介護のお金の負担を「下げる順序」で整理する(高額介護サービス費・住宅改修・福祉用具・負担限度額認定)

本記事は2026年6月26日時点の公開情報に基づきます。介護保険の金額・要件・期限はいずれも改定されることがあるため、申請前に必ず公式サイトまたはお住まいの市区町村でご確認ください。

この記事が整理すること

ご家族が介護に直面したとき、多くの方が最初に感じるのは「制度がありすぎて、何から手をつければよいかわからない」という戸惑いだと思います。介護保険には負担を軽くする仕組みがいくつもありますが、それぞれ別々のページに分かれて説明されているため、自分の家計にとってどれが効くのか、どの順番で動けばよいのかが見えにくくなっています。

この記事は、介護のお金の負担を軽くする代表的な4つの制度を「自分の負担をどう下げるか」という順序で並べて整理します。具体的には、高額介護サービス費、介護保険の住宅改修費、福祉用具(貸与・購入)、負担限度額認定の4つです。それぞれを「いつ・誰が・いくら・どこへ申請するか」という実務の目線でまとめ、ご本人やご家族が実際に動けるようにすることを目的としています。

本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行や書類作成の代行は行いません。また、特定の医療判断や受診の勧奨を行うものでもありません。

制度の全体像

介護のお金を軽くする制度は、大きく4つの方向に分かれます。負担を下げる効果が大きく、かつ動きやすい順に並べると次のようになります。

1つ目は、毎月の介護サービス利用料そのものに上限をつける「高額介護サービス費」です。所得に応じて1か月の自己負担額に天井が設けられ、それを超えた分が後から戻ってきます。すでに介護サービスを使っているご家庭にとって、もっとも幅広く効く制度です。

2つ目は、施設に入っている、またはショートステイを使っている場合の「食費」と「居住費」を軽くする「負担限度額認定」です。所得と資産が一定以下の方が対象で、対象になると毎日の食費・居住費の負担が大きく下がります。施設利用がある場合は、これを使えるかどうかで月の負担が数万円単位で変わることがあります。

3つ目は、家での暮らしを安全にするための「住宅改修費」です。手すりの取付けや段差の解消などについて、生涯通算で原則20万円までの工事費に介護保険が使えます。1割負担の方なら最大18万円が戻る計算です。

4つ目は、車いすや介護ベッドなどの「福祉用具」です。レンタル(福祉用具貸与)と購入(特定福祉用具販売)の2種類があり、購入については年間10万円までが対象になります。

以下に4制度の概要を整理します。金額は2026年6月26日時点の代表的な値で、所得区分・施設区分・改定によって変わります。

制度何の負担を軽くするか上限・特徴申請先
高額介護サービス費毎月の介護サービス利用料所得に応じた月額上限を超えた分が払い戻し市区町村
負担限度額認定施設・ショートステイの食費・居住費所得・資産が一定以下なら日額上限まで軽減市区町村
住宅改修費自宅の手すり・段差解消等の工事費生涯通算原則20万円(1割負担なら最大18万円が戻る)市区町村
福祉用具車いす・介護ベッド等のレンタル・購入購入は同一年度10万円まで(1割なら最大9万円が戻る)市区町村

これら4つに共通する大切な前提があります。住宅改修費・福祉用具・負担限度額認定は、要支援・要介護の認定を受けていることが利用の出発点になります。そして、いずれの制度も「市区町村への申請」が必要で、自動的に適用されるわけではありません。ケアマネジャー(介護支援専門員)や福祉用具専門相談員、施設の職員といった専門職が手続きを支えてくれる場面が多い点も、住宅補助などとは異なる介護保険の特徴です。

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介護のお金で多くのご家族が最初に直面するのが、毎月の介護サービス利用料です。ここでは、もっとも幅広く効く「高額介護サービス費」を取り上げ、典型的な1ケースを途中の計算過程まで省略せずに最後まで解いてみます。あくまで制度のしくみを理解するための一例であり、実際の金額は所得区分や利用したサービスの内容によって変わる点はあらかじめご了承ください。

想定するのは、次のようなケースです。

まず、この世帯がどの上限区分に当てはまるかを確認します。高額介護サービス費は、所得に応じて1か月あたりの自己負担の上限額が決まっています。世帯全員が市町村民税非課税の場合、世帯としての上限額は月24,600円です。

