育児休業給付金・出生後休業支援給付金・育児時短就業給付をまるごと解説(2026年版)
本記事は2026年6月25日時点の公開情報に基づきます。金額・要件・受付期間は変更されるため、申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
妊娠・出産を控えている方、またはパートナーが育休を考えている方で、「育休中にどれくらいもらえるのか、どこに何を申請すればいいのかわからない」と感じている方に向けて書いています。
2025年4月から制度が大きく変わり、「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」が新たに加わりました。育児に関連する雇用保険給付は現在4種類になっており、組み合わせを正しく把握できるかどうかで手取り額が変わります。
一点、最初に伝えておく必要があることがあります。これらの給付金の申請は、原則として事業主(勤め先の会社)が手続きを行います。読者の方ご本人が直接ハローワークへ書類を持ち込む仕組みではありません。制度を理解したうえで、会社の担当部署と早めに連携することが鍵になります。
この制度は何か
育児休業給付金は雇用保険の給付の一つです。育休中は給与がゼロか大幅に減りますが、その期間の生活を支えるために国(雇用保険)からお金が出る仕組みです。財源は毎月の給与から天引きされている雇用保険料なので、そもそも雇用保険に加入していない方は対象になりません。受け取った給付金は非課税です。
2025年4月以降、育児に関連する雇用保険給付は以下の4種類になっています。
「出生時育児休業給付金」は、産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した父親が対象です。子の出生後8週間以内に最大28日間の休業を取った場合に支給されます。「育児休業給付金」は育休を取った本人(母親または父親)に支給される基本の給付で、子が原則1歳になるまでが対象です。「出生後休業支援給付金」は2025年4月新設で、夫婦そろって育休を取った場合に上乗せされるボーナス的な給付です。「育児時短就業給付金」も2025年4月新設で、育休から復帰して時短勤務をしている期間に支給されます。
いくらもらえるのか(さわりだけ)
育児休業給付金の基本的な給付率は、休業前の賃金の67%(育休開始から180日まで)です。それ以降は50%になります。出生後休業支援給付金は、この67%に13%を上乗せする仕組みで、要件を満たした期間は実質80%の給付率になります。育休中は社会保険料も免除され、給付金そのものも非課税のため、手取りで比べると67%の給付でも休業前のおよそ8割相当、出生後休業支援給付金が上乗せされて80%になる期間は休業前の手取り10割相当になると説明されています。
計算方法・受給要件の判定・申請の流れは、以下の続き分で解説しています。
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ここでは、多くの方が一番知りたいであろう「自分の場合、育休中にいくら受け取れるのか」を、典型的な共働き夫婦のケースで、計算の途中まで省略せずに見せてみます。数字はあくまで一例で、実際の金額はご自身の賃金や育休の取り方によって変わりますが、考え方の流れはほぼ共通です。
設定はこうします。母親の育休前の手取りに近い感覚を持っていただくために、まず賃金の前提を置きます。育休に入る直前の6か月間に、毎月の総支給額(残業代と通勤手当を含み、賞与は含みません)が30万円だったとします。父親は子の出生直後に4週間(28日間)の産後パパ育休を取り、母親はその後1年間の育休を取る、という共働き・共育てのパターンを考えます。
最初に、母親の給付の土台になる「休業開始時賃金日額」を出します。これは育休開始前6か月間の賃金合計を180で割って求めます。月30万円が6か月なので合計は180万円、これを180で割ると1万円です。つまり休業開始時賃金日額は1万円になります。この金額は上限の16,540円より低く、下限の3,203円より高いので、そのまま使えます(2026年8月1日から2027年7月31日までに適用される額です)。
次に、育休開始から180日目までの給付率67%の期間を計算します。給付額の式は「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率」です。1支給単位期間はおおむね30日なので、1万円 × 30日 × 67% で、1か月あたりおよそ20万1,000円という見当になります。育休開始から180日というのは月数でいうとおよそ6か月分なので、この期間の合計はおおよそ120万円前後という規模感です。育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除され、給付金そのものも非課税なので、額面では67%でも、天引きされる前の手取りと比べると体感としては8割近くまで戻る、と説明されることが多いです。
