介護休業給付金とは何か——家族を介護しながら働き続けるための雇用保険給付

本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・申請手続きはいずれも変更されることがあるため、申請前に必ず公式サイトおよびハローワークで最新情報をご確認ください。

この記事が整理すること

家族が急に倒れた、親の状態が悪化してきた——そうしたとき、仕事をどうするかという問題は多くの方を悩ませます。「介護のために会社を辞めなければならないのだろうか」と感じている方のために、まず知っておいてほしいことがあります。

一定の要件を満たす雇用保険の被保険者は、家族の介護のために休業した期間について、雇用保険から給付金を受け取ることができます。それが「介護休業給付金」です。

この給付金は介護保険のサービスとは別物であり、申請窓口も仕組みも異なります。「介護保険で申請した」「ケアマネジャーに相談した」という流れとは独立した手続きが必要です。この記事では、介護休業給付金の仕組み・計算例・申請の流れを順を追って整理します。

本記事は情報提供を目的としており、個別の申請書類の作成代行や申請手続きの代行は行いません。個別の法律・税務・医療上の判断については、社会保険労務士・弁護士・医療専門職などにご相談ください。

制度の全体像

何の制度か

介護休業給付金は、雇用保険の「雇用継続給付」のひとつです。会社員やパート・アルバイト(雇用保険の被保険者)が対象で、家族を介護するために仕事を休んだ期間の収入減少を一定程度補填することを目的としています。

給付額は休業開始前の賃金をもとに計算され、おおむね休業前の月収の67%相当になります。

誰が申請するか

原則として、勤務先(事業主)がハローワークに申請します。労働者本人が希望する場合は本人が申請することもできますが、多くの場合は事業主経由が標準的な流れです。給付金はハローワークから直接労働者本人の口座に振り込まれます。

主な要件の概要

項目内容
対象者雇用保険の被保険者(正社員・パート・有期雇用を含む)
被保険者期間の要件休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12か月以上あること
対象となる状態2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態(「要介護状態」)の家族がいること
対象家族の範囲配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫(同居・別居問わず)
支給期間同じ家族について通算93日・最大3回まで
給付率休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
申請先事業主を管轄するハローワーク(原則として事業主経由)

【無料サンプル】月収28万円・親の介護で45日休業した会社員のケースを全部見せます

ここでは、典型的なケースについて計算過程を最後まで省略せずにお見せします。制度のしくみを理解するための一例です。実際の給付額は賃金の構成・支給日数・雇用形態などで変わります。

ケースの前提

ステップ1:賃金日額を出す

介護休業給付金の計算には「休業開始時賃金日額」を使います。これは、休業開始直前の6か月間の賃金合計を180で割った金額です。

ここでは月28万円が6か月続いたと仮定します。

28万円 × 6か月 ÷ 180 = 9,333円(1円未満切り捨て)

これが1日あたりの賃金日額です。

ステップ2:給付額の計算

給付額は「賃金日額 × 支給日数 × 67%」です。

支給日数は、支給単位期間(原則として1か月)の日数が基準になります。45日間休業した場合、30日の期間と15日の期間に分かれます。

まず最初の30日分を計算します。

9,333円 × 30日 × 67% = 187,593円(円未満切り捨て)

次に残りの15日分を計算します。

9,333円 × 15日 × 67% = 93,796円(円未満切り捨て)

合計:187,593円 + 93,796円 = 281,389円(45日分の概算)

ステップ3:上限額の確認

支給には上限があります。令和8年8月1日以降、1支給単位期間(30日)あたりの上限は366,222円です。このケースでは187,593円が上限を下回っているため、計算どおりの金額が支給されます。

また、賃金月額が上限(546,600円)を超える場合は546,600円で計算し、逆に下限(96,090円)を下回る場合は96,090円で計算します。このケースの28万円はどちらの枠内に収まります。

ステップ4:80%ルールの確認

休業中に会社から賃金が支払われる場合は注意が必要です。支給単位期間中に「休業開始時賃金日額 × 支給日数の80%以上」が会社から支払われていると、給付金はゼロになります。このケースでは休業中に会社から賃金は支払われないと仮定しているため、80%ルールは適用されません。

ステップ5:手取りのイメージ

45日分でおよそ281,000円前後が支給される見込みです(上記はあくまで試算です。実際の賃金構成・端数処理方法によって前後します)。

月収28万円のうち45日間(1.5か月分)の休業であれば、単純換算で42万円の収入が途絶えるところを、給付金でその67%程度の約28万円を補填できる計算です。

なお、介護休業中は育児休業とは異なり、社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険)の免除制度はありません。給付金から社会保険料の自己負担分を引いた額が実質の手取りになる点を念頭に置いておくとよいでしょう。

ここから先は、申請に直結する実務です。

申請の具体的な流れ

全体のステップ

介護休業給付金の申請は、休業が終わった後で行います。育児休業給付金とは異なり、介護休業は休業前ではなく休業終了後に申請するのが基本です。

ステップ1:介護休業の開始前に、勤務先へ「介護休業申出書」を提出します。制度上は休業開始予定日の2週間前までに申し出ることになっていますが、急を要する場合は事業主と個別に相談してください。