次に、実際の負担と上限額を比べます。

この月の自己負担額は6万円でした。世帯の上限額は24,600円です。

60,000円 − 24,600円 = 35,400円

つまり、上限額を超えた35,400円が、高額介護サービス費として後から戻ってくる計算になります。最終的にこの世帯がこの月に負担する介護サービス利用料は、上限額の24,600円までで頭打ちになるということです。

ここで注意したいのが、戻ってくるのは「介護サービスの利用料(1割などの自己負担分)」が対象で、施設の食費や居住費、日用品費などは対象外という点です。在宅であれば、デイサービスや訪問介護などの介護サービス利用料が計算の対象になります。

もう1つ大切なのは、申請のタイミングです。高額介護サービス費は、初めて上限を超えた月の分について市区町村へ申請をすると、その後は上限を超えた月ごとに、申請した口座へ自動的に振り込まれる運用をとっている自治体が多くなっています。つまり一度申請すれば、毎月申請し直す手間は基本的にかかりません。ただし、運用は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村で確認すると確実です。

戻ってくるお金の感覚もつかんでおきましょう。仮にこの世帯で、毎月のように自己負担が6万円前後かかり、毎月35,400円ほどが戻るとすると、1年では35,400円 × 12か月 = 424,800円ほどの負担軽減になります。年単位で見ると、家計への影響はかなり大きいことがわかります。

ここで強調しておきたいのは、高額介護サービス費は「申請しないと戻ってこない」制度だということです。上限を超えていても、自動で減額されるのではなく、いったん自己負担分を支払ったうえで、超えた分を後から払い戻してもらう形(償還払い)が基本です。だからこそ、介護サービスを使い始めたら、まず自分の世帯の上限額がいくらかを把握し、超えた月があれば早めに申請することが、負担を下げる最初の一歩になります。

このように、高額介護サービス費は1ケースであれば最後まで具体的に計算できます。ただし実際には、所得区分によって上限額が大きく変わり、施設に入っている場合は食費・居住費を軽くする別の制度(負担限度額認定)も関わってきます。住宅改修費や福祉用具の使い方、申請の実務、チェックリスト、よくある質問はこの続きで順番に解説します。

ここから先は、申請に直結する実務です。

負担を下げる順序:4つの制度をどう組み合わせるか

介護のお金を軽くするとき、やみくもにすべての制度を調べるよりも、効果の大きいものから順に押さえるほうが効率的です。本記事では、次の順序で動くことをおすすめします。

最初に確認すべきは「高額介護サービス費」です。すでに介護サービスを使っているご家庭であれば、毎月の利用料に上限がつくため、もっとも幅広く効きます。

施設に入っている、またはショートステイを使っているなら、次に「負担限度額認定」を確認します。食費と居住費が対象になるため、施設利用がある場合は負担軽減の幅が大きくなります。

そのうえで、家での暮らしを安全にする必要があれば「住宅改修費」と「福祉用具」を検討します。これらは生活の質を保ちながら、介護の負担そのものを軽くするための支援です。

以下、この順番で1つずつ実務を見ていきます。

制度1:高額介護サービス費(毎月の利用料の上限)

上限額は所得で決まる

高額介護サービス費は、1か月に支払った介護サービスの自己負担額(1割・2割・3割などの負担分)が一定の上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。上限額は所得に応じて区分されており、2021年8月の利用分から現在の区分になっています。

代表的な上限額は次の通りです。

所得区分(要件)上限額(月額)世帯/個人
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上140,100円世帯
課税所得380万円(年収約770万円)〜課税所得690万円(年収約1,160万円)未満93,000円世帯
市町村民税課税〜課税所得380万円(年収約770万円)未満(一般)44,400円世帯
世帯全員が市町村民税非課税24,600円世帯
市町村民税非課税かつ年金収入等が80万円以下の方など24,600円(世帯)/15,000円(個人)世帯・個人
生活保護受給者・老齢福祉年金受給者など15,000円個人

ここで押さえておきたいのは、上位の140,100円・93,000円は2021年8月に新設された区分で、年収が高い世帯ほど上限額も高く設定されているという点です。一方、市町村民税非課税の世帯は24,600円、さらに年金収入等が少ない方は個人の上限が15,000円まで下がります。「世帯」の上限と「個人」の上限が分かれている区分がある点にも注意してください。

対象になるもの・ならないもの

高額介護サービス費の対象になるのは、介護サービスの利用にかかった自己負担分です。具体的には、デイサービス、訪問介護、施設サービスなどの介護保険サービスの利用料(1割等)が該当します。

