住宅取得等資金の贈与税非課税を使い切る(親・祖父母から最大1,000万円を非課税で受け取る実務ガイド)
本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・申告期限はいずれも変更されることがあるため、申請前に必ず国税庁や税務署の最新情報をご確認ください。本記事は制度の情報提供を目的としており、個別の税務相談・申告書の作成代行・申請代行は行いません。税理士法の業務範囲(税務書類の作成・税務相談)は税理士に依頼してください。
この記事が整理すること
マイホームを取得する際に、親や祖父母からまとまった資金援助を受けるケースは珍しくありません。しかし「贈与税がかかるのではないか」という不安から、受け取り方を慎重に考える方も多いはずです。
この記事では、住宅取得等資金の贈与税非課税制度(租税特別措置法第70条の2)について、制度の概要から申告の実務、つまずきやすいポイント、住宅ローン控除との関係、活用すべきでないケースの判断基準まで、体系的に整理します。
この制度を正確に理解しておくと、次のような疑問が解決します。
父母から1,000万円の資金援助を受けて省エネ住宅を買う場合、贈与税はかかるのかどうか。父母と祖父母の両方から援助を受けた場合は非課税枠をどう使えばよいのか。住宅ローン控除と重ねて使う場合に、控除額はどう変わるのか。翌年3月15日までに引き渡しが完了しない新築マンションを契約した場合はどうなるのか。贈与を受けた後に申告を忘れると何が起きるのか。
この制度は「知っておくか知らないか」で、支払う税金が数十万円から数百万円単位で変わる可能性があります。一方で、適用条件が細かく、要件を誤って理解したまま手続きを進めると、後から特例が失効してしまうリスクもあります。
本記事では「実際に動けるレベル」の情報を提供することを目指します。ただし個別の税務判断については、必ず税理士または税務署の窓口に確認してください。
制度の全体像
いつ・誰に・いくら・どこへ申告するのか
住宅取得等資金の贈与税非課税制度は、親や祖父母など直系尊属から住宅の取得や改築のための資金を受け取った場合に、一定の金額まで贈与税を非課税にする制度です。
適用期間は令和6年(2024年)1月1日から令和8年(2026年)12月31日までの間に受けた贈与が対象です。
申告先は、受贈者(資金を受け取った人)の住所地を管轄する税務署です。
申告時期は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。非課税限度額以下の贈与であっても、この申告を必ずしなければなりません。申告しなかった場合は特例が失効し、贈与税が課税されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税(租税特別措置法第70条の2) |
| 適用対象期間 | 令和6年1月1日〜令和8年12月31日の贈与 |
| 非課税限度額(省エネ等住宅) | 1,000万円 |
| 非課税限度額(その他の住宅) | 500万円 |
| 贈与者の要件 | 直系尊属(父母・祖父母等) |
| 受贈者の年齢要件 | 贈与年の1月1日時点で18歳以上 |
| 所得要件 | 合計所得金額2,000万円以下(床面積40〜50㎡未満は1,000万円以下) |
| 申告先 | 受贈者の住所地を管轄する税務署 |
| 申告期限 | 贈与を受けた翌年2月1日〜3月15日 |
| 居住要件 | 翌年3月15日までに居住(または居住確実と見込まれること) |
暦年贈与・相続時精算課税との関係概要
住宅取得等資金の非課税枠は、暦年課税の基礎控除(年110万円)や相続時精算課税制度とそれぞれ組み合わせることができます。
暦年課税との組み合わせでは、省エネ等住宅の場合に最大1,110万円(1,000万円 + 110万円)まで非課税で受け取ることができます。
相続時精算課税との組み合わせでは、令和6年以降に新設された相続時精算課税の年110万円基礎控除と、特別控除2,500万円、住宅取得等資金の非課税枠1,000万円を合算すると、理論上3,610万円まで贈与時に課税が発生しない計算になります。ただし相続時精算課税の2,500万円特別控除を超えた分は相続時に精算されます。
【無料サンプル】省エネ等住宅を親から1,000万円援助してもらう1ケースを最後まで全部見せます
ここでは、父から1,000万円の住宅取得資金を贈与してもらい、省エネ等住宅を新築する30代の会社員のケースを取り上げ、贈与税の計算から申告に必要な書類、提出先、スケジュールまで途中を省かずに最後まで解きます。この制度の使い方を具体的に理解することを目的にしているため、実際の金額は個人の状況によって変わります。
想定するケース
- 贈与者:父(60歳。受贈者と生計は別の直系尊属)
- 受贈者:本人(35歳の会社員。令和6年1月1日時点で35歳)
- 贈与時期:令和7年(2025年)9月
- 贈与金額:1,000万円(全額を住宅取得資金として使用予定)
- 取得住宅:国内の新築一戸建て(省エネ等住宅。断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上に適合)
- 床面積:110平方メートル(登記簿面積)
- 入居予定:令和8年(2026年)1月
- 本人の令和7年の合計所得金額:750万円
- 過去に住宅取得等資金の非課税特例を受けたことはない
ステップ1:この人は本当に対象になるのかを確認する
まず受贈者の要件を一つひとつ確認します。
年齢要件については、贈与を受けた令和7年の1月1日時点で35歳であることから、18歳以上の要件を満たしています。
贈与者の要件については、父から受け取る贈与であることから、直系尊属からの贈与という要件を満たします。
所得要件については、令和7年の合計所得金額が750万円であることから、2,000万円以下の要件を満たします。
床面積については、登記簿上の床面積が110平方メートルであることから、40平方メートル以上240平方メートル以下の要件を満たします(なお床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は所得要件が1,000万円以下に厳格化されますが、このケースは110平方メートルのため通常の2,000万円以下の要件が適用されます)。
居住要件については、令和8年1月に入居予定であることから、贈与を受けた翌年(令和8年)の3月15日よりも前に居住することになります。この要件も満たします。
過去の適用については、今回が初めての適用であり、平成21年以降に同制度を使ったことはないことから、要件を満たします。
住宅の省エネ要件については、断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上に適合していることから、省エネ等住宅に該当します。
以上すべての要件を満たしているため、1,000万円の非課税特例を使うことができます。
ステップ2:贈与税の計算をする
この制度は、一定額まで贈与税が非課税になる仕組みです。省エネ等住宅の場合の非課税限度額は1,000万円です。
今回の贈与額は1,000万円なので、非課税限度額の1,000万円を超えません。したがって贈与税の課税価格(非課税限度額を超えた部分)はゼロです。
贈与税はゼロです。
ここで重要なのは、「贈与税がゼロだから申告しなくていい」と思い込んでしまうことです。この制度では、非課税で贈与税がゼロになる場合であっても、申告書を提出することが適用の条件になっています。申告をしなかった場合は、非課税の特例が適用されず、後から贈与税と加算税・延滞税が課税される可能性があります。
ステップ3:申告書に添付する書類を確認する
贈与税の申告書に添付が必要な主な書類は以下の通りです。取得先と注意点もあわせて確認します。
1つ目は戸籍謄本(戸籍の全部事項証明書)です。受贈者と贈与者の親子関係(直系尊属からの贈与であること)を証明します。本籍地の市区町村に請求するのが基本ですが、2024年3月1日から始まった戸籍の広域交付により、本籍地が遠方でも最寄りの市区町村の窓口でまとめて取得できるようになりました(請求できるのは本人・配偶者・直系の親族で、窓口での本人確認が必要です)。マイナンバーカードがあれば一部の証明書はコンビニ交付も利用できます。手数料は1通450円程度です(自治体により異なります)。
2つ目は住宅売買契約書または工事請負契約書の写しです。住宅の取得の事実と取得対価・床面積を示します。工務店や不動産会社との契約書のコピーを添付します。
3つ目は登記事項証明書(建物全部事項証明書)です。床面積と登記上の所有者名義を確認するために添付します。法務局(登記所)の窓口や郵送で申請するか、オンラインで請求して取得します。手数料は2025年4月1日改定後の金額で、書面請求(窓口・郵送)が1通600円、オンライン請求で郵送受取が520円、オンライン請求で登記所窓口受取が490円です(確認日2026年6月27日時点・要確認)。なお登記情報提供サービスで画面確認用のPDFを取得する場合は全部事項1件330円(令和8年4月1日改定後)で、こちらは申告添付用の正式な証明書としては使えない点に注意してください。
4つ目は省エネ等住宅であることを証する書類です。今回は省エネ等住宅の要件(断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上)を満たすことを証明する書類が必要です。新築の場合は、住宅性能評価書(建設住宅性能評価書)、住宅省エネルギー性能証明書、認定長期優良住宅建築証明書などが該当します。どの書類が使えるかは施工会社に確認します。施工会社から「住宅省エネルギー性能証明書」を発行してもらうのが一般的です。