ステップ2:介護休業を実際に取得します。このとき、勤務先(事業主)は「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」と「介護休業給付金支給申請書」を準備します。

ステップ3:介護休業が終わった後、申請期限(介護休業終了日の翌日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日まで)に、事業主がハローワークに必要書類を提出します。

ステップ4:ハローワークが審査を行い、支給決定されると給付金が本人の指定口座に振り込まれます。支給決定後、おおむね1週間程度で振り込まれるのが目安です。

申請書類の内訳

申請時にハローワークへ提出する主な書類は以下のとおりです。

事業主が準備する書類:

労働者本人が準備・提出するもの:

申請書の主な記入項目と記入のポイント

「介護休業給付金支給申請書」は事業主が作成するのが一般的ですが、本人が内容を理解しておくと記入漏れや差し戻しを防げます。主な記入欄と、無料サンプル(月収28万円・45日休業)のケースに当てはめた記入イメージは次のとおりです。実際の様式・項目名はハローワークで配布される最新版に従ってください。

記入で迷いやすいのは「支給単位期間」の区切り方です。休業開始日を起点に30日ごとに区切り、最後に端数の期間が残る形になります。45日休業なら「30日+15日」の2期です。ここを暦の月(月初〜月末)で区切ると誤りになるため注意してください。

分割取得した場合

介護休業は同じ家族について最大3回に分割して取得できます。3回のうち最初の休業が終わった時点で申請し、2回目・3回目もそれぞれ終了後に申請します。申請は1つの休業ごとに個別に行う必要があります。

支給額の計算例(複数ケース)

ケース1:月収40万円・60日間休業のケース

月収40万円(賃金日額:40万円 × 6 ÷ 180 = 13,333円)で60日間休業した場合を計算します。

最初の30日分:13,333円 × 30日 × 67% = 267,993円(円未満切り捨て)

残りの30日分:13,333円 × 30日 × 67% = 267,993円

合計:535,986円

ただし、1支給単位期間(30日)の上限が366,222円(令和8年8月1日以降)のため、各期間の給付額は上限以内に収まります。このケースでは267,993円が上限を下回っているため上限には該当しません。

ケース2:月収70万円・30日間休業のケース(上限に該当する例)

賃金月額が546,600円を超える場合、計算の元になる賃金月額は546,600円が上限となります。月収70万円の場合は、賃金日額は546,600円 × 6 ÷ 180 = 18,220円で計算します。

18,220円 × 30日 × 67% = 366,222円

これはちょうど上限額と一致します。高収入の方は、実際の月収に対して67%より低い補填率になる点に注意が必要です。

ケース3:パートタイムで月収12万円・30日間休業のケース

月収12万円(賃金日額:12万円 × 6 ÷ 180 = 4,000円)の場合を計算します。

4,000円 × 30日 × 67% = 80,400円

賃金月額の下限(96,090円)については、賃金月額が12万円の場合は下限を超えているため、このケースでは下限は関係ありません。

なお、月収が非常に低く賃金日額が下限に相当する額を下回るケースでは、下限の96,090円をもとに計算されます(96,090円 × 6 ÷ 180 = 3,203円が賃金日額の下限)。

介護保険との違い——よく混同される2つの制度

介護休業給付金と介護保険サービスは、名前が似ていますが全く別の制度です。

比較項目介護休業給付金(雇用保険)介護保険サービス
管轄厚生労働省・ハローワーク市区町村・ケアマネジャー
目的介護休業取得者の収入補填要介護者が介護サービスを利用するための費用補助
対象者介護のために休業した労働者本人要介護認定を受けた本人
要件雇用保険の被保険者期間等65歳以上(特定疾病があれば40歳以上)で要介護認定
申請窓口ハローワーク(事業主経由)市区町村(ケアマネジャーが支援)
要介護認定の必要性不要(「要介護状態」の要件を満たせばよい)認定が前提

介護保険の認定が下りていなくても、家族が「2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」にあれば、介護休業給付金の対象になります。介護保険の申請を待っている間に休業が必要になった場合でも、要件を満たせば介護休業給付金を申請できます。

よくある誤解・つまずきポイント

誤解1:介護保険のサービスを使っているから給付金ももらえると思った

介護休業給付金は、介護保険とは別のルートで申請します。ケアマネジャーに相談しても紹介されないことがほとんどです。勤務先の人事・総務担当者やハローワークに直接確認してください。

誤解2:93日間を一度に全部使わなければいけないと思った

93日という日数は通算の上限であり、一度に取得する必要はありません。3回まで分けて取得できるため、介護の状況に応じて必要な時期に少しずつ使うことができます。

誤解3:介護休業を終えてからすぐ振り込まれると思っていた

申請期限は休業終了後2か月以内ですが、申請から審査・振込まではさらに時間がかかります。急な収入減少に備えて、申請のタイミングを事前に把握しておくことが重要です。

誤解4:パートやアルバイトは対象外だと思った

雇用保険の被保険者であれば、パートタイム・アルバイト・有期雇用の方も対象です。有期雇用の方は、介護休業開始日から起算して93日経過後6か月以内に契約が満了し更新されないことが明らかでなければ対象になります。

