親の介護で使える税の控除——扶養控除・障害者控除・医療費控除を実務で使い切るガイド(2026年版)

本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・受付状況はいずれも変更されることがあるため、申請前に必ず公式サイトまたは担当窓口でご確認ください。

この記事が整理すること

介護がはじまると、介護サービス料・施設費用・おむつ代・医療費といった出費が毎月のように重なります。ところが「使える税の制度があるはずだ」と調べはじめると、扶養控除・障害者控除・医療費控除・社会保険料控除という複数の制度が並んでいて、どれが自分に当てはまるのか、どこへ申請するのか、何が必要なのかがわかりにくく感じることが多いようです。

この記事が整理するのは、「介護で税を取り戻す」という視点です。これは別記事(No.17)が扱っている介護費用の自己負担軽減制度(高額介護サービス費・特定入所者介護サービス費など)とは異なります。No.17は介護保険の窓口で手続きして費用そのものを抑える話ですが、本記事は確定申告や年末調整を通じて払いすぎた税を戻すという話です。制度の位置づけがまったく違うため、両方を知っておくことで手取りを最大化できます。

本記事が対象とする読者は次のような方々です。

親を扶養に入れているか入れようとしているが、控除額の計算がわからない方。要介護認定を受けた親がいて、障害者控除を使えるかどうか確認したい方。介護サービスの費用やおむつ代が医療費控除の対象になるか知りたい方。兄弟で介護を分担しているが、誰が税の申告をすれば節税効果が大きいか判断したい方。控除の申告を何年もしていなかったことに気づき、過去分を取り戻せるか気になっている方。

本記事の情報はあくまで一般的な制度の案内です。個別の税務判断・申告代行は税理士の業務であり、本記事はその代行を行いません。実際の申告にあたっては、税務署の窓口相談または税理士への依頼をご検討ください。

制度の全体像

親の介護に関わる「税を取り戻す仕組み」は、大きく4つに分類できます。

1つ目は扶養控除です。親を生計を一にする扶養親族として申告すると、所得税の計算上、38万円・48万円・58万円のいずれかが課税所得から差し引かれます。住民税でも同様の控除があります。

2つ目は障害者控除です。親に身体障害者手帳などがある場合はもちろん、手帳がなくても要介護認定を受けた高齢者は一定の手続きをすることで「障害者」または「特別障害者」として認定を受けられる可能性があります。所得税で27万〜75万円、住民税でも26万〜53万円程度が課税所得から差し引かれます。この控除は扶養控除と重複して同時に申告できます。

3つ目は医療費控除です。年間の医療費合計が10万円(総所得200万円未満の場合は総所得の5%)を超えた分のうち最大200万円を課税所得から差し引けます。介護サービスの自己負担額の一部も対象になりますが、サービスの種類によって対象・対象外が細かく分かれています。

4つ目は社会保険料控除です。子が親の介護保険料や国民健康保険料を実際に支払った場合、その金額を子の社会保険料控除として申告できます。年金から天引き(特別徴収)されている保険料は親の控除対象になるため子は申告できませんが、口座振替や窓口納付で子が支払った場合は子の控除になります。

以下の表に4制度の概要をまとめます。

控除の種類誰が申告控除額(所得税)申告の方法
扶養控除扶養している子38〜58万円確定申告または年末調整
障害者控除本人または扶養者27〜75万円確定申告または年末調整
医療費控除実際に払った方実費超過分(上限200万円)確定申告のみ
社会保険料控除実際に払った子支払額全額確定申告または年末調整

これら4つの控除は、要件を満たす範囲でそれぞれ独立して適用できます。扶養控除と障害者控除は同じ親に対して両方申告することが可能です。

【無料サンプル】別居の親(要介護2・73歳)を扶養に入れて障害者控除も申告するケースを最後まで全部見せます

介護で税を取り戻す手続きの中で、「扶養控除と障害者控除を両方使う」というケースが最も節税効果の高い組み合わせのひとつです。ここでは典型的な1ケースを選び、申請の流れ・金額・窓口・用意すべき書類まで、出し惜しみなく最後まで解説します。

前提となるケースの設定

申告するのは、関東近郊に住む45歳の会社員(年収620万円・所得税率20%・住民税率10%)です。

親は73歳で、夫婦2人で関東の別の市に住んでいます(子とは別居)。今年の1月から要介護2の認定を受けており、週3回の訪問介護と訪問看護を利用しています。毎月、子が親の介護サービス費用・生活費の一部として7万円ほど仕送りをしており、親の年金収入は遺族厚生年金を含めて年間180万円程度です。親は身体障害者手帳を持っていません。

この設定で、子が申告できる控除とその金額、手続きの流れを確認していきます。

ステップ1:扶養控除を使えるか確認する

扶養控除を申告するには、「生計を一にしている」「扶養親族として認められる所得の範囲内」であるという2つの条件を満たす必要があります。

「生計を一にしている」とは、同居していなくても仕送りや生活費の援助をしていれば認められます。このケースでは毎月7万円の仕送りがあるため、生計を一にしていると判断できます。単に交流があるだけでなく、生活費を実際に負担しているという実態が重要です。

次に所得の範囲です。扶養親族として認められるのは、その年の「合計所得金額」が48万円以下であることが条件です(令和7年度税制改正により令和7年分(2025年分)以後は58万円以下に引き上げられています。申告する年の条件は国税庁または税務署でご確認ください)。

このケースでは親の年金収入が年間180万円です。公的年金収入は「公的年金等控除」を引いたものが所得になります。65歳以上で公的年金収入が330万円未満の場合、公的年金等控除額は一律110万円です。180万円の場合は「180万円 − 110万円 = 70万円」が所得となります。これは48万円(令和7年分以後は58万円)を超えているため、このケースでは扶養親族の所得要件を満たさず、扶養控除は申告できません。

この結果から学べる重要なポイントがあります。年金収入が多い親は所得要件を超えることがあり、扶養控除を使えないケースがあります。扶養控除を使うには、親の合計所得金額が所定の金額以下でなければならないのです。

ただしこのケースでは、扶養控除は使えなくても、障害者控除は扶養の有無とは別に申告できます。次のステップで確認します。

ステップ2:障害者控除(障害者控除対象者認定書の取得)

手帳がない場合でも、65歳以上で要介護認定を受けている方は、市区町村長から「障害者控除対象者認定書」を交付してもらうことで、税法上の障害者控除を受けられる可能性があります。この認定書の取得が、手帳のない要介護高齢者にとって最大のポイントです。

注意してほしいのは、要介護認定を受けたからといって自動的に障害者控除が使えるわけではないという点です。介護保険の認定と税法上の障害者認定は別の手続きで、別の窓口です。「要介護認定=障害者控除OK」と思い込んで何年も申告しないままでいる方が非常に多いため、この点は特に強調しておきます。

申請の流れは以下の通りです。

まず親が住む市区町村の窓口(高齢者福祉担当・介護保険課)に問い合わせます。「障害者控除対象者認定の申請をしたい」と伝えれば、申請書を案内してもらえます。

申請書に必要事項を記入し、介護保険被保険者証・本人確認書類とともに提出します。窓口は親の住む市区町村であり、子の住む市区町村ではありません。

市区町村が12月31日時点の要介護度および主治医意見書・認定調査票に基づいて判定します。認定基準は市区町村によって若干異なりますが、たとえば東京都江東区の場合、要介護2の方で認知自立度がⅡaまたはⅡb(何らかの形の物忘れ等があるレベル)に相当する場合は「障害者」として認定されます。認知自立度がⅢa以上(日常的に認知症の症状が見られるレベル)または寝たきり度Bランク(屋内での生活はおおむね自立しているが、外出等は制限がある)以上の場合は「特別障害者」として認定される可能性があります。