5つ目は住民票の写しです。実際に贈与を受けた時点で日本国内に住所を有していることを証明します。
これらを揃えたうえで、「贈与税の申告書(第一表・第一表の二)」と「住宅取得等資金の非課税の計算明細書」を作成します。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使うと、画面の案内に沿って入力できます。
ステップ4:申告の窓口と期限を確認する
申告期限:令和7年(2025年)分の贈与について → 令和8年(2026年)2月1日から3月15日まで
申告窓口:受贈者(本人)の住所地を管轄する税務署。直接持参するか、郵送で送付するか、電子申告(e-Tax)で提出します。
持参の場合は申告期間中に税務署の窓口へ。郵送の場合は消印が3月15日以内であれば有効です。
税務署での相談(確定申告期間中の無料相談)も活用できます。ただし混雑するため、早めに動くことをおすすめします。
ステップ5:申告後に確認すること
申告書を提出しただけで手続きが完結するわけではありません。翌年3月15日の時点では「居住が確実と見込まれる」という要件で申告した場合(たとえば入居が少し遅れる見込みの場合)は、贈与を受けた年の翌年12月31日までに実際に居住することが必要です。入居できなかった場合は修正申告や特例の失効につながります。
今回のケースでは令和8年1月に入居予定なので、翌年3月15日時点で入居済みになる見込みです。問題はありません。
1ケース完走のまとめ
今回のケースでは、父から1,000万円の贈与を受け、省エネ等住宅を取得するという条件で、1,000万円全額が非課税になります。ただし非課税の特例を確定させるには、翌年の申告期間中に必要書類を揃えて贈与税の申告書を提出することが必須条件です。申告をしなければ特例は失効します。
必要書類は「戸籍謄本・契約書の写し・登記事項証明書・省エネ性能証明書・住民票」が基本セットです。これらの収集には数週間かかることがあるため、申告期間直前ではなく年明けから準備を始めることをおすすめします。
ここから先は、申請に直結する実務です。
制度の詳細要件:省エネ等住宅の定義と証明方法
新築住宅と既存住宅(中古)で基準が異なる
「省エネ等住宅」に該当するかどうかは、新築住宅か既存住宅(建築後に使用されたことがある住宅)かによって、適用される基準が異なります。この点を間違えると、非課税枠が500万円に下がってしまいます。
新築住宅の場合は、令和6年1月1日以降に建築確認を受けた住宅について、以下のいずれかの基準に適合することが必要です。
- 断熱等性能等級5以上(結露の発生を防止する対策に関する基準を除く)かつ一次エネルギー消費量等級6以上(ZEH水準)
- 耐震等級2以上または免震建築物
- 高齢者等配慮対策等級3以上
既存住宅(中古住宅)の場合は、以下のいずれかに適合することが必要です。
- 断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上
この違いを表にまとめると、次の通りです。
| 住宅の種類 | 省エネ等住宅の要件 |
|---|---|
| 新築住宅(令和6年1月1日以降建築確認) | 断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上(ZEH水準)、または耐震等級2以上もしくは免震建築物、または高齢者等配慮対策等級3以上 |
| 既存住宅(中古) | 断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上 |
なぜ新築の基準が引き上げられたのか、背景を理解しておくと住宅選びにも役立ちます。令和6年度税制改正において、住宅取得等資金の非課税措置で1,000万円の非課税枠(省エネ等住宅)を使える「良質な住宅」の要件が引き上げられました。新築住宅については、断熱等性能等級4では不十分とされ、ZEH水準(断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上)への対応が求められるようになりました。
一方、既存住宅については省エネ等性能に関して依然として等級4で認められており、新築と既存の基準の差が広がっています。これは中古住宅市場の実態(性能の高い既存住宅が限られる)を踏まえた経過的な取り扱いと理解できます。
経過措置:令和5年12月31日以前に建築確認を受けた住宅
令和5年(2023年)12月31日までに建築確認を受けた住宅用の家屋、または令和6年(2024年)6月30日までに建築された住宅用の家屋については、断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上のいずれかを満たせば、省エネ等住宅とみなされる経過措置があります。
これは特に、令和5年以前に建築確認を取得した新築住宅(いわゆる在庫物件)を令和6年以降に取得する場合に重要です。施工業者や販売業者に建築確認取得日を確認し、どちらの基準が適用されるかを明確にしてから省エネ等住宅の該当性を判断する必要があります。
証明書類の種類と発行元
省エネ等住宅であることを贈与税の申告書に証明するための書類は複数あります。住宅の性能・認定の種類によって必要な書類が異なるため、施工業者や不動産会社に事前に確認します。
| 証明書の種類 | 発行元 | 適用場面 |
|---|---|---|
| 住宅省エネルギー性能証明書 | 建築士、登録住宅性能評価機関等 | 省エネ基準を証明する最も一般的な書類 |
| 建設住宅性能評価書 | 登録住宅性能評価機関 | 住宅性能評価制度を利用した場合 |
| 認定長期優良住宅建築証明書 | 所管行政庁 | 長期優良住宅認定を受けた場合 |
| 認定低炭素住宅建築証明書 | 所管行政庁 | 低炭素住宅認定を受けた場合 |
| 耐震基準適合証明書 | 建築士 | 既存住宅(昭和56年以前)で耐震性を証明する場合 |
| 既存住宅性能評価書 | 登録住宅性能評価機関 | 既存住宅の性能評価を取得している場合 |
| 既存住宅売買瑕疵保険付保証明書 | 住宅瑕疵担保責任保険法人 | 既存住宅で保険付保がある場合 |
新築住宅を購入する場合は、施工会社に「住宅省エネルギー性能証明書を発行してほしい」と依頼するのが一般的な方法です。証明書の発行には一定の費用と時間がかかるため、契約段階から申告書類として必要であることを伝えておきましょう。
証明書が間に合わないと思われる場合、増改築等工事証明書のように着工後に発行されるものもあります。申告期限(翌年3月15日)に間に合うスケジュールを業者と確認しておくことが重要です。
受贈者の要件を詳しく確認する
「直系尊属」とは誰か
住宅取得等資金の非課税特例を受けるための贈与者は「直系尊属」でなければなりません。直系尊属とは、父母・祖父母・曾祖父母などの血族を指します。父と母の両方が贈与者になることができます。また父方の祖父母と母方の祖父母の全員が同時に贈与者になることも可能です。つまり受贈者1人に対して複数の贈与者が存在してもかまいません。ただし受贈者1人あたりの非課税限度額は変わらず、省エネ等住宅で1,000万円が上限です。
配偶者(夫・妻)は直系尊属ではないため、配偶者からの贈与はこの特例の対象外です。義父母(配偶者の父母)も直系尊属には該当しません。
ただし養子縁組をしている場合は、養親も直系尊属に含まれます。義父母と養子縁組をすれば、義父母からの贈与もこの特例の対象になります。ただし養子縁組には相続に関わるさまざまな法的効果が伴うため、相続対策として安易に行うことは慎重に検討すべきです。
また、父母が離婚している場合でも、実の父(または母)から贈与を受ける場合は直系尊属からの贈与として特例の対象になります。再婚相手の親(継父・継母)については、養子縁組をしている場合は直系尊属として扱われ、養子縁組をしていない場合は対象外です。
年齢要件:1月1日時点の年齢で判定
受贈者は、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上でなければなりません。判定日は「贈与を受けた日」ではなく「贈与を受けた年の1月1日」であることに注意が必要です。
たとえば令和8年(2026年)の3月に贈与を受けた場合、判定基準日は令和8年1月1日になります。令和8年2月に18歳の誕生日を迎える人は、令和8年1月1日時点では17歳なので要件を満たしません(この場合は令和9年以降の贈与で適用を検討することになります)。
所得要件:合計所得金額2,000万円以下
受贈者の「合計所得金額」が2,000万円以下でなければなりません。「給与収入」や「手取り額」ではなく、税務上の「合計所得金額」が基準です。
合計所得金額は、給与所得(給与収入から給与所得控除を引いた額)や事業所得など、複数の所得区分を合算したものです。給与収入と合計所得金額は異なるため、自分の課税証明書や源泉徴収票で確認することをおすすめします。
注意が必要なのは、その年に不動産の売却益があった場合です。土地や建物を売却すると、その利益(譲渡所得)が合計所得金額に加算されます。住み替えで自宅を売って新居を購入した年に親から贈与を受ける場合、売却益が大きいと合計所得金額が2,000万円を超えてしまう可能性があります。住み替えと贈与を同じ年に組み合わせる計画がある場合は、事前に合計所得金額を試算しておくことが重要です。