誤解5:育児休業と同じで社会保険料が免除されると思った

介護休業中は社会保険料の免除制度がありません。給付金が支給される期間中も、健康保険・厚生年金・介護保険の保険料の自己負担分は発生します。育児休業との大きな違いです。

申請チェックリスト

介護休業給付金の申請前後に確認しておくべき事項をまとめます。

介護休業を取得する前に確認すること:

休業中に準備しておくこと:

休業終了後に対応すること:

よくある質問(FAQ)

Q1. 要介護認定を受けていない家族でも対象になりますか。

はい、介護保険の要介護認定は必須要件ではありません。負傷・疾病・身体上または精神上の障害により「2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」にあれば対象になります。要介護認定の申請中であっても、状態が要件を満たしていれば介護休業給付金の対象になります。

Q2. 同じ親を介護するために2度目・3度目の休業をとる場合も給付されますか。

同じ家族について通算93日・最大3回まで支給されます。ただし、3回を超えると給付対象になりません。また、一度の休業が終わった後に再び申請する場合は、2回目・3回目の休業終了後にそれぞれ申請が必要です。

Q3. 休業中に少し出勤した日がある場合はどうなりますか。

支給単位期間中に就業した日数が10日以下(もしくは就業時間が80時間以下)であれば、給付の対象になります。これを超えると、その期間は給付対象外になります。

Q4. 会社から休業中に有給休暇として一部賃金が出る場合はどうなりますか。

支給単位期間中に「休業開始時賃金日額 × 支給日数の80%以上」が会社から支払われている場合、給付金はゼロになります。80%未満であれば支払われた賃金に応じて給付額が減額される場合があります。有給休暇を消化した週については、ハローワークに詳細を確認することをおすすめします。

Q5. フリーランス・自営業者は対象になりますか。

雇用保険の被保険者でない自営業者やフリーランスの方は対象外です。雇用保険は雇用されている方(会社員・パート・有期雇用等)を対象とした制度です。

Q6. 介護のために退職してしまったら受け取れませんか。

介護休業給付金は雇用関係が続いている状態で休業することが前提です。退職してしまうと対象外になります。退職前に介護休業制度を活用することを検討してください。

Q7. 申請は本人がハローワークに直接行けますか。

原則として事業主経由の申請ですが、本人が希望する場合は本人がハローワークに申請することも可能です。事業主との関係や職場の状況によっては、本人申請の手続きについてハローワークに相談してみてください。

Q8. 93日の介護休業を使い切った後はどうすればよいですか。

93日の上限を使い切った後も、介護のための短時間勤務制度・フレックスタイム制・テレワーク(令和7年10月からの改正で事業主の努力義務)などの両立支援制度を活用できます。また、介護休暇(年間5日・半日単位で取得可能。有給ではない場合が多い)も別途活用できます。制度の詳細は勤務先や都道府県労働局・ハローワークに確認してください。

Q9. 2025年4月の法改正で何が変わりましたか。

令和6年(2024年)に改正された育児・介護休業法が令和7年(2025年)4月と10月に施行されました。主な変更は、事業主が介護に直面した労働者に個別に制度を周知し、取得の意向を確認する義務の新設、従業員が40歳になる時点での情報提供の義務化、テレワーク選択肢の提供(努力義務)などです。介護休業給付金の給付率(67%)・支給日数(93日・3回)に変更はありませんが、職場での制度の利用環境は整備が進んでいます。

Q10. 支給決定後、いつ振り込まれますか。

ハローワークが支給決定を行った後、おおむね1週間程度で本人の指定口座に振り込まれます。正確なタイミングはハローワークに確認してください。

出典一覧(URL・確認日)

本記事は以下の公式情報を確認した上で執筆しています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158665.html

確認日:2026年6月27日

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/

確認日:2026年6月27日

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/leave/

確認日:2026年6月27日

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/

確認日:2026年6月27日

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/list/shinagawa/jigyounushi/koyoukeizoku_00005.html

確認日:2026年6月27日

https://shinsei.e-gov.go.jp/recept/procedure/lists/procedureInformation?gtaTetCd=4950008680051

確認日:2026年6月27日

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、個別の申請書類の作成代行や申請手続きの代行は行いません。本記事の内容は一般的な情報であり、個別の法律・税務・医療上の助言ではありません。制度の詳細・最新の要件・申請手続きについては、ハローワーク(公共職業安定所)や都道府県労働局、または社会保険労務士等の専門家に直接ご確認ください。支給額はあくまでも制度の仕組みを理解するための試算であり、実際の支給額とは異なる場合があります。支給限度額(上限・下限)は毎年8月1日前後に変更されます。令和8年8月1日以降の金額については、2026年6月27日時点では未公表のため、最新情報は厚生労働省またはハローワークの公式サイトでご確認ください。