地方で起業する人を最大200万円支援する制度(地方創生起業支援金の全部)
本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・受付期間は毎年改定されることがあります。申請前には必ず各都道府県の担当窓口または公式サイトで最新情報をご確認ください。
この記事が整理すること
地方に移住して起業したい、あるいはすでに地方に住んでいて地域課題の解決につながる事業を始めたいと考えている方に向けて、国が設けている起業支援の制度を実務の観点から整理します。
この制度は「地方創生起業支援事業」といいます。内閣官房と内閣府が主導し、各都道府県または市区町村が窓口となって運営する事業で、補助金の正式名称は「起業支援金」です。対象となる社会的事業を立ち上げた場合に、かかった費用の2分の1(最大200万円)が後払いで支給されます。
さらに、東京圏から地方へ移住して起業する場合は「移住支援金」(最大100万円、単身は60万円)と組み合わせることができ、その場合の最大受給額は世帯で300万円、単身で260万円になります。いずれも返済不要の補助金です。
この記事では以下の内容を整理します。
- 起業支援金とは何か、移住支援金との違いと併用の仕組み
- 対象になる都道府県・事業・人の要件
- 「社会的事業」とは何か、どのような事業が対象になるか
- 補助対象となる経費の範囲
- 申請から交付決定・事業実施・完了届までの全プロセス
- 移住支援金との申請順序と手続き上の落とし穴
- 採択されるために事業計画書に盛り込むべき内容
- 課税関係(起業支援金・移住支援金それぞれの取り扱い)
- 地方創生2.0時代の制度動向と2026年度以降の注意点
- 不採択になった場合の次の手と代替制度
- 地域おこし協力隊(No.98)・移住支援金(No.06)との制度比較と使い分け
- 自治体ごとの補助額・対象分野の違いと確認方法
- 伴走支援の内容と期間
- よくある誤解と申請上のつまずき
本記事は情報提供を目的としており、個別の申請手続きの代行や事業計画書の作成代行は行いません。
制度の全体像
地方創生起業支援事業の位置づけ
地方創生起業支援事業は、地域の課題解決につながる「社会的事業」を立ち上げる人を対象に、補助金の交付と伴走支援をセットで行う事業です。
主管は内閣官房(デジタル田園都市国家構想実現会議事務局)と内閣府(地方創生推進事務局)で、実際の運営は各都道府県または市区町村が担当します。国は都道府県を通じて費用の一部を支援する仕組みです。
令和7年度(2025年度)は、東京都・神奈川県・埼玉県・大阪府を除く43道府県で実施されています。各道府県の事業名は異なる場合があります(北海道は「地域課題解決型起業支援事業」など)。
制度の骨格
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助額の上限 | 200万円 |
| 補助率 | 対象経費の2分の1以内 |
| 支払い方式 | 後払い精算(実績報告・検査後) |
| 対象地域 | 43道府県(東京・神奈川・埼玉・大阪を除く)+東京圏内の条件不利地域 |
| 支援の柱 | 補助金交付+伴走支援(経営アドバイス等) |
| 起業の種類 | 新規起業・事業承継・第二創業 |
移住支援金との関係
起業支援金と移住支援金はそれぞれ独立した制度ですが、両方の要件を満たせば重複して受給できます。
東京圏(主に東京23区)から地方に移住し、かつ社会的事業として起業した場合に限り、起業支援金に加えて移住支援金を申請できます。
| 制度 | 最大支給額(世帯) | 最大支給額(単身) |
|---|---|---|
| 起業支援金 | 200万円 | 200万円 |
| 移住支援金 | 100万円 | 60万円 |
| 合計(併用時) | 300万円 | 260万円 |
申請窓口
申請は各都道府県または都道府県が指定する執行団体(産業振興財団・産業支援センター等)が窓口です。国に直接申請するのではなく、起業を予定している(または起業した)地域の都道府県窓口に申請します。
公募時期・受付期間は都道府県ごとに異なり、年1〜2回程度の公募となっています。詳細は内閣府地方創生のウェブサイト(https://www.chisou.go.jp/sousei/kigyou_shienkin.html)から各道府県のリンクをたどって確認します。
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ここでは、移住して北海道で起業支援金を受けた場合を例に、申請から交付決定・事業実施・入金完了までの流れを1ケースとして具体的に示します。計算も途中を省かずに全部お見せします。
なお以下はあくまで制度の理解を助けるための典型例であり、実際の金額・要件・手順は都道府県・申請年度によって異なります。申請前には必ず北海道(または起業予定の都道府県)の担当窓口に確認してください。
ケース設定
田中さん(38歳)は東京23区に10年以上住み、大手企業に勤めていましたが、夫の故郷である北海道の中規模の町に家族4人で移住することにしました。
移住先では、地域内に保育所が1か所しかなく、待機児童が発生しているという地域課題が明確でした。田中さんはこの課題に着目し、地域の子育て世帯が利用できる小規模な認可外保育施設(定員10名程度)を自宅の一室を改修して開設することを計画しました。
初年度の事業計画では以下の経費を見込んでいます。
- 自宅の一部改修工事費(安全対策・バリアフリー等):80万円
- 保育用備品・おもちゃ・絵本等の購入:20万円
- ウェブサイト制作費(キャッシュレス決済導入含む):10万円
- 広報費(地域への折り込みチラシ・SNS運用ツール):5万円
- 保育士(パートタイム)の人件費:60万円(6か月分)
- 事務費・その他雑費:5万円
合計経費の見込み:180万円
ステップ1:事前相談と公募要領の確認
田中さんが北海道の起業支援金を活用しようと考えたのは、引越しの3か月前でした。まず以下の行動をとりました。
公益財団法人北海道中小企業総合支援センター(011-232-2403)に電話し、事前相談の予約を入れました。この電話で担当者から当年度の公募スケジュールと「公募要領」の所在を確認しました。
公募要領はウェブサイトからPDFでダウンロードできました。要領に記載されていた主な確認事項は次のとおりです。
- 申請受付期間(例:〇月〇日〜〇月〇日)
- 対象となる事業の要件(社会性・事業性・必要性・デジタル技術活用)
- 補助対象経費の範囲と対象外経費の一覧
- 提出書類の一覧と各書類の取得先
- 交付決定日以降でなければ経費を発生させてはいけない旨
最後の点は特に重要です。補助金の交付決定日より前に発注・契約・購入した経費は原則として補助の対象外になります。田中さんは要領をよく読み、改修工事の発注を交付決定後まで待つことにしました。
ステップ2:事業計画書の作成
公募の申請に必要な主な書類は以下のとおりです(北海道の場合の例。他の道府県では書類名・形式が異なる場合があります)。
- 事業計画書(専用の様式)
- 起業者本人の履歴書・職歴書
- 資金調達計画書(自己資金・借入計画を含む)
- 移住を証明する書類または移住予定の誓約書
- 住民票の写し(または移住予定を証する書類)
- 事業に必要な許認可等の取得予定を示す書類(保育施設の場合は認可外保育施設の届出)
- 見積書(補助対象経費ごとに1点以上)
事業計画書で最も審査員が注目するのは「社会性」の説明です。田中さんの場合は次のように記述しました。
「移住先の〇〇町では現在、認可保育所が1か所(定員30名)のみで、待機児童が令和〇年4月時点で8名発生しています。共働き世帯が増加する中、保育サービスの供給不足は移住者・子育て世帯にとって深刻な障壁となっており、本事業はその解消に直接貢献するものです。」
このように、地域課題を客観的な数字で示し、自分の事業がその解決にどう貢献するかを具体的に説明することが求められます。
ステップ3:補助金額の計算
補助率は対象経費の2分の1以内、上限は200万円です。
田中さんの計画では、補助対象経費の合計は175万円です(事務費の一部は対象外との確認が取れたため5万円を除いた金額)。
175万円 × 1/2 = 87万5,000円
87万5,000円が補助金の見込み額です。上限200万円の枠はまだ余裕がありますが、計画経費が少ないためこの金額になります。
もし改修工事費を増やしてより規模の大きな施設にした場合はどうなるか計算してみます。仮に対象経費の合計が400万円になった場合は次のとおりです。
400万円 × 1/2 = 200万円
この場合は上限の200万円がそのまま補助金額になります。補助率1/2という仕組みのため、補助金上限の200万円を受けるには少なくとも400万円以上の対象経費が必要です。
ステップ4:交付決定と事業の開始
申請書類を提出後、書類審査と外部専門家による審査会が行われます。審査の観点は社会性・事業性・必要性・デジタル技術の活用度で、自治体によっては現地ヒアリングが行われることもあります。
審査を経て採択された場合、都道府県から「交付決定通知書」が届きます。この通知書が届いた日付が「交付決定日」であり、この日以降に発注・契約・購入した経費だけが補助対象になります。
田中さんは交付決定を受けたその日に改修工事業者に発注し、並行してパートタイム保育士の採用面接を開始しました。
ステップ5:実績報告と補助金の受け取り