一方、対象にならないものもあります。施設に入っている場合の食費・居住費、日用品費、介護保険の対象外サービス(全額自己負担の上乗せサービス等)、そして福祉用具の購入費や住宅改修費は、高額介護サービス費の計算には含まれません。施設の食費・居住費については、後述する負担限度額認定が別に用意されています。

申請の流れと期限

申請は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口に対して行います。多くの自治体では、初めて上限を超えた月について申請をすれば、その後は上限を超えた月ごとに指定口座へ自動的に振り込まれる運用になっています。つまり、申請は基本的に最初の1回で済むことが多いです。

申請には期限(時効)があり、サービスを利用した月の翌月1日から2年です。2年を過ぎると、たとえ上限を超えていても払い戻しを受けられなくなるため、心当たりがある場合は早めに確認してください。

支払いの仕組みは、原則として償還払いです。いったん自己負担分を支払い、後から上限超過分が戻ってきます。施設サービスなどでは受領委任払い(あらかじめ上限額のみを施設に支払い、超過分は市区町村が施設へ直接支払う方式)を利用できる場合もあり、これを使うと立替の負担が軽くなります。受領委任払いの可否は自治体や施設によって異なるため、利用できるかどうかは個別に確認が必要です。

高額医療・高額介護合算療養費との違い

似た名前の制度に「高額医療・高額介護合算療養費」があります。これは、1年間(毎年8月1日から翌年7月31日)に支払った医療保険と介護保険の自己負担を合算し、世帯の限度額を超えた分を払い戻す別制度です。高額介護サービス費が「介護のみ・月単位」であるのに対し、合算療養費は「医療+介護・年単位」である点が大きく異なります。医療費と介護費の両方が重い世帯は、この合算制度も対象になる可能性があるため、市区町村に確認するとよいでしょう。

制度2:負担限度額認定(施設の食費・居住費の上限)

施設利用の食費・居住費を軽くする補足給付

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、地域密着型介護老人福祉施設に入所したとき、またはショートステイ(短期入所)を利用したときには、介護サービス利用料とは別に「食費」と「居住費(滞在費)」がかかります。負担限度額認定(正式には特定入所者介護サービス費、補足給付とも呼ばれます)は、所得と資産の少ない方について、この食費・居住費の自己負担に上限を設ける制度です。

対象になるかどうかは、利用者負担段階という区分で判定されます。

段階主な所得・住民税の要件
第1段階生活保護受給者、または世帯全員が市町村民税非課税で老齢福祉年金を受給している方
第2段階世帯全員が市町村民税非課税で、本人の年金収入等が年80.9万円以下
第3段階(1)世帯全員が市町村民税非課税で、本人の年金収入等が年80.9万円超〜120万円以下
第3段階(2)世帯全員が市町村民税非課税で、本人の年金収入等が年120万円超
第4段階世帯に市町村民税課税者がいる(原則として対象外)

段階の判定には、所得の要件に加えて、預貯金等の資産要件があります。資産要件は2021年8月から段階別に細かく設定されています。

段階預貯金等(単身)預貯金等(夫婦)
第1段階1,000万円以下2,000万円以下
第2段階650万円以下1,650万円以下
第3段階(1)550万円以下1,550万円以下
第3段階(2)500万円以下1,500万円以下

第4段階(世帯に市町村民税課税者がいる場合など)は、原則としてこの制度の対象外です。逆に言えば、世帯全員が市町村民税非課税で、預貯金等が上記の基準以下であれば、施設の食費・居住費の負担が大きく軽くなる可能性があります。

食費・居住費の負担限度額

対象になった場合、食費と居住費は段階ごとに定められた負担限度額(日額)までで済みます。たとえば施設に入所している場合の食費は、第1段階で1日300円、第2段階で390円、第3段階(1)で650円、第3段階(2)で1,360円が現在の限度額です(2026年7月までの値)。ショートステイの食費は施設入所とは別に定められており、第2段階600円、第3段階(1)1,000円、第3段階(2)1,300円となっています。

居住費は、居室の種類(ユニット型個室、ユニット型個室的多床室、従来型個室、多床室)と施設の種類によって限度額が異なります。同じ「従来型個室」でも特別養護老人ホームと介護老人保健施設・介護医療院では金額が違うなど、区分が細かいため、具体的な日額は施設または市区町村で確認するのが確実です。