続いて、181日目から子が1歳になるまでの給付率50%の期間です。同じ式で、1万円 × 30日 × 50% なので、1か月あたりおよそ15万円という見当になります。母親は産後休業(おおむね8週間)が明けてから育休に入るため、育児休業給付金の対象になるのは産後休業明けから子が1歳になるまでで、このうち最初の180日が67%、残りが50%です。50%の期間はおおむね4か月程度になることが多く、合計でおよそ60万円前後という規模感です。前半の67%期間(約120万円前後)とあわせると、母親の育児休業給付金は産後休業明けから1歳までで合計180万円前後という水準になる、というのがおおまかな見当です。実際の金額は育休の取り方や賃金によって変わるため、正確な額は後述の厚生労働省「かんたん試算ツール」で確認することを勧めます。
ここに、2025年4月に新しく加わった出生後休業支援給付金の上乗せが乗ります。これは夫婦そろって育休を取った場合のボーナス的な給付で、給付率は13%、最大28日分です。今回は父親も母親も子の出生後8週間以内に14日以上の育休を取っているという前提なので、要件を満たすとして計算してみます。母親側で見ると、1万円 × 28日 × 13% で、およそ3万6,000円ほどが、はじめの28日分に上乗せされます。この上乗せが乗っている28日間に限っては、もともとの67%とあわせて実質80%相当の給付率になります。父親側も、産後パパ育休28日分について出生時育児休業給付金(67%)と出生後休業支援給付金(13%)の両方を受け取れる前提なので、父親の賃金が母親と同程度であれば、父親にも同じくらいの上乗せが入る計算になります。
最後に、母親が職場復帰したあとの話です。1歳を過ぎて時短勤務に切り替えると、今度は育児時短就業給付金の対象になる可能性があります。これは時短勤務中に実際に支払われた賃金の10%が目安です。たとえば時短で月20万円の賃金を受け取るなら、その10%で月2万円ほどが上乗せされる、というイメージです。育休中の給付とは別物で、復職して賃金を受け取っていることが前提になる点に注意が必要です。
ここまでをまとめると、この共働き夫婦のケースでは、母親の育児休業給付金が産後休業明けから1歳までで合計180万円前後、これに出生後休業支援給付金の上乗せが数万円、復職後の時短期間には育児時短就業給付金が月2万円前後、という形で複数の給付が重なっていく見当になります。ご自身の賃金が今回の30万円より高ければ給付額も増えますが、休業開始時賃金日額が上限の16,540円に達すると、そこから先は頭打ちになる点だけは覚えておくと安心です。
ほかのケース・申請の実務・チェックリスト・FAQはこの続きで解説します。
ここから先は、申請に直結する実務です。
育児休業給付金の対象者判定軸
受け取るには大きく2つの条件があります。
まず「雇用保険の被保険者であること」です。フルタイム社員はほぼ全員が該当しますが、パートや短時間労働者は週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合に加入義務が生じます。
次に「育休開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あること」です。簡単に言うと、休業前の2年間にまともに働いた月が12か月以上あることです。病気等で長期休養していた場合は、最大4年まで遡って計算されることもあります。
有期雇用(パート・派遣・契約社員など)の方には「子が1歳6か月に達するまでに、労働契約の期間が満了することが明らかでないこと」という追加要件があります。育休終了前に契約が切れることが確定している場合は対象になりません。雇用契約書の内容を必ず確認してから準備に入ることを勧めます。
給付率と金額の計算方法
支給額の計算式は「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率」です。
「休業開始時賃金日額」は、育休開始前6か月間の賃金合計を180で割った金額です。残業代や通勤手当は含まれますが、賞与は含まれません。上限は16,540円、下限は3,203円です(2026年8月1日〜2027年7月31日適用)。
