険者が複数いる場合も合算できます。ただし世帯が異なる場合は合算できません。
70歳以上75歳未満(高齢受給者)および後期高齢者医療(75歳以上)
| 所得区分 | 年間上限額 |
|---|---|
| 現役並み所得Ⅲ(課税所得690万円以上) | 212万円 |
| 現役並み所得Ⅱ(課税所得380万円以上690万円未満) | 141万円 |
| 現役並み所得Ⅰ(課税所得145万円以上380万円未満) | 67万円 |
| 一般(70〜74歳)・一般Ⅱ・一般Ⅰ(後期高齢者) | 56万円 |
| 低所得者Ⅱ(住民税非課税等) | 31万円 |
| 低所得者Ⅰ(住民税非課税かつ所得一定以下) | 19万円 |
70歳未満の方が同一世帯にいる場合の上限額は異なる場合があります。70〜74歳と後期高齢者が混在する世帯は、加入する保険者に確認してください。
なお、上記の金額は2018年(平成30年)8月診療分以降の水準です。2026年8月施行の高額療養費制度改正が合算制度の上限額に影響するかどうかは2026年7月17日時点では公式情報を確認できていません。申請前に必ず保険者に最新の上限額を確認してください。
計算の具体的な手順
ステップ1:月ごとの制度を先に使う
合算療養費の計算に使う「自己負担額」は、高額療養費や高額介護サービス費を適用した後の残額です。月ごとの制度で軽減された後の金額を1年分積み上げます。
ステップ2:1年分の自己負担を合算する
8月1日から翌年7月31日の1年間に支払った、医療保険と介護保険の自己負担額をすべて足します。
- 医療保険(病院・クリニック・薬局での自己負担)
- 介護保険(訪問介護・デイサービス・施設利用等の自己負担)
ただし以下は合算の対象外です。
- 入院時の食事代・差額ベッド代
- 自由診療費
- 福祉用具の住宅改修費・特定購入費(介護保険給付外)
ステップ3:年間上限額と比べる
合計した自己負担額が年間上限額を超えていれば、超過分が支給されます。超過額が500円以下の場合は支給の対象になりません。
ステップ4:医療分・介護分に按分して支給
超過額は、1年間の医療保険負担額と介護保険負担額の比率で按分されます。医療分は医療保険者から、介護分は市区町村(介護保険者)からそれぞれ支給されます。
計算例:複数ケース
ケース1:70歳未満・区分ウの世帯
同じ世帯のなかで、本人が病気の治療で医療費を支払いながら、介護サービスも利用している場合を想定します。
- 所得区分:ウ(年収210万円超600万円以下)
- 年間上限額:67万円
- 医療保険の自己負担(高額療養費適用後):50万円
- 介護保険の自己負担(高額介護サービス費適用後):25万円
- 合計:75万円
75万円 - 67万円 = 8万円が支給対象
医療分の按分:8万円 × 50÷75 ≒ 5万3,000円(医療保険者から)
介護分の按分:8万円 × 25÷75 ≒ 2万7,000円(市区町村から)
ケース2:後期高齢者・低所得者Ⅱの世帯
夫婦ともに後期高齢者医療に加入しており、夫が外来受診、妻がデイサービスを利用しているケースです。後期高齢者医療は世帯単位で合算できます(同一の後期高齢者医療広域連合に加入している場合)。
- 所得区分:低所得者Ⅱ(住民税非課税世帯)
- 年間上限額:31万円
- 医療保険の自己負担合計(高額療養費後):20万円
- 介護保険の自己負担合計(高額介護サービス費後):15万円
- 合計:35万円
35万円 - 31万円 = 4万円が支給対象
医療分の按分:4万円 × 20÷35 ≒ 2万3,000円(後期高齢者医療から)
介護分の按分:4万円 × 15÷35 ≒ 1万7,000円(市区町村から)
夫婦それぞれの自己負担を世帯で合算できる点がポイントです。1人ずつで見ると上限に届かなくても、世帯合計で超えれば支給対象になります。
ケース3:年度途中に保険者が変わった場合
年度の途中(例:11月)に会社を退職して国民健康保険に移った場合、基準日(7月31日)時点の保険者(国民健康保険)が申請窓口になります。在職中(被用者保険加入時)の自己負担については、元の保険者から「自己負担額証明書」を発行してもらい、それを添付して申請します。証明書の発行は元の保険者に依頼します。
申請先と申請に必要な書類
申請窓口
| 医療保険の種類 | 申請窓口 |
|---|---|
| 国民健康保険 | 市区町村の国民健康保険担当窓口 |