なお、2026年8月1日から、食費の基準費用額が引き上げられ、第3段階の食費や第3段階(2)の居住費が一部引き上げられる予定です。あわせて第2段階の所得基準(年金収入等)が80.9万円から82.65万円に変わる見込みです。第1段階・第2段階の食費は据え置きの予定です。本記事の数値は2026年7月までの現行値であり、2026年8月以降に施設を利用する場合は、改定後の値を市区町村でご確認ください。

申請の流れと更新

申請は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口に「介護保険負担限度額認定申請書」を提出して行います。あわせて、本人と配偶者の預貯金等が確認できる書類(通帳の写しなど)が必要です。認定されると認定証が交付されるので、それを施設に提示すると食費・居住費が限度額まで軽減されます。

この認定には有効期間があり、原則として毎年8月1日から翌年7月31日までです。継続して利用する場合は毎年更新の手続きが必要になります。更新を忘れると軽減が止まってしまうため、施設の職員からの案内とあわせて、更新時期を把握しておくと安心です。

制度3:住宅改修費(家を安全にする工事)

生涯通算20万円・1割なら最大18万円が戻る

介護保険の住宅改修費は、要支援・要介護の認定を受けた方が自宅で暮らしやすくなるよう、一定の工事をした場合に費用の一部が支給される制度です。支給限度基準額は原則20万円で、これは年度ごとではなく生涯通算の上限です。

この20万円に対して、所得に応じて9割・8割・7割が支給されます。つまり自己負担は1割・2割・3割です。1割負担の方であれば、20万円の工事で最大18万円が戻る計算になります。

対象になる工事は6種類

介護保険の対象になる住宅改修は、次の6種類に定められています。

種類内容
(1) 手すりの取付け廊下・トイレ・浴室・玄関・階段などへの手すりの設置
(2) 段差の解消居室・廊下・浴室・玄関等の段差やスロープ設置による解消
(3) 滑りの防止・移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更滑りにくい床材への変更など
(4) 引き戸等への扉の取替え開き戸を引き戸・折戸・アコーディオンカーテン等へ変更
(5) 洋式便器等への便器の取替え和式便器を洋式便器に取り替える等
(6) その他前各号に付帯して必要となる住宅改修上記工事に伴って必要となる下地補強・給排水工事など

これら6種類に該当しない工事(たとえば老朽化に伴う一般的なリフォームや、介護と直接関係のない改修)は、介護保険の対象にはなりません。どの工事が対象になるかは、ケアマネジャーや施工事業者と相談しながら確認するとよいでしょう。

申請は「工事の前」が必須

住宅改修費でもっとも大切な注意点は、工事に着手する前に市区町村へ事前申請をする必要があるという点です。事前申請では、支給申請書、住宅改修が必要な理由書、工事費の見積書、改修前の状態がわかる写真や図面などを提出します。これを行わずに工事を済ませてしまうと、原則として支給を受けられません(やむを得ない事情がある場合の例外規定はありますが、限定的です)。

申請の流れを整理すると、おおむね次のようになります。まずケアマネジャー等に相談し、工事の内容を決めます。次に、着工前に必要書類を市区町村へ提出して確認を受けます。確認後に工事を行い、完成後に領収書などを添えて正式な支給申請をする、という順序です。

支払いの仕組みは、原則として償還払い(いったん全額を立て替え、後から支給分が戻る方式)です。自治体によっては受領委任払い(自己負担分だけを支払い、残りは市区町村が事業者へ直接支払う方式)に対応している場合もありますが、対応状況は自治体ごとに異なります。

20万円を超えても再び使える例外

原則は生涯通算20万円ですが、2つの例外があります。1つ目は、最初に住宅改修を行ったときの要介護度を起点として、「介護の必要の程度」が3段階以上重くなった場合です。この場合、再び20万円まで利用できるようになります(同一の方につき生涯1回のみ)。2つ目は、転居した場合です。引っ越し先の住宅について、改めて20万円まで利用できます。

「介護の必要の程度」は要支援・要介護をもとにした段階で判定され、要支援2と要介護1は同じ段階として扱われる点に注意が必要です。3段階リセットに該当するかどうかは、市区町村やケアマネジャーに確認するとよいでしょう。

制度4:福祉用具(レンタルと購入)

レンタル(福祉用具貸与)と購入(特定福祉用具販売)