事業を実施した後、「補助事業完了届」を提出します。この届出に必要な書類は次のとおりです。
- 実績報告書(専用の様式)
- 対象経費ごとの領収書(原本またはコピー)
- 発注書・契約書の写し
- 事業の実施状況を示す写真
- 人件費の場合は給与明細・源泉徴収票の写し
書類を提出後、都道府県による検査(書面審査または現地確認)が行われ、問題がなければ確定した補助金額が指定の銀行口座に振り込まれます。
田中さんのケースでは、実際に支出した対象経費が174万円(見積もりより若干少なかった)であったため、補助金額は174万円 × 1/2 = 87万円になりました。
ステップ6:移住支援金の申請(東京圏からの移住の場合のみ)
田中さんは東京23区から移住しており、移住支援金の要件も満たしています。起業支援金の交付決定後1年以内に、市区町村の担当窓口(住民課等)に申請します。
世帯での移住であるため、移住支援金は最大100万円です。夫(子育て期間中は休職中)と2人の子ども(うち1人が18歳未満)がいる場合は、子ども加算(18歳未満の世帯員1人あたり最大100万円加算)が適用される可能性があります。ただし加算の上限や計算方法は自治体ごとに異なるため、窓口に確認することが必要です。
移住支援金は市区町村が窓口です。必要な書類は次のとおりです(目安。自治体ごとに異なります)。
- 移住支援金交付申請書
- 転入後の住民票の写し
- 東京23区への通勤・在住を証明する書類(在職証明書・住民票等)
- 起業支援金の交付決定通知書の写し
- 移住後5年以上居住することを誓約する書類
申請後、市区町村の審査を経て移住支援金が支給されます。
田中さんのケースで最終的に受け取れた支援の総計
- 起業支援金:87万円
- 移住支援金:100万円(世帯。子ども加算の有無により変動)
- 合計:187万円以上(子ども加算次第でさらに増える可能性あり)
180万円の事業費を投じて起業し、その半分近くが後から戻ってくる計算です。さらに移住支援金が加わることで、移住・起業の初期コストを大幅に吸収できています。
ここから先は、申請に直結する実務です。
申請の具体手順(全プロセスの詳細)
手順1:自分が対象者かどうかを確認する
最初に確認すべきは、自分が申請できる立場にあるかどうかです。以下のチェックリストで確認してください。
起業支援金の対象者要件チェックリスト(基本)
- 東京都・神奈川県・埼玉県・大阪府以外の道府県で起業する予定(または既に起業している)
- 東京圏内の場合は条件不利地域(離島・半島等)に限られる
- 起業(個人の開業届または法人設立)が交付決定後から補助事業期間終了日までに完了する見込みがある
- 起業する道府県内に在住している、または居住予定がある
- 道府県税・消費税に滞納がない
社会的事業の要件チェックリスト
- 地域課題の解決に直接つながる事業内容である
- 対価を得るビジネスとして自律的に継続できる収益モデルがある
- その地域でまだ供給が十分でないサービスである
- デジタル技術を何らかの形で活用する(自治体によって必須・任意が異なる)
これらの要件の細かい解釈は都道府県ごとに異なります。「自分の事業が社会的事業に当たるか」に迷った場合は、申請前に必ず都道府県の担当窓口に相談してください。担当者に事業の概要を伝え、対象になるかどうかの見解を確認しておくことが採択への重要な一歩です。
手順2:都道府県の公募情報を確認する
起業支援金の公募は年に1〜2回行われることが一般的ですが、時期や回数は都道府県によって異なります。公募情報の確認先は次のとおりです。
- 内閣府地方創生のウェブサイト(https://www.chisou.go.jp/sousei/kigyou_shienkin.html)から各道府県のリンクへ
- 各都道府県庁の産業振興・地方創生担当課のウェブサイト
- 各都道府県が指定する執行団体(産業振興財団・産業支援センター等)のウェブサイト
公募が始まったら、まず公募要領を精読します。要領には補助対象経費の一覧・対象外経費の一覧・必要書類・審査の観点・スケジュールが具体的に記載されています。
手順3:事前相談を受ける
公募期間中に申請書類を整えるのと並行して、都道府県の窓口または執行団体に事前相談を申し込むことを強くお勧めします。
事前相談では次のことを確認できます。
- 自分の事業が社会的事業の要件を満たすかどうかの見解
- 対象経費の解釈(どの支出が対象になるか)
- 事業計画書の記述の方向性に関するアドバイス
- 申請書類でよくある不備事例
事前相談は、採択率を上げるうえで最も有効な行動のひとつです。担当者に「この事業で申請したいのだが、要件を満たすか」と素直に聞くことが重要です。書類提出後に不採択になるよりも、事前相談で問題点を修正した上で臨む方が時間のロスが少なくなります。
手順4:申請書類を準備する
必要書類の正式名称と取得先を以下に示します(一般的な例。道府県ごとに書類名・様式が異なります)。
| 書類名 | 取得先 | 注意点 |
|---|---|---|
| 事業計画書(専用様式) | 執行団体のウェブサイトからダウンロード | 様式の欄外に記入しない |
| 起業者本人の履歴書 | 自作(任意様式も可の場合あり) | 過去の職歴・資格を具体的に |
| 資金調達計画書(専用様式) | 執行団体のウェブサイトからダウンロード | 自己資金の出所を説明できるよう準備 |
| 住民票の写し | 市区町村の窓口または郵送・オンライン申請 | 発行後3か月以内のもの |
| 移住を証する書類(移住予定者の場合) | 市区町村の転入証明等・宣誓書 | 要領で指定された様式を確認 |
| 事業計画に関する見積書 | 各事業者から取得 | 主要経費は2社以上から取ると理想的 |
| 許認可の取得予定を示す書類 | 資格証明書・許認可申請受理書等 | 許認可が必要な業種(保育・食品等)は必須 |
| 道府県税・消費税の納税証明書 | 都道府県税事務所・税務署 | 直近年度分。有効期限に注意 |
書類の取得に時間がかかるものもあるため、公募開始と同時に動き始めることが重要です。特に納税証明書は税務署で請求してから手元に届くまで数日かかることがあります。
手順5:申請書類を提出する
書類が揃ったら申請書類をまとめて提出します。提出方法は郵送・持参・電子申請のいずれかで、道府県ごとに異なります。提出期限は公募要領に明記されているため、必ず守ります。
提出前に自分で書類の最終確認を行います。確認ポイントは次のとおりです。
- 様式の記入漏れ・押印漏れがないか
- 必要書類が全てそろっているか
- 見積書の金額と事業計画書の経費計画が一致しているか
- 社会的事業の要件(社会性・事業性・必要性)を説明できているか
手順6:審査を受ける(書類審査・審査会)
提出後、執行団体による書類審査が行われます。その後、外部専門家で構成する審査会が審査します。審査の観点は都道府県によって多少異なりますが、概ね次の4点が共通しています。
- 社会性:地域課題の解決に資する事業かどうか
- 事業性:実現可能で継続的な収益が見込めるかどうか
- 必要性:地域において当該サービスが不足しているかどうか
- デジタル技術の活用度:ICTやデジタルの仕組みを取り入れているかどうか
ヒアリング(口頭審査)が実施される場合もあります。その場合は事業内容・資金計画・地域との関わりについて5〜15分程度の質疑応答が行われます。準備として、自分の事業計画を3分で説明できる「エレベーターピッチ」をあらかじめ練習しておくと安心です。
手順7:交付決定通知書を受け取り、事業を開始する
採択された場合、「交付決定通知書」が届きます。この通知書の日付が「交付決定日」です。
交付決定日以降に発注・契約・購入した経費のみが補助対象になります。交付決定前に発注・購入した経費は補助対象外です。この点は最も注意が必要なルールです。
交付決定通知書を受け取ったら、速やかに次の行動をとります。
- 個人開業届を税務署に提出(または法人の場合は法人設立登記)
- 許認可が必要な場合は行政窓口に届出・申請
- 補助対象経費の発注・契約を順次行い、すべての領収書・納品書を保管する
- 進捗報告の義務がある場合は定期的に執行団体に報告する
手順8:実績報告書を提出する
補助事業の実施期間が終了したら、実績報告書と証拠書類をまとめて提出します。提出期限は交付決定通知書または公募要領に記載されています。期限を過ぎると補助金が交付されない場合があります。
実績報告に必要な書類の例は次のとおりです。
- 実績報告書(専用様式)
- 支出した経費の領収書(原本またはコピー)
- 発注書・注文書・契約書の写し
- 人件費の場合:給与明細・雇用契約書・タイムシートの写し
- 事業の実施を示す写真(施設・機器・活動の様子)
- 開業届の写しまたは法人登記簿謄本の写し
手順9:検査・確定・補助金の入金
実績報告書提出後、執行団体による確認(書面審査または現地確認)が行われます。問題がなければ「確定通知書」が届き、確定した金額が指定口座に振り込まれます。
振り込みのタイミングは実績報告から概ね1〜2か月後が目安ですが、都道府県や年度末の繁忙状況によって前後します。
金額の計算例・複数ケース
ケース1:農村での地域食堂(直接経費が少ないケース)
長崎県の農村に移住した50代の男性が、地域の高齢者向けに週3日営業する地域食堂を開設するケースです。過疎地域で近くに飲食店がなく、高齢者の食の確保が課題になっています。
初年度の事業計画:
- 中古の業務用冷蔵庫・厨房機器の購入:50万円