給付率は育休開始から180日目まで67%、181日目以降は50%です。180日は土日祝を含む暦日で数えます。
月額の上限額(2026年8月1日〜2027年7月31日)は、67%期間で332,454円、50%期間で248,100円です。休業開始時賃金日額の上限は16,540円、下限は3,203円で、上限・下限は毎年8月1日に改定されます。
育休中は社会保険料が免除されます。給付金は非課税のため、実際の手取りで比較すると67%の給付率でも休業前のおよそ8割相当になります。
出生後休業支援給付金の上乗せ仕組みと要件
2025年4月1日に新設された給付です。「夫婦で一緒に育休を取ったときの上乗せ」が基本的な考え方で、片方だけが育休を取っていても受け取れません。
支給の要件は2点です。1点目として、本人が「子の出生後8週間以内」という期間に、合計14日以上の育休を取得していることが必要です。2点目として、配偶者が同じく「子の出生日から産後8週間を経過する日の翌日まで」の期間中に、合計14日以上の育休を取得していることが要件になります。
給付率は13%で、最大28日分が支給されます。育児休業給付金(67%)と合算すると80%です。28日分の支給上限額は58,640円です。
シングルの場合や配偶者が専業主婦・主夫の場合など「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当するケースは、厚生労働省のQ&Aを直接確認することを勧めます。
申請は育児休業給付金と同様に、事業主を通じてハローワークが行います。ただし、配偶者の育休取得証明が必要になるため、夫婦双方の会社で情報を揃える必要があります。
育児時短就業給付の仕組みと注意点
育休を終えて復職した後に、2歳未満の子のために時短勤務をしている期間に支給される給付です。給付率は「時短勤務中に支払われた賃金額の10%」です。育休中の給付とは異なり、実際に働いて賃金を受け取っていることが前提です。
受給資格には2つのルートがあります。一つは育休給付の対象だった育休から引き続いて時短勤務に移行したケース、もう一つは時短就業開始日前の2年間に被保険者期間が12か月以上あるケースです。
支給限度額は月484,121円(2026年8月1日改定後)です。実際の支給は賃金の10%なので、上限に達するのは賃金が高い場合に限られます。
育休中の育児休業給付金と育児時短就業給付金は別の制度です。育休が終わって復職した後の給付であり、育休中に同時には受け取れません。申請は事業主を通じて行います。
誰がいつ申請するか
申請主体は「事業主(会社)」です。本人がハローワークに書類を持ち込む形ではなく、会社の人事・総務担当者が申請手続きを進めます。例外的に、事業主を経由できない特別な事情がある場合に限り、本人が直接申請することもできます。
初回の申請は、育休開始日から4か月を経過する日の属する月の末日までに行う必要があります。2回目以降はハローワークが指定する支給申請期間に申請します。
本人が準備しておくべきは、雇用保険被保険者証と育休前の給与がわかる書類(賃金台帳など)です。会社の担当者から求められることが多いため、早めに手元に揃えておくとスムーズです。
申請の流れと事前準備
おおまかな流れは次のとおりです。
- 妊娠判明後、早めに会社の人事・総務へ報告し、育休の取得意向を伝える。会社は従業員への制度周知と雇用環境整備が義務づけられているため、担当者に相談すれば案内を受けられます。
- 育休開始日が決まったら、会社が「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」をハローワークへ提出します。
- 育休開始後、会社が「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」をハローワークへ提出します。期限は育休開始から4か月を経過する日の末日です。
- 2回目以降はおよそ2か月ごとに会社が申請します。
出生後休業支援給付金・育児時短就業給付金も、同様に事業主を通じた申請です。
よくある誤解・つまずき
「パートや派遣は対象外」という思い込みがよくあります。雇用保険に加入していて被保険者期間が12か月以上あれば、雇用形態に関わらず対象になる可能性があります。ただし有期雇用の場合は、1歳6か月時点で契約が満了することが明らかでないことが条件です。
「産後パパ育休を取れば出生後休業支援給付金も自動でもらえる」という誤解もあります。この給付金は本人だけでなく、配偶者も14日以上育休を取ることが要件です。一方だけ取っても上乗せの給付は受け取れません。