認定書が交付されたら、確定申告または年末調整でその認定書の内容をもとに申告します。

このケースでは親が要介護2であり、申請の結果「障害者」として認定されたとします。子が扶養していない場合でも、親自身が確定申告で障害者控除を申告できます。また、子が扶養控除を申告している場合には「扶養親族に障害者がいる」という形で子の申告に含めることができます。

今回は扶養控除が使えないため、親自身が確定申告で障害者控除27万円を申告することになります。

親の所得税率を仮に5%とすると、27万円 × 5% = 1万3,500円 の税額軽減になります。住民税でも障害者控除があります。住民税の障害者控除額は所得税と異なりますが、一般的に26万円程度とされています(確認日2026-06-27時点の知識。正確な数値は市区町村の担当窓口でご確認ください)。住民税率10%で計算すると、26万円 × 10% = 2万6,000円 の税額軽減です。

合計すると、1万3,500円(所得税)+ 2万6,000円(住民税)= およそ3万9,500円の税負担軽減になります。

ステップ3:医療費控除も確認する

このケースでは訪問看護と訪問介護(生活援助中心型ではないもの)を利用しています。

訪問看護は医療系サービスのため、自己負担額が全額医療費控除の対象になります。訪問介護は、同じケアプランに訪問看護が位置付けられているため、生活援助中心型でなければ医療費控除の対象になる可能性があります。

仮に1年間の訪問看護・訪問介護の自己負担額が合計で18万円あったとします。

医療費控除の計算は「年間医療費合計 − 保険補填額 − 10万円」です。

18万円 − 0円(保険補填なし)− 10万円 = 8万円

この8万円が医療費控除の対象額です。子(年収620万円・所得税率20%)が親の医療費を立て替えて支払っていた場合、子が申告します。

8万円 × 20%(所得税)= 1万6,000円 の所得税軽減

8万円 × 10%(住民税)= 8,000円 の住民税軽減

合計約2万4,000円の税負担軽減になります。

ただし医療費控除は確定申告が必要で、年末調整では申告できません。領収書の保管(5年間)と明細書の作成が必要です。

このケースのまとめ

別居の親(要介護2・73歳・年金年収180万円)の例でわかったことを整理します。

扶養控除は親の年金収入が多いため使えませんでした。しかし障害者控除対象者認定書を取得することで親が障害者控除を申告でき、年間約3万9,500円の軽減が見込めます。医療費控除については子が立て替えた訪問看護・訪問介護費用が対象になり、年間約2万4,000円の軽減が見込めます。

もし親の年金収入が少なく扶養控除も使えていれば、さらに大きな節税効果が得られます。この続きでは扶養控除と障害者控除の両方が使えるケースの節税試算も詳しく解説します。

このケースで実際に用意した書類

最後に、このケースで申告までに用意した書類を整理しておきます。読者がご自身のケースで動くときの持ち物リストとして使えます。

障害者控除の申告には、親が住む市区町村の窓口で取得した「障害者控除対象者認定書」、その申請時に提示した介護保険被保険者証、窓口へ行く方の本人確認書類(マイナンバーカードまたは運転免許証等)を用意しました。代理で申請する場合は委任状を求められることがあるため、事前に電話で確認しておくと二度手間を防げます。

医療費控除の申告には、訪問看護・訪問介護の事業者が発行した領収書一式、そこに記載された「医療費控除の対象となる金額」を転記して作成した「医療費控除の明細書」、そして子の勤務先から交付された源泉徴収票を使いました。領収書そのものは申告書に添付せず、5年間自宅で保管します。

確定申告は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(e-Tax)を使えば、画面の案内に沿って入力するだけで申告書が完成します。マイナンバーカードとスマートフォンのICカード読取機能があれば、税務署へ行かずにオンラインで提出できます。

このように、別居・要介護2・年金年収180万円という一見「扶養に入れられない」ケースでも、障害者控除と医療費控除を組み合わせることで年間6万円以上の税負担を取り戻せます。制度を知っているかどうかだけで、この差が毎年生まれます。

ここから先は、申請に直結する実務です。

あなたのケースで使える控除を見極める

本格的な実務の前に、ご自身の状況でどの控除が使える可能性があるかを大まかに整理しておきます。以下の問いに沿って考えると、注力すべき手続きが見えてきます。

親の合計所得金額(年金収入から公的年金等控除を引いた金額)が、令和7年分以後で58万円以下に収まっていますか。収まっていれば扶養控除を申告できる可能性が高く、超えていれば扶養控除は難しいものの、障害者控除や医療費控除は別途使える可能性があります。年金収入で言えば、65歳以上で年金収入が168万円以下であれば所得58万円以下に収まる計算です。

親は65歳以上で要介護認定を受けていますか。受けていれば、手帳がなくても障害者控除対象者認定書を取得することで障害者控除を使える可能性があります。これは扶養控除が使えるかどうかとは無関係に、親自身の申告または扶養している子の申告で活用できます。

親の医療費・介護サービス費を、あなたが実際に支払っていますか。支払っていれば医療費控除を申告できる可能性があります。訪問看護などの医療系サービスや、施設サービスの自己負担額が対象になります。

親の介護保険料・国民健康保険料を、あなたが口座振替や窓口で支払っていますか。支払っていれば社会保険料控除を申告できます。年金から天引きされている分は対象外です。

これら4つのうち、ひとつでも当てはまれば手続きを進める価値があります。複数当てはまる場合は、それぞれ独立して申告できるため、組み合わせて申告することで軽減額が積み上がります。次の章から、各控除の詳しい要件と手続きを順に解説します。

扶養控除の詳細と介護特有の注意点

扶養控除の基本要件を押さえる

扶養控除を申告するには、扶養を受ける親が「控除対象扶養親族」に該当する必要があります。主な要件は以下の3点です。

まず年齢の条件です。16歳以上の親族が対象です。70歳以上になると「老人扶養親族」として控除額が上がります。

次に所得の条件です。その年の合計所得金額が48万円以下であることが必要です(令和7年度税制改正により令和7年分以後は58万円以下に引き上げられています。申告する年の要件は国税庁または税務署でご確認ください)。公的年金は年齢や収入額により控除額が変わります。65歳以上の方の場合、公的年金収入からは公的年金等控除として最低110万円が引かれます(収入330万円未満の場合は一律110万円)。つまり、年金収入が158万円以下(110万円+48万円)であれば令和6年分以前の所得要件、168万円以下(110万円+58万円)であれば令和7年分以後の所得要件を満たします。

3つ目は生計を一にしているという条件です。同居していなくても、子が生活費や療養費を負担している実態があれば「生計を一にしている」と認められます。月1〜2回の仕送りをしているだけでも該当するケースがあります。領収書や振込記録を残しておくことが望ましいです。

扶養控除額の3段階を確実に区別する

所得税の扶養控除額には3つの段階があり、条件によって控除額が変わります。

一般の控除対象扶養親族(16歳以上69歳以下)は38万円です。親が70歳未満であればこの区分になります。

老人扶養親族(70歳以上)のうち、同居老親等でないもの(別居している場合)は48万円です。老人ホームや有料老人ホームに入所している場合も、法律上は「別居」として扱われるためこの区分になります。

同居老親等(70歳以上の直系尊属で、自分または配偶者と同居している)は58万円です。直系尊属とは父母・祖父母などです。同居が条件なので、二世帯住宅で一緒に住んでいる場合はこの区分を使えます。

これら3段階の違いは、同居しているかどうかで最大10万円変わります。別居の親が老人ホームに入所した場合、それ以前に同居老親等(58万円)で申告していた方は、入所後は48万円に下がることに注意が必要です。

住民税の扶養控除額も所得税とは異なります。一般的に、一般扶養が33万円、別居の老人扶養が38万円、同居老親等が45万円とされています(ただし自治体によって若干異なる場合があり、正確な金額は市区町村の担当窓口でご確認ください)。