- 厨房設備の修繕費(レンタルキッチンへの改修):30万円
- 食材仕入れ費(初期在庫):10万円
- メニュー・チラシの印刷費・ウェブサイト制作費:5万円
- 人件費(調理補助パート):20万円
合計:115万円(うち補助対象:115万円と仮定)
補助金計算:115万円 × 1/2 = 57万5,000円
補助金はこのケースでは約57万円になります。事業規模が小さいため、補助金の絶対額は小さくなりますが、スタートアップの資金負担を半分にできる点は同じです。
このケースでは移住支援金の要件も確認します。長崎県への移住が東京23区(または通勤)からの移住であれば、移住支援金(単身60万円または世帯100万円)も申請できる可能性があります。
ケース2:IT活用の買い物弱者支援(移動販売×デジタル)
鳥取県の山間部に移住した30代の夫婦が、スマートフォンで注文できる食料品・生活用品の移動販売サービスを起業するケースです。地域内に唯一あったスーパーが閉店し、車を持たない高齢者が日用品の購入に困っています。
初年度の事業計画:
- 移動販売車の改造費(冷蔵設備・決済端末設置):70万円
- スマートフォン注文システムの構築費:50万円
- 初期在庫(食料品・生活用品):20万円
- 広報費(チラシ・SNS広告・地域回覧板):10万円
- 車両の年間保険料:8万円
- 人件費(夫婦2名、6か月分の一部):100万円
合計:258万円(うち補助対象:250万円と仮定。保険料の一部が対象外の場合あり)
補助金計算:250万円 × 1/2 = 125万円
しかし上限は200万円です。125万円は200万円の上限内に収まるため、125万円が補助金額になります。
世帯での移住であれば、起業支援金125万円に加え移住支援金100万円が受け取れる可能性があります。合計225万円になります。
ケース3:第二創業型(事業承継後の地域産品活用)
岩手県の酪農家を継いだ2代目の経営者が、地域産の牛乳を使ったアイスクリームの製造販売に新たに乗り出す第二創業のケースです。既存事業(酪農)に新分野(食品製造・販売)を加える形です。
第二創業型は、新規起業と異なり「Society5.0関連業種等の付加価値の高い分野」での実施が求められる都道府県もあります。岩手県の場合は食品製造と地域資源の活用が社会的事業として認められる可能性があります。
初年度の事業計画(新規部分のみ):
- アイスクリーム製造設備の導入費:150万円
- 衛生管理設備の追加費(食品衛生法の要件充足のための改修):60万円
- パッケージデザイン・ECサイト構築費:40万円
- 広報費(食品見本の配布・試食会等):10万円
- 人件費(新規採用パート2名、6か月分):60万円
合計:320万円(うち補助対象:320万円と仮定)
補助金計算:320万円 × 1/2 = 160万円
上限200万円の範囲内のため、160万円が補助金額になります。
第二創業型は新規起業より要件が厳しい都道府県もあります。事前に担当窓口で確認することが不可欠です。
ケース4:デジタル完結型(オンライン相談サービス)
高知県に移住した40代の女性が、地方在住者向けのオンラインによるキャリア相談・就職支援サービスを起業するケースです。高知県には転職エージェントが少なく、地方在住者がキャリアの相談をする場が限られているという課題に着目しています。
このようなデジタル型・リモートワーク型の事業は、社会的事業として認められるかどうかの判断が自治体によって分かれます。判断のポイントは次の2点です。
1つ目は「地域の課題解決に資するか」です。地方在住者の就業機会や収入向上に貢献する事業であれば、地域の経済課題の解決という観点で社会性を認める自治体があります。一方で「地域密着性が薄い」と判断する自治体もあります。
2つ目は「供給が不足しているかどうか」です。高知県内にキャリア相談サービスが少ない実態を客観的なデータ(求人倍率・転職エージェントの数等)で示せれば、必要性の説明として有効です。
デジタル完結型の事業でも、「地域の課題を解決する」「地域の人が利用する」という要件を満たせれば対象になる可能性があります。ただし自治体によって解釈が異なるため、必ず事前相談を受けてください。
よくある誤解・つまずきポイント
誤解1:申請してから経費を使えばいいと思っていた
最も多い失敗です。正確には「申請」が通ってからではなく、「交付決定通知書」を受け取った後でなければ経費を発生させてはいけません。申請したものの交付決定を待たずに工事を発注・着手してしまい、後から「交付決定前の経費は対象外」と言われるケースは毎年発生しています。
公募要領の「補助対象経費の発生時期」の箇所を必ず読み、交付決定日を確認してから動き出してください。
誤解2:社会的事業であればどんな業種でも対象になると思っていた
都道府県ごとに「対象分野リスト」が設定されている場合があります。一部の道府県では農業・林業・漁業(第一次産業)が対象外とされていることがあります。また「Society5.0関連業種」などの要件が第二創業型に設けられている場合もあります。
自分の業種が対象かどうかは、公募要領の「対象事業・対象分野」の欄と事前相談で確認します。
誤解3:補助金は先にもらえると思っていた
地方創生起業支援金は後払い精算方式です。まず自分で全額支払い、事業完了後に実績報告書を提出して、確定した補助金額が後から振り込まれます。
つまり、補助金受給前に自己資金または融資でいったん全額立て替える必要があります。立て替えのための資金調達計画(日本政策金融公庫の創業融資等)と並行して検討することが重要です。
誤解4:移住支援金はいつでも申請できると思っていた
移住支援金には「転入日の翌日から1年以内」という申請期限があります。また、起業を要件として申請する場合は「起業支援金の交付決定後1年以内」という別の期限もあります。
転入してから1年以上経過した後に申請しようとしても、すでに期限切れで受け付けてもらえません。移住した年度内に申請の段取りをつけることが重要です。
誤解5:移住支援金も後から課税で戻ってくると思っていた
起業支援金と移住支援金では課税の取り扱いが異なります。起業支援金は事業所得等に算入される(原則課税)のに対し、移住支援金は一時所得になります。
一時所得は年間の一時所得の合計から50万円を控除し、その残額の2分の1を他の所得と合算して課税します。移住支援金が60〜100万円の場合、50万円の特別控除があるため、実質的に課税される部分は少なくなります(ただし他の一時所得と合算して計算)。詳しい計算は税務署または税理士に確認することをお勧めします。
誤解6:事業計画書は理想だけ書けばいいと思っていた
審査員は実現可能性を重視します。「地域課題を解決する事業を作りたい」という熱意だけでなく、「なぜこの地域で、この規模で、この時期に成立するのか」という根拠が求められます。
地域の課題を示すデータ(人口・高齢化率・競合の有無・行政統計等)を引用し、収益が見込める根拠(想定客数・客単価・想定売上)を数字で示すことが採択のポイントです。
誤解7:採択されたら伴走支援は受けなくてもよいと思っていた
伴走支援は補助金とセットで提供されるものです。自治体や執行団体のアドバイザーが定期的に経営状況を確認し、課題があれば専門家を紹介するなどの支援を受けられます。この伴走支援を軽視せず、経営の壁に当たった時には積極的に活用してください。
誤解8:補助金を受けたら5年以内に転出しても問題ないと思っていた
移住支援金を受給した場合、申請後5年以内に転出すると返還を求められる可能性があります。起業支援金には同様の返還規定が各都道府県の要領に設けられている場合があります(虚偽申請・補助目的外使用等)。5年以上継続して事業を営む意思がある方が対象となる制度です。
申請チェックリスト
申請前チェック
- 起業予定地が対象の道府県(43道府県)内である
- 事業の種類が社会的事業の要件を満たす(社会性・事業性・必要性)
- 道府県の公募情報を確認し、受付期間を把握している
- 公募要領を入手して全文を読んでいる
- 担当窓口に事前相談を申し込んでいる
- 必要書類の取得を早めに始めている(納税証明書・住民票等)
事業計画書のチェック
- 地域課題を客観的なデータ(統計・行政資料等)で説明している
- 自分の事業がどのようにその課題を解決するかを具体的に記述している
- 競合分析(同地域に同様のサービスがないことの確認)を記述している
- 収益の見込み(客数・客単価・売上目標)を数字で示している
- 自己資金と融資計画を含む資金調達計画を整理している
- デジタル技術の活用計画(キャッシュレス・予約システム等)を記述している
- 地域との関わり方(地域住民の雇用・地域団体との連携等)を記述している
交付決定後のチェック
- 交付決定日を正確に把握し、その日より前の経費を出さない
- 発注・購入ごとに証拠書類(見積書・発注書・領収書)を全て保管している
- 人件費の場合は雇用契約書・給与明細・タイムシートを整備している
- 開業届の提出(または法人設立登記)を完了している
- 実績報告書の提出期限を把握している
移住支援金(東京圏からの移住者のみ)のチェック
- 転入後1年以内に申請できるスケジュールを確認している
- 起業支援金の交付決定通知書を保管している
- 東京23区への在住・通勤実績を証明できる書類がある
- 移住支援金の申請窓口(市区町村)を把握している
よくある質問(FAQ)
Q1:移住を予定しているが、移住前に申請できますか?