| 後期高齢者医療 | 市区町村の後期高齢者医療担当窓口 |
| 協会けんぽ | 協会けんぽ都道府県支部(または事業主経由) |
| 健康保険組合 | 各健康保険組合 |
| 共済組合 | 各共済組合 |
申請書類の目安
- 高額介護合算療養費等支給申請書(保険者から送付されるか、窓口で入手)
- 本人確認書類(マイナンバーカード等)
- 振込先口座番号のわかるもの
- 介護保険証
- 健康保険証
- 計算期間中に保険者が変わった場合:旧保険者が発行した「自己負担額証明書」
なお、領収書の提出は通常不要です(保険者側で自己負担額のデータを保有しているため)。ただし保険者によって扱いが異なる場合があります。
通知・申請書の送付
支給の見込みがある世帯に対しては、保険者または市区町村から通知と申請書が送付されます(計算期間終了後、おおむね翌年の初頭から春頃)。通知が届いた場合は、忘れず申請してください。申請しないと支給されません。
2年の時効に注意が必要です。計算基準日(7月31日)の翌日から2年が経過すると申請できなくなります。
よくある誤解・つまずきポイント
「高額療養費で足りているはず」という見落とし
月ごとの高額療養費が適用されているから大丈夫、と思っていると合算制度の存在を見落としやすくなります。月の負担が上限額を下回っていても、1年間を通じて合計すると年間上限を超えることがあります。特に介護サービスを毎月一定額使っている場合は、年間の合計を確認する価値があります。
申請が自動でないことを知らない
高額介護サービス費(介護保険側)は、市区町村から自動的に支給される場合がありますが、高額医療・高額介護合算療養費は自動支給ではありません。対象者に通知が届きますが、申請しなければ支給されません。通知を受け取ったら、放置せずに申請することが大切です。
世帯が別々になっている
合算の対象は「同一世帯」です。親と子が別々の住所に住んでいる場合は、たとえ実態として一緒に生活していても原則として合算できません。世帯の考え方は医療保険の種類によって異なる場合がありますので、保険者に確認してください。
「対象外の費用」を含めてしまう計算
食事代や差額ベッド代、福祉用具の住宅改修費などは計算の対象外です。これらを含めると自己負担合計が実際より大きく見えますが、合算療養費の計算には使えません。
介護認定前の費用は含まれない
介護保険の自己負担は、介護認定を受けてサービスを使った費用が対象です。認定前の費用は含まれません。
申請チェックリスト
- [ ] 計算期間(8月〜翌7月)の1年分の医療・介護の自己負担を把握しているか
- [ ] 高額療養費・高額介護サービス費の支給後の「残額」で計算しているか
- [ ] 食事代・差額ベッド代・住宅改修費などを除外しているか
- [ ] 超過額が500円以上かどうかを確認したか
- [ ] 基準日(7月31日)時点の保険者を確認したか
- [ ] 年度途中に保険者が変わった場合は、旧保険者から自己負担額証明書を取得したか
- [ ] 保険者から届いた申請書を用意したか(または窓口で入手予定か)
- [ ] 振込先の口座番号を確認したか
- [ ] 申請の時効(2年)を確認したか
よくある質問(FAQ)
Q1. 高額療養費を使っていれば、この制度も自動的に受けられますか。
高額療養費は医療保険の制度で月ごとに適用されますが、合算療養費は別の申請が必要です。通知が届いたら申請することが前提で、申請しないと支給されません。
Q2. 家族が介護施設に入所しています。施設の費用も合算できますか。
介護保険が適用されるサービス(介護老人保健施設・特別養護老人ホームなどの施設サービス)の自己負担は合算の対象に含まれます。ただし食費・居住費(補足給付の対象になっている場合を除く)は対象外です。
Q3. 夫が協会けんぽ、妻が後期高齢者医療です。合算できますか。
被用者保険(協会けんぽ等)と後期高齢者医療は別々の医療保険制度ですが、「同一世帯」の場合は合算できます。この場合の申請窓口は原則として後期高齢者医療の被保険者が加入する市区町村です。ただし、具体的な手続きは保険者によって異なりますので、市区町村または協会けんぽに確認してください。
Q4. 計算期間の途中でがんの診断を受けました。その後の費用はその年に合算できますか。
合算の計算期間は毎年8月1日から7月31日です。診断を受けた日ではなく、この計算期間内に支払った費用が対象になります。計算期間をまたいで治療が続く場合は、期間ごとに別々に計算されます。