「育休中に少し仕事をしたら給付が全額カットされる」という心配もよく聞きます。1支給単位期間(育休開始日から1か月ごとの期間)で、就業した日数が10日以下であれば給付は継続します。10日を超える場合でも、就業した時間が80時間以下であれば対象になり得ます(公式の基準は、就業日数が10日を超え、かつ就業時間が80時間を超えたときに不支給、という扱いです)。ただし支払われた賃金の額によっては減額される場合があり、休業前賃金の80%以上を受け取ると支給されません。
「保育所に入れなければそのまま延長できる」という点も誤解があります。1歳時点で保育所の入所申し込みをしたが入れなかった場合は最長2歳まで延長できますが、単に「入れなかった」だけでなく一定の手続きと証明が必要です。
他制度との関係
傷病手当金と育児休業給付金は同時に受け取れません。傷病手当金は「病気やけがで働けない期間の所得補償」ですが、育休中は病気ではなく育休を取っている状態のため、傷病手当金の支給要件を満たしません。育休前から傷病手当金を受け取っていた場合は、ハローワークと健康保険組合の両方に確認することを勧めます。
産休中の出産手当金(健康保険から支給)と育児休業給付金(雇用保険から支給)は、期間が重複しない限り両方受け取れます。産休から育休へ連続して入る場合は、産休中は出産手当金、育休に入ってから育児休業給付金に切り替わります。
【現時点の給付率・金額(2026年6月25日確認)】
育児休業給付金の給付率は育休開始から180日目まで67%、181日目以降50%です。
月額上限(2026年8月1日〜2027年7月31日適用)は、67%期間で332,454円、50%期間で248,100円です。賃金日額上限は16,540円、下限は3,203円です。
出生後休業支援給付金の給付率は13%(育児休業給付金と合算して80%)で、最大28日分・支給上限58,640円です。2025年4月1日施行。
育児時短就業給付金の給付率は時短勤務賃金の10%、対象は2歳未満の子を養育しての時短就業です。支給限度額は484,121円(2026年8月1日改定後)。2025年4月1日施行。
申請チェックリスト
申請そのものは会社(事業主)が進めますが、本人の側でも事前に揃えておくとやり取りがスムーズになるものがあります。準備物・期限・窓口・注意点を整理します。
本人が手元に用意しておきたい主な書類は次のとおりです。
- 雇用保険被保険者証(入社時に会社から渡されているか、会社が保管していることが多いので所在を確認しておく)
- 母子健康手帳など、出産予定日や出生日がわかるもの(写しの提出を求められる場合があります)
- 育休前6か月分の給与がわかるもの(給与明細など。賃金台帳は会社が作成しますが、自分でも金額を把握しておくと計算の見当がつきます)
- 振込先口座がわかるもの(給付金の受け取り口座の情報)
- 本人名義であることがわかる本人確認書類
夫婦で出生後休業支援給付金を狙う場合は、上に加えて配偶者の育休取得を証明できる情報も必要になります。配偶者の勤め先で「いつからいつまで何日間の育休を取ったか」がわかる書類を出してもらう流れになるため、夫婦双方の会社で早めに段取りしておくと安心です。
押さえておきたい主な期限は次のとおりです。
- 育児休業給付金の初回申請は、育休開始日から4か月を経過する日の属する月の末日までとされています。
- 出生時育児休業給付金(産後パパ育休分)は、子の出生日から8週間を経過した日の翌日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日まで、というのが一般的な目安とされています。
- 2回目以降は、ハローワークが指定する支給申請期間ごとに、おおむね2か月単位で会社が申請します。
- 育休を1歳より先へ延長する場合は、延長を希望する時点までに保育所等の入所申し込みを済ませ、その結果を証明する書類を揃えておく必要があります。
窓口は、本人がやり取りするのは基本的に勤め先の人事・総務担当者です。実際にハローワークへ書類を提出するのは会社で、本人がハローワークの窓口に直接出向く場面は原則ありません。会社を経由できない特別な事情がある場合に限って、本人がハローワークに直接申請できる例外もありますが、その判断はハローワークに相談することになります。
注意点として、初回申請の期限を過ぎると手続きが滞り、給付金の振り込みが遅れる場合があります。出産・育児で慌ただしい時期と重なるので、妊娠が分かった段階で会社へ早めに相談し、誰が何をいつまでに用意するのかを担当者と一緒に確認しておくことを勧めます。給付金が実際に振り込まれるのは、母親の場合おおむね出産から4〜5か月後が一つの目安とされており、すぐには入金されない点も見込んでおくと家計の計画が立てやすくなります。