移住前でも申請できる場合があります。ただし補助事業の実施期間内に「起業地の道府県内への居住」を完了させる必要があります。申請時点では「移住予定」として宣誓書等を提出し、実績報告時には住民票で居住を証明します。詳細は各道府県の公募要領と担当窓口に確認してください。
Q2:すでに個人事業主として起業しているが申請できますか?
申請できる可能性はありますが、要件として「新たに起業する」ことが求められる場合が多いです。既存事業がある場合でも、事業の新規分野への進出(第二創業)として申請できる可能性があります。事前に担当窓口に現在の事業の状況を伝えて確認することが必要です。
Q3:法人を設立して申請することはできますか?
はい、法人でも申請できます。個人の開業届と法人設立登記のどちらでも対象になります。ただし、補助事業期間内に法人設立登記を完了させる必要があります。
Q4:起業支援金を受けた後に廃業した場合はどうなりますか?
廃業の理由や時期によって異なります。虚偽の申請や不正使用が発覚した場合は返還が求められます。事業が困難になった場合は早めに担当窓口に相談することが重要です。事前に廃業後の返還規定を公募要領で確認してください。
Q5:起業支援金は確定申告で申告が必要ですか?
個人の場合、起業支援金は事業所得(または雑所得)の総収入金額に算入します。確定申告の際には収入として計上する必要があります。ただし固定資産取得に充てた部分は圧縮記帳(国庫補助金等の特例)が使える場合があります。詳細は税務署または税理士に確認してください。
Q6:移住支援金の一時所得の計算方法を教えてください。
一時所得の課税計算は次のとおりです。
一時所得の金額 = 総収入金額(移住支援金100万円) − 支出金額 − 50万円(特別控除)
移住支援金100万円を受給し、他の一時所得がない場合:
100万円 − 50万円(特別控除) = 50万円
この50万円に2分の1を掛けた25万円が課税所得への加算額になります。つまり25万円が他の所得に上乗せされて合算課税されます。実際の税額は所得税率によって異なります。
Q7:東京23区ではなく東京都下(多摩地区など)に住んでいた場合は移住支援金の対象ですか?
東京23区への在住または通勤が要件であり、東京都下(多摩地区等)に在住の場合は原則として対象外です。ただし東京23区への通勤実績がある場合は対象になります。詳細は移住先の市区町村窓口に確認してください。
Q8:起業する業種に制限はありますか?
社会的事業の要件(地域課題の解決・事業継続性・供給不足のサービス)を満たす業種であれば、原則として業種は問いません。ただし農業・林業・漁業(第一次産業)を除く都道府県や、特定の業種を優先する道府県があります。公募要領の対象業種・対象外業種の欄を確認してください。
Q9:自治体から伴走支援が受けられるとのことですが、具体的にどんな内容ですか?
伴走支援の内容は自治体・執行団体によって異なりますが、典型的には次のようなものです。
- 経営アドバイザー(税理士・中小企業診断士等)による経営相談(月1回程度)
- 販路開拓の支援(地域の商工会・商工会議所との連携、展示会への出展支援等)
- 事務局(執行団体)スタッフによる定期的な進捗確認
- ビジネスマッチング(地域の企業・行政との接続支援)
伴走支援の期間は補助事業期間中(通常1〜2年程度)が中心です。補助事業が終了した後も自治体の支援制度を活用できる場合があります。
Q10:東京圏内の条件不利地域とはどこですか?
東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)のうち、「条件不利地域」に指定された地域は対象になります。条件不利地域とは過疎法・山村振興法・離島振興法・半島振興法等の対象地域です。
例えば、東京都内でも伊豆大島・八丈島・小笠原村などの島しょ部は条件不利地域として対象になります。埼玉・千葉・神奈川でも山間部・半島地域の一部が対象になる場合があります。詳細は都道府県の担当窓口に確認してください。
採択率を高めるための事業計画書の書き方
事業計画書は審査の中核です。以下に、採択されやすい記述のポイントを具体的に示します。
ポイント1:地域課題をデータで語る
「高齢者が増えている」「保育所が少ない」だけでは不十分です。審査員が「なぜこの地域でこの事業が必要なのか」を納得できるよう、次のような客観的なデータを示します。
- 国勢調査・住民基本台帳の人口データ(高齢化率・世帯数等)
- 市区町村の行政計画・地域福祉計画に記載された課題
- 既存サービスの数や利用可能な距離(最寄りの保育所まで〇km等)
- 待機者数・利用希望者のアンケート結果(実施した場合)
ポイント2:事業の継続性を数字で示す
社会的に意義がある事業でも、「1年で閉鎖してしまうのではないか」と審査員が判断すると採択されません。次の点を具体的に記述します。
- 想定する顧客層と人数(○○世帯中△△%が利用すると仮定)
- 1か月あたりの売上目標と根拠(客単価×想定利用回数等)
- 損益分岐点の計算(最低でも何人の顧客が必要か)
- 自己資金と融資計画の組み合わせで当面の運転資金を確保していること
ポイント3:デジタル技術の活用を具体的に記述する
「スマートフォンで注文できるようにする」「キャッシュレス決済を導入する」という程度でもデジタル活用として認められる場合がほとんどです。重要なのは何をどのように活用するかを具体的に書くことです。
具体例:「顧客向けにLINE公式アカウントを開設し、注文・予約・お知らせ配信を一元化する。決済はPayPayおよびクレジットカード対応端末を導入してキャッシュレス化する。会計ソフトはクラウド型(〇〇)を使用して記帳を効率化する」
ポイント4:地域との関わりを具体的に書く
「地域に貢献したい」という抽象的な記述より、具体的な関わり方を示します。
例:地域住民を1〜2名雇用する予定である、地域の農家から食材を仕入れる、地域の子育て支援団体と連携してイベントを共同開催する予定、といった記述が有効です。
ポイント5:申請前に地域の状況を実際に調べておく
移住前または申請前に、起業予定地を実際に訪問し、地域住民や自治体担当者に話を聞いておくことが重要です。「現地調査に基づき〇〇という実態を確認した」という記述は、計画の信頼性を高めます。
社会的事業の事業計画書に盛り込むべき記述例とチェックリスト
社会性の記述例
「〇〇町の65歳以上人口は令和6年度住民基本台帳調査によれば35%を超えており、町内のスーパーマーケットが2年前に閉店して以来、車を持たない高齢者の日用品購入が困難な状況が続いています。町の地域福祉計画(令和5年改定)においても『食料品・日用品の入手困難な住民への対策』が課題として明記されています。本事業はこの課題に直接対応する移動販売サービスを提供するものです」
事業性の記述例
「移動販売の対象エリアとなる〇〇地区の世帯数は約200世帯です。このうち高齢者のみ世帯および車を保有しない世帯は推定120世帯(役場調べ)で、週1〜2回の利用を見込む場合、1回の販売あたり50〜70世帯が利用すると想定しています。客単価を1,500円と見込むと週1回の販売で7.5〜10.5万円、週2回では年間780〜1,092万円の売上が見込めます。初年度は週1回からスタートし、3年以内に週2回体制に移行することで単月黒字を実現する計画です」
必要性の記述例
「同様の移動販売サービスは現在〇〇地区内には存在しません。隣接する△△町では既に同種のサービスが実施されていますが、〇〇地区は山間に位置するため対象外となっており、近隣自治体のサービスが届いていない空白地帯です。本事業はその空白を埋める役割を担います」
事業計画書チェックリスト
- 地域課題を示す客観的なデータ(統計・行政資料)の引用がある
- 事業が地域課題の解決にどのように貢献するかを明記している
- 競合・代替サービスの有無を調査した結果を記述している
- 想定する顧客数・客単価・売上計画を数字で示している
- 損益分岐点の計算(最低収支ライン)を示している
- 自己資金・融資計画の内訳を記述している
- デジタル技術の活用方法を具体的に記述している
- 地域の人材雇用または地域資源活用の計画を記述している
- 許認可が必要な業種の場合、取得の見通しを記述している
- 事業が5年・10年後も継続できる理由を記述している
課税関係の詳細
起業支援金の課税(個人)
個人が起業支援金を受け取った場合、その支援金は「事業を遂行するにあたって付随的に生じた収入」として、事業所得・雑所得等の総収入金額に算入されます(平成31年3月国税庁文書回答事例)。
つまり原則として課税対象です。確定申告では事業の収入の一部として記載します。
ただし、起業支援金の全部または一部を固定資産(設備・機器等)の取得に充てた場合、所得税法第42条の「国庫補助金等の総収入金額不算入」または同法の圧縮記帳の規定が適用される可能性があります。
この特例が適用されると、固定資産取得に対応する補助金相当額を取得価額から控除(圧縮記帳)することで、実質的に課税が繰り延べられます。
ただし、この特例が適用されるためには地方公共団体が「固定資産取得に充てられた金額を支給者に明示通知する」か、または「支給対象者が固定資産取得経費のみを申請している」ことが要件です。