福祉用具の支援には、レンタルと購入の2種類があります。繰り返し使うもの・体の状態に合わせて交換するものはレンタルで、肌に直接触れるなど衛生面でレンタルになじまないものは購入で対応する、という考え方です。

レンタル(福祉用具貸与)の対象になるのは、次の13種目です。

区分対象品目
移動を支えるもの車いす/車いす付属品/歩行器/歩行補助つえ/移動用リフト(つり具の部分を除く)/スロープ
寝起き・体位を支えるもの特殊寝台(介護ベッド)/特殊寝台付属品/床ずれ防止用具/体位変換器
見守り・その他手すり/認知症老人徘徊感知機器/自動排泄処理装置

レンタルについては、軽度の方(要支援1・2、要介護1)は原則として対象にならない品目があります。具体的には、車いす、特殊寝台(介護ベッド)、床ずれ防止用具、体位変換器、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフトの6種目です(自動排泄処理装置は要介護4・5でないと原則対象外)。ただし、体の状態によっては、医師の医学的な所見やケアマネジャーの判断、市区町村の確認を経て、例外的に利用できる場合があります。

購入(特定福祉用具販売)の対象は、入浴や排泄に関わる品目などです。

区分対象品目
排泄に関わるもの腰掛便座/自動排泄処理装置の交換可能部品/排泄予測支援機器(2022年4月から対象)
入浴に関わるもの入浴補助用具(入浴用いす・浴槽用手すり・浴槽内いす等)/簡易浴槽
その他移動用リフトのつり具の部分
2024年4月から選択制(貸与か購入を選べる)固定用スロープ/歩行器/歩行補助つえ(単点杖・多点杖)

このうち固定用スロープ、歩行器、歩行補助つえ(単点杖・多点杖)については、2024年4月から、利用者がレンタルにするか購入にするかを選べる選択制が導入されています。どちらが適しているかは、使う期間や体の状態によって変わるため、福祉用具専門相談員やケアマネジャーと相談して決めるとよいでしょう。

購入は年間10万円まで

購入(特定福祉用具販売)については、同一年度(毎年4月1日から翌年3月31日)で10万円までが支給の対象になります。この10万円に対して所得に応じた割合(9割・8割・7割)が支給されるため、1割負担の方であれば最大9万円が戻る計算です。年度をまたぐと枠がリセットされる点も覚えておくとよいでしょう。

指定事業者から買うことが条件

購入の場合に特に注意したいのが、都道府県等の指定を受けた事業者から購入することが支給の条件になっている点です。一般の店舗やインターネット通販で同じ製品を買っても、指定事業者でなければ介護保険の対象になりません。レンタル・購入のいずれも、要介護(要支援)認定を受けていることが前提で、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が用具の選定や手続きを支援してくれます。

購入後は、市区町村へ福祉用具購入費の支給申請をします。支払いの仕組みは、原則として償還払いですが、自治体によっては受領委任払いに対応している場合もあります。

申請の全体タイムライン

4つの制度を踏まえ、介護のお金を軽くするために動く順番を時系列で整理します。

最初に行うのは、要支援・要介護の認定申請です。これは住宅改修・福祉用具・負担限度額認定など、多くの制度の出発点になります。認定が出たら、担当のケアマネジャーが決まります。

介護サービスを使い始めたら、毎月の利用料が高額介護サービス費の上限を超えていないかを確認します。超えた月があれば、市区町村へ申請しておけば、以後は自動的に払い戻される運用が一般的です。

施設への入所やショートステイを利用する場合は、負担限度額認定の対象になるかを早めに確認します。対象であれば、入所前または利用開始時に申請しておくと、食費・居住費の軽減が早く受けられます。認定は毎年更新が必要な点も忘れないようにします。

自宅で安全に暮らすための工事が必要なら、住宅改修費を検討します。ここでは工事の前に必ず市区町村へ事前申請をすることが重要です。あわせて、車いすや介護ベッドなどが必要であれば、福祉用具のレンタル・購入を検討します。

これらの手続きは、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員、施設の職員、施工事業者といった専門職が支えてくれます。わからないことは、まず担当のケアマネジャーに相談するのが近道です。

よくある誤解・つまずきポイント

「上限を超えれば自動で安くなる」と思ってしまう

高額介護サービス費は、上限を超えても自動的に請求が減るわけではありません。いったん自己負担分を支払い、後から超過分が戻ってくる償還払いが基本です。さらに、最初の払い戻しには市区町村への申請が必要です。「申請しないと戻ってこない」ことを知らずに、払い戻しを受けそびれてしまう例があります。