施設入居で「別居」になる落とし穴

同居の親を扶養に入れていた場合、その親が老人ホームや有料老人ホームに入所すると、税法上は「別居」として扱われることになります。

これは多くの方が知らない落とし穴で、入所前に58万円の同居老親等控除を受けていた場合、入所後は48万円の老人扶養親族(別居)に変わります。差額は10万円で、税率20%の方であれば所得税で2万円、住民税でも数千円の税負担の増加につながります。

なお、病院に入院している場合は扱いが異なります。治療のための入院であれば、入院期間が1年以上と長くなっても「同居に該当するものとして取り扱っても差し支えない」とされています(国税庁No.1180)。老人ホームへの入所と病院への入院は、税法上の扱いが異なる点をしっかり区別してください。

兄弟間で誰が申告すべきか

親を複数の兄弟で介護している場合、1人の親に対して扶養控除を申告できるのは1人だけです。同じ親を2人の兄弟が両方申告することはできません。

では誰が申告すればよいかというと、所得税率が最も高い人が申告するのが税負担を最も大きく減らす方法です。所得税の税率は所得に応じて5%から45%まで段階的に上がるため、同じ48万円の控除であっても、税率5%の方が申告すると2万4,000円の軽減ですが、税率23%の方が申告すると11万400円の軽減になります。

実際には、扶養控除を申告するには親の生活費を実際に負担しているという実態が必要です。生活費を複数の兄弟で分担している場合、最も多く負担している人が申告するのが一般的な考え方です。どちらが申告するかで節税額に大きな差が出るため、兄弟間で事前に相談しておくことをお勧めします。

具体的な数字で見てみます。70歳以上の別居の親(老人扶養親族・控除額48万円)を、兄(課税所得600万円・所得税率20%)と弟(課税所得250万円・所得税率10%)のどちらかが扶養に入れられるとします。兄が申告すると48万円 × 20% = 9万6,000円の所得税軽減になり、弟が申告すると48万円 × 10% = 4万8,000円の所得税軽減になります。住民税は一律10%なので、扶養控除(住民税38万円)の軽減はどちらが申告しても3万8,000円で変わりません。つまり所得税の差だけで年間4万8,000円の違いが生じます。所得税率の高い兄が申告するほうが世帯全体での手取りは多くなります。

ただし、節税額の大きさだけで申告者を決めるのではなく、実際に生活費を多く負担している人が申告するという原則を守ってください。負担実態と申告者がかけ離れていると、税務署から確認を受けた際に説明が難しくなります。兄弟で「誰が主に負担し、誰が申告するか」を話し合い、その人が中心になって仕送りをする形に整えておくと、節税と実態の両方に無理がありません。

障害者控除の詳細と「自動でない」申請の実態

障害者控除額の3段階

障害者控除の金額は、認定の区分によって3段階あります。

障害者(27万円)は、身体障害者手帳3〜6級、知的障害(軽度〜中度)、精神障害者保健福祉手帳2〜3級などに該当する場合、または市区町村長から「障害者に準ずるもの」として認定された場合です。

特別障害者(40万円)は、身体障害者手帳1〜2級、知的障害(重度)、精神障害者保健福祉手帳1級、または寝たきりの状態で複雑な介護が必要な状態として認定された場合などです。

同居特別障害者(75万円)は、特別障害者に該当する方が同居している場合です。納税者本人・配偶者・生計を一にする親族のいずれかと同居していることが条件で、特別障害者の場合に比べて大幅に控除額が上がります。

住民税での障害者控除額は所得税とは異なります。一般的に障害者26万円・特別障害者30万円・同居特別障害者53万円とされていますが、詳細は市区町村の窓口または税務署でご確認ください。

要介護認定≠障害者控除の大誤解

税の申告に関して最も多い誤解のひとつが「要介護認定を受けたら自動的に障害者控除を使える」というものです。

実際はまったく違います。介護保険の「要介護認定」と、税法上の「障害者控除」は、制度の根拠も申請窓口も判定基準もすべて異なります。国税庁は「介護保険法の要介護認定を受けられただけでは障害者控除の対象とはなりません」と明示しています(No.1185)。

障害者控除を申告するには、次のいずれかが必要です。

1つ目は身体障害者手帳・知的障害(療育手帳)・精神障害者保健福祉手帳などの証明書を持っている場合です。手帳があればそのまま控除を申告できます。

2つ目は手帳がない65歳以上の高齢者が、市区町村長から「障害者控除対象者認定書」を交付してもらう場合です。要介護認定を受けていることが前提になりますが、認定書は別途申請が必要です。

3つ目は寝たきりの状態で複雑な介護が必要な場合として、福祉事務所長などが認定している場合です。

要介護高齢者の場合は2つ目のルートが一般的ですが、要介護認定を受けても申請をしなければ認定書は発行されません。この「申請しないと始まらない」という点が最大の落とし穴です。

障害者控除対象者認定書の申請フロー

申請の手順を具体的に説明します。

まず、認定書の申請先は「親が住む市区町村」の介護保険課・高齢者福祉担当です。子が住む市区町村ではなく、親が住民票を置いている自治体に申請します。

次に、申請時に用意する書類の目安です。申請書(窓口で取得または自治体HP からダウンロード)、介護保険被保険者証(要介護認定の内容が記載されています)、窓口に来る方の本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証等)が一般的に必要です。代理申請の場合は委任状が必要な自治体もあります。郵送申請を受け付けている自治体もあるため、まず電話で確認すると効率的です。

自治体が審査・判定を行います。判定は、その年の12月31日時点における要介護度・主治医意見書・認定調査票の内容に基づきます。要介護度だけでなく、認知自立度や障害自立度(寝たきり度)も判定基準に含まれます。

認定書が交付されたら、確定申告(または年末調整)の際に提出または提示します。

申請のタイミングとして、12月31日時点の状態で判定されるため、通常は翌年の確定申告期間(2〜3月)に向けて、前年の12月31日以降に申請する形になります。ただし一部の自治体では12月頃から申請を受け付けていたり、一定の要件を満たす方に認定書を一斉送付していたりするケースもあります。お住まいの自治体(親が住む市区町村)の案内を確認してください。

要介護度別の認定目安(自治体の違いに注意)

自治体ごとに認定基準が異なるため、要介護度だけで「障害者」か「特別障害者」かが決まるわけではありません。ただし、参考として東京都江東区の基準を紹介します。

要支援1〜2または要介護1〜3の方で、認知自立度がランクⅡa・Ⅱbに相当する場合は「障害者」として認定されることがあります。ランクⅡとは、日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られるが、誰かが注意していれば自立できる程度と定義されます。

要介護1〜3の方でも、認知自立度がランクⅢa以上(日常生活に支障をきたすような症状や行動が見られ、介護を必要とする程度)または障害自立度(寝たきり度)がランクB以上(屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体だが、座位を保つ程度のことはある)の場合は「特別障害者」として認定される可能性があります。

要介護4・5の方は、多くの自治体で「特別障害者に準ずるもの」として認定されます。

ただしこれはあくまで一例です。自治体によって判定基準は異なり、同じ要介護度でも認定結果が変わることがあります。事前に親が住む市区町村の窓口に確認することをお勧めします。

認知自立度・寝たきり度のランクを知っておく

障害者控除対象者認定の判定では、要介護度だけでなく「認知症高齢者の日常生活自立度」(認知自立度)と「障害高齢者の日常生活自立度」(寝たきり度)という2つの指標が使われます。これらは要介護認定の主治医意見書や認定調査票に記載されているため、親がどのランクにあたるかを事前に把握しておくと、認定の見通しが立てやすくなります。