固定資産の取得に起業支援金を充てる場合は、実績報告書の経費の内訳を明確にしておくことが重要です。詳細は申請した都道府県の担当窓口または税務署・税理士に確認してください。
移住支援金の課税(個人)
移住支援金は、営利目的の継続的行為から生じたものではなく、労務や資産譲渡の対価でもないため、一時所得として課税されます(平成31年3月国税庁文書回答事例)。
一時所得の課税計算式:
課税対象額 = (移住支援金の額 − 支出金額) − 50万円(特別控除)
計算例(単身60万円を受給した場合):
60万円 − 0円 − 50万円 = 10万円
この10万円の2分の1(5万円)が他の所得に加算されて課税されます。他の一時所得がない場合は実質的な課税負担は軽微です。
計算例(世帯100万円+子ども加算で200万円を受給した場合):
200万円 − 0円 − 50万円 = 150万円
この150万円の2分の1(75万円)が課税所得に加算されます。受給額が大きい場合は確定申告の計算を丁寧に行ってください。
法人の場合
法人が起業支援金を受け取った場合は、益金の額に算入されます(法人税の課税対象)。固定資産取得に充てた場合は法人税法第42条の圧縮積立金方式または直接減額方式の適用が可能です。
他制度との組み合わせ
日本政策金融公庫の創業融資
起業支援金は後払い精算のため、事業開始時には自己資金で経費を立て替える必要があります。初期資金が不足する場合は、日本政策金融公庫(国民生活事業)の創業融資を同時に活用することが現実的です。
日本政策金融公庫では「新創業融資制度」(自己資金の9倍まで融資可能、原則無担保・無保証人)や「新規開業資金」など、起業段階向けの融資制度があります。補助金の交付決定を受けてから融資を申し込むと、事業の実現可能性が高まっているとして審査がスムーズになる場合があります。
小規模事業者持続化補助金(創業型)
中小企業庁が実施する「小規模事業者持続化補助金」には創業型があります(2026年度時点で実施されている場合。要確認)。起業後3年以内の事業者が販路開拓・マーケティングに使う経費を補助するものです。
起業支援金とは別制度であり、重複申請が可能な場合があります。ただし同一経費への重複補助は認められません。起業支援金で設備費を補助してもらい、小規模事業者持続化補助金で販促費を補助してもらうという組み合わせが考えられます。
自治体独自の創業補助金・家賃補助
各都道府県・市区町村には、起業支援金とは別に独自の創業支援補助金や空き店舗・空き家活用補助金を設けているところがあります。これらは起業支援金と並行して活用できる可能性があります。
例えば、ある自治体では「空き店舗活用助成」として改修費の一部を補助し、別途「創業者支援補助金」として備品購入費の一部を補助しているケースがあります。ただし同一経費への二重補助は認められないため、どの経費をどの補助に充てるかを事前に整理することが必要です。
サテライトオフィス補助
テレワークやリモートワークの形態で地方に移住する場合、一部の自治体ではサテライトオフィスの設置やコワーキングスペースの利用費を補助する独自制度があります。デジタル型の事業を起業する場合はこれらの組み合わせも検討できます。
不採択になった場合の次の手
起業支援金は全員が採択されるわけではありません。不採択になった場合の次の手を以下に示します。
不採択の理由を確認する
まず執行団体の担当者に不採択の理由を確認します。多くの場合、「社会性の説明が不足」「収益計画が具体的でない」「競合との差別化が不明確」などの理由が示されます。次の公募で修正点を踏まえて再申請することが最も現実的な選択肢です。
次の公募を待って再申請する
同一年度内に複数回の公募が実施される道府県では、次の回に再申請できます。1回不採択になっても再申請に制限はない場合が多いです(要公募要領確認)。
前回の不採択理由を踏まえて事業計画書を修正し、担当窓口に再度事前相談を申し込んで改善ポイントを確認してから再挑戦することが有効です。
自治体独自の創業支援制度を活用する
都道府県・市区町村が独自に設けている創業支援補助金は、起業支援金より対象が広かったり要件が緩やかな場合があります。jGrants(jGrants.go.jp)や各自治体の補助金ページで検索することをお勧めします。
小規模事業者持続化補助金(創業型)を検討する
起業後に営業を開始してから申請できる補助金として、小規模事業者持続化補助金(創業型)があります。起業支援金のような「社会的事業」要件がなく、より広い業種で活用できます。
日本政策金融公庫の創業融資で自己資金を補う
補助金が受けられない場合でも、融資で資金を調達して事業を進めることは可能です。融資は返済義務がある点は補助金と異なりますが、審査のハードルは補助金より柔軟な場合があります。
地域おこし協力隊との違いと使い分け
地域おこし協力隊(No.98)と起業支援金は、どちらも地方移住と地域活動を支援する制度ですが、仕組みが根本的に異なります。
| 比較軸 | 起業支援金 | 地域おこし協力隊 |
|---|---|---|
| 主管 | 内閣府・内閣官房 | 総務省 |
| 性格 | 起業コストへの補助金 | 活動報酬(給与形態) |
| 金額 | 最大200万円(後払い精算) | 年間報酬として最大280万円程度(自治体による) |
| 期間 | 1〜2年の補助事業期間 | 1〜3年間の活動期間 |
| 対象 | 社会的事業を起業する人 | 地方での活動業務に従事する人 |
| 雇用関係 | なし(自己事業) | 自治体の委嘱(活動員)または雇用 |
| 事業計画の必要性 | 必要(審査あり) | 不要(各自治体の選考次第) |
使い分けのポイント
起業支援金が向いているのは、すでに事業のアイデアと実現の見通しがある人です。地方で起業するコストの半分を補助してもらい、自分の事業を立ち上げたい場合に活用します。
地域おこし協力隊が向いているのは、地域に貢献したいが具体的な事業のアイデアがまだ固まっていない人です。3年間の活動を通じて地域に溶け込みながら起業の準備を進め、任期終了後に起業支援金を活用するという「段階的な移住起業」のルートも有効です。
地域おこし協力隊の任期後に起業する場合も、要件を満たせば起業支援金の申請が可能です(自治体ごとに確認が必要)。
移住支援金(No.06)との詳細比較
本シリーズのNo.06では移住支援金の詳細を解説しています。No.88で扱う起業支援金とは異なる制度です。以下に主な違いをまとめます。
| 比較軸 | 起業支援金(No.88) | 移住支援金(No.06) |
|---|---|---|
| 支給対象 | 社会的事業の起業者 | 東京圏から移住した人(就業・起業等が要件) |
| 支給金額 | 最大200万円 | 世帯100万円・単身60万円 |
| 支給要件 | 社会的事業の審査・採択が必要 | 東京圏への在住・通勤実績と移住先での就業・起業等 |
| 申請先 | 都道府県または執行団体 | 市区町村 |
| 課税区分 | 事業所得等(原則課税) | 一時所得 |
| 返還要件 | 虚偽申請・補助目的外使用等 | 申請後5年以内の転出 |
両方を重複受給するには、起業支援金の採択・交付決定を先に受け、その後1年以内に移住支援金を申請します。申請の順序を間違えると移住支援金の要件を満たせない場合があるため注意が必要です。
地方創生2.0時代の制度動向と2026年度以降の注意点
2025年6月13日に閣議決定された「地方創生2.0基本構想」は、地方への人の流れを一層加速させる方針を示しています。
起業支援金・移住支援金は地方創生2.0においても継続・拡充される方向が示されています。特に移住支援の対象範囲が就業分野(農林漁業・医療・福祉等の必要職種への就業)へ拡大される検討が進んでいます。
一方で、予算規模や具体的な制度要件は毎年の予算編成・閣議決定を経て変化します。2026年度以降は次の点に注意が必要です。
1つ目は補助額・補助率の変更リスクです。現時点(2026年6月時点)では最大200万円・補助率1/2が維持されていますが、毎年度の予算審議によって変更される可能性があります。
2つ目は対象分野・要件の変更リスクです。「社会的事業」の定義や「デジタル技術活用」の要件は都道府県ごとに更新される可能性があります。申請前の年度の公募要領を必ず確認してください。
3つ目は実施道府県の変動リスクです。大阪府は現在対象外ですが、将来的に要件が変わる可能性もあります。また参加道府県が減少したり新たに加わる可能性もあります。
4つ目は制度統合・再編のリスクです。地方創生関連の交付金制度は「デジタル田園都市国家構想交付金」などと連動して運営されており、政権の方針変化や財政状況によって制度が改編される可能性があります。
制度の動向を追うには、内閣府地方創生の公式サイト(https://www.chisou.go.jp/sousei/)を定期的に確認することが最も確実な方法です。
各都道府県の事業名・窓口・対象分野の違いと確認方法
起業支援金は国が設計した制度の枠組みに基づきながら、各都道府県が独自に運営しています。そのため、事業名・補助額・対象分野・申請時期が都道府県ごとに異なります。
確認方法
各道府県の事業一覧は内閣府地方創生のウェブサイト(https://www.chisou.go.jp/sousei/kigyou_shienkin.html)に一覧で公開されています(確認日2026年6月27日時点。要最新確認)。