床面積40〜50㎡の場合の特例(所得要件の厳格化)
取得する住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、受贈者の合計所得金額の要件が「1,000万円以下」に厳格化されます。コンパクトマンションなどで床面積が40台平方メートルの物件を購入する際は、この点に注意が必要です。
40平方メートル以上50平方メートル未満の床面積の住宅に対してこの特例が設けられているのは、単身者や若いカップルが取得しやすい都市部の小型マンション等についても、一定の要件のもとで住宅取得資金の援助を非課税で受けられるようにする趣旨があります。ただし所得が比較的高い層については、住宅市場の投機的購入につながることへの懸念から所得要件を厳格化しています。
なお合計所得金額1,000万円以下の要件は、この床面積区分(40〜50㎡未満)で住宅ローン控除の適用を受ける場合の所得要件(1,000万円以下)と同じです。この床面積の住宅を購入する方は、住宅ローン控除でも同様の所得制限があることを念頭に置いてください。
過去の適用履歴
平成21年(2009年)分以降の贈与税申告で、住宅取得等資金の非課税特例の適用を受けたことがある場合は、今回改めて適用を受けることができません(既に適用した残額がある場合を除く)。
親の住み替えに合わせてかなり前に一度適用を受けているケースでは、過去の申告書を確認しておくことが必要です。
配偶者や特別の関係者からの取得は対象外
受贈者の配偶者(夫・妻)から購入した住宅はこの特例の対象になりません。受贈者と生計を一にする親族、内縁の配偶者、使用人、またはこれらの者と特別の関係がある法人から取得した住宅も対象外です。これは実質的に当事者間での価格操作が行われるリスクを排除するためのものです。
住宅の要件を詳しく確認する
新築住宅・既存住宅の要件一覧
取得する住宅は以下の要件を満たす必要があります。
| 要件項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 日本国内 |
| 床面積(登記簿面積) | 40平方メートル以上240平方メートル以下 |
| 居住用割合 | 床面積の2分の1以上が受贈者の居住用 |
| 新築の場合 | 建築後使用されたことがない住宅 |
| 既存住宅の場合 | 昭和57年1月1日以後建築(1982年以降)、または昭和56年以前でも耐震基準適合証明書等で耐震安全性を証明したもの |
| 増改築の場合 | 工事費が100万円以上、居住用部分の工事であること |
床面積の数え方:マンションの場合は登記簿で確認
床面積は原則として「登記簿上の面積」を使います。マンションの場合、物件の広告や重要事項説明書に記載されている「専有面積」は壁の内側を基準にした壁芯面積のことが多く、登記簿面積(内法面積)よりも大きい数値になっています。
実際の床面積(登記簿面積)が40平方メートルを下回る場合は特例の対象外になるため、契約前に登記簿面積を確認する必要があります。
コンパクトマンションでは登記簿面積が40平方メートルを若干下回るケースもあるため、注意が必要です。
既存住宅(中古)の昭和56年以前の建物
昭和56年(1981年)12月31日以前に建てられた建物(旧耐震基準の建物)を取得する場合は、次のいずれかによって耐震安全性を証明する必要があります。
- 耐震基準適合証明書(建築士が発行)
- 建設住宅性能評価書(登録住宅性能評価機関が発行)で耐震等級1以上が確認されたもの
- 既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに耐震改修工事の実施が確実と見込まれること(翌年3月15日までに完了要件を確認)
なお昭和57年(1982年)1月1日以降に建てられた建物は「新耐震基準」の建物として扱われるため、これらの証明は不要です。ただしこれは贈与税の手続きにおける取り扱いであり、実際の耐震性能は個別に確認することをおすすめします。
増改築・リフォームの場合の要件
工事費100万円以上が必須条件
増改築等の工事の場合は、以下の要件を満たす必要があります。
- 工事費が100万円以上であること
- 床面積(登記簿上)が40平方メートル以上240平方メートル以下であること
- 床面積の2分の1以上が居住用であること
- 自己が所有し、かつ居住している家屋であること
- 工事の内容が以下のいずれかに該当すること
工事の種類については、増築・改築・大規模な修繕・大規模の模様替え、マンションの区分所有の場合は専有部分の増築や改築のほか、一定のリフォーム工事(バリアフリー改修、省エネ改修など)が対象になります。
増改築等工事証明書の取得
増改築の場合は、「増改築等工事証明書」を取得して申告書に添付する必要があります。この証明書は建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関などが発行します。施工業者に依頼して発行してもらうのが一般的です。
増改築の場合も、工事が完了して証明書を受け取るまでに時間がかかることがあります。贈与を受けた年の翌年3月15日の申告期限に間に合うよう、スケジュールを施工業者と調整しておくことが必要です。
申告の具体的な手順
必要書類の全リスト
贈与税の申告に必要な書類は、住宅の種類や取得形態によって異なります。以下に主な書類の正式名称・取得先・注意点をまとめます。
| 書類名 | 取得先 | 注意点 |
|---|---|---|
| 贈与税の申告書(第一表・第一表の二) | 税務署窓口または国税庁ウェブサイト | 確定申告書等作成コーナーで作成可能 |
| 住宅取得等資金の非課税の計算明細書 | 税務署窓口または国税庁ウェブサイト | 申告書と一緒に作成・添付する |
| 戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本) | 市区町村の窓口、コンビニ交付(マイナンバーカード使用) | 受贈者と贈与者の親族関係を証明する |
| 登記事項証明書(建物) | 法務局、登記情報提供サービス(オンライン) | 床面積・取得日・所有者名義を確認する |
| 売買契約書または工事請負契約書の写し | 不動産会社・工務店等 | 取得対価・床面積・取得日の確認に使用 |
| 住民票の写し | 市区町村の窓口 | 贈与時点の住所地(日本国内)を証明する |
| 住宅省エネルギー性能証明書(省エネ等住宅の場合) | 建築士・登録住宅性能評価機関等 | 省エネ等住宅該当性の証明に使用 |
| 建設住宅性能評価書の写し(省エネ等住宅の場合) | 登録住宅性能評価機関 | 性能評価制度を利用した場合 |
| 耐震基準適合証明書(既存住宅の場合) | 建築士 | 昭和56年以前の既存住宅で必要になる場合がある |
| 増改築等工事証明書(増改築の場合) | 建築士・指定確認検査機関等 | 工事内容と費用を証明する |
申告書の作成方法
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(https://www.keisan.nta.go.jp/)を使うと、画面の案内に沿ってデータを入力するだけで申告書を作成できます。贈与税の申告は所得税の確定申告とは別の手続きで、同じサイトから作成できます。
作成した申告書は、印刷して税務署に郵送するか、e-Tax(電子申告)で送信するかのいずれかの方法で提出します。
申告窓口と提出方法
申告先は受贈者(自分)の住所地を管轄する税務署です。住所地の管轄税務署は、国税庁のウェブサイト(https://www.nta.go.jp/about/organization/index.htm)で検索できます。
提出方法は次の3通りです。
直接持参する方法:申告期間中に税務署の窓口に持参します。税務署が混雑する時期には事前予約が必要な場合があります。
郵送する方法:申告書と添付書類を税務署宛てに郵送します。消印が3月15日以内であれば有効です。控えに収受印を押してもらう場合は、返信用の封筒と切手を同封します。
e-Tax(電子申告)で提出する方法:マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマートフォン)があれば電子申告ができます。書類の添付はスキャンしてデータで送ります。
申告期限
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までが申告期間です。3月15日が土日祝日の場合は翌月曜日になります。期限を過ぎた場合は無申告扱いとなり、非課税の特例が適用されません。
金額の計算例(複数ケース)
計算の基本的な考え方
住宅取得等資金の非課税の計算は、シンプルです。
贈与を受けた金額から非課税限度額を引いた残りが課税価格になります。課税価格がゼロ以下であれば贈与税はかかりません。課税価格がプラスになる場合は、その金額に応じた贈与税率を掛けて計算します(暦年課税の場合)。
暦年課税(基礎控除110万円)との組み合わせでは、1年間に受け取った贈与の合計から、住宅取得等資金の非課税額と基礎控除額(110万円)を差し引いた残りが課税価格になります。
ケース1:省エネ等住宅・両親から合わせて1,200万円の贈与を受けるケース
このケースでは、父から700万円、母から500万円の合計1,200万円の贈与を受けます。住宅は省エネ等住宅に該当します(非課税限度額1,000万円)。暦年課税を選択します。