具体的な計算例・記入例
無料サンプルでは月収30万円の共働き夫婦のケースを見ました。ここでは条件の異なる3つのケースを、計算の途中まで含めて見ていきます。いずれもあくまで一例で、実際の金額はご自身の賃金や育休の取り方によって変わる点はご了承ください。
ケース1は、賃金が比較的高い会社員のケースです。育休前6か月の月給が一貫して40万円だったとします。休業開始時賃金日額は、40万円 × 6か月 ÷ 180で、およそ1万3,333円になります。これは上限の16,540円より低いので、そのまま使えます。67%期間の1か月分は、1万3,333円 × 30日 × 67%で、およそ26万8,000円という見当です。ここで注意したいのは、上限額の存在です。月給がさらに高く、休業開始時賃金日額が16,540円を超えるような場合は、67%期間の月額が上限の332,454円で頭打ちになります(2026年8月1日〜2027年7月31日適用)。高収入の方ほど「給付率67%」をそのまま掛けた額より少なくなりやすいので、上限を意識しておくと見込み違いを防げます。
ケース2は、産後パパ育休をフルに取る父親のケースです。育休前6か月の月給が25万円だったとします。休業開始時賃金日額は、25万円 × 6か月 ÷ 180で、およそ8,333円です。父親が子の出生後8週間以内に28日間の産後パパ育休を取ると、まず出生時育児休業給付金が、8,333円 × 28日 × 67%で、およそ15万6,000円という見当になります。さらに、母親も同じ期間に14日以上の育休を取っているなどの要件を満たせば、出生後休業支援給付金が、8,333円 × 28日 × 13%で、およそ3万円ほど上乗せされます。この28日間に限れば、合わせて実質80%相当になる、という設計です。記入の段階では、産後パパ育休の取得日数(合計28日であること)と、配偶者の育休取得を証明する情報が要点になります。配偶者の取得日数が14日に届かないと上乗せの要件を外れるため、夫婦で日数を確認し合っておくことが大切です。
ケース3は、有期雇用(契約社員・パートなど)のケースです。週の所定労働時間が25時間で、月の賃金が16万円のパート勤務だったとします。まず雇用保険に加入しているか(週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあるか)を確認します。この例は週25時間なので、加入要件を満たしている前提です。次に、育休開始前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あるか、という被保険者期間の要件を満たすかを確認します。これを満たしていれば、雇用形態がパートでも対象になり得ます。休業開始時賃金日額は、16万円 × 6か月 ÷ 180で、およそ5,333円です。67%期間の1か月分は、5,333円 × 30日 × 67%で、およそ10万7,000円という見当になります。有期雇用で特に注意したいのは、「子が1歳6か月に達するまでの間に労働契約が満了することが明らかでないこと」という追加要件です。契約の更新が見込まれるかどうかで対象になるか変わるため、雇用契約書の内容を会社に確認してから手続きに入ることを勧めます。
記入のポイントとして共通するのは、賃金額は残業代や通勤手当を含む総支給額で考え、賞与は含めないという点です。また、書類上の「育児休業を開始した日」は、母親が産後休業から続けて育休に入る場合、出産日の翌日から数えて58日目(産後8週間が明けた翌日)になるのが一般的です。父親の場合は、子の出生日以降に実際に育休を始めた日が起点になります。どの日付を起点にするかで支給対象期間がずれるので、会社の担当者と日付の認識を合わせておくことが、後の行き違いを防ぐうえで役立ちます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 育児休業給付金は、申請すれば必ずもらえますか。
いいえ、必ずとは言い切れません。雇用保険に加入していること、育休開始前2年間に被保険者期間が一定以上あることなどの要件を満たしている必要があり、要件を満たさない場合は支給されません。支給の可否は個別の状況によって審査されるため、まずはご自身が要件に当てはまるかを確認することが出発点になります。
Q2. パートや派遣で働いていますが、対象になりますか。
雇用形態がパートや派遣であること自体は、対象から外れる理由にはなりません。雇用保険に加入していて被保険者期間の要件を満たしていれば、対象になり得ます。ただし有期雇用の場合は、子が1歳6か月に達するまでに労働契約が満了することが明らかでないこと、という追加の条件があります。契約の更新見込みについて勤め先に確認しておくとよいでしょう。