住宅改修を「先に工事してから」申請しようとする

住宅改修費でもっとも多いつまずきが、工事を済ませてから申請しようとして支給を受けられないケースです。介護保険の住宅改修は、着工前の事前申請が原則必須です。良かれと思って急いで手すりをつけたあとに申請しても、原則として対象外になってしまうため、必ず工事の前にケアマネジャーや市区町村に相談してください。

福祉用具を一般の通販で買ってしまう

福祉用具の購入(特定福祉用具販売)は、都道府県等の指定を受けた事業者から買うことが支給の条件です。同じ製品でも、一般のインターネット通販や量販店で購入すると介護保険の対象にならず、全額自己負担になってしまいます。購入前に、その事業者が指定事業者かどうかを確認することが大切です。

負担限度額認定の「更新忘れ」

負担限度額認定は、原則として毎年8月1日から翌年7月31日までの有効期間があり、毎年更新が必要です。更新を忘れると、翌年度から食費・居住費の軽減が止まり、負担が一気に増えてしまうことがあります。施設の職員からの案内とあわせて、更新時期を家族で共有しておくと安心です。

制度をすべて「自分で完結させよう」とする

介護保険の制度は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員、施設の職員など、専門職が手続きを支える前提で作られています。住宅改修の理由書はケアマネジャーが作成を支援し、福祉用具の選定は福祉用具専門相談員が関わります。すべてを自力で抱え込もうとせず、担当の専門職に相談しながら進めるほうが、結果的に早く正確に手続きが進みます。

申請チェックリスト

ここでは、4つの制度を使う際に何を準備すればよいかを整理します。必要書類は制度や自治体によって追加・変更されることがあるため、最終的には市区町村やケアマネジャー、施設の窓口で最新の様式を確認してください。

高額介護サービス費(初回申請)で準備するものの目安は、おおむね次の通りです。

負担限度額認定で準備するものの目安は、次の通りです。

住宅改修費(事前申請)で準備するものの目安は、次の通りです。

福祉用具購入費で準備するものの目安は、次の通りです。

期限と窓口について、押さえておきたい点を挙げます。高額介護サービス費の申請期限は、サービス利用月の翌月1日から2年です。負担限度額認定は毎年更新が必要で、有効期間は原則8月1日から翌年7月31日です。住宅改修費は工事着工前の事前申請が必須です。福祉用具購入費の支給枠は同一年度で10万円までです。いずれもお住まいの市区町村の介護保険担当窓口が申請先になります。

具体的な計算例・記入例

ここでは、無料サンプルとは別の条件で3つのケースを取り上げ、計算過程とポイントを示します。いずれも制度の理解を助けるための一例であり、実際の金額は所得区分・施設区分・改定状況によって変わります。

ケース1:施設入所で食費・居住費を軽くする(負担限度額認定)

想定するのは、要介護4の父が特別養護老人ホームのユニット型個室に入所し、世帯全員が市町村民税非課税、父本人の年金収入等が年70万円で、預貯金が400万円というケースです。

このケースでは、所得要件(年金収入等80.9万円以下)と資産要件(第2段階は単身650万円以下)をいずれも満たすため、利用者負担段階は第2段階に該当する可能性があります。

第2段階の場合、食費は1日390円、ユニット型個室の居住費は1日880円が現在の限度額です(2026年7月までの値)。

1か月を30日とすると、

食費:390円 × 30日 = 11,700円

居住費:880円 × 30日 = 26,400円

食費+居住費の合計:11,700円 + 26,400円 = 38,100円

負担限度額認定を受けない場合、同じユニット型個室の食費・居住費は基準費用額(食費1,445円、ユニット型個室2,066円)で計算され、

(1,445円 + 2,066円) × 30日 = 105,330円

となります。つまりこのケースでは、認定を受けることで月額105,330円が38,100円まで下がり、月およそ67,000円の負担軽減になる計算です。施設利用がある場合に負担限度額認定の影響が大きいことがわかります。

なお、2026年8月以降は食費の限度額・基準費用額が改定される予定のため、入所時期によっては金額が変わります。最終的な金額は施設または市区町村でご確認ください。

ケース2:自宅に手すりと段差解消の工事をする(住宅改修費)