このページから各道府県の事業ページまたは執行団体のページへのリンクが掲載されています。
自治体による違いの典型例(参考情報。要最新確認)
各自治体で異なる主な点を以下に示します。これらは制度の比較・探し方の参考であり、具体的な数値は申請年度の公募要領で必ず確認してください。
- 事業名:北海道は「地域課題解決型起業支援事業」(公益財団法人北海道中小企業総合支援センターが執行)
- 補助率・上限:多くの道府県で国制度と同様の「1/2以内・上限200万円」を採用しているが、上乗せや条件を設ける場合もある
- 対象分野:第一次産業を除く道府県や、デジタル技術活用を必須とする道府県がある
- 公募時期:年1回(秋公募が多い)の道府県と年2回実施する道府県がある
- 対象経費:道府県ごとに詳細なリストが異なる(消耗品の上限設定など)
探し方の手順
- 内閣府地方創生のウェブサイトから起業予定の道府県のリンクを確認する
- 道府県の執行団体(産業振興財団・産業支援センター等)のウェブサイトで最新の公募情報を確認する
- 公募要領をダウンロードして全文を読む
- 担当窓口に事前相談を申し込む
地方起業のメリット:起業支援金を超えた視点
起業支援金の受給という直接的なメリット以外に、地方で起業することには次のようなメリットがあります。
固定費の削減
地方では都市部と比べて店舗・事務所の賃料が大幅に低くなる傾向があります。同じ広さの物件で、東京都心の家賃が月30万円の場合、地方の中核市では月5〜10万円に収まることは珍しくありません。この固定費の差は、事業の損益分岐点を下げることに直結します。
競合の少なさ
地方では都市部のように同業者が密集していないため、限られた市場を独占しやすい面があります。地域ニーズが少ない反面、そのニーズを提供する事業者も少なく、参入の余地がある業種が多く存在します。
自治体との連携・地域ネットワーク
地方の行政・商工会議所・農協・JAなどは、地域への起業者・移住者を積極的に支援しようとする姿勢が強い傾向があります。行政担当者と顔の見える関係を築きやすく、入札・随意契約・地域行事への参加を通じて安定した収益基盤を作りやすい環境が整っています。
生活コストの低下
住居費・食費・交通費(通勤費不要)など、生活コスト全体が都市部より低い傾向があります。事業の収益が同じでも、可処分所得の感覚が都市部より豊かになる方も少なくありません。
補助金・支援制度の充実
起業支援金以外にも、地方では自治体独自の補助金・助成金が多数設けられています。国の制度と自治体の上乗せを組み合わせることで、都市部では得られない手厚い支援環境が整っている場合があります。
デメリットと対策
地方起業のデメリットとして挙げられるのは、市場規模の小ささ・人材採用の難しさ・最新情報へのアクセスの不便さです。
市場規模の小ささについては、近隣の自治体や都市部への販路も組み合わせることや、ECサイトを活用してオンライン販売を加えることで補う方法があります。
人材採用の難しさについては、地域おこし協力隊との連携・近隣の農業高校・専門学校との協定・テレワーク採用など、地方に特有の採用手段を活用することが有効です。
起業支援金・創業支援補助金(No.40相当)との違いと選択基準
地方創生起業支援金と、No.40で扱う創業支援補助金(小規模事業者持続化補助金の創業型や都道府県・市区町村の単独創業補助金)はどちらも創業段階で使える支援ですが、仕組みが大きく異なります。
どちらが「向いているか」の判断基準
起業支援金が向いているのは次のようなケースです。
まず、東京圏以外の地方で起業する意向が明確であることが前提です。東京都・神奈川県・埼玉県・大阪府では利用できません(条件不利地域を除く)。
次に、地域課題の解決につながる「社会的事業」を立ち上げようとしていることが必要です。純粋に儲かりそうなビジネスとして計画する事業は採択されにくく、地域に必要とされている理由を明確に説明できる事業が対象です。
さらに、補助上限200万円(対象経費の1/2)を活用できるだけの事業規模があることも考慮点です。事業経費が50万円程度の小規模事業の場合は、補助金額も25万円程度になります。
一方、都道府県・市区町村の独自の創業補助金(No.40相当)が向いているのは次のような場合です。
東京・神奈川・埼玉・大阪で創業する方は、起業支援金の対象外であるため、地域の独自創業補助金を探すことになります。また、「社会的事業」の要件を満たさないと判断される業種(純粋な物販・飲食チェーンなど)の場合も、独自補助金の方が対象になりやすい場合があります。
両方に申請する戦略
補助対象経費が重複しない場合、起業支援金と都道府県・市区町村の独自創業補助金を同時に申請することが可能な場合があります。ただし同一経費への二重補助は認められません。
例えば、起業支援金で設備費・人件費を補助してもらい、市区町村の独自補助金で広報・販促費を補助してもらうという組み合わせが考えられます。ただしこの場合も各制度の公募要領に「他の補助金との重複申請禁止」の条件がないか必ず確認が必要です。
申請書類の詳細解説と取得時の注意点
事業計画書(専用様式)
最も重要な書類です。各都道府県・執行団体のウェブサイトからダウンロードします。様式は年度ごとに改訂されることがあるため、必ず当該年度の様式を使います。
事業計画書の典型的な構成は次のとおりです。
- 起業者の略歴と起業動機
- 事業の概要(事業名・提供するサービス・対象顧客)
- 地域課題の分析(なぜこの地域でこの事業が必要か)
- 事業の社会性・事業性・必要性の説明
- デジタル技術の活用計画
- 収支計画(年次ごとの売上・費用・損益見込み)
- 補助対象経費の内訳
- 資金調達計画(自己資金・融資・補助金の組み合わせ)
- 5年後・10年後の事業展望
これらを専用様式の各欄に記入します。欄外への記入は避け、別紙を添付する場合は様式の指定に従います。
事業計画書で最も審査の比重が高いのは「地域課題の分析」と「社会性の説明」です。ここを具体的なデータと自分の言葉で丁寧に書くことが採択への近道です。
住民票の写し
市区町村の窓口・郵送申請・マイナンバーカードを使ったコンビニ交付のいずれかで取得できます。コンビニ交付は土日でも取得でき、費用は一般的に200〜300円です。
有効期限は発行後3か月以内が目安ですが、公募要領で指定がある場合はそちらに従います。
移住予定者の場合は住民票がまだ移住先にない状態での申請になるため、代わりに移住予定の宣誓書や移住先自治体の転入予定を示す書類が求められます。書式は公募要領で確認してください。
納税証明書
道府県税の納税証明は都道府県税事務所・県税出張所等で取得します。消費税の納税証明は税務署で取得します。
郵送での取得も可能ですが、請求から届くまで1〜2週間かかることがあります。申請締切の直前に取得を試みると間に合わない可能性があるため、公募要領を入手したらすぐに取得手続きを始めることが重要です。
窓口での取得は本人確認書類(運転免許証等)を持参します。代理人が取得する場合は委任状が必要です。
見積書
補助対象経費ごとに取得します。規模の大きい工事・設備投資は2社以上から見積もりを取ることで、価格の妥当性を示せるため審査上有利です。
見積書の宛先は申請者本人(または法人名義)にします。事務所・店舗名だけでは書類上の確認ができない場合があります。金額・品目・数量が明記されているものを使います。
伴走支援の具体的な内容・期間・回数
起業支援金には補助金の交付だけでなく「伴走支援」がセットになっています。この支援は採択者全員が受けるものです。
伴走支援の典型的な内容
執行団体(産業振興財団等)または都道府県が指定する支援機関の担当者が、月1〜2回程度の頻度で経営状況をヒアリングします。ヒアリングは対面または電話・オンラインで実施されます。
内容は次のようなものです。
事業の進捗確認:計画に対して売上・顧客数・費用の実績がどうなっているかを報告します。計画と大きく乖離している場合は原因分析と対策を一緒に考えます。
専門家の紹介:税理士(会計・確定申告)・社会保険労務士(雇用・社会保険手続き)・中小企業診断士(経営戦略)・弁護士(契約・トラブル)などが必要な場合に紹介してもらえます。費用が補助される場合もあります。
販路開拓の支援:地域の商工会議所・商工会・農業団体との接続、地域産品の展示会・物産展への出展のあっせん、行政との連携実績の共有などが行われます。
補助金・助成金の情報提供:伴走支援の担当者は中小企業向けの補助金情報を幅広く把握しているため、事業の成長フェーズに応じた次の制度を紹介してもらえることがあります。
伴走支援の期間
補助事業期間中(交付決定日から事業完了届提出まで)が伴走支援の基本期間です。補助事業期間は通常1年程度で設定されることが多いです。
事業が終了した後も、都道府県・市区町村の創業支援機関(商工会議所・よろず支援拠点等)を通じた継続的な経営相談が可能です。
伴走支援を最大限に活用するために
伴走支援は「受け身で待っている」だけでは十分に活用できません。事業の悩みや課題を具体的に担当者に伝え、必要な専門家の紹介や情報提供を積極的に依頼することが重要です。
担当者が変わるケースもあります。担当者が交代した場合には、これまでの支援の経緯を新しい担当者に共有することが有効です。