認知自立度は、ランクⅠ(ほぼ自立)、ランクⅡ(日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られるが、誰かが注意していれば自立できる)、ランクⅢ(日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする)、ランクⅣ(同様の状態が頻繁に見られ、常に介護を必要とする)、ランクM(著しい精神症状や問題行動があり、専門医療を必要とする)という段階で表されます。ⅡやⅢはさらにa・bに細分されます。多くの自治体では、ランクⅡ相当で「障害者」、ランクⅢ以上相当で「特別障害者」の認定に近づく傾向があります。

寝たきり度は、生活がおおむね自立しているランクJ、屋内での生活はおおむね自立しているが介助なしには外出しないランクA、屋内でも介助を要し日中もベッド上の生活が主体のランクB、一日中ベッド上で過ごし排泄・食事・着替えで介助を要するランクCという段階です。ランクB以上が「特別障害者」の認定に近づく目安とされることが多いです。

これらのランクは主治医意見書に記載されていますので、認定書の申請前に親のかかりつけ医やケアマネジャーに確認しておくと、どの区分で認定される可能性が高いかをあらかじめ見立てられます。ただし最終的な判定は自治体が行うため、見立てはあくまで目安として捉えてください。

障害者控除の遡及申請について

過去の年度分の障害者控除を申請できなかった場合、一定の条件のもとで過去年度の認定書を申請できる自治体があります。ただし、過去年度の認定書の発行対応は自治体によって異なり、すべての自治体が過去分に遡って発行するわけではありません。

一方、税務申告の側では「更正の請求」という制度があります。申告期限から5年以内であれば、申告漏れの控除について更正の請求を行い、払い過ぎた税を取り戻すことができます。たとえば2022年分の申告で障害者控除を申告していなかった場合、2027年まで更正の請求が可能です。

ただし更正の請求には、過去年度の認定書が必要になる点に注意が必要です。自治体が過去年度の認定書を発行してくれるかどうかを事前に確認してから、税務署に更正の請求を行う流れになります。まず親が住む市区町村の介護保険課に「過去分の障害者控除対象者認定書を発行してもらえるか」と問い合わせることから始めてください。

医療費控除の「介護版」詳細

基本の計算式

医療費控除の基本的な計算式は以下の通りです。

医療費控除額 = (その年に支払った医療費の合計額 − 保険や制度で補填された金額) − 10万円

ただし、総所得金額が200万円未満の場合は、「10万円」の代わりに「総所得金額の5%」という少ないほうの基準が使われます。

控除額の上限は200万円です。

たとえば年間の医療費が30万円で、保険補填が5万円あった場合は次のように計算します。

(30万円 − 5万円) − 10万円 = 15万円

この15万円が医療費控除額になります。所得税率20%であれば15万円 × 20% = 3万円の税額軽減、住民税では15万円 × 10% = 1万5,000円の軽減、合わせて4万5,000円の軽減になります。

なお、高額療養費制度や高額介護サービス費として還付を受けた金額は、補填された金額として差し引く必要があります。還付通知書などで受け取った金額を確認してください。

施設サービスの医療費控除対象まとめ

介護施設での費用のうち医療費控除の対象になるものと対象外のものを整理します。

特別養護老人ホーム(特養・指定介護老人福祉施設)の場合、介護費・食費・居住費の自己負担額の2分の1が医療費控除の対象です。日常生活費(理美容代・教養娯楽費等)や特別なサービス(個室の特別料金等)は対象外です。たとえば月の自己負担合計が8万円であれば、その半額の4万円が医療費控除の対象額になります。

介護老人保健施設(老健)の場合、介護費・食費・居住費の自己負担額の全額が医療費控除の対象です。日常生活費・特別サービス費は対象外です。

介護医療院の場合も、介護費・食費・居住費の自己負担額の全額が医療費控除の対象です。日常生活費・特別サービス費は対象外です。

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、医療費控除の対象外です。

有料老人ホーム(介護付き有料老人ホームなど)は、施設が提供する介護保険サービスの自己負担分については一定の範囲で対象になるものがありますが、生活費的な支払いは対象外です。この点はサービス類型が複雑なため、担当の税務署か税理士に確認することをお勧めします。

施設種別対象となる費用控除できる割合
特別養護老人ホーム(特養)介護費・食費・居住費の自己負担1/2
介護老人保健施設(老健)介護費・食費・居住費の自己負担全額
介護医療院介護費・食費・居住費の自己負担全額
認知症グループホーム対象外

居宅サービスの医療費控除対象まとめ

自宅で受ける居宅サービスについても、種類によって医療費控除の対象になるものと対象外のものがあります。

医療系サービスとして分類されるものは、すべて医療費控除の対象になります。具体的には訪問看護(看護師・保健師等が実施するもの)、訪問リハビリテーション(理学療法士・作業療法士等が実施するもの)、居宅療養管理指導(医師・歯科医師・薬剤師等による管理指導)、通所リハビリテーション(デイケア)などです。

福祉系サービスのうち条件付きで対象になるものがあります。これは、同じ月の居宅サービス計画(ケアプラン)に上記の医療系サービスが位置付けられている場合に限り、訪問介護(生活援助中心型を除く身体介護)・訪問入浴介護・通所介護(デイサービス)・短期入所生活介護(ショートステイ)などの自己負担額が医療費控除の対象になります。

対象外のものも明確に定められています。生活援助中心型の訪問介護(掃除・洗濯・料理などの家事支援が中心のホームヘルプサービス)は対象外です。福祉用具のレンタル(車いす・歩行器・介護ベッドなど)や購入費も対象外です。認知症グループホームの費用も対象外です。

サービス種別医療費控除の対象条件
訪問看護対象
訪問リハビリテーション対象
居宅療養管理指導対象
通所リハビリテーション(デイケア)対象
訪問介護(身体介護中心)条件付き対象同月にケアプランで医療系サービスが組まれていること
訪問入浴介護条件付き対象同月にケアプランで医療系サービスが組まれていること
通所介護(デイサービス)条件付き対象同月にケアプランで医療系サービスが組まれていること
生活援助中心型の訪問介護対象外
福祉用具レンタル・購入対象外
認知症グループホーム対象外

おむつ代の医療費控除——1年目と2年目以降の手続きの違い

寝たきり状態の親のおむつ代は、医師が「おむつの使用が必要」と認めた場合に医療費控除の対象になります。ただし、手続きには注意すべき点があります。

1年目(その年に初めておむつ代を医療費控除として申告する場合)は、医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要です。この証明書はかかりつけ医(主治医)に作成を依頼します。書式は国税庁が定めた様式(おむつ使用証明書)がありますが、自治体の医療機関に様式があることも多いです。主治医に「確定申告のためにおむつ使用証明書をお願いしたい」と伝えれば案内してもらえます。

2年目以降は手続きが簡素化されます。2年目以降は要介護認定の主治医意見書をもとに市区町村が確認した書類(または主治医意見書の写し)を使うことができます。これは「おむつ代の医療費控除を2年目以降に受ける者」に限った措置で、有効期間が13か月以上の要介護認定を受けていることが条件です。

具体的には、市区町村の介護保険課に「おむつ使用の確認を求める書類(おむつ使用証明書に代わる書類)を発行してほしい」と伝えると案内してもらえます。毎回、医師に証明書を書いてもらうコストや手間が省けるため、2年目以降はこの簡易手続きを積極的に活用してください。

この2年目以降の簡易手続きについては、花王・ユニ・チャームなどのおむつメーカーのウェブサイトにも案内が掲載されているケースがありますが、介護税控除全般を扱うまとめ記事ではほとんど紹介されていない情報です。知っておくだけで手続きが楽になります。