想定するのは、要介護2の母のために、玄関と廊下に手すりを取り付け、浴室の段差を解消する工事を行い、工事費の合計が18万円だったケースです。母の自己負担割合は1割とします。

住宅改修費の支給限度基準額は20万円で、このケースの工事費18万円は上限20万円の範囲内です。1割負担のため、

180,000円 × 9割(支給割合) = 162,000円(支給される額)

180,000円 × 1割(自己負担割合) = 18,000円(自己負担額)

となり、162,000円が戻り、自己負担は18,000円で済む計算です。

ここで大切なのは、この工事を始める前に市区町村へ事前申請をしていることが前提だという点です。事前申請をせずに工事をすると、原則として支給を受けられません。また、生涯通算20万円のうち18万円を使ったため、残りの枠は20,000円です。今後さらに工事が必要になった場合は、3段階リセットや転居の例外に該当しないかも含めて、ケアマネジャーや市区町村に確認するとよいでしょう。

ケース3:シャワーチェアと入浴用手すりを購入する(福祉用具購入費)

想定するのは、要介護1の父のために、入浴用のいす(シャワーチェア)と浴槽用の手すりを指定事業者から購入し、合計が4万円だったケースです。父の自己負担割合は1割とします。

これらは入浴補助用具に当たり、特定福祉用具販売の対象です。年間の支給枠は10万円までで、このケースの4万円は枠内に収まります。1割負担のため、

40,000円 × 9割(支給割合) = 36,000円(支給される額)

40,000円 × 1割(自己負担割合) = 4,000円(自己負担額)

となり、36,000円が戻り、自己負担は4,000円で済む計算です。

このケースでのポイントは、購入先が都道府県等の指定を受けた事業者であることです。同じ製品を一般の通販で買うと介護保険の対象にならず、全額自己負担になってしまいます。また、この年度で使った購入枠は40,000円のため、同じ年度内であれば残り60,000円まで対象になります。

よくある質問(FAQ)

介護のお金について、ご家族が迷いやすい点をQ&A形式で整理します。制度の詳細や最新の要件は変わることがあるため、最終的な判断の前には公式サイトや市区町村の窓口での確認をおすすめします。

Q1. まず何から手をつければよいですか。

要支援・要介護の認定申請が出発点です。認定が出ると担当のケアマネジャーが決まり、その後の住宅改修・福祉用具・施設利用の手続きにつながります。すでに介護サービスを使っているなら、毎月の利用料が高額介護サービス費の上限を超えていないかを確認するのが最初の一歩です。

Q2. 高額介護サービス費は毎月申請が必要ですか。

多くの自治体では、初めて上限を超えた月について申請をすれば、その後は上限を超えた月ごとに自動的に口座へ振り込まれます。基本的に申請は最初の1回で済むことが多いですが、運用は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村で確認してください。

Q3. 高額介護サービス費に施設の食費や居住費は含まれますか。

含まれません。高額介護サービス費の対象は介護サービスの利用料(自己負担分)で、施設の食費・居住費や日用品費は対象外です。食費・居住費については、所得・資産が一定以下の方を対象にした負担限度額認定が別に用意されています。

Q4. 負担限度額認定は誰でも受けられますか。

いいえ。原則として、世帯全員が市町村民税非課税であることに加えて、預貯金等の資産要件を満たす必要があります。世帯に市町村民税の課税者がいる場合(第4段階)は、原則として対象外です。

Q5. 住宅改修は工事をしてから申請してもよいですか。

原則としてできません。介護保険の住宅改修は、工事に着手する前の事前申請が必須です。事前申請をせずに工事をすると、原則として支給を受けられないため、必ず工事の前にケアマネジャーや市区町村へ相談してください。

Q6. 住宅改修の20万円を使い切ったら、もう使えませんか。

原則は生涯通算20万円ですが、最初の改修時の要介護度から「介護の必要の程度」が3段階以上重くなった場合(生涯1回)や、転居した場合には、再び20万円まで利用できます。該当するかどうかは市区町村やケアマネジャーに確認してください。

Q7. 車いすや介護ベッドは買うのとレンタルのどちらですか。

これらは原則レンタル(福祉用具貸与)の対象です。ただし、軽度の方(要支援1・2、要介護1)は車いすや特殊寝台などが原則対象外になる場合があります。体の状態によっては例外的に利用できることもあるため、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してください。