暦年課税では、1年間に受け取ったすべての贈与を合算して計算します。
受け取った贈与の合計 = 700万円(父から)+ 500万円(母から)= 1,200万円
非課税限度額(省エネ等住宅)= 1,000万円
贈与を受けた人(本人)についての住宅取得等資金の非課税は、贈与者が複数いても受贈者1人当たりの限度額(1,000万円)が上限です。父からも母からも受け取った場合でも、合算した1,200万円から非課税限度額1,000万円を引いた200万円が残ります。
ここに暦年課税の基礎控除110万円を適用します。
課税価格 = 1,200万円 - 1,000万円(非課税限度額)- 110万円(基礎控除)= 90万円
贈与税額(暦年課税の税率)= 90万円 × 10% = 9万円
このケースでは1,200万円の贈与のうち9万円の贈与税がかかる計算になります。なお申告義務はあります(非課税特例の適用を受けるため)。
もし贈与額を1,110万円(1,000万円 + 110万円)以内に抑えれば、課税価格はゼロになります。
ケース2:省エネ等住宅・夫婦それぞれの親から1,000万円ずつ(合計2,000万円)を受け取るケース
夫が父親(夫の実父)から1,000万円、妻が父親(妻の実父)から1,000万円を受け取る場合、夫と妻それぞれが個別に受贈者として非課税の申告をすることができます。
夫の計算:贈与1,000万円 - 非課税限度額1,000万円 = 課税価格0円 → 贈与税0円
妻の計算:贈与1,000万円 - 非課税限度額1,000万円 = 課税価格0円 → 贈与税0円
夫婦合わせて2,000万円の贈与が非課税になる計算です。ただし、住宅の持分を夫婦で共有する場合は、それぞれの持分に対する贈与額の使途が問題になることがあります。また、夫が妻の父から贈与を受ける形は「直系尊属」の要件を満たさないため対象外です。あくまで自分の直系尊属から受け取ることが要件です。
ケース3:その他の住宅・祖父から500万円と暦年贈与110万円を同時に受け取るケース
省エネ等住宅の要件を満たさない一般的な住宅を購入し、祖父から住宅取得資金として500万円、別途暦年贈与として110万円を受け取るケースです。
非課税限度額(その他の住宅)= 500万円
贈与を受けた合計 = 500万円(住宅資金)+ 110万円(別途贈与)= 610万円
課税価格 = 610万円 - 500万円(非課税限度額)- 110万円(基礎控除)= 0円
贈与税0円。申告は必要です(非課税特例の適用のため)。
このケースでは、住宅取得等資金の非課税枠(500万円)と基礎控除(110万円)を合わせた610万円がちょうど全贈与額に一致するため、課税価格がゼロになります。
ケース4:相続時精算課税を選択した場合の組み合わせ
相続時精算課税を選択した祖父から3,000万円の住宅取得資金を受け取るケースを考えます。住宅は省エネ等住宅です。
相続時精算課税の年110万円基礎控除(令和6年以降)= 110万円
住宅取得等資金の非課税限度額(省エネ等住宅)= 1,000万円
相続時精算課税の特別控除 = 2,500万円(累計)
贈与3,000万円の処理:
- 住宅取得等資金の非課税枠:1,000万円を非課税
- 相続時精算課税の年間基礎控除:110万円を非課税
- 残り(3,000万円 - 1,000万円 - 110万円 = 1,890万円)を相続時精算課税の特別控除に充てる
- 特別控除の累計2,500万円の範囲内なので贈与時の贈与税は0円
- ただし1,890万円は将来の相続財産に加算される
今回の3,000万円のうち、贈与時に一切課税されない金額の内訳:
- 住宅取得等資金の非課税:1,000万円(将来の相続財産加算なし)
- 相続時精算課税の基礎控除:110万円(将来の相続財産加算なし)
- 相続時精算課税の特別控除:1,890万円(将来の相続財産に加算される)
このように組み合わせると贈与時の課税はゼロになりますが、1,890万円は将来的に相続財産に算入されて相続税の計算対象になる点に注意が必要です。
住宅ローン控除との関係(最重要・計算例付き)
なぜ住宅ローン控除が圧縮されるのか
住宅取得等資金の贈与を受けた場合に、住宅ローン控除も使いたいと考える方は多いはずです。この2つの制度を同時に使うこと自体は可能ですが、「住宅ローン控除の計算額が下がる」という影響があります。これを知らずに計画すると、想定よりも還付額が少なくなります。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の控除額は、「年末ローン残高」と「取得対価の調整後の金額」のいずれか低い方を基に計算します。
ここでいう「取得対価の調整後の金額」とは、住宅の取得対価(購入価格等)から、住宅取得等資金の非課税特例の適用を受けた金額(贈与で受け取り非課税になった金額)を差し引いた額です。
つまり、贈与で受け取った資金が住宅取得対価に充てられた場合、その分だけ住宅ローン控除の計算基礎が圧縮されます。
具体的な計算例
このような状況を想定します。
- 取得住宅:省エネ等住宅(新築)
- 取得対価(購入価格):4,000万円
- 親からの贈与(住宅取得等資金の非課税適用):1,000万円
- 自己資金:500万円
- 住宅ローン:2,500万円(年末残高も2,500万円と仮定)
- 住宅ローン控除の借入限度額(令和8年入居・省エネ等住宅・一般世帯):3,500万円
まず、贈与を受けなかった場合の住宅ローン控除を計算します。
年末残高2,500万円と借入限度額3,500万円を比較すると、低い方は2,500万円。
控除額 = 2,500万円 × 0.7% = 17万5,000円
次に、1,000万円の贈与(非課税適用)がある場合の計算をします。
取得対価の調整後の金額 = 4,000万円(取得対価)- 1,000万円(非課税適用贈与額)= 3,000万円
住宅ローン控除の計算基礎は次の3つのうち最も低い金額です。
- 年末残高:2,500万円
- 借入限度額:3,500万円
- 取得対価の調整後金額:3,000万円
最も低い金額は年末残高の2,500万円です。
この場合、取得対価の調整後金額(3,000万円)は年末残高(2,500万円)よりも高いため、住宅ローン控除は年末残高をそのまま使って計算します。
控除額 = 2,500万円 × 0.7% = 17万5,000円
結果として、このケースでは1,000万円の贈与があっても住宅ローン控除額は変わりません。
しかし次のように条件が変わると影響が出ます。
- 取得対価:3,000万円
- 贈与(非課税適用):1,000万円
- 自己資金:0円
- 住宅ローン:3,000万円(年末残高も3,000万円と仮定)
- 借入限度額(省エネ等住宅・一般世帯):3,500万円
取得対価の調整後金額 = 3,000万円 - 1,000万円 = 2,000万円
住宅ローン控除の計算基礎:
- 年末残高:3,000万円
- 借入限度額:3,500万円
- 取得対価の調整後金額:2,000万円
最も低いのは「取得対価の調整後金額」の2,000万円。
控除額 = 2,000万円 × 0.7% = 14万円
贈与を受けなかった場合(ローン3,000万円全額で計算):
3,000万円 × 0.7% = 21万円
差額:21万円 - 14万円 = 7万円の減少
1年あたり7万円の差が13年間続くと、合計で最大91万円の住宅ローン控除が受けられなくなる計算です。これが「贈与を受けると住宅ローン控除が圧縮される」という意味です。
どちらを優先すべきかの判断基準
贈与の非課税枠と住宅ローン控除のどちらを優先すべきかは、受贈者の所得・納税額・ローン金額・金利などによって変わります。一般的な考え方として、次のような整理ができます。
贈与の非課税枠を最大限に使う方向性が有利になりやすい状況は、所得が低く住宅ローン控除を使いきれない場合(納税額が少ない人は控除を使い切れず、贈与の非課税枠を使って借入額を減らした方が利息負担が減る)、または借入金利が高い場合(借入額を減らすことで節約できる利息 > 失う住宅ローン控除)です。
住宅ローン控除を最大限に使う方向性が有利になりやすい状況は、所得が高く納税額が大きい場合(控除をフルに使えるため、借入額を減らすデメリットより控除のメリットが大きい)、または借入金利が低い場合です。
個別の試算は税理士や住宅ローンアドバイザーに相談することをおすすめします。
住宅ローン控除への影響を簡易的に評価するフレームワーク
贈与額を受け取った場合の住宅ローン控除への影響を自分で評価する際の考え方を整理します。
まず取得対価の調整後金額(取得対価 - 非課税贈与額)と年末ローン残高のどちらが低いかを確認します。
取得対価の調整後金額が年末ローン残高より高い場合は、住宅ローン控除の計算基礎は年末ローン残高になります。この場合は贈与を受けても住宅ローン控除への影響はありません。贈与は純粋にメリットになります。
取得対価の調整後金額が年末ローン残高より低い場合は、住宅ローン控除の計算基礎が取得対価の調整後金額になります。この場合は贈与を受けた分だけ控除計算の基礎が圧縮されます。1年あたりの圧縮額は(圧縮された金額 × 0.7%)になります。
この圧縮分を13年間積み上げた総額と、贈与を受けることで節約できる住宅ローンの利息(借入額が減る分の利息節約額)を比較することで、どちらが経済的に有利かを大まかに評価できます。