介護サービスの領収書のどこを見るか

介護サービス事業者が発行する領収書には、医療費控除に使える金額が記載されていることが多く、ここを正しく読み取れるかどうかが申告の正確さを左右します。

多くの領収書には「医療費控除の対象となる金額」という欄が設けられています。これは事業者側が、提供したサービスのうち医療費控除の対象になる部分を計算して記載してくれているものです。確定申告の医療費控除の明細書には、領収書の総額ではなく、この「医療費控除の対象となる金額」を書き写します。総額をそのまま書いてしまうと、対象外のサービス分まで含めてしまい、後から訂正を求められることがあります。

施設サービスの領収書では、特養なら自己負担額の2分の1、老健・介護医療院なら全額が対象となるため、領収書に対象額が明示されていない場合は、対象となる費目(介護費・食費・居住費)を合算し、施設種別に応じた割合を掛けて自分で計算します。日常生活費・特別なサービスの費用は対象に含めません。判断に迷う場合は、領収書を持って施設の事務担当者や税務署に確認すると確実です。

節税効果の試算——扶養控除と障害者控除の重複活用

重複申告が可能

扶養控除の要件(生計を一にする・合計所得金額が令和6年分以前は48万円以下、令和7年分以後は58万円以下等)を満たす親がいて、かつその親が障害者控除対象者認定書を取得した場合、扶養控除と障害者控除を同じ親に対して両方申告することができます。

たとえば、70歳以上で別居の親(老人扶養親族)を扶養しており、その親が要介護4で障害者控除対象者認定書(特別障害者)を取得した場合、申告できる控除は次のようになります。

老人扶養親族(別居)の扶養控除: 48万円

特別障害者の障害者控除: 40万円

合計: 88万円が課税所得から差し引かれます。

さらに同居している場合は、同居老親等で58万円+同居特別障害者で75万円の合計133万円が差し引かれることになります。

所得税率別の節税額試算

扶養控除(老人扶養親族・別居・48万円)と障害者控除(特別障害者・40万円)を両方申告した場合の合計88万円の控除が所得税に与える効果を、税率ごとに試算します。なお、住民税の試算も後段で追加します。

所得税率5%(課税所得195万円以下)の方の場合:

88万円 × 5% = 4万4,000円 の所得税軽減

所得税率10%(課税所得330万円以下)の方の場合:

88万円 × 10% = 8万8,000円 の所得税軽減

所得税率20%(課税所得695万円以下)の方の場合:

88万円 × 20% = 17万6,000円 の所得税軽減

所得税率23%(課税所得900万円以下)の方の場合:

88万円 × 23% = 20万2,400円 の所得税軽減

所得税率33%(課税所得1,800万円以下)の方の場合:

88万円 × 33% = 29万400円 の所得税軽減

住民税も合わせて試算します。住民税の扶養控除額(老人扶養親族・別居)は38万円、住民税の特別障害者控除額は30万円(参考値)で、合計68万円の控除として計算します。

住民税率は一律10%のため、68万円 × 10% = 6万8,000円 の住民税軽減になります。

所得税率20%の方を例にとると、17万6,000円(所得税)+ 6万8,000円(住民税)= 24万4,000円 の年間節税となります。親が長年にわたり要介護状態にあり、過去に申告していなかった場合、更正の請求で5年分を取り戻せる可能性があります。

所得税率所得税軽減額住民税軽減額合計軽減額/年
5%4万4,000円6万8,000円11万2,000円
10%8万8,000円6万8,000円15万6,000円
20%17万6,000円6万8,000円24万4,000円
23%20万2,400円6万8,000円27万400円
33%29万400円6万8,000円35万8,400円

これはあくまで概算です。実際の節税額は各種控除の適用状況・扶養人数・他の所得状況によって変わります。「こんなに大きな節税効果がある制度だとは知らなかった」という声は非常に多く、特に申告していなかった過去年度の更正の請求は金額的なインパクトが大きくなります。

同居老親等+同居特別障害者のケース

同居の70歳以上の父親(特別養護老人ホームに入所前)が、同居かつ特別障害者として認定されていた場合の試算です。

同居老親等の扶養控除: 58万円

同居特別障害者の障害者控除: 75万円

合計: 133万円

所得税率20%の場合: 133万円 × 20% = 26万6,000円

住民税(同居老親等45万円+同居特別障害者53万円=98万円): 98万円 × 10% = 9万8,000円

合計: 36万4,000円/年

これが施設入所後(別居扱い)になると、同居老親等から老人扶養親族(別居)への変更となります。

老人扶養親族(別居)の扶養控除: 48万円

特別障害者の障害者控除: 40万円(同居でなくなるため75万円から減額)

合計: 88万円

所得税率20%の場合: 88万円 × 20% = 17万6,000円

住民税(38万円+30万円=68万円): 68万円 × 10% = 6万8,000円

合計: 24万4,000円/年

入所前後で年間約12万円の差が生じます。これが「施設入所で控除額が下がる落とし穴」の実態です。

社会保険料控除の活用

子が親の保険料を払った場合の申告

介護保険料や国民健康保険料を子が実際に支払った場合、子の確定申告または年末調整で「社会保険料控除」として申告できます。控除額は支払った保険料の全額です。

たとえば親の介護保険料が年間12万円で、子が口座振替で実際に支払っている場合、子の課税所得から12万円が差し引かれます。所得税率20%の方であれば12万円 × 20% = 2万4,000円の所得税軽減、住民税では1万2,000円の軽減で、合計3万6,000円の軽減になります。

ただし、1つ重要な制限があります。親の年金から天引きされる形で保険料が徴収されている(特別徴収)場合は、その保険料は親の社会保険料控除の対象であり、子が申告することはできません。子が社会保険料控除を申告できるのは、子が実際に支払った場合(口座振替・窓口納付)に限られます。

親の介護保険料の徴収方法は、親の介護保険被保険者証や通知書で確認できます。「普通徴収」(口座振替や窓口納付)の場合は子が払うことができ、「特別徴収」(年金からの天引き)の場合は親の控除になります。

申告のやり方(年末調整と確定申告の場合)

会社員の方が年末調整で社会保険料控除を申告する場合は、「給与所得者の保険料控除申告書」に支払った保険料の金額と種類を記入します。親の介護保険料・国民健康保険料を記入する際は「保険料の種別」欄に正式名称を記入します。

確定申告の場合は、申告書の「社会保険料控除」欄に記入します。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使うと、画面の案内に沿って入力できます。

支払った事実を証明するために、保険料の納付書や領収書・振込記録を保管しておくことをお勧めします。

費用軽減制度(No.17)と税の控除を両方使う順番

介護のお金を考えるとき、「費用そのものを抑える制度」と「払った税を取り戻す制度」は、どちらか一方ではなく両方を組み合わせて使うのが基本です。別記事(No.17)で扱う高額介護サービス費・特定入所者介護サービス費(補足給付)などは、介護保険の窓口で手続きをして、その月や年の自己負担を直接軽くする制度です。一方、本記事の扶養控除・障害者控除・医療費控除・社会保険料控除は、年末調整や確定申告を通じて税を戻す制度です。働きかける窓口も、効果が出るタイミングも異なります。

両方を使うときに気をつけたいのが、医療費控除の計算における重複の調整です。高額介護サービス費として払い戻しを受けた金額は、医療費控除を計算する際に「補填された金額」として自己負担額から差し引く必要があります。つまり、費用軽減制度で戻ってきたお金は、医療費控除の対象額からは除くという関係です。二重に得をすることはできませんが、それぞれの制度を正しく使えば、費用を抑えたうえで残った自己負担分について税を取り戻すという形で、無駄なく軽減を受けられます。

おすすめの順番としては、まず介護保険の窓口で使える費用軽減制度(No.17の領域)を確認・申請し、年間の自己負担額を確定させます。そのうえで、確定した自己負担額をもとに、税の控除(本記事の領域)を年末調整・確定申告で申告します。この順番で進めると、医療費控除の計算に必要な「補填された金額」も明確になり、申告がスムーズです。