Q8. 福祉用具は近くの店やネット通販で買ってもよいですか。

購入(特定福祉用具販売)で介護保険の対象になるのは、都道府県等の指定を受けた事業者から買った場合に限られます。一般の店舗やインターネット通販で同じ製品を買っても対象にならず、全額自己負担になります。購入前に指定事業者かどうかを確認してください。

Q9. 福祉用具の購入はいくらまで対象になりますか。

同一年度(毎年4月1日から翌年3月31日)で10万円までが対象です。1割負担の方なら最大9万円が戻る計算です。年度をまたぐと枠がリセットされます。

Q10. スロープや歩行器は、レンタルと購入のどちらになりますか。

固定用スロープ、歩行器、歩行補助つえ(単点杖・多点杖)については、2024年4月から、レンタルか購入かを利用者が選べる選択制が導入されています。使う期間や体の状態によって適した方が変わるため、福祉用具専門相談員やケアマネジャーと相談して決めるとよいでしょう。

Q11. 負担限度額認定は一度受ければずっと有効ですか。

いいえ。有効期間は原則として毎年8月1日から翌年7月31日までで、継続して利用する場合は毎年更新が必要です。更新を忘れると軽減が止まってしまうため、更新時期を把握しておくことが大切です。

Q12. これらの制度は重複して使えますか。

対象が異なるため、組み合わせて使えます。たとえば、毎月の利用料は高額介護サービス費、施設の食費・居住費は負担限度額認定、自宅の工事は住宅改修費、用具は福祉用具、というように役割が分かれています。それぞれの上限や要件を満たす範囲で、必要なものを併用できます。

Q13. 手続きが多くて不安です。誰に相談すればよいですか。

まずは担当のケアマネジャーに相談するのが近道です。住宅改修の理由書の作成支援、福祉用具の選定、施設利用の調整など、多くの場面でケアマネジャーや福祉用具専門相談員、施設の職員が手続きを支えてくれます。すべてを自力で抱え込む必要はありません。

Q14. 申請すれば必ず全額が戻りますか。

いいえ。高額介護サービス費は上限を超えた分のみが戻り、対象は介護サービスの利用料に限られます。住宅改修費・福祉用具購入費は所得に応じた割合(9割・8割・7割)が支給されます。負担限度額認定も所得・資産の要件を満たした方が対象です。要件や上限の範囲で軽減される制度であり、支払った全額が戻るわけではない点に注意してください。

出典一覧(URL・確認日)

本記事は以下の一次情報を確認した上で執筆しています。

https://www.mhlw.go.jp/content/000334526.pdf

確認日:2026年6月26日

https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/dl/tp0724-1b.pdf

確認日:2026年6月26日

https://www.city.koriyama.lg.jp/soshiki/68/2207.html

確認日:2026年6月26日

https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/kaigo/seido/hutan/kogaku.html

確認日:2026年6月26日

https://www.mhlw.go.jp/general/seido/toukatsu/suishin/dl/07.pdf

確認日:2026年6月26日

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4385&dataType=1&pageNo=1

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https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/fukushi-kaigo/kaigo/shinsei/jyutakukaishu.html

確認日:2026年6月26日

https://www.city.takasago.lg.jp/material/files/group/17/qandakaigo2023.pdf

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https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html

確認日:2026年6月26日

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000875875.pdf

確認日:2026年6月26日

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001303228.pdf

確認日:2026年6月26日

https://www.city.koto.lg.jp/212105/fukushi/kaigohoken/kyufu/6536.html

確認日:2026年6月26日

https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html

確認日:2026年6月26日

https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/kenkou/kaigo1/kaigo-riyousya-futan-gen/hpg000027201.html

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https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000060819.html

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https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0602085932175/ksvol.1506.pdf

確認日:2026年6月26日

https://www.city.sakuragawa.lg.jp/fukushi_kenkou/kaigo_hoken/page010281.html

確認日:2026年6月26日

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、個別の申請代行・書類作成代行・法律的助言・税務的助言・医療的判断を行うものではありません。介護保険の制度の詳細・最新の要件・申請手続き・金額については、各公式サイトまたは担当窓口(市区町村の介護保険担当課・地域包括支援センター・ケアマネジャー・施設・施工事業者など)に直接ご確認ください。介護保険の給付は要件を満たした範囲で行われるものであり、申請すれば必ず一定額が受け取れることを保証するものではありません。制度の金額・要件・期限は改定されることがあり、特に負担限度額認定については2026年8月1日からの改定が予定されています。最新の数値は必ず公式情報でご確認ください。