低金利(たとえば0.4%)のローンで13年間の利息節約額が少ない場合、13年間の控除圧縮額の方が大きくなる可能性があります。逆に金利が高い(たとえば1.5%以上)場合は、借入額を減らすことで節約できる利息が控除圧縮分を上回る場合があります。
ただしこれはあくまで目安であり、所得・税率・将来の返済計画等によって変わります。具体的な金額は税理士や金融機関の住宅ローンアドバイザーに試算を依頼することをおすすめします。
特例を活用する前に整理したい「住宅取得等資金」の定義
何が「住宅取得等資金」に該当するか
非課税の特例が使えるのは、贈与した資金が「住宅取得等資金」として使われる場合に限ります。住宅取得等資金とは、次の目的に充てる金銭を指します。
住宅用の家屋の新築(注文住宅の建築費用、建築のための土地の取得費用を含む)に充てるための金銭。建売住宅・マンション(新築)の取得費用に充てるための金銭。既存住宅(中古住宅)の取得費用に充てるための金銭。自己所有かつ居住している住宅の増改築等の工事費用に充てるための金銭。
ここでいう「充てる」とは、実際にその費用の支払いに使うことを意味します。贈与を受けた資金をいったん自分の口座に入れ、その口座から住宅の取得費用を支払うという流れが一般的です。
贈与された資金と住宅取得費用の支払いの紐付けができなくなると問題が生じることがあるため、次の点を意識しておくことが重要です。
贈与を受けた資金を他の資金と混同しないよう、専用の口座に入れて管理することをおすすめします。住宅の購入費用の支払いは、その口座から直接行うと紐付けが明確になります。
通帳の入出金記録(贈与資金の入金日と住宅費用の支払い日)が確認できる状態を保管しておくことで、後から贈与資金の使途について説明できる体制を整えておきましょう。
住宅取得等資金に含まれないもの
贈与された資金の中でも、以下の目的の費用は「住宅取得等資金」には含まれません。
住宅ローンの返済に充てる資金(すでに取得した住宅のローン返済に充てる場合は対象外)。家具・家電・引越し費用などの住宅取得以外の費用に充てる資金。投資目的の不動産(賃貸に出す予定の住宅等)の取得費用。
これらの目的に使う予定の資金が含まれている場合は、住宅取得等資金に該当する部分と該当しない部分を分けて考える必要があります。
なお、贈与された金額がすべて住宅取得等資金に充てられるかどうかについて、税務署から問い合わせを受けることも想定して、資金の流れを証明できる書類(通帳の写し・支払い領収書等)を保管しておくことが予防策になります。特に贈与を受けた金額が大きい場合や、住宅取得のための費用の内訳が複雑な場合は注意が必要です。
よくある誤解・つまずきポイント
誤解1:「非課税だから申告しなくていい」
最も多い誤解です。住宅取得等資金の非課税限度額以内の贈与であっても、贈与税の申告書を翌年2月1日から3月15日の間に提出することが、非課税の適用条件になっています。申告しなかった場合は特例が適用されず、贈与額全体に贈与税が課税されます。
「どうせ税金がゼロだから申告しなくていいだろう」という判断が最大のリスクです。
誤解2:「翌年3月15日に入居すれば何とかなる」
居住に関する要件は、原則として「贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅に居住すること」です。ただし3月15日時点で居住が間に合わない場合でも、「同日後遅滞なく居住することが確実であると見込まれる」場合は、その見込みで申告して特例の適用を受けることができます。
ただしその場合は、「贈与を受けた年の翌年12月31日まで」に実際に居住しないと特例が失効します。
問題になりやすいのは、新築マンションや注文住宅の引き渡しが遅延するケースです。
マンションを例にとると、売買契約時に「入居予定は令和8年2月」とされていた物件が、工事の遅れで令和8年10月になったとします。この場合でも翌年12月31日(令和9年12月31日)以内に入居できれば特例は失効しませんが、さらに遅延した場合は特例が失効し、贈与税が課税されます。
対策として、新築マンションや注文住宅を購入する際は、施工業者に工期の遅延リスクを確認し、入居時期に余裕を持った贈与のタイミングを検討することが重要です。特に贈与時期と贈与の翌年3月15日・12月31日の関係を整理してから贈与を実行することをおすすめします。
誤解3:「贈与を受けた後に引き渡しを受ければいい」
贈与を受けた翌年の3月15日までに「住宅取得等資金の全額を充てて」新築等をする必要があります。つまり、贈与を受けた資金が住宅の取得代金の支払いに充てられていることが要件です。
贈与を受けた年に一定の資金を頭金等として支払い、翌年3月15日までに取得が完了している(または居住が確実に見込まれる)必要があります。
工事着工後に贈与を受けた場合(たとえば着工から数か月後に親から資金が振り込まれた場合)は、その資金が住宅取得等資金の充当として認められるかどうかに注意が必要です。契約・着工の前に贈与を受けておくか、または贈与と住宅取得の時系列を資料(通帳・領収書等)で明確にしておくことが重要です。
誤解4:「確認が済んだ書類は何でもいい」
省エネ等住宅の証明書類として、施工業者から渡される「エコポイントの申請書類」や「フラット35の適合証明書」は、住宅取得等資金の非課税特例で使える証明書と一致しない場合があります。必要な書類は「住宅省エネルギー性能証明書」など特定の書類であり、入居後に集めようとすると間に合わないことがあります。
契約段階から施工業者に「住宅取得等資金の贈与税の非課税特例を申告するための省エネ性能証明書が必要」と伝え、発行できる書類の種類と発行時期を確認しておくことをおすすめします。
誤解5:「配偶者の親からの贈与も使える」
義父や義母(配偶者の親)は「直系尊属」ではないため、義父母からの贈与はこの特例の対象になりません。配偶者の親から援助を受ける場合に非課税にしたいならば、養子縁組という方法がありますが、これには相続上の影響も伴うため慎重な判断が必要です。
誤解6:「夫婦で連名で贈与を受ければ倍になる」
非課税枠は受贈者(贈与を受けた人)1人あたりの上限です。夫と妻がそれぞれ自分の直系尊属から1,000万円ずつ受け取ることはできますが、夫1人が父母の両方から合計で2,000万円を受け取った場合は、1,000万円が非課税の上限になります(合算した2,000万円が非課税になるわけではありません)。
誤解7:「合計所得金額は手取り年収のこと」
受贈者の所得要件(合計所得金額2,000万円以下)は、税務上の「合計所得金額」を指します。手取り額や給与収入とは異なります。合計所得金額は、給与所得(給与収入から給与所得控除を引いた額)、事業所得、不動産所得、譲渡所得などを合算したものです。
住み替えで自宅を売却した年は、売却益(居住用財産の譲渡所得の特別控除3,000万円があっても特別控除前の額で所得に算入されます)が加わって合計所得金額が一時的に跳ね上がることがあります。その年に親から贈与を受ける計画がある場合は、合計所得金額を事前に計算しておくことが必要です。
税務調査で否認されるパターン
パターン1:申告漏れ(最多)
住宅取得等資金の贈与税の非課税特例は申告しなければ適用されません。申告しないまま放置した場合、税務署が贈与の事実を把握すると(たとえば住宅取得後の税務調査で金融機関の入出金記録を照合するなど)、無申告として贈与税と加算税・延滞税が課税されます。
非課税の範囲内であっても申告が必要なのに「ゼロだから申告しなくていい」と誤解したケースが特に多いとされています。
パターン2:居住要件の未充足
引き渡しを受けたが転勤などの事情で実際に住めなかった場合、または引き渡し後に賃貸に出した場合などが典型的な否認パターンです。特例は「受贈者が実際に居住する住宅」を対象としており、賃貸経営を始めたり、転勤で別の場所に住み続けたりすると特例の要件を満たさなくなります。
入居後に転勤になった場合でも一定期間以内に戻る見込みがある場合は扱いが変わることがあるため、具体的な状況を税務署に相談してください。
パターン3:合計所得金額の超過
前述の通り、不動産の売却益があった年に贈与を受けた場合や、たまたまその年にまとまった収入(一時所得など)があった場合に、合計所得金額が2,000万円を超えてしまうことがあります。特例が適用できないにもかかわらず申告した場合は、後から否認されます。
パターン4:省エネ等住宅の誤認定
施工業者から渡された書類が非課税特例で有効な証明書類として認められなかった、または建物の仕様が実際には省エネ等住宅の基準を満たしていなかったというケースです。これにより1,000万円の枠のつもりで申告したものが500万円の枠しか認められず、差額(500万円)に対して贈与税が課税されることがあります。
施工会社に「この住宅は住宅取得等資金の贈与税の非課税特例における省エネ等住宅の要件を満たすか」を明示的に確認し、証明書の種類を特定しておくことが予防策になります。
パターン5:住宅ローン控除との関係を誤認
前章で説明した通り、贈与を受けた場合は住宅ローン控除の計算基礎が変わります。変わることを知らずに、贈与がなかった場合と同じ金額で住宅ローン控除を計算して申告すると、控除額の計算が誤りとなります。これは所得税の申告(住宅ローン控除の申告)で修正を求められることがあります。
この制度を活用すべきでないケースの判断フロー
制度を知れば「使わないともったいない」と思いがちですが、使わない方がよいケースも存在します。
判断基準1:小規模宅地等の特例「家なき子特例」を将来使う予定がある場合