確定申告と年末調整の使い分け

控除ごとの申告方法

控除の種類によって、年末調整で申告できるものと、確定申告が必要なものがあります。

年末調整で申告できる控除:

扶養控除(会社員の場合)、障害者控除(会社員の場合)、社会保険料控除(支払保険料を記入)

確定申告が必要な控除:

医療費控除(年末調整では申告不可)

扶養控除と障害者控除は、会社員であれば年末調整で申告できます。毎年秋に会社から配られる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と「保険料控除申告書」に記入することで申告します。

一方、医療費控除は必ず確定申告が必要です。会社員であっても、医療費控除を受けたい場合は翌年の2月中旬から3月中旬の確定申告期間に税務署(またはe-Tax)で申告します。

すでに年末調整で扶養控除・障害者控除・社会保険料控除を申告している場合は、医療費控除のためだけに確定申告することになります。この場合、年末調整の内容を前提に、医療費控除だけを追加した形で確定申告書を作成します。

確定申告の流れ(医療費控除の場合)

確定申告で医療費控除を申告する際の大まかな流れは以下の通りです。

まず医療費の明細書(医療費控除の明細書)を作成します。病院・薬局・介護サービス事業者等からもらった領収書をもとに、支払先・支払金額・補填金額を一覧で整理します。医療費の領収書自体は申告書に添付する必要はありませんが、5年間の保管が義務づけられています(税務署から確認を求められた際に提出します)。

次に国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(e-Taxのウェブサービス)にアクセスして申告書を作成します。源泉徴収票・マイナンバーを手元に用意しておくとスムーズです。

申告書の「医療費控除」欄に作成した明細書の合計額を入力します。

申告書を提出します。e-Taxであればオンラインで提出でき、郵送または税務署の窓口に持参することも可能です。

還付金がある場合は、申告後1〜2か月程度で指定の口座に振り込まれます。

申請書類の記入例——どの欄に何を書くか

控除の存在を知っていても、いざ書類を前にすると「どこに何を書けばよいのか」で手が止まる方が多いものです。ここでは会社員が年末調整と確定申告で使う代表的な書類について、介護のケースで実際に記入する箇所を具体的に説明します。書式名は年度によって細部が変わることがあるため、最新の様式は勤務先または国税庁ウェブサイトでご確認ください。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書への記入(年末調整)

毎年秋に勤務先から配られる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、扶養控除と障害者控除をまとめて申告する書類です。介護のケースでは次の欄に記入します。

親を扶養に入れる場合は、「控除対象扶養親族(16歳以上)」の欄に、親の氏名・続柄(父・母など)・生年月日・住所を記入します。別居の親であれば、住所欄には親が実際に住んでいる住所を書き、「非居住者である親族」ではないこと(国内居住であること)を確認します。年間の所得の見積額の欄には、親の合計所得金額(年金収入から公的年金等控除を引いた後の金額)を記入します。年金収入180万円・控除110万円であれば「70万円」と書きます。

70歳以上の親であれば「老人扶養親族」の区分にチェックを入れ、同居していれば「同居老親等」、別居(老人ホーム入所を含む)であれば「その他」にチェックします。このチェックの違いで控除額が48万円か58万円かに分かれるため、同居・別居の実態に合わせて正確に選びます。

障害者控除を申告する場合は、同じ書類の「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄を使います。親が障害者控除対象者認定書で「障害者」と認定されていれば「一般の障害者」に、「特別障害者」と認定されていれば「特別障害者」に、それぞれ該当する人数と対象者の氏名を記入します。同居している特別障害者であれば「同居特別障害者」の区分になります。書類の余白または指定欄に、認定の根拠(障害者控除対象者認定書を取得済みである旨)を記載し、認定書の写しを添えて勤務先に提出する流れが一般的です。

障害者控除対象者認定申請書への記入(市区町村窓口)

「障害者控除対象者認定申請書」は親が住む市区町村の様式を使います。自治体ごとに項目は多少異なりますが、共通して書く内容は、申請者(多くは本人または家族)の氏名・住所・連絡先、対象者(控除を受けたい高齢者本人)の氏名・生年月日・住所・介護保険被保険者番号、認定を受けたい年分(その年の12月31日時点で判定されます)です。申請理由の欄がある場合は「所得税・住民税の障害者控除を受けるため」と記入すれば足ります。窓口で書き方に迷ったら、介護保険被保険者証を見せて「障害者控除対象者認定書がほしい」と伝えれば、職員が該当欄を案内してくれます。

医療費控除の明細書への記入(確定申告)

確定申告で医療費控除を受ける場合は「医療費控除の明細書」を作成します。この明細書は、医療を受けた人ごと・支払先ごとに、「医療を受けた方の氏名」「病院・薬局・介護サービス事業者などの支払先の名称」「医療費の区分(診療・治療/医薬品購入/介護保険サービスなど)」「支払った医療費の額」「左のうち補填される金額」を一覧で記入する形式です。

介護サービスの自己負担額を記入する際は、支払先の名称に介護サービス事業者名を、区分には「介護保険サービス」を選びます。施設サービスで自己負担額の2分の1や全額が対象になる場合は、対象となる金額(領収書に「医療費控除の対象となる金額」として記載されていることが多い)を「支払った医療費の額」の欄に書きます。高額介護サービス費として払い戻しを受けた金額があれば「補填される金額」の欄に記入します。明細書の合計額が、そのまま確定申告書の医療費控除欄に転記されます。

なお、加入している健康保険組合などから送られてくる「医療費通知(医療費のお知らせ)」を添付すると、その通知に記載された分は明細書への個別記入を省略できます。ただし介護サービスの自己負担額は医療費通知に載らないことが多いため、その分は別途明細に書き出す必要があります。

申請の年間スケジュール——いつ動けばよいか

介護に関わる税の控除は、年末から確定申告期間にかけて手続きが集中します。動くべき時期を1年の流れで整理しておくと、書類の取り忘れを防げます。

秋(10〜11月ごろ)には、勤務先から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と「保険料控除申告書」が配られます。会社員の方は、この時点で親の扶養控除・障害者控除・(子が支払った)社会保険料控除を年末調整で申告できます。障害者控除を年末調整で使いたい場合は、この時期までに障害者控除対象者認定書を取得しておく必要があるため、認定書の申請は早めに動くと安心です。

12月から年明けにかけては、障害者控除対象者認定書の申請の本番です。認定はその年の12月31日時点の要介護度・身体状況で判定されるため、多くの自治体は12月後半から翌年にかけて申請を受け付けます。年末調整に間に合わなかった場合でも、翌年の確定申告で申告できるため、慌てず認定書を取得してください。

1月から2月にかけては、確定申告の準備期間です。前年分の医療費・介護費用の領収書を集め、医療費控除の明細書を作成します。源泉徴収票(勤務先から1月ごろ交付)、障害者控除対象者認定書、おむつ使用証明書(必要な場合)など、申告に使う書類を一通りそろえます。

2月中旬から3月中旬は確定申告期間です。医療費控除を受ける場合や、年末調整で申告し忘れた控除がある場合は、この期間に税務署またはe-Taxで申告します。還付申告(払い過ぎた税を返してもらう申告)は、確定申告期間に関わらず翌年1月1日から5年間いつでも提出できるため、3月15日を過ぎても焦る必要はありません。

過去分の取り戻し(更正の請求)は、思い立った時にいつでも着手できます。申告期限から5年以内であれば、年度を問わず手続きできるため、過去の申告漏れに気づいたら早めに動くほど取り戻せる年分が多くなります。