Q3. 給付金は課税されますか。確定申告は必要ですか。
育児休業給付金は非課税とされており、所得税や住民税の対象になりません。そのため、給付金そのものについて確定申告をする必要は基本的にありません。ただし、育休に入る前にその年の給与がある場合などは、年末調整や確定申告で他の所得とあわせて手続きが必要になることがあるので、その点はご自身の状況に応じて確認してください。
Q4. 育休中に少しだけ働いたら、給付はどうなりますか。
1支給単位期間(おおむね1か月)の中で、就業した日数が10日以下であれば給付は継続するとされています。10日を超える場合でも、就業した時間が80時間以下であれば対象になり得ます。ただし、支払われた賃金の額によっては減額される場合があり、休業前賃金の80%以上の賃金を受け取ると支給されない、といった基準が設けられています。毎月恒常的に働くと「休業」とみなされなくなることもあるため、働き方は慎重に判断する必要があります。
Q5. 夫が育休を取れば、出生後休業支援給付金は自動的にもらえますか。
自動的にとは言えません。この給付は、本人だけでなく配偶者も対象期間内に14日以上の育休を取得していることが原則の要件です。片方だけが取得しても上乗せの給付は受け取れません。なお、ひとり親家庭の場合や配偶者が専業主婦・主夫の場合など、配偶者の育休取得を要件としない例外もあるとされているため、当てはまりそうな方は公式のQ&Aで確認することを勧めます。
Q6. 出生後休業支援給付金は、いくらくらい上乗せされますか。
給付率は13%で、最大28日分です。28日分の支給上限額は58,640円とされています(2025年8月〜2026年7月末適用)。育児休業給付金の67%と合わせると、この期間は実質80%相当の給付率になる、という設計です。実際の上乗せ額は賃金によって変わり、休業開始時賃金日額が上限に達している場合は上限額で頭打ちになります。
Q7. 育児時短就業給付金とは何ですか。育休中にもらえますか。
育児時短就業給付金は、育休が終わって復職したあと、2歳未満の子を育てるために時短勤務をしている期間に支給される給付です。育休中の給付とは別の制度で、育休中に同時に受け取るものではありません。給付率は、時短勤務中に実際に支払われた賃金額の10%が目安です。実際に働いて賃金を受け取っていることが前提になります。
Q8. 保育所に入れなかったら、育休はいつまで延長できますか。
保育所等に入所できなかった場合、子が1歳6か月になる前日まで延長でき、それでも入所できなければ2歳の誕生日の前日まで再度延長できる仕組みとされています。ただし2025年4月から延長の手続きが厳しくなり、入所保留(不承諾)の通知書に加えて、保育所等の利用申込書の写しなどの提出が求められるようになったとされています。単に「入れなかった」だけでなく、適切に申し込んだことを示す書類が必要になる点に注意してください。
Q9. 申請は自分でやるのですか。会社がやってくれますか。
原則として、申請手続きは勤め先(事業主)が行います。本人がハローワークの窓口へ直接出向く場面は基本的にありません。本人がすべきことは、必要な書類を会社に渡し、育休の取得意向や日程を担当者と共有することが中心になります。会社を経由できない特別な事情がある場合に限り、本人が直接申請できる例外もあるとされています。
Q10. 給付金はいつ振り込まれますか。
申請のタイミングや会社の手続きによって変わりますが、母親の場合、初回の振り込みはおおむね出産から4〜5か月後が一つの目安とされています。育休に入ってすぐに振り込まれるわけではないため、当面の生活費はあらかじめ見込んでおくと家計の計画が立てやすくなります。2回目以降はおおむね2か月ごとの申請にあわせて振り込まれていきます。
Q11. 産休中の出産手当金と、育児休業給付金は両方もらえますか。
期間が重複しない限り、両方受け取れるとされています。一般的には、産休中は健康保険からの出産手当金、育休に入ってからは雇用保険からの育児休業給付金、という形で時期が切り替わります。それぞれ支給元が異なる制度なので、産休から育休へ連続して入る場合の切り替わりのタイミングを、会社の担当者に確認しておくと安心です。
Q12. 病気やけがで働けないときの傷病手当金と、育児休業給付金は同時にもらえますか。
同時には受け取れないと考えられています。傷病手当金は病気やけがで働けない期間の所得補償であり、育休中は「育休を取っている状態」とみなされるため、傷病手当金の要件を満たしにくくなります。育休前から傷病手当金を受け取っていたような場合は、ハローワークと健康保険組合の両方に確認することを勧めます。