事業承継・第二創業への起業支援金の適用
起業支援金は新規起業だけでなく、事業承継・第二創業にも適用されます。ほぼすべての競合記事が新規起業のみに触れており、事業承継・第二創業への適用は見落とされがちな論点です。
事業承継型
既存の事業(親の代から続く商店・農業・工場等)を引き継ぎ、経営を継続する場合が対象です。ただし単なる継承ではなく、引き継いだ後に新たな価値(新商品・新サービス・新市場)を付加する取り組みが求められます。
地方には後継者不足で廃業の危機にある事業が多く存在します。地元で廃業しそうな商店を引き継ぎ、地域に欠かせない生活インフラを維持するという観点でも「地域課題の解決」として認められる可能性があります。
第二創業型
既存の事業を継続しながら、新たな分野・新商品・新サービスへと業態を拡大・転換するケースです。例えば、農家が農産物の加工販売に新規参入する、工務店がリフォームから空き家リノベーションのプロデュース業へ業態を変える、といったケースが該当します。
第二創業型は都道府県によっては「Society5.0関連業種等の付加価値の高い分野への業態転換」といった条件が加わることがあります。この条件が何を意味するかは公募要領と担当窓口で確認が必要です。
事業承継・第二創業型の申請上の注意
事業承継・第二創業型は「新たに起業する」場合より証明書類が多くなることがあります。具体的には既存事業の決算書・事業継承に関する合意書・現在の経営状況を示す書類などが求められる可能性があります。
東京圏内の条件不利地域への適用の詳細
東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)のうち、「条件不利地域」に指定された地域では起業支援金を申請できます。
条件不利地域として指定される法律は次のとおりです。
- 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(過疎法)
- 山村振興法
- 離島振興法
- 半島振興法
- 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律
東京都内では、伊豆大島・三宅島・八丈島・青ヶ島・小笠原村などの島しょ地域が対象です。千葉県では房総半島の一部が半島振興法の対象になる可能性があります。埼玉県・神奈川県でも山間部の市町村が過疎法や山村振興法の対象になっているケースがあります。
自分が起業を考えている地域が条件不利地域かどうかは、各都道府県の担当窓口または公募要領で確認できます。また、過疎地域の指定状況は総務省の過疎対策のウェブサイトでも確認できます。
申請から入金までのタイムライン(目安)
申請から補助金が実際に入金されるまでの期間は、都道府県・申請時期・公募の混雑状況によって異なります。以下は一般的な目安です。
| フェーズ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 公募期間 | 申請書類の提出 | 1〜2か月 |
| 書類審査 | 執行団体による事前確認 | 2〜4週間 |
| 審査会 | 外部専門家による審査(口頭審査含む) | 1〜2か月 |
| 交付決定 | 交付決定通知書の到着 | 審査後2〜4週間 |
| 事業実施期間 | 発注・購入・実施 | 3〜12か月(公募要領による) |
| 実績報告 | 完了届・証拠書類の提出 | 事業完了後2〜4週間 |
| 検査・確定 | 書面・現地確認 | 1〜2か月 |
| 入金 | 確定補助金の振込 | 確定後2〜4週間 |
申請から入金まで合計で最短でも6か月程度、通常は1年以上かかるケースも珍しくありません。この間の事業資金は自己資金または融資で確保しておく必要があります。
自己資金が不足する場合の資金調達の組み合わせ方
起業支援金は後払い精算のため、自己資金が少ない状態では事業をスタートできません。以下に現実的な資金調達の組み合わせ方を示します。
パターン1:融資で立て替え、補助金で返済
日本政策金融公庫の創業融資(新創業融資制度・新規開業資金等)で必要な資金を借り、事業完了後に補助金が入金されたら融資の一部を繰り上げ返済する方法です。
融資の審査には、事業計画書・自己資金の金額・想定売上の根拠などが求められます。起業支援金の交付決定通知書を受け取っている場合は、それを融資の審査で示すことで実現可能性を補強できます。
創業融資の詳細は日本政策金融公庫(国民生活事業)の窓口または公式サイトで確認できます。
パターン2:自己資金と補助金の分担計画
全体の経費を補助対象経費(補助金で後から回収できる)と補助対象外経費(自己資金で賄う)に分類し、補助対象外経費を自己資金でまかなう計画を立てます。
例えば、補助対象経費が200万円・補助対象外経費が50万円の計画であれば、自己資金で最低でも250万円を用意(うち200万円は後から半分が戻ってくる)する必要があります。補助金受領前の資金繰りを月単位で試算しておくことが重要です。
パターン3:クラウドファンディングの活用
社会的事業の起業支援金申請と並行して、クラウドファンディング(購入型・寄付型)で資金を集める方法があります。クラウドファンディングは単なる資金調達だけでなく、地域課題への共感者を集め、事業の社会性を可視化する機能もあります。
ただしクラウドファンディングの収入は課税対象になることがあるため、税務上の取り扱いを事前に確認してください。
採択事例・成功事例の業種別・地域別の傾向
起業支援金の採択事例は執行団体や都道府県がウェブサイトで一部公開している場合があります。ただし全国統計や採択率の公式発表は見当たりません。以下は公開情報と制度の趣旨から読み取れる傾向です。
採択されやすい業種・事業の傾向
子育て支援分野(認可外保育施設・一時預かり・子どもの居場所)は、多くの地方で待機児童問題・共働き世帯の増加という明確な課題があるため、社会性の説明がしやすく採択実績が多い傾向があります。
買い物弱者支援(移動販売・宅配・コミュニティストア)は、過疎地域でスーパーマーケットや商店が減少している地域で強い社会性を示せます。
地域産品の加工・販売・観光との組み合わせ(6次産業化)は、地域の農林漁業資源を活かした事業として地域との関係性をアピールしやすい分野です。
医療・福祉の周辺サービス(在宅ワーカーへの生活支援・高齢者の見守りサービス・デイサービスの補助等)は、高齢化が進む地域で需要の根拠を示しやすい分野です。
教育・学習支援(学習塾・放課後支援・不登校支援・子どもの居場所)も、地方における教育機会の不足という課題を背景に採択される事例があります。
採択が難しい場合の傾向
「地域課題との結びつきが弱い」と判断される事業は採択されにくいです。例えば全国市場を相手にしたEC販売や、特定の地域課題と結びついていないコンサルティングなどは、社会性の説明が難しくなります。
同地域に同様のサービスがすでに十分に存在する場合も、「必要性」の説明が難しくなります。
地域おこし協力隊からの移行パターン
地域おこし協力隊(総務省)と起業支援金(内閣府・内閣官房)は別の制度ですが、地域おこし協力隊の任期終了後に起業支援金を活用するという「段階的な移住起業」のルートは現実的な選択肢のひとつです。
地域おこし協力隊として3年間地域に滞在することで、次のようなメリットが生まれます。
地域の実態を把握できます。どのような課題が実際にあり、どのような事業が必要とされているかを現場で学ぶことができます。
地域の人との信頼関係を築けます。起業後の顧客・協力者・仕入先となる地域の人々と、活動期間中に関係を築いておくことができます。
起業の準備を進められます。任期中に事業計画を練り上げ、市場調査・資金計画・必要な資格の取得などを並行して進めることができます。
地域おこし協力隊には任期終了後の起業を支援する別途の「起業支援補助金」(総務省所管・最大100万円)があります。こちらと地方創生起業支援金(内閣府・最大200万円)は別制度です。両方の要件を同時に満たすことはできない場合があるため、どちらを優先するかは担当窓口に確認の上判断してください。
よくある誤解の追加(よくある質問の補足)
補助金は起業前に受け取れると思っていた(再整理)
起業支援金は「補助事業完了後の後払い精算」です。交付決定を受けてから事業を開始し、事業完了後に実績報告を提出して、確認が取れた後に補助金が振り込まれます。
申請前の段階では補助金は一切入金されません。公募要領で補助事業の実施期間(例:交付決定日から〇か月)を確認し、その間の事業運転資金を自己資金または融資で確保することが必要です。
家族(配偶者)の人件費も補助対象になると思っていた
多くの場合、申請者本人の人件費は補助対象外です(自分に払った人件費は補助対象外が一般的)。雇用した第三者(パートタイマー・アルバイト・従業員)の人件費は対象になります。ただし家族従業員の人件費の取り扱いは都道府県・公募要領ごとに異なります。
補助金があれば自己資金ゼロで起業できると思っていた
起業支援金では「対象経費の2分の1以内」が補助されるため、残りの2分の1は自己資金または融資で負担します。また補助対象外の経費(申請者本人の人件費・交通費の一部等)も自己負担です。
さらに補助金は後払いなので、事業期間中の立て替え資金として自己資金または融資が必要です。「自己資金ゼロで起業できる」というわけではありません。