過去分の取り戻し——更正の請求の実務

何年前まで遡れるか

税務申告で控除の申告漏れがあった場合、「更正の請求」という手続きで払い過ぎた税を取り戻せます。更正の請求ができる期限は、申告期限(通常3月15日)から5年以内です。

2026年に申告する場合、遡れるのは2021年分以降です。

手続きの流れ

更正の請求書を作成します。国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成できます。「更正の請求書」を選択し、修正する年分・修正内容(申告漏れの控除)を入力します。

作成した更正の請求書を税務署に提出します。e-Taxでの電子提出、郵送、窓口への持参のいずれかが可能です。

税務署が審査を行い、認められた場合は過払いの税額が還付されます。

必要書類の確認

障害者控除を遡って申告する場合は、過去年度分の「障害者控除対象者認定書」が必要です。これを市区町村が発行してくれるかどうかを事前に確認することが第一歩です。

扶養控除を遡って申告する場合は、親が生計を一にしていたことを示す仕送りの記録・振込明細等があると確認しやすくなります。

医療費控除を遡って申告する場合は、過去の医療費の領収書が必要です。5年間の保管義務がありますが、紛失した場合は医療機関に再発行を依頼できることもあります。

申告後の流れと還付金の受け取り

申告書を提出したあとの流れも知っておくと、還付までの見通しが立ちます。

確定申告や更正の請求で払い過ぎた税が戻る場合、還付金は申告書に記載した本人名義の預貯金口座へ振り込まれます。振込までの期間は、e-Taxで提出した場合はおおむね3週間程度、書面で提出した場合は1か月から1か月半程度が目安とされています。更正の請求は税務署の審査に時間がかかることがあり、通常の還付申告より長くかかる場合があります。

還付の処理状況は、e-Taxで申告した場合はマイナンバーカードを使って「受付システム」やマイナポータルから確認できます。一定期間を過ぎても振り込まれない場合は、申告書を提出した税務署に問い合わせると状況を教えてもらえます。

なお、住民税については確定申告のデータが市区町村に共有されるため、医療費控除や障害者控除を確定申告で申告すれば、原則として住民税にも反映されます。住民税は前年の所得に基づいて翌年度に課税されるため、控除の効果は翌年度の住民税額が下がる形で現れます。所得税のように還付という形ではなく、納める住民税が減るという形で軽減される点を押さえておいてください。

申告書作成でつまずきやすいミスと回避策

制度の理解は正しくても、実際の書類作成の段階で起きやすいミスがあります。提出前に次の点を見直しておくと、申告のやり直しや還付の遅れを防げます。

医療費控除の明細書で、領収書の総額をそのまま書いてしまうミスがよく起きます。介護サービスの領収書は総額のうち一部だけが医療費控除の対象になることが多いため、必ず「医療費控除の対象となる金額」の欄を見て、その金額を転記してください。総額で書くと過大申告になり、後から税務署に訂正を求められます。

高額介護サービス費や高額療養費の払い戻しを差し引き忘れるミスも多く見られます。これらの還付を受けた金額は医療費の自己負担額から差し引いてから控除額を計算します。差し引きを忘れると、補填された分まで控除に含めてしまうことになります。支給決定通知書で受取額を確認し、明細書の「補填される金額」欄に正しく記入してください。

扶養控除では、同居・別居の区分の選択ミスが起きやすい箇所です。親が老人ホームに入所した年は、それまで「同居老親等(58万円)」で申告していた方が、入所後は「老人扶養親族・別居(48万円)」に変わります。入所のタイミングを見落として前年と同じ区分で申告すると、控除額が実態と合わなくなります。

障害者控除では、認定書を取得しただけで申告したつもりになってしまうミスに注意が必要です。認定書は申告の根拠になる書類であり、これを年末調整の書類または確定申告書に正しく反映して初めて控除が適用されます。認定書を取り寄せたら、必ず申告書の該当欄に区分(障害者か特別障害者か)と人数を記入してください。

社会保険料控除では、特別徴収(年金からの天引き)の保険料を子が申告してしまうミスが起きます。子が申告できるのは、子が口座振替や窓口で実際に支払った保険料に限られます。親の年金から天引きされている保険料は親の控除であり、子の申告には含められません。

これらのミスは、いずれも提出前にもう一度書類を見直すことで防げます。特にe-Taxで作成する場合は、入力後に表示される控除額の一覧を確認し、想定していた金額と合っているかをチェックする習慣をつけると安心です。

申請のチェックリスト

扶養控除の確認項目

障害者控除の確認項目

医療費控除の確認項目

社会保険料控除の確認項目

更正の請求(遡及申告)の確認項目

よくある誤解・つまずきパターン

誤解1: 要介護認定があれば自動的に障害者控除を使える

最も多い誤解です。介護保険の要介護認定と税法上の障害者控除は、まったく別の制度です。要介護認定を受けただけでは障害者控除は適用されず、別途「障害者控除対象者認定書」を市区町村に申請して取得する必要があります。

誤解2: 老人ホームに入所した親は扶養から外れる

老人ホームへの入所は「別居」扱いになりますが、扶養から外れるわけではありません。生計を一にしている実態(仕送り・費用負担等)があり、所得要件を満たしていれば、入所後も扶養控除を申告できます。ただし、「同居老親等(58万円)」から「老人扶養親族(別居・48万円)」に変更になる点は見落とさないようにしてください。

誤解3: 兄弟で分担しているから人数分の扶養控除を申告できる

1人の親に対して扶養控除を申告できるのは1人だけです。兄弟が3人いて親1人の介護を分担していても、扶養控除を申告できるのはそのうち1人だけです。重複申告は認められず、後から税務署に指摘されると修正申告が必要になります。

誤解4: 生活援助のホームヘルプも医療費控除になる

生活援助中心型の訪問介護(掃除・洗濯・料理などの日常生活支援)は医療費控除の対象外です。医療費控除の対象になるのは、医療系サービス(訪問看護・訪問リハビリ等)か、医療系サービスと同月に組み合わせて使っている身体介護中心型の訪問介護などです。

誤解5: 福祉用具のレンタル代も医療費控除になる

車いす・歩行器・介護用ベッドなどの福祉用具のレンタル費用は、医療費控除の対象外です。

誤解6: 年末調整で医療費控除を申告できる

医療費控除は年末調整では申告できません。会社員でも、医療費控除を受けたい場合は別途確定申告が必要です。年末調整で扶養控除や障害者控除をすでに申告していても、医療費控除のために確定申告をすることができます。

誤解7: 親の年金は全額が所得になる

公的年金には「公的年金等控除」があり、年金収入から一定額を差し引いた残りが所得になります。65歳以上の方は、年金収入が330万円未満の場合は公的年金等控除が一律110万円のため、年金収入が158万円以下(令和6年分以前の所得要件48万円の場合)または168万円以下(令和7年分以後の所得要件58万円の場合)であれば扶養親族の所得要件を満たす可能性があります。年金受給額そのものではなく、控除後の「所得」で判断することが重要です。

誤解8: 申告し忘れたら取り戻せない

更正の請求という制度があり、申告期限から5年以内であれば申告漏れの控除分を取り戻すことができます。「何年も前から介護していたのに障害者控除を知らなかった」という場合でも、5年分の更正の請求ができる可能性があります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 親の年金収入が160万円台あります。扶養に入れることはできますか。

65歳以上の方で年金収入160万円台の場合、公的年金等控除は330万円未満であれば一律110万円のため、所得は160万円台 − 110万円 = 約50〜60万円台になります。令和6年分以前の所得要件(48万円以下)を超えるため扶養控除を申告するのは難しい状況ですが、令和7年分以後の所得要件(58万円以下)においても、この所得水準は要件を超えます。ただし、申告する年の所得要件・控除額は国税庁のウェブサイトか税務署でご確認ください。