Q13. 育休前に転職したばかりですが、対象になりますか。
転職していても、前職と通算して育休開始前2年間に被保険者期間が一定以上あれば、対象になり得ます。雇用保険は通算されるのが原則ですが、前職と現職の間に空白期間が長いと通算できない場合もあります。ご自身の被保険者期間がどうなっているかは、勤め先やハローワークで確認できます。
Q14. 賞与(ボーナス)は給付額の計算に含まれますか。
含まれません。給付額の土台になる休業開始時賃金日額は、育休前6か月の賃金から計算しますが、ここでいう賃金には残業代や通勤手当は含まれる一方で、賞与は含まれない扱いとされています。ボーナスが多い方でも、月々の賃金をもとに計算される点に注意してください。
Q15. 共働きでどちらも育休を取る場合、注意することはありますか。
出生後休業支援給付金を受け取るには、夫婦それぞれが対象期間内に14日以上の育休を取ることが原則の要件になるため、夫婦で取得日数を確認し合っておくことが大切です。また、配偶者の育休取得を証明する書類が必要になるので、夫婦双方の勤め先で早めに段取りしておくと手続きがスムーズです。どちらの会社にいつ何を提出するかを、夫婦で一度すり合わせておくことを勧めます。
出典一覧と免責
本記事は以下の公式情報を参照して執筆しました。
- 厚生労働省「育児休業等給付について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135090_00001.html (2026年8月12日確認)
- 厚生労働省「Q&A〜育児休業等給付〜」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html (2026年8月12日確認)
- ハローワークインターネットサービス「育児休業等給付」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_childcareleave.html (2026年8月12日確認)
- 厚生労働省「産休・育休中の経済的支援かんたん試算ツール」 https://shussan.ikukyu-simu.mhlw.go.jp/ (2026年8月12日確認)
- 厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続(令和8年8月1日改訂版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001461102.pdf (2026年8月12日確認)
- こども家庭庁「育児休業給付の概要」 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cf58692-19b3-47a6-af76-1d6df3602740/bf2fe881/20250130_policies_budget_tokubetsukaikei_ikujikyugyo_06.pdf (2026年6月25日確認)
- 厚生労働省「高年齢雇用継続給付金・介護休業給付金・育児休業等給付 支給限度額の変更(令和8年8月1日から)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001728499.pdf (2026年8月12日確認)
- 厚生労働省「令和8年8月1日からの基本手当日額等の適用について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00050.html (2026年8月12日確認)
- 厚生労働省「保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります(2025年4月から)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001269748.pdf (2026年6月25日確認)
- 厚生労働省「育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000178877.pdf (2026年6月25日確認)
本記事は一般的な制度解説を目的とした情報提供であり、個別の申請書類の作成代行や申請代行は行いません。受給できるかどうかは個別の状況によって異なり、支給を保証するものではありません。詳細は最寄りのハローワークまたは社会保険労務士にご相談ください。