Q5. 申請書が届いていません。自分でも申請できますか。
通知が届かない場合でも、窓口に相談することで申請書を入手できる場合があります。まず加入している医療保険の保険者(市区町村・保険組合等)に問い合わせてみてください。
Q6. 超過額の計算は自分でする必要がありますか。
実際の計算は保険者側で行います。申請者は申請書を提出するだけで、金額の計算を自分でする必要はありません。
Q7. 支給された合算療養費は確定申告で医療費控除の対象になりますか。
合算療養費として支給を受けた金額は、医療費控除の計算において支払った医療費から差し引く必要があります。受け取った補填を除いた実質負担額が控除対象です。
Q8. 保険者から通知が来なかった場合、あとから遡って申請できますか。
時効(2年)以内であれば遡って申請できます。ただし、時効を過ぎると請求権が消滅します。毎年の計算期間(7月31日)から2年が申請の期限です。
出典一覧(URL・確認日)
- 高額医療・高額介護合算療養費制度の概要(内閣府)
https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/kaigi/doc/senmon138shi02_6.pdf
確認日:2026年6月27日
- 高額介護合算療養費制度(健康長寿ネット)
https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/kaigo-hoken/kogakukaigogassanryoyohiseido.html
確認日:2026年6月27日
- 高額医療・高額介護合算療養費制度(横浜市・国民健康保険)
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/kokuho/iryo/kogaku/high-cost-kaigo.html
確認日:2026年6月27日
- 高額介護合算療養費(東京都後期高齢者医療広域連合)
https://www.tokyo-ikiiki.net/seido/kyufu/1002187/1000526.html
確認日:2026年6月27日
- 高額介護合算療養費(長野県後期高齢者医療広域連合)
https://www.koukikourei-nagano.jp/docs/308.html
確認日:2026年6月27日
- 高額介護合算療養費(埼玉県後期高齢者医療広域連合)
https://www.saitama-koukikourei.org/seido/kanjafutan/gassan/
確認日:2026年6月27日
- 高額介護合算療養費(千葉県後期高齢者医療広域連合)
https://www.kouiki-chiba.jp/site/seido/109.html
確認日:2026年6月27日
- 高額介護合算療養費(JAL健康保険組合・被用者保険の例)
https://jalkenpo.jp/kyufu/kaigogassan/
確認日:2026年6月27日
- 高額医療・高額介護合算療養費とは(LIFULL介護)
https://kaigo.homes.co.jp/manual/insurance/payment/kougakukaigo_ryouyouhi/
確認日:2026年6月27日
- 高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省・ページ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
確認日:2026年6月27日
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成代行・法律的助言・医療的助言を行うものではありません。制度の詳細・最新の要件・申請手続きについては、加入している医療保険の保険者、市区町村の窓口、または担当窓口に直接ご確認ください。
支給の有無や支給額は保険者の判断によるものであり、本記事の記載内容が支給を保証するものではありません。合算制度の年間上限額は2018年(平成30年)8月以降の水準を参照しています。2026年8月施行の高額療養費制度改正の影響については、申請時点での最新情報を保険者で確認してください。