採択されれば必ず200万円もらえると思っていた
補助金額は「実際に支出した補助対象経費の2分の1」であり、上限が200万円です。計画段階では補助見込み額を計算できますが、事業完了後の実績報告で実際の支出金額を確認した上で最終的な補助金額が決まります。
計画より支出が少なかった場合は、補助金も比例して少なくなります。
移住支援金の子ども加算制度
移住支援金は世帯で最大100万円が基本ですが、18歳未満の子どもがいる世帯には「子ども加算」が設けられています。
加算額の目安は子ども1人あたり100万円程度とされていますが、自治体ごとに設定が異なります。例えば子ども2人いる世帯が移住する場合、世帯基本額100万円+子ども加算200万円(100万円×2人)で合計300万円の移住支援金になる可能性があります(ただし上限の設定は自治体により異なります)。
子ども加算の適用を受けるためには、対象となる子どもが移住先への住民票転入と同時に(または移住支援金の申請時に)要件を満たしていることが必要です。
詳細は移住先の市区町村の担当窓口に確認してください。
起業後の継続支援(補助事業終了後の支援機関の活用)
補助事業が完了し、伴走支援期間が終わった後も、次のような支援機関を活用することで継続的に経営サポートを受けられます。
商工会・商工会議所
全国の市区町村に設置されており、経営相談・記帳指導・税務相談・融資のあっせんなどを無料または低コストで受けられます。地域の販路開拓や異業種交流の機会も提供しています。年会費制で入会できます。
よろず支援拠点
中小企業庁が設置した、中小企業・小規模事業者の経営相談窓口です。47都道府県すべてに設置されており、売上拡大・資金調達・経営改善など幅広い相談を無料で受けられます。チーフコーディネーター・コーディネーターが常駐しており、専門家の紹介も行っています。
産業振興財団・産業支援センター
起業支援金の執行団体となっている機関が、補助事業終了後も経営相談を継続して受け付けているケースが多いです。同じ担当者に継続して相談できる場合もあります。
地域の金融機関(信用金庫・信用組合・地方銀行)
地域密着型の金融機関は、創業者や小規模事業者に対して経営支援・紹介・マッチングを行う機能を持っています。融資取引がある金融機関であれば、担当者が定期的に経営状況を確認しながら情報提供や紹介をしてくれます。
申請手続きで気をつけたいその他のポイント
電子申請と郵送申請の違い
公募要領に「電子申請フォームより提出」と記載されている場合は、PDFをメールに添付するのではなく、指定されたオンラインフォームに入力・アップロードする方式です。オンラインフォームは締切直前に混雑してアクセスしにくくなることがあるため、締切の2〜3日前までに提出することをお勧めします。
申請後の問い合わせ対応
申請書類を提出した後、執行団体から「補足資料の提出依頼」や「内容の確認電話」が来ることがあります。担当者からの連絡には迅速に対応することが重要です。回答が遅れると審査の進行が遅くなります。
複数の道府県に同時申請できるか
起業支援金は起業する(または起業予定の)1つの道府県に申請するものです。複数の道府県に同時申請することは一般的に想定されていません。
申請者の年齢制限
多くの道府県では年齢制限を設けていませんが、未成年の場合は法定代理人の同意書が求められます(北海道の例より)。上限年齢は特に設定されていない場合がほとんどです。
法人か個人か
個人の開業届(個人事業主として起業)と、法人設立(株式会社・合同会社等)のどちらでも申請できます。どちらが有利かは事業の規模・取引先の要件・税務上の考慮によって異なります。起業形態については税理士・中小企業診断士への相談をお勧めします。
よくある質問(追加のFAQ)
Q11:起業支援金の交付決定前に事務所の賃貸借契約を結んでしまった場合は?
交付決定日よりも前に締結した契約に基づく経費は原則として補助対象外です。例えば4月1日に店舗の賃貸借契約を締結し、交付決定が6月1日だった場合、4月・5月分の賃料は対象外、6月1日以降の賃料は対象になる可能性があります。
ただし、賃貸借契約自体の締結日と賃料の発生日をどう解釈するかは都道府県・公募要領によって異なります。「交付決定前の契約は一切対象外」とする要領もあれば、「交付決定日以降に支払った賃料は対象」とする要領もあります。必ず公募要領を確認し、不明な点は担当窓口に問い合わせてください。
Q12:移住支援金の申請から入金までどのくらいかかりますか?
市区町村による審査が完了すれば比較的早期に支給されますが、2〜3か月程度かかる場合が多いです。市区町村によって処理期間が異なります。
Q13:個人の場合と法人の場合で補助額に違いはありますか?
補助率(1/2以内)・上限額(200万円)は個人・法人で同一です。ただし補助対象経費の計算方法(特に人件費の単価設定等)が異なる場合がある点に注意が必要です。詳細は公募要領で確認してください。
Q14:第一次産業(農業・林業・漁業)は完全に対象外ですか?
北海道の公募要領では「第一次産業を除く」と記載されています。ただし全ての道府県で同じ制限があるわけではありません。一方で農業の6次産業化(加工・販売)や農業体験観光など、農業に付加価値を加えた事業は第一次産業ではなく製造・サービス業として分類され、対象になる場合があります。担当窓口への事前相談で確認することを強くお勧めします。
Q15:補助金の対象経費に上限(経費ごとの単価制限)はありますか?
公募要領に経費区分ごとの上限が設けられている場合があります。例えば「人件費は事業に直接従事した時間分のみで、給与明細で按分する」「消耗品は単価〇万円以下のもの」などです。高額の設備投資の場合は2社以上から見積もりを取ることが求められる場合もあります。これらの制限は都道府県・公募要領ごとに異なるため、事前に公募要領全文を確認してください。
申請に役立つ公的な相談機関
起業支援金の申請にあたって、以下の公的機関を無料で活用できます。
各都道府県の執行団体(産業振興財団・産業支援センター等)
起業支援金の申請窓口であり、事前相談を受け付けています。自分が申請予定の道府県の執行団体が最初の相談先です。
よろず支援拠点
経営全般の相談を無料で受けられます。事業計画書の添削や収支計画の確認なども相談できます。全国47都道府県に設置されています。中小企業庁のウェブサイト(chusho.meti.go.jp)から最寄りの拠点を検索できます。
日本政策金融公庫
創業融資の相談窓口であり、事業計画書の確認も行っています。補助金と融資の組み合わせについてアドバイスを受けられます。全国各地に支店があります。
税務署
課税関係(起業支援金・移住支援金の確定申告上の取り扱い)は税務署で無料で相談できます。確定申告期前後は混雑するため、早めの相談をお勧めします。
商工会議所・商工会
記帳・税務・経営相談を低コストで受けられます。創業支援セミナーを開催しているところも多く、起業準備段階から活用できます。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の個人・事業に対する法律・税務・会計・申請手続きの個別アドバイスではありません。補助金の申請代行・書類作成代行は行いません。
記載している金額・要件・手続きは2026年6月27日時点の情報に基づいており、今後の制度改定・自治体の運用変更等により変わる可能性があります。申請前には必ず各道府県の担当窓口または内閣府地方創生のウェブサイトで最新の情報を確認してください。
税務上の取り扱い(課税区分・圧縮記帳の適用等)については、管轄の税務署または税理士にご相談ください。
出典一覧(URLと確認日)
- 内閣府地方創生「起業支援金・移住支援金」
https://www.chisou.go.jp/sousei/shienkin_index.html
確認日:2026-06-27
- 内閣府地方創生「起業支援金」(制度詳細)
https://www.chisou.go.jp/sousei/kigyou_shienkin.html
確認日:2026-06-27
- 内閣府地方創生「移住支援金」(制度詳細)
https://www.chisou.go.jp/sousei/ijyu_shienkin.html
確認日:2026-06-27
- 国税庁「地方公共団体の地方創生起業支援事業及び地方創生移住支援事業に基づき支給される各支援金の課税関係について」(文書回答事例)
https://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/shotoku/h31/004/besshi.htm
確認日:2026-06-27
- 公益財団法人北海道中小企業総合支援センター「地域課題解決型起業支援事業」
https://www.hsc.or.jp/consul/regional-entre/
確認日:2026-06-27
※自治体の事業名・窓口として参照。最新の公募情報は都度確認が必要。
- 内閣官房「地方創生2.0基本構想(令和7年6月13日閣議決定)概要」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_chihousousei/pdf/20250613_gaiyou.pdf
確認日:2026-06-27