「家なき子特例」とは、被相続人(亡くなった方)と同居していない相続人が、一定の要件を満たす場合に、相続した宅地(被相続人の自宅)について小規模宅地等の特例(評価額が最大80%減額される)を使える制度です。
家なき子特例の適用要件のひとつに「相続開始前3年以内に自己または配偶者等の所有する家屋に住んでいないこと」があります。
住宅取得等資金の贈与を受けて自宅を取得した場合、その人は「持ち家のある人」になります。その後に親が亡くなった場合、家なき子特例は適用できなくなります。
逆に、今は持ち家がなく、将来親の自宅を相続することが想定されている場合は、住宅取得等資金の贈与を受けて持ち家を購入することで家なき子特例を使う権利を失うことになります。相続財産に被相続人の自宅が含まれ、その評価額が大きい場合には、家なき子特例を温存した方が節税メリットが大きいことがあります。
判断基準2:親の相続財産が基礎控除の範囲内の場合
相続税の基礎控除は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。たとえば配偶者と子供1人が相続人の場合は3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円が基礎控除になります。
親の相続財産の総額が基礎控除を下回る場合は、相続税がかかりません。この場合、相続時精算課税の特別控除2,500万円や生前贈与の節税策を組み合わせることにほとんど意味がなく、住宅取得等資金の贈与を急いで行う理由も薄くなります。
むしろ贈与を受けて住宅ローン控除が圧縮されるデメリットだけが残る可能性があります。
判断基準3:受贈者の所得が2,000万円を超えそうな年
その年に不動産の売却・高額の一時所得などで合計所得金額が2,000万円を超える可能性がある場合は、翌年以降に贈与を受けるよう時期をずらす検討が必要です。
判断基準4:住宅の引き渡し・入居時期が不確定な場合
新築マンションの竣工が大幅に遅延するリスクがある場合は、贈与を受けた後に要件を満たせなくなるリスクがあります。引き渡し時期が見えてから贈与を受ける方が安全な場合があります。
暦年贈与・相続時精算課税・住宅取得等資金の3制度を組み合わせた判断ガイド
3つの制度には特徴と使い分けのポイントがあります。
| 制度 | 特徴 | 活用場面 |
|---|---|---|
| 暦年贈与の基礎控除(年110万円) | 毎年利用可。相続財産に加算なし(相続開始前7年以内の分は一定額加算)。少額を毎年コツコツ移転するのに向く | 住宅取得計画がまだ先。毎年少額を移転したい |
| 相続時精算課税 | 60歳以上の贈与者から選択。累計2,500万円まで贈与税ゼロ(超過分は20%)。年110万円基礎控除あり(令和6年以降)。相続時に精算 | まとまった額を早めに移転したい。贈与者の財産が基礎控除を超える場合 |
| 住宅取得等資金の非課税特例 | 住宅取得の年のみ適用。省エネ等住宅は1,000万円。暦年・相続時精算課税と組み合わせ可 | 住宅取得を予定している年に親・祖父母から大きな援助を受ける |
3つを組み合わせる場合の最大非課税額の試算(省エネ等住宅・相続時精算課税選択の場合):
- 住宅取得等資金の非課税:1,000万円(将来の相続財産に加算されない)
- 相続時精算課税の年間基礎控除:110万円(将来の相続財産に加算されない)
- 相続時精算課税の特別控除(累計残額):最大2,500万円(将来の相続時に精算される)
合計で贈与時に課税が発生しない金額:3,610万円
ただし相続時精算課税の特別控除2,500万円部分は贈与時の課税が猶予されているだけであり、将来の相続財産に算入されて相続税が課税される点を理解しておく必要があります。
相続トラブルリスクと対策
特別受益として遺産分割に影響する場合がある
住宅取得等資金の贈与を受けることは、民法の「特別受益」にあたる可能性があります。特別受益とは、相続人の一部が被相続人(親等)から生前に受けた特別な利益のことです。
遺産分割において、特別受益を受けた相続人の相続分は、受けた特別受益の額を差し引いた形で計算されます(特別受益の持ち戻し計算)。たとえば兄弟2人がいる場合に、長男だけが親から1,000万円の住宅取得資金を受け取っていた場合、遺産分割の際に次男から「その1,000万円分を差し引いて分けるべきだ」という主張が出ることがあります。
ただし、被相続人(親等)が「この贈与は特別受益として持ち戻さなくてよい」という意思表示(持ち戻し免除の意思表示)を遺言または書面で残している場合は、持ち戻し計算が免除されます。
住宅取得等資金の贈与を受ける際に、兄弟姉妹がいる場合は、将来の相続での紛争リスクを念頭に置いておくことが重要です。贈与を受ける前に兄弟間で話し合いをしておく、または贈与者(親等)が公正証書遺言で持ち戻し免除の意思表示をしておくという方法が考えられます。
養子縁組による贈与者拡大のリスク
配偶者の親(義父・義母)は直系尊属でないため、義父母から受ける贈与はそのままでは住宅取得等資金の非課税特例の対象になりません。この問題を解決するために、義父母と養子縁組をするという選択肢があります。養子縁組をすれば義父母が法律上の直系尊属になるため、贈与が特例の対象になります。
ただし養子縁組には重大な相続上の副作用があります。養子縁組をすると、養子は養親の法定相続人になります。義父が亡くなった際の法定相続人が変わり、配偶者の兄弟姉妹(配偶者の兄弟)との相続分の計算も変わります。また相続税の基礎控除(600万円 × 法定相続人数)の計算においても、養子は1人まで(実子がいる場合)しか法定相続人として数えられないという制限があります。
住宅取得のためだけに養子縁組をすることは、その後の相続全体に影響するため、安易に行うことは避けた方がよいです。このような判断には必ず専門家(弁護士・税理士)に相談してください。
贈与のタイミングと新築マンション・注文住宅の注意点
新築マンション(青田売り)の引き渡し遅延リスク
新築マンションを購入する際、販売の多くが「青田売り」と呼ばれる竣工前の先行販売です。売買契約を締結してから実際の引き渡しまで1年から2年かかるケースもあります。
この場合、贈与を受けるタイミングが重要になります。
贈与を受けた年の翌年3月15日が居住の期限です。たとえば令和7年(2025年)に贈与を受けて、令和8年(2026年)3月15日までに入居できない場合は「居住確実」の要件で申告し、令和8年12月31日までに入居が要件となります。
問題が起きるのは、さらに入居が遅れて翌年(令和9年)に持ち越した場合です。この場合は特例が失効し、贈与税が課税されます。
新築マンションを購入する場合は、次の点を確認しておくことをおすすめします。
竣工予定の時期と過去の竣工実績(デベロッパーが過去の物件で工期通りに完成しているかどうか)を確認する。売買契約書に竣工遅延の場合の違約金・解除条件が記載されているかを確認する。贈与を受ける時期は、入居予定日が確定してから(または入居確実性が高まってから)が安全です。
竣工が令和7年末から令和8年初に見込まれる新築マンションを購入し、令和7年に贈与を受けた場合は「居住確実」要件でいったん申告し、令和8年12月31日までに入居することで特例を確定させるのが標準的な流れです。
注文住宅の着工・竣工とのタイミング
注文住宅(土地を購入して施工会社に建築を依頼する住宅)の場合は、着工から竣工・引き渡しまでに半年から1年以上かかることがあります。
特例の適用に必要なのは「贈与を受けた資金を住宅取得等のために充てること」であり、具体的には贈与資金を工事請負代金の支払いや土地の購入代金の支払いに充てることが必要です。
通常の流れとして、着工前に工事請負契約を締結し、着手金・中間金・引き渡し時金という形で工事費を支払います。贈与を受けた資金をこれらの支払いに充てることで要件を満たします。
工事着工後に贈与を受けた場合でも、その後の工事代金の支払いに充てることで要件を満たすことができます。ただし贈与の前後の資金の流れが明確になるよう、通帳の記録や支払い領収書を整理しておくことが重要です。
申告書の具体的な記入方法
贈与税の申告書の基本的な書き方
贈与税の申告書は「第一表」と「第一表の二」および「住宅取得等資金の非課税の計算明細書」で構成されます。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(https://www.keisan.nta.go.jp/)から作成できます。ここでは入力の流れと記入時の主なポイントを説明します。
まず申告者(受贈者)の基本情報(氏名・住所・生年月日・マイナンバー)を入力します。次に贈与者の情報(氏名・住所・続柄)を入力します。父母や祖父母からの贈与であれば「父」「母」「祖父」などと記入します。
贈与された財産の種類として「金銭」を選択し、贈与を受けた日と金額を入力します。
住宅取得等資金の非課税の適用を選択します。住宅の種類(新築か既存か・増改築か)と省エネ等住宅に該当するかどうかを選択すると、非課税限度額が自動的に反映されます。
課税価格(非課税限度額を超えた部分から基礎控除を引いた額)が計算され、贈与税額が表示されます。贈与税がゼロであっても申告書として出力・提出する必要があります。
計算明細書の記入ポイント
「住宅取得等資金の非課税の計算明細書」には以下の情報を記入します。
取得した住宅の所在地・構造・床面積を記入します。床面積は登記事項証明書に記載の数値を転記します。