Q2. 障害者控除対象者認定書はいつ申請すればいいですか。

確定申告や年末調整で使うのは「その年の12月31日時点の状態」で判定された認定書です。翌年の確定申告期間(2〜3月)に合わせて、年明けに申請するのが一般的なタイミングです。ただし自治体によっては12月頃から申請受付を開始していたり、要件を満たす方に一斉送付していたりするケースもあります。親が住む市区町村の介護保険課に年末頃に確認することをお勧めします。

Q3. 障害者控除を申告するには認定書の原本が必要ですか。

確定申告で医療費控除と一緒に申告する場合、認定書は確定申告書に添付が必要な書類のひとつです。年末調整の場合は、会社に提示・コピーを提出する形が多いですが、会社の処理方法に従ってください。

Q4. 父と母の2人を扶養に入れることはできますか。

はい、要件を満たせば父と母の両方を扶養に入れることができます。ただし1人の親を複数人が扶養申告することはできません。父を扶養に入れている子と、母を扶養に入れている子が別々にいても問題ありません。

Q5. 親が要介護から要支援に状態が改善した場合、障害者控除はどうなりますか。

障害者控除対象者認定書の認定はその年の12月31日時点の要介護度等に基づきます。状態が改善して要介護の認定が変わると、翌年の認定書が発行されない可能性があります。毎年申請の状況を確認することをお勧めします。

Q6. 複数の施設(老健から特養へ移った)を使っている場合、どう計算しますか。

それぞれの施設で支払った自己負担額について、施設の種類に応じた割合(老健は全額、特養は1/2)を掛けた金額を合算します。施設ごとの領収書を整理しておくと計算がしやすくなります。

Q7. 兄弟3人で介護費用を分担して払った場合、医療費控除は誰が申告しますか。

医療費控除は「実際に支払った人」が申告します。分担して支払っている場合、各自が支払った分を各自で申告することが原則です。ただし、誰か1人がまとめて支払い立て替えた場合は、立て替えた人が全額を申告する形になります。医療費控除の節税効果は、医療費の多い方が高い所得税率の方に負担してもらうことで大きくなりますが、実際の支払い実態と合致することが前提です。

Q8. 医療費控除の明細書はどのように作りますか。

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で電子的に作成できます。または紙の「医療費控除の明細書」の様式(国税庁ウェブサイトからダウンロード可能)に手書きで記入することもできます。医療費の合計ではなく、支払先ごとの明細を記入します。

Q9. 介護保険の高額介護サービス費を受け取ったのですが、医療費控除の計算に影響しますか。

はい、影響します。高額介護サービス費の還付を受けた場合、その金額は医療費の自己負担額から差し引く必要があります。「支払った医療費合計 − 高額介護サービス費等の補填額 − 10万円」という計算になります。高額介護サービス費の支給決定通知書等で受取額を確認してください。

Q10. 申告を初めてする場合、どこに相談すればいいですか。

確定申告期間中(2〜3月)、全国の税務署では無料相談窓口を設けています。事前予約制の税務署も多いので、事前に電話等で予約してから訪問することをお勧めします。持参するものは、源泉徴収票・医療費の領収書と明細・障害者控除対象者認定書・マイナンバーカード(または通知カードと本人確認書類)などです。また、国税庁の確定申告書等作成コーナー(e-Tax)は、画面の案内に沿って入力すると申告書を作成できるため、比較的簡単に使えます。

Q11. 親が施設入居後に亡くなった年はどうなりますか。

その年の12月31日時点で存命であれば、その年の申告に扶養控除・障害者控除を使えます。年の途中でお亡くなりになった場合(12月31日に存命でない場合)は、その年の申告では控除を使えません。亡くなった年の前年以前の申告については、これまで説明した通りの扱いになります。

Q12. 更正の請求はe-Taxでできますか。

はい、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から更正の請求書を作成し、e-Taxで提出することができます。e-Taxを使うにはマイナンバーカードとカードリーダー(またはスマートフォンのICカード読取機能)が必要です。

Q13. 親が住民税は非課税ですが、それでも障害者控除対象者認定書を取る意味はありますか。

親自身が住民税非課税で、親の所得税・住民税がもともとかからない場合、親が障害者控除を申告しても親自身の節税にはつながらないことがあります。しかし、子が親を扶養に入れて障害者控除を子の申告に含められる場合は、子の側で控除の効果が出ます。また、障害者控除対象者認定書は税以外の場面(介護保険料の段階判定や各種福祉サービスの自己負担の判定など、自治体の制度によって扱いが異なります)で参照されることもあるため、取得しておく価値はあります。詳しくは親が住む市区町村の窓口でご確認ください。

Q14. 仕送りは現金手渡しでも扶養控除は認められますか。

生計を一にしている実態があれば、現金での援助でも扶養控除の対象になり得ます。ただし、税務署から実態の確認を求められた場合、現金手渡しは証拠が残りにくいという弱点があります。銀行振込や現金書留など、支払いの記録が残る方法にしておくと、後から説明を求められたときに困りません。すでに現金で渡している場合でも、家計簿や送金メモなどで援助の事実を記録しておくとよいでしょう。

Q15. 親が年の途中で要介護認定を受けました。その年から障害者控除は使えますか。

障害者控除対象者認定書は、その年の12月31日時点の状態で判定されます。年の途中で要介護認定を受けた場合でも、12月31日時点で認定の要件を満たしていれば、その年分から障害者控除を申告できる可能性があります。認定書の申請の際に、判定の基準日について窓口で確認してください。

Q16. 医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらを使えばよいですか。

医療費控除とセルフメディケーション税制(特定の市販薬の購入費が対象になる制度)は、どちらか一方しか使えません。介護に伴う医療費・介護サービス費が大きいケースでは、通常の医療費控除のほうが有利になることが多いです。両方の対象額を計算し、控除額が大きくなるほうを選んでください。判断に迷う場合は税務署の相談窓口に確認することをお勧めします。

Q17. 親が複数の子に少しずつ仕送りしてもらっています。扶養控除は使えますか。

扶養控除を申告できるのは1人の親につき1人の子だけです。複数の子が少額ずつ援助している場合でも、扶養控除を使えるのはそのうち1人です。誰が申告するかは、生活費の負担割合や各自の所得税率を踏まえて、兄弟間で相談して決めることになります。実際に生活費を負担している実態があることが前提です。

Q18. 親が年の途中で施設と在宅を行き来した場合、医療費控除や扶養の区分はどう考えますか。

医療費控除は、施設にいた期間に支払った施設サービスの自己負担額(施設種別に応じた対象割合)と、在宅の期間に支払った居宅サービスの自己負担額を、それぞれ計算して合算します。領収書を期間ごとに整理しておくと計算がしやすくなります。扶養控除の同居・別居の区分については、その年の12月31日時点の状況で判断するのが基本です。年末時点で老人ホームに入所していれば「別居(48万円)」、自宅で同居していれば「同居老親等(58万円)」になります。判断に迷う場合は税務署に確認してください。

Q19. 親が要介護認定の更新中で、年末時点でまだ結果が出ていません。障害者控除対象者認定書は取れますか。

認定書はその年の12月31日時点の要介護度・身体状況に基づいて判定されます。更新の結果が出ていない場合でも、それまでの要介護認定や主治医意見書の内容をもとに判定されることがあります。まずは親が住む市区町村の窓口に状況を伝えて、申請が可能かどうかを確認してください。結果が間に合わず年末調整に使えなかった場合でも、翌年の確定申告で申告できます。

出典一覧(URL・確認日)

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https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm

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https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1127.htm

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https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

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https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130_qa.htm

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https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1182.htm

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https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/020625/01.htm

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https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/01.htm

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https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/koreisha-kaigo/kaigohoken-igai-service/koukyou-zei/shougaisha-koujo.html

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