省エネ等住宅に該当する場合はその区分(断熱等性能等級・耐震等級等)を記入します。証明書類の種類も記入し、申告書に添付します。
居住年月日(実際に居住した日付、または居住確実の見込みの場合はその見込みの入居予定日)を記入します。
住宅の取得対価の額を記入します。建物と土地を合わせて購入した場合は、建物と土地それぞれの取得対価を記入します。
住宅取得等資金として充てた金額(贈与を受けた非課税適用分の金額)を記入します。
制度の延長履歴と今後の見通し
過去の延長履歴
住宅取得等資金の贈与税非課税制度は、何度も延長と限度額の変更が行われてきた時限措置です。
制度の主な変遷を振り返ると、リーマンショック後の経済対策として平成21年に創設された当初は非課税限度額が比較的低い水準でした。その後、住宅市場の活性化や省エネ住宅普及の政策目的と合わせて、限度額が引き上げられたり対象要件が変更されたりという変遷をたどっています。
直近では令和6年度税制改正において適用期限が令和6年から令和8年まで3年間延長され、同時に新築住宅の省エネ等住宅の基準がZEH水準(断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上)に引き上げられました。
この延長の背景には、住宅の省エネ性能向上を促す政策的な目標があります。新築住宅の省エネ基準引き上げは省エネ住宅の普及を後押しする側面があり、引き続き政策として重視されています。
令和9年以降の動向
本記事執筆時点(2026年6月)では、令和9年(2027年)以降の制度の延長・変更・廃止に関する公式な発表は確認していません。
過去の経緯から判断すると、制度が廃止されずに延長される可能性はあります。しかし延長の有無・限度額の変更・要件の変更については、令和8年末の税制改正大綱(例年12月に発表)で決定される見込みです。
令和8年(2026年)以降に住宅取得を予定している場合は、令和8年の税制改正大綱の内容を確認してから行動計画を立てることをおすすめします。
住宅取得等資金の非課税と所得税確定申告の年間スケジュール
住宅を取得した年には、贈与税の申告と住宅ローン控除の申告(所得税の確定申告)の両方を行う必要が生じることがあります。2つの申告の関係とスケジュールを整理します。
贈与を受けた年(令和7年の例)
令和7年のいずれかの時期に贈与を受け、住宅を取得します。
住宅ローンを組んだ場合は、金融機関から年末残高証明書が令和7年末から令和8年1月頃に届きます。
省エネ等住宅の証明書は、住宅引き渡しを受けた後に施工会社から取得します。できるだけ引き渡し後すぐに依頼しておきましょう。
令和8年2月1日〜3月15日(申告期間)
この期間に2つの申告を行います。
贈与税の申告(住宅取得等資金の非課税の適用):令和7年に受けた贈与について申告します。添付書類(戸籍謄本・契約書写し・登記事項証明書・省エネ証明書・住民票)を揃えて提出します。
住宅ローン控除の申告(所得税の確定申告):給与所得者で住宅ローン控除を受ける場合の初年度は確定申告が必要です(2年目以降は年末調整で可能)。住宅ローンの年末残高証明書・登記事項証明書・売買契約書等を添付します。
この2つの申告は別々の手続きですが、提出先(税務署)は同じです。期間も同じ(2月1日〜3月15日)のため、一度にまとめて持参・郵送することができます。
贈与税の申告書と所得税の確定申告書は別々の申告書ですが、同じ税務署に同じ期間に提出することで手続きが完了します。
2年目以降のスケジュール
住宅ローン控除の2年目以降は、給与所得者の場合は年末調整で手続きができます。毎年10月〜11月頃に金融機関から送られてくる住宅ローンの年末残高証明書を職場に提出することで手続きが完了します。
贈与税の申告は初年度のみです(特例の適用は1回限りのため)。
必要書類の取得先と費用の目安
書類の取得には時間と費用がかかります。申告期限(翌年3月15日)に間に合うよう、余裕を持って準備を始めてください。
| 書類名 | 取得先 | 費用の目安 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本) | 本籍地の市区町村窓口、または広域交付で最寄りの市区町村窓口(2024年3月1日〜・窓口請求のみ)。一部はコンビニ交付も可 | 450円程度(除籍・改製原戸籍は750円) | 即日(窓口)〜数日(郵送請求) |
| 登記事項証明書(建物) | 法務局の窓口・郵送またはオンライン請求 | 書面請求600円、オンライン請求・郵送受取520円、オンライン請求・窓口受取490円(2025年4月1日改定後) | 即日〜数日 |
| 住民票の写し | 市区町村窓口(コンビニ交付も可) | 200〜400円 | 即日 |
| 住宅省エネルギー性能証明書 | 建築士・登録住宅性能評価機関等(施工会社に依頼) | 数千円〜数万円(施工会社による) | 数週間〜1か月程度 |
| 建設住宅性能評価書 | 登録住宅性能評価機関(施工会社が申請することが多い) | 評価機関の費用(住宅の規模等による) | 数週間以上 |
| 耐震基準適合証明書(既存住宅) | 建築士 | 数万円程度(物件・調査内容による) | 1〜2週間程度 |
| 増改築等工事証明書 | 建築士・指定確認検査機関等(施工業者に依頼) | 数万円程度 | 工事完了後に発行 |
特に注意が必要なのは、住宅省エネルギー性能証明書の取得です。これは施工会社や建築士が申請・発行するものであり、発行までに数週間以上かかる場合があります。住宅引き渡し後すぐに依頼しても、申告期限(翌年3月15日)に間に合わないことがあります。
住宅を取得する段階(契約時)から施工会社に「贈与税の非課税特例の申告に使う省エネルギー性能証明書を発行してほしい」と伝え、発行可能な書類の種類と発行時期を書面で確認しておくことを強くおすすめします。
申請チェックリスト
以下は住宅取得等資金の贈与税非課税特例の申告に向けた準備チェックリストです。すべての項目を確認してから申告書を作成することをおすすめします。
贈与を受ける前の確認事項
□ 贈与者は自分の直系尊属(父母・祖父母等)か確認している
□ 自分の合計所得金額が今年2,000万円以下になる見込みか確認している(自宅売却等の予定がある場合は要注意)
□ 過去(平成21年以降)に住宅取得等資金の非課税特例を使ったことがないか確認している
□ 取得する住宅の床面積(登記簿面積)が40平方メートル以上240平方メートル以下か確認している
□ 取得する住宅が省エネ等住宅(断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上等)かどうかを施工会社に確認している
□ 翌年3月15日までに入居できる見込みがあるか確認している(新築マンション等で遅延リスクがある場合はリスクを認識している)
□ 住宅ローン控除と組み合わせる場合に、控除額がどう変わるかを試算している
□ 家なき子特例を将来使う予定がないか確認している
書類収集チェック
□ 戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本)を取得する予定がある
□ 売買契約書または工事請負契約書の写しを保管している
□ 登記事項証明書(建物全部事項証明書)を取得する予定がある(登記後に入手可能)
□ 住民票の写しを準備している
□ 省エネ等住宅の証明書類(住宅省エネルギー性能証明書・建設住宅性能評価書等)の発行を施工会社に依頼している
□ 既存住宅の場合、耐震基準を満たすことの証明書を取得する予定がある
□ 増改築の場合、増改築等工事証明書の発行を施工業者に依頼している
申告書作成チェック
□ 贈与税の申告書(第一表・第一表の二)の様式を国税庁ウェブサイトまたは税務署で入手している
□ 「住宅取得等資金の非課税の計算明細書」を入手している
□ 国税庁「確定申告書等作成コーナー」の使い方を確認している(または税理士に依頼する手配をしている)
申告・提出チェック
□ 申告期限(贈与を受けた翌年2月1日〜3月15日)をカレンダーに記入している
□ 提出方法(持参・郵送・e-Tax)を決めている
□ 郵送の場合は3月15日の消印有効であることを確認している
□ e-Taxの場合はマイナンバーカードの有効期限を確認している
申告後の確認事項
□ 翌年12月31日までに実際に居住する見込みが変わっていないか確認している(特に「居住確実要件」で申告した場合)
□ 住宅ローン控除の初年度の確定申告(別途・所得税申告)も翌年3月15日までに行う予定がある
□ 申告書の控えと添付書類の写しを大切に保管している
よくある質問(FAQ)
Q1. 父母の両方から贈与を受けた場合、非課税枠は2倍になりますか。
なりません。住宅取得等資金の非課税枠は受贈者(贈与を受けた自分)1人あたりの上限です。父から500万円、母から500万円の合計1,000万円を受け取った場合でも、非課税になる上限は合計で1,000万円(省エネ等住宅の場合)です。合計1,000万円を超えた分には贈与税がかかります。
Q2. 贈与を受けた翌年の3月15日に間に合わない場合はどうなりますか。
贈与を受けた翌年3月15日時点で「居住が確実と見込まれる」場合は申告し、特例の適用を受けることができます。その場合は贈与を受けた翌年12月31日までに実際に居住することが条件です。翌年12月31日までに居住できない場合は特例が失効し、修正申告が必要になります。
Q3. 住宅ローンを使わずに現金で住宅を購入する場合も使えますか。
はい、使えます。住宅取得等資金の非課税特例は住宅ローンの有無を問いません。親から資金を受け取り、それを現金で住宅の購入代金に充てる場合でも要件を満たせば適用されます。ただし住宅ローン控除は住宅ローンを組んでいない場合は使えないため、住宅ローン控除との組み合わせは考慮する必要がありません。
Q4. 建売住宅を購入したが、引き渡しが贈与を受けた翌年の4月になる見込みです。どうすればいいですか。
贈与を受けた翌年3月15日時点で「居住確実」の要件で申告してください。4月に引き渡し・入居の見込みであれば、翌年12月31日の期限内に居住できる可能性が高いです。ただし更に遅延して翌年12月31日を過ぎる事態になると特例が失効するリスクがあります。施工業者に引き渡し予定日の書面確認をとっておくと、居住確実性の証明として活用できます。
Q5. 土地の購入費用にも使えますか。
はい、建物と一緒に取得する場合は土地の購入費用にも充てることができます。ただし土地だけを先に購入し、翌年3月15日までに建物の新築工事が始まっていない場合や、取得資金を土地のみに充てて建物を建てない場合は、特例の適用対象にならないことがあります。土地先行購入から建物竣工・入居までの流れについては税務署に相談することをおすすめします。
Q6. 中古住宅を購入したが、引き渡しを受けた後にリフォームを行います。この場合の適用はどうなりますか。
中古住宅の取得と増改築等の両方を同時に行う場合は、要件をそれぞれ確認する必要があります。住宅の取得費用と増改築の工事費用の合計に対して非課税枠を使うことができますが、それぞれの要件(床面積・工事費用・省エネ等住宅の証明等)を満たすことが必要です。具体的な取り扱いは税務署に確認することをおすすめします。
Q7. 相続時精算課税を選択すると取り消せないと聞きました。後悔しませんか。
相続時精算課税は一度選択すると、同じ贈与者からの贈与については原則として暦年課税に戻すことができません(取り消し不可)。住宅取得等資金の贈与を受ける年に相続時精算課税を選択する場合は、将来の相続への影響(財産の精算・相続税の見込み)をよく検討してから判断することが重要です。
Q8. 婚姻20年以上の夫婦間の居住用不動産の贈与(おしどり贈与)と組み合わせられますか。
おしどり贈与(配偶者控除・贈与税の配偶者控除)は「配偶者から居住用不動産の贈与を受ける制度」です。住宅取得等資金の非課税特例は「直系尊属から住宅資金の贈与を受ける制度」であり、対象が異なります。配偶者からの資金贈与はおしどり贈与でも住宅取得等資金の非課税でも、それぞれの要件を別途確認する必要があります。両者は別の制度であり、同時に使えるかどうかは具体的な状況に応じて税務署に確認してください。
Q9. 住宅を共有名義にする場合はどうなりますか。
夫婦で住宅を共有名義にする場合、贈与資金の使途(どちらの持分の購入資金に充てるか)が重要になります。夫が受け取った贈与資金を妻の持分の購入に充てると、夫から妻への贈与が生じる可能性があります。共有名義の住宅を購入する場合は、自分が受け取った贈与資金は自分の持分の購入に充てることを明確にしてください。持分の比率と支払い資金の出所を記録しておくことが重要です。
Q10. 申告書を提出した後に引越し(住所変更)した場合はどうなりますか。
申告書を提出した後に住所が変わっても、申告自体への影響はありません。ただし税務署からの通知が届かない可能性があるため、転居した場合は転居先の管轄税務署に住所変更の届出(異動届)を出しておくと安心です。
Q11. 贈与を受けた資金で住宅を購入した後に、住宅を売却した場合はどうなりますか。
住宅取得等資金の非課税特例は「取得した住宅に居住すること」が要件です。取得後にすぐ売却した場合は居住要件を満たさなくなり、特例が失効して贈与税が課税される可能性があります。居住後しばらく経ってから事情により売却する場合の取り扱いは、売却のタイミングや居住期間によって異なります。具体的な状況は税務署に相談してください。
Q12. 令和8年(2026年)中に贈与を受けて、住宅を取得する予定です。来年(令和9年)以降もこの制度は使えますか。
現行の制度の適用期限は令和8年12月31日までです。令和9年以降の制度については、税制改正によって延長・変更・廃止の可能性があります。本記事執筆時点(2026年6月)では令和9年以降の制度延長は確認できていません。令和9年以降の贈与を予定している場合は、国税庁の最新情報を確認してください。
Q13. 父が自分の住宅ローンの保証人になってくれた場合も「贈与」になりますか。
保証人になってもらうこと自体は贈与にはなりません。贈与税の課税対象は「財産の移転」であり、保証人になる行為は財産の移転ではないからです。ただし、父が代わりに返済した場合(弁済)や、ローンの返済を実質的に親が代わって行っている場合は、贈与とみなされる可能性があります。
Q14. 非課税限度額を超えた部分の贈与税はどのように計算しますか。
暦年課税の場合、その年に受け取った贈与の合計額から、住宅取得等資金の非課税額と基礎控除(110万円)を差し引いた残りが課税価格になります。この課税価格に贈与税の税率を掛けて贈与税額を計算します。
ここで適用される税率は、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の人が父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受ける場合、「特例贈与財産」の特例税率(10%〜55%の超過累進税率)です。直系尊属以外(配偶者・兄弟姉妹・他人など)から受ける贈与に適用される「一般贈与財産」の一般税率より、同じ課税価格でも税負担が軽くなります。住宅取得等資金の非課税特例で対象になるのは直系尊属からの贈与なので、超過分には特例税率が使われます。
具体例として、省エネ等住宅で父から1,500万円の贈与を受けた場合(暦年課税)を計算します。課税価格は1,500万円から非課税限度額1,000万円と基礎控除110万円を引いた390万円です。特例税率の速算表では課税価格400万円以下が税率15%・控除額10万円なので、贈与税額は390万円×15%−10万円で48万5,000円になります。非課税限度額(1,000万円または500万円)を大きく超えるような高額の贈与の場合は、計算を誤ると納税額が大きく変わるため、税理士への相談をおすすめします。
出典一覧(URL・確認日)
本記事は以下の一次情報を確認した上で執筆しています。
国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm
確認日:2026年6月27日
国税庁 No.4503 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4503.htm
確認日:2026年6月27日
国税庁 No.4504 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4504.htm
確認日:2026年6月27日
国税庁 No.4506 住宅取得等資金とそれ以外の財産を同一年中に贈与されたとき(相続時精算課税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4506.htm
確認日:2026年6月27日
国税庁 質疑応答事例 住宅取得等資金の贈与と住宅借入金等特別控除との関係
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/17/08.htm
確認日:2026年6月27日
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
確認日:2026年6月27日
国税庁 令和6年分贈与税の申告のしかた
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/zoyo/tebiki2024/01.htm
確認日:2026年6月27日
国土交通省 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000018.html
確認日:2026年6月27日
国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
確認日:2026年6月27日
国税庁 令和5年度税制改正 相続税及び贈与税の改正のあらまし(相続時精算課税110万円基礎控除創設)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-004.pdf
確認日:2026年6月27日
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、個別の税務相談・申告書の作成代行・申請代行を行うものではありません。制度の詳細・最新の要件・申請手続きについては、国税庁の公式サイト(https://www.nta.go.jp/)または納税地の所轄税務署に直接ご確認ください。
税務書類の作成代行・税務相談は税理士法に基づく税理士の業務です。個別の税務判断が必要な場合は税理士にご相談ください。
本記事に掲載した計算例・数値はすべて制度の仕組みを理解するための例示であり、実際の控除額・税額は個人の所得・税額・住宅の性能区分・入居年等によって異なります。
本記事の情報は2026年6月27日時点のものであり、法改正・制度変更により内容が変わることがあります。申請前に必ず最新の公式情報をご